ボスは笑わない
「…………あぁ……ゴブ……」
死んでいるはずのボスから声が聞こえた、見てみるとボスが血を吐きながらキョロキョロしていた。
「お兄ちゃん!?」
死んでいたと思っていたボスが動き出したのを見て、FMJはボスの頭を抱えるように抱きついた。
「はぁ……はぁ……………がぼ、がぶぼ」
ボスは一生懸命何かを喋っている、しかし喉に血が詰まってなかなか喋ることが出来ない。
「…………!少し待って!」
そう言ってFMJはボスに口ずけし、血を吸い取っては吐き、吸い取っては吐きを繰り返した。
「んん………ぺ!んんぅ……………ぺ!」
「だ、大丈夫だ……………もう喋れる」
そう言ってボスはFMJの口に手をかぶせた。
「お兄ちゃん、なんで死にかけてるの?」
「……………言えない」
「…………それもお仕事なの?」
「………半分正解、半分間違い、だ」
「それって、どういうことよ………」
「俺は…………仕事を、放棄したんだ」
「な、なんで?」
「仕事の内容が余りにも………」
そこでボスは口を紡いだ、仕事についてはこれ以上話さないつもりらしい。
「はは、どうせ俺の命は国の所有物、ボスを引退するには丁度良かったかもしれん」
「どういうこと?」
「……副ボスは定年退職があるが、ボスにはない、死ぬまでボスだ、外部に情報が漏れないようにボスだけは永久就職なのさ」
「で、でも、副ボスだって機関の機密を知ってるんでしょう?なのになんでお兄ちゃんだけ………」
「前のボスが裏切ってロシアに情報を漏らそうとした、しかし当時副ボスだった俺が知らないような情報をボスは持っていた、それは今でも同じだろう」
そう話していると、カリアがボスに寄り添ってきた。
「兄さん!」
「あぁ………カリアさん」
「兄さん大丈夫ですか!ぃ、今救急車を…………!」
そう言ってカリアは携帯を取り出し、電話をかけようとしたが、ボスがそれをさいぎった。
「だめだ、これで、いいんだ」
「で、でも!」
「これしかもう道はない、これが俺の望んだ道なんだ」
「に、兄さん…………」
「俺は今の状態に感謝してるんだ、俺を殺そうとしたやつも最高の人だった」
そう言ってボスはニコリと笑い出した。
「誰なの!殺した人は誰なの!」
FMJが叫ぶようにボスに訪ねた。
「時期ボスになるだろうな………だが、あまり背負わせたくはなかったな、ボスを」
「副ボス!?副ボスが殺したの?」
「いいや、俺を殺したのは………」