迫りくる脅威
アメリカ艦隊護衛空母カサブランカ級11隻、防空駆逐艦6隻、給油艦3隻。計20隻で作戦投入機数は予備機も含めると総計280機にも及んだ。既に搭載戦闘機は最新鋭戦闘機F8Fベアキャットに切り替えられており、アメリカの量産性がいかに優れているかがわかる。F8FベアキャットはF6Fと比較して機体の縮小化がされていた。燃料タンクを削り何度も実験を繰り返し可能な限り小さくすることを進めた。そのため航続距離は短くなり移住スペースも若干狭くなっている。しかしその代償は次のようなパワーアップを導いた。まずエンジンが最新式の空冷エンジンに変えられていた。詳しく記すとプラット&ホイットニー社 R-2800-34W ダブルワスプの最大2100馬力と100馬力ばかり増強されている。おまけにただ単に100馬力変わったわけでなく重量はかなり減っており最大速度は40ノット(約74km/h)で上昇能力も桁外れに向上しており発艦スペースも小さくて良いといいことずくめである。ただ問題がないわけではない。先ほど言った航続距離と機内スペースもあるが最大の問題はまだ完全に馴れてはいないということである。覚えが早いものは良いが悪いものもいる。やはりコックピットも縮小されたというのが問題であろう。
「司令官殿、例の件は無事完了したそうです」その声を聞くと満足そうにカーチス・ルメイ少将こと第20爆撃集団司令官は満足そうに「わかった」と言った。
日本側はというと最新鋭機烈風を本土の航空部隊への配備をすすめていた。
呉地方の戦闘機は零戦12型・22型・32型・52型が30機。零戦43型が100機、烈風は40機であった。骨董品ともいえるような零戦12型〜32型(52型は43型とほぼ同時配備で作成機は僅か40機でこの基地には3機のみ)だがやはり歴戦のパイロットというのがいて新人が烈風に乗って模擬演習をした場合零戦に白星が上がる。それほどの技量であった。ただ速度などに関しては完敗だと言う。まあ攻撃力と運動能力が変わらないのに約4年前の戦闘機に速度を超されたら存在意義がないというものだ。
呉湾内には現在駆逐艦4隻、軽巡洋艦1隻、貨物船、海防艦、掃海艇が1隻づつと連絡艇が2隻だ。ドッグには防空駆逐艦が2隻ある。既に進水式どころか最終偽装も明日で終了である。言うならば竣工間際というわけだ。
全長100m 全幅17m 排水量1550トン
武装 長砲身12,7センチ連装砲2基4門
40ミリ高射砲単装4基4門 25ミリ機銃連単装10基10門 機関出力10万馬力
最大速力37ノット 定員73名
主砲は最大70度まで方角をあげられるものが四門。機銃は破壊力大きい大口径40ミリ機銃が4門装備されており、25ミリ機銃も10門装備している。速力37ノットと高速で航空機の攻撃から避けれるようにされている。
また敵の航空機速度を入力するとX秒後に敵がどの場所にいるかという計算する装置と、それに対する理想的な角度を指示する機械がついている。ただしあくまで歯車などを組み合わせたもので電子機器などの精密なものでなかった。大体敵の速度なんぞ分かったものでない。勿論この機械をオフにすることもできる。つまり各自の判断で射撃もできるということだ。この駆逐艦内はスペースがあるため機銃弾を相当数詰め込める他、沈没した船舶から助けを求めてくる兵員を救助した時の部屋が用意されていた。ハンモックが6畳辺り7個吊るされている部屋が3つある。感想を言うならば居住場所としては良くない部屋である。だが駆逐艦だから仕方がない。
ところで湾内でひときわ目立つ軽巡洋艦は何かと思った方がいるかと思う。これは酒匂である。先の大戦で活躍した矢矧と同等性能の巡洋艦である。
ハンマーが叩き落とされる音が甲高く響き渡る呉湾にいる兵員は後に起こる惨劇も知らず普段の日常を謳歌していた。
「重慶で不穏な動きだと?」
「はい。諜報部は重慶より不穏な動きがあると申してました。恐らくアメリカかロシアが関係していると思います」
「・・・中国め、連合国に肩入れしよって。・・・で具体的には」
「航空隊かと思われます」
「・・・わかった」それだけいうと源田実は自らが指揮する航空隊の元へと足を勧めた。自分自身が率いるその航空隊を日本最強の航空隊と自負していた。満洲や南方から戻ってきた航空隊を新鋭機である烈風で装備を固めていた。343航空隊という海軍所属の部隊でありエース保持者が多数いた。
8月20日 アメリカ艦隊が遂に星条旗をはためかせながら出港した。
「とにかく敵を落とすんだ」それが絶対命令だった。
一方重慶の方ではカーチス・ルメイが「とにかく低く飛べと口をとがらせていった」と怒鳴った。「しかしそれでは地上の砲火にやられてしまいます」という反論には「低く飛ぶんだ」とだけ言った。
日米両軍の衝突は間近に迫っていた。