ボス、失敗
「なんだか不公平な気がする」
スクランブルエッグを食べ終わったあとにメリーが言った。
「あ?不公平?」
「副ボスはもうキスを経験してるのに、私は今日初めて、しかも死んでから」
そう言いながらメリーは頬を膨らませていた。
「口移しだぞ?口移し、キスじゃない」
「似たようなもんよ」
「口移しをした相手は皆男だぞ?」
ボスがそう言うと、メリーはドン引きしていた。
「うえ……………副ボスホモだったの? 」
「ホモじゃねえよ」
「……………本当に?」
「うん止めよ!?この話はもうやめだ!」
そう言ってボスは椅子に座った。
「でも副ボスにリードされて悔しい!私から奪いたかったのに!」
「気にしすぎだろ」
「ね、ね!もう一回、もう一回やろう!」
「はあ!?なんでだよ!」
「私の思い通りにやってみたいの!いいでしょ? 」
「良くはないな」
「なんでよ?」
「魂まで吸い取られそうだ」
「そ、そんなことしないわよ!」
そう言いながらメリーはいいから!と言ってボスを椅子に座らせた。
「ね?お願い」
「…………一回な、一回だからな」
ボスがそう言うと、メリーはご満悦になり、ボスに抱きついた。
「ありがとう!!」
メキョ、メキメキ
「くぶ、背骨が…………」
そう言うとメリーは離れた。
「じ、じゃあやるよ、下手くそでも笑わないでね?」
「笑わない笑わない」
「あ、あと恥ずかしいから目を閉じてね」
「はいはい」
ボスがそう言うと、メリーは深呼吸をしながらゆっくりとボスの顔に近づいた。
「何やってるんですか?ボス」
その声にビク、としたメリーは一気に部屋の隅まで移動した。
「ああ、副ボス、ちょっと考え事をしていてね」
「考え事?そんなことより早く仕事してくださいね?」
そう言って副ボスは新たな書類を机の上にのせていった。
「うわ、なんか新しいのもってきやがったよ」
ボスが副ボスに不満の表情を浮かべたが、副ボスはしれっとした表情でのせていった。
「では、私はこれで」
そう言って副ボスは音を立てずにドアをしめた。
「いったぞ」
ボスがそう言うと、メリーはその場に固まっていた。
「おい、聞いているかメリー」
ボスが尋ねると、メリーは俯き、顔を真っ赤にして自分の服を握りながらボスに尋ねた。
「み、見られちゃったかな?」
「大丈夫だ、今の所俺にしか見えないみたいだ」
ボスがそう言うと、メリーは涙目になりながらボスに言った。
「もう!副ボスのせいで恥じかいちゃったじゃない!」
「え!?俺のせい?」
「そうよ!副ボスが愚図って手間取るからこんなことに!責任とってよ!」
「責任って、なにするんd…………」
チュ
「んうっくちゅっじゅっ、ぷは」
「…………………………」
「ちょ、黙ってないでなにか言ってよ」
「下手だな」
「うわーん!」
この日の午前中はメリーをあやすのに潰れた。