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松岡はオレの男だ

「ここ数十年に起きた新しい事なのよ、天使が堕ちだしたのは。五百年くらい前までは堕天使なんて言葉すらなかったの。だって昔は恋を成就させられなくて堕ちる天使なんていなかったから。


 クピドから堕天使捕獲を任命された私は、当然ながらまず堕天使の近くに降りなくてならなかったの。堕天使の目的は天使の仕事を邪魔する事。だから最初私は降りた天使の近くにいれば捕まえられると安易に考えていたの。


 でも事はそう単純にはいかなかったわ。何せこっちからは相手の正体が分からないのに向こうは私たち天使と天使がついている人間が分かってしまうものね。だから警戒心の強い彼らは、大天使長の私に気付くとすぐに姿を消してしまって全く捉えどころがなかったわ」

「じゃあ、どうしたんですか?」

「一端体勢を立て直そうと天界に帰って、モテないリストを見せて貰ったときにピンと来たのね。雅史さんがずっと一位だという事の不自然さに。これはきっと彼らの仕業に違いないと思ったわけ。


 でも私が雅史さんに直接つくわけにはいかなかったわ。そんな事をしたら私が堕天使を捕らえに来た事が一目瞭然だから。そこで私は雅史さんの事を想っている女の子、つまり遥子さんの下に降りる事にしたの。そして待ったわ。雅史さんに天使がつく日を」

「え、でも一年前からキャンディさんが佐倉についてたら、秀吉にはバレちゃうんじゃないんですか?」

「そう。だから私は遥子さんの傍にはいたけれど、雅史さんに天使がついて秀吉が動き出すまでは『つく事』を保留していたの」


 すると佐倉が口を挟んだ。


「ひどいんだぜキャンディのヤツ。現れた時は『私は天使であなたの恋を応援するために来た』とか言っておきながら、結局つい最近まで何にもしてくれなかったんだからな。一年も松岡に近付けなかったのはキャンディのせいだ」


 佐倉が拗ねるように言った。でも天使がいなくてももう少しくらい近付けたと思うんですが。


「だからそれに関しては何度も説明したでしょう? 最初から遥子さんについてしまったら、堕天使を捕まえられないって」

「あーはいはいそーですね」


 珍しくあからさまに感情を露にし、膨れっ面になった佐倉が可愛かった。


「要するにこういう事ですか? まず初めに家康に恨みを持つ秀吉が、僕をずっとモテない状態にして家康が確実に降りて来るように仕向けた。そしてその事に気付いたキャンディさんが、秀吉を捕まえるために、僕の近くにいた佐倉の下へ降りてきた。


 そして秀吉の罠に嵌まった家康が、僕の下に降りてきた。家康が僕についた事を確認すると、サッちゃんに化けていた秀吉が牙を剥いた……」


 僕はさっきの秀吉と家康とのやり取りと、キャンディさんの話から、状況を整理した。しかし。


「でも結局秀吉を阻止したのは佐倉ですよね? そこはキャンディさんの出番じゃなかったんですか?」

「そうなんだけど。だって、『雅史さんに近付いている里美という女は実は堕天使で、今まさに雅史さんを身体を使って落とそうとしている』って説明したら、血相変えて飛び出しちゃったから……」


 そんな説明の仕方って。


「松岡はオレの男だ。近付く女は人間だろうとなかろうと許さねえ」


 佐倉は拳を握り締め遠くを見ている。佐倉……何てカッコいいんだ。僕は身体を張って守ってくれた佐倉に再び惚れ直してしまった。


「しかし一つだけ分からない事がある。さっきも聞いたけど、家康、何で秀吉はあんなにもお前を恨んでいるんだ?」

「……名前や」


 みんなに見詰められ遂に観念した家康が、思い口を開いた。


「名前? 名前って何だ?」

「ワイが改名したんは徳川家康の言葉に感動したからゆう話したやろ? 実はな、そん時秀吉のヤツと一緒に見ててん」

「何を?」

「せやから徳川家康のDVD」

「え? じゃああいつとは結構仲良しだったのか?」


 隣の部屋で口も塞がれて拘束されている秀吉の呻き声が一際大きく漏れて来た。


「仲良しも何も、二人は兄弟よ」


 当然のようにキャンディさんが言う。


「兄弟!?」


 再び僕と佐倉が同時に叫ぶ。そして家康が嘆くように続けた。

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