激突!!史上最大の海戦=総力編Ⅰ=
ちょと引き伸ばし厨病にかかったのかもしれません。いや、俺が物語とかを細分化しても、書く量が増えないからそう思うだけなのかな?
「阿武隈」「鳥海」「矢矧」「能大」「羽黒」の5隻は敵魚雷艇の作戦を読み取り1列で陣を組み、左翼から来る魚雷艇を撃退する事とした。ただし必然的にこの5隻も被雷する可能性が上がる。
しかし肉薄して魚雷を放ち敵を撃退するのは日本海軍水雷戦隊の日露戦争以来からの伝統である。「ジャップの巡洋艦だ。どっちの雷撃が正確か確かめてやろうじゃないか」
〇八五〇
「敵の機動部隊から水上艦艇が姿をくらましたようだ、これより再び攻撃を開始する」スプルーアンスの機動部隊は1時間半前に正規空母1隻を沈没させられ、2隻戦闘能力を喪失させられたがまだ余力がある。それにスプルーアンスはもう日本機動部隊に戦力は残っていないのだろうと判断したのである。そして決定的なことに主力・補助戦闘艦がなく3式弾は愚か対空機銃で弾幕を貼ることさえできないとした。
スプルーアンスの判断は正しく、既にこの時空母部隊は戦力をほとんど保持してなかった。F6Fヘルキャット、SBDドーントレスを差し置いて偵察用に改造されたTBFアヴェンジャーが甲板を蹴り空に舞い上がった。既に陸軍機の協力もありある程度の位置は特定できており、ほとんど動いていないことを知っていたが念には念をということである。仮に動いていたとしても水上船舶は空を高速で飛ぶこともできなければ、陸を驀進することもできない。ただ、水上を這い回るだけなのだ。
「そいつはバブルジークだ!無視するんだ」ルソン島沖で戦闘を行っているアメリカ艦隊はレーダーに移っては消える不思議な飛行機゛バブルジーク゛を一切無視することを決意した。思い返してもこのバブルジークに対応してまともな結果を出せたことは今までに一度もないのだから懸命な判断だとも考えれる。
それより深刻だったのはルソン島から飛来する日本機であった。無効もかなりの数を消費しているはずなのにどうしてこんな数を出せる。大体上陸作戦以前に輸送船を含めた大艦隊をこの海へよこす前から日本航空隊を撃滅すべく、地上の戦闘機、滑走路はことごとく焼き払ったはずだ。
「・・・するとあれはデコイだったのか」報告を聞きどちらとも一歩も譲らぬ戦闘を行っていることしかわからないマッカーサーは日本機の数がどうしてあんなに多く存在するのか考え、結論がいままで自分たちはデコイを破壊し優位になっていた気でいたのだ。滑走路も木材に色を塗ったとかそんなところであろう。実際は適当な平地の近くに機体を隠して、デコイを破壊する我々を嘲笑っていたのだ。そう思った瞬間マッカーサーの脳裏を゛敗北゛というワードがよぎった。
米艦隊は魚雷艇がハサミのように両方から迫ってくる。日本艦隊はその中心に位置していたが、巡洋艦は左翼の敵を撃滅すべく突撃していた。
「ジャップの巡洋艦との距離は何マイルだ」左翼の方で一番前に出ている魚雷艇は巡洋艦を返り討ちにする気でいた。
「13マイル!」
「よぉし目標二番艦だ!その次に一番艦を狙え!」
「発射!」魚雷発射管より勢いよく魚雷が吐き出され水面下に姿を消し白い跡を引きながら直進し始めた。連鎖的に一〇秒と立たずと他に3隻が魚雷を発射し始めた。
「敵艦魚雷発射した模様。雷跡多数」北西から不気味なほど海面に白い尾を引きながらその航跡は迫ってきた。
〇九〇〇
「11時の方角に偵察機」
「遂に位置が知られてしまったか」スクランブル発信した零戦が直ぐに偵察機を撃墜に掛かり、雲に逃げよう押した偵察機を紅の炎で染め、青空に浮かぶ雲から敵を叩き落としたのだが既に報告は終わったのであろう。
「三〇分後に敵は来るはずだ!それまで少しでも位置を変えよう」と宇垣は言ったが
「無駄なことだと思いますよ」と宇垣の言葉を跳ねのけた。宇垣は源田が視線を送っているところ見て
「そのようだな」と答えた。2人の視線の先にはC-47が2機うつっていた。
「確かに距離を取るのはいいですが、この場において無駄な弾は使用しないほうが得策だと思います」
この時スプルーアンスの航空母艦から60機の攻撃隊が飛び立ち、第2次攻撃隊35機、第3時攻撃隊60機出撃の準備をしていた。
日米両軍の戦闘機、攻撃機が空中で入り混じり空と海の両方から紅の炎と黒煙が混じり合い、戦闘と無縁の人間がこれを見たら発狂するのを忘れそのままヘナへナと脱力しその場に座り込んでしまうような光景だった。
耳をおかしくするような砲撃音、被弾する音、機銃弾が砲身を焦がしながらひっきりなしに唸る。そして常時上空からは爆音が鳴り響く。
米魚雷艇の攻撃を察していた巡洋艦5隻は回避運動を即座に行った。
「取舵45度だ早く!モタモタするな」叱咤の声が飛ぶ、ハンドルが発狂寸前の声のような悲鳴をあげながら操舵士に回される。
巡洋艦阿武隈はようやく自分が置かれている立場がわかったかの如く動き始めた。後続の鳥海と矢矧も艦首の向きをグイッと変え、さらにその後ろにいる能代と羽黒は速度を一気に減速させた。
だが予知していたとはいえ16発の魚雷が進んできている。
3本は能代の前方200mを横切った。5本は鳥海と矢矧の真ん中を通過していった。が、鳥海に3本の魚雷が接近してきた。回避運動はしていたため1本を回避する事ができた。しかし迫り来る2本の魚雷は迷うことなく横腹に突き刺さってきた。約1万5000トンの船体は揺り動かされ、魚雷の爆発によって生まれた風圧と熱によって海水は熱された水柱として鳥海に降りかかった。水兵たちは体を赤く変色させ、5名が海中に投げ出された。
「下部電信室浸水、主砲発令所で火災発生。連絡不能」
「機関室に亀裂が生じわずかながら浸水しています。」鳥海は8度左側に傾き、速力を落とし煙突以外の場所からも黒々しい煙を吐き出した。下部の部屋には有毒のガスが溢れ消化用の炭酸ガスによって身動きができなくなり次から次へと倒れた。そのガスを取り除く方法など無く、ただ伝声管を通じて艦内に有毒ガスが充満していくだけであった。
その時F4Uが鳥海を視界内に収めた。エンジンを最大にし機首を傾けると速度を増し、鳥海に襲いかかっていった。
「被雷の煙で見づらいな、どうやら魚雷艇のやつら獲物を独り占めにするつもりか」そう自分言い聞かせた。そう自分にいうことで対抗心が湧き絶対に当ててやろうという気持ちになる。
「それ!」どうして艦爆に乗らないのかが不思議というほどの正確さでその爆弾は鳥海に命中した。上下から爆発を起こした鳥海の甲板からは乗員が飛び降りた。やけどがひどいものは顔をラグビーボールのようにふくらませ顔を真っ赤にして・・・それはスイカのようであったという。
艦長などは爆弾命中のショックで床にひれ伏し体を起こすことはなかった。もはや中にいるのは重症人か、人で亡くなったものしかいないだろう。鳥海は廃墟のような姿になり、ただものが壊れる音以外何もなかった。
阿武隈は間一髪で魚雷を回避した。
「酸素魚雷装填は出来ています」反撃をしたいという気持ちよりわかりきった事を言った。
「いやまだ待つんだ!敵が2万5000で打つなら2万3000で撃て!2万mで敵が撃つなら、こちらは1万8000mで撃て!」そう言い聞かせ巡洋艦の前進をやめなかった。
「距離1万8000m」
〇九三〇
A-24、C-47、P-61などの混合編隊100機が編成され機動部隊援護のために出撃した。
その頃機動部隊上空には零戦とアメリカ第1次攻撃部隊が入り混じっていた。ルソン島から飛び立ってきて着艦経験のある者もいたため零戦が30機増えた。ただ着艦に失敗した機体もありそれで4機が失われた。後はお決まりの駆逐艦から拾われる。いわゆるトンボ釣りである。
ドーントレス爆撃機とアヴェンチャー雷撃機は全て250キロ爆弾を装備している。魚雷の命中率が悪いのと、航空母艦の甲板がそんなに厚くないためである。
即座に高角砲が対処する。むなしく味気のない花火を見せるだけでなんの対処になっていないような気がするがこれは仕方がないことだ。
そして空母の回避運動も始まる。零戦43型は敢闘するがF6Fと同等程度なのに、攻撃機が加わってしまったら取り逃がしが多量に出てしまう。30機もの攻撃機が飛び出てきた。速力300キロと60キロが空と海で熾烈な戦いを始めていた。
空からは必死に当てようと努力し海からは当てられまいと両者必死である。最初に飛龍が至近弾を受けた。千代には3発の至近弾が襲いかかり小破した。が、幸いなことに敵の攻撃による被害は僅かこれだけだった。
「よし!魚雷艇に仕返しだ!」巡洋艦4隻は反撃に移った。酸素魚雷は米軍の魚雷の速度を凌ぎ雷跡も見づらい。発射すると巡洋艦4隻は円を描くようにして航行し始めて方向を90°変えた。扇状に発射された魚雷を魚雷艇部隊は避けるすべを持ち得なかった。こちら側にいた魚雷艇は16隻だったが、各艦が扇状にはなったものだから、網のように襲いかかった。そのため魚雷艇は地獄を見ることとなった。
前も後ろも魚雷で持ち前の高速で逃げようとしても酸素魚雷の速度は速く姿も見えにくく、回避しづらいのだ。
━━━━1分も経たないうちに左翼魚雷艇は僅か4隻に減少し魚雷艇包囲網は崩壊した。
「全砲門放てぇ!」18インチ主砲が敵艦に対し吠えた。
日本機動部隊迫り来る米航空部隊。ルソン島で徐々に日本側有利に見えてくる米軍は起死回生の策を生み出せるのか。
勝敗の行方は航空兵力を撃退する事に委ねられた。