激突!!史上最大の海戦=総力編Ⅱ=
「全砲門放てぇ!」18インチ主砲が敵艦に対し吠えた。目標は戦艦ミシシッピである。ミシシッピは30分前舷側装甲を撃ち抜かれていから炎上し傾斜も起こし沈没すると思われたが、奇跡的に復旧されていた。
しかし大和、武蔵から再び目標とされたミシシッピに助かるすべはなかった。多数の水柱に囲まれながら数本の火柱が立ち上った。距離2万m圏内にいる相手など大和、武蔵からしていれば的のようなものである。ミシシッピも反撃を開始し見事ヤマトに命中させたが、そこは集中防御部分でわずかな歪みが生じただけだった。ひっきりなしに砲弾が打ち続けられ、ミシシッピの装甲を紙細工のように撃ち抜き、ただただ上層構造物や舷側走行を破壊し、ミシシッピは復旧されたかいなく10発の18インチ砲弾を受けただの鉄の塊となり沈没していった。
一方アラバマの方も既に10分も前から炎上し続け生存者がいるかどうかすら疑わしき光景となり果てていた。砲戦を開始してから敵に至近弾として主砲を放っていたが、金剛級2隻の戦艦からの14インチ砲弾をまとも6発も受けた。これにより目もくらむような紅蓮の炎がアラバマから吹き上がった。マスト、艦橋、第2艦橋、煙突が半ばからもぎ取られ鉄の城というより、ただの城壁に成り下がった。これにより戦闘能力が低下したアラバマはほかの戦艦からも集中攻撃を受け、主砲や副砲は完全に沈黙していた。実はアラバマは煙室も破壊され艦内は目も開けていられないような状態となり、電気室も破壊されたため指揮は乱れ5体満足に動ける水兵はほとんどいなかった。アラバマは不定期に船体のどこかが爆発し破片を撒き散らし、動けなくなった水兵を殺傷した。アラバマの船内はいつ自分がこの爆発や破片に切り刻まれるのか怯える水兵がいる地獄の艦に成り果ててしまったのである。ただ一酸化炭素中毒で死ぬものも多かった。既に総員退艦が出されていたが、動ける兵士は5分の1もいなかった。
魚雷艇は右翼部隊は健在だったが副砲で紙細工のように装甲を次々打ち抜かれていく。唯一の高速がとりえの魚雷艇は逃げ出した。
「ヤンキー魂も大したことがないな」魚雷艇に照準を合わせている兵士は逃げ出す魚雷艇を見てそう言った。
それを測距儀でみていた兵士も同じことを思った。一時的に爽快感を味わったこの男は極度の緊張を感じた。
「輸送船らしきもの多数・・・いえ小型空母です」小型空母だァ?艦橋にいたものはウキウキとした子供のような純情な気持ちになった。
それはタフィー1・3隊である。後方で支援していたのだが味方航空機の心配をして前進し、日本艦隊も前進を続けてきたのである。距離は3万5000mであるが速度はこちらが上である。
「輸送船などと間違えるとは小型空母ということか」猪口中将が唸った。これに対し源田実参謀は「恐らく商船改造の可能性があります。鉄鋼弾が少なくなっていますし装甲はないでしょうから、榴弾の方が良いかと思います」と話した。
「方角60と75から敵爆撃機多数接近」武蔵と距離が2000mも離れていない大和は敵爆撃機からの攻撃を受け始めた。
「大和援護せよ、対空戦闘用意」伝声管を通じて報告を受けた士官の怒鳴り声が聞こえた。現在武蔵は砲撃していないので故障していないすべての対空機銃は稼動させる事ができる。俺たち弾薬補充員もさっさと移動しなくてはならない。
その時外を見て感動のようなものに包まれた。当たり前と言えばあたり前だがとんでももない数の船舶がいるのだ。勿論見方のものだ。今まで対空戦闘するとき外を見ても駆逐艦2隻しかいなかったのにも関わらずである。艦橋にいたものからいえば当然だが俺は味方の艦隊と合流したという言葉以外の証拠をもらっていない俺にはこの視界内にいる味方の艦隊が神々しく思えた。まるで無敵の艦隊のような・・・。まあさすがにそれは自分の誇大評価ではあるだろう。負けるときは負けるのだ。
艦内でも嫌というほど聞こえたが外はひどい轟音と火薬の匂いが渦巻く世界だった。急に頭がズキズキ痛みだした。12,7ミリ弾が至近を通過した時に風圧というかなんといっていいかわからないが、それだけで怪我をするのだから恐ろしい。だがすぐに俺の体からはアドレナリンが過剰分泌され痛みを忘れた。
「あっ、ほ・・・方角40度から敵機急接近。コラ12番機銃座弾幕薄いぞ」急に近づいた来た敵機(F6F)に驚いた士官が指揮棒を振り回しながら弾幕が薄い機銃員に怒鳴った。幾百のもの火の線が敵機をかすめるように通過する。毎回思うのだがこうも当たらないものなのだろうか。だが実際あたってはいないわけだ。
噴進砲が黒煙を吐きながら赤・オレンジ色の壁を作った。敵機はそれにまともに突っ込んでしまった。出てくるときにはバラバラになると思っていたが、さすが米軍機である。原型をとどめそしてこちらに接近してきた。俺はまた爆弾を至近で受けるのかと思ったが・・・搭乗員が機体よりも丈夫でなかったため、目の前の海中で大きな水柱をあけた。
「雷跡です!」その時聞こえた絶叫のような声はいまでも耳にこびりついている。