さらば金剛、怒りの砲撃
お気に入りが増えていました。文章評価とストーリー評価もまたプラスされていました。
推薦入試が後、半月に迫っています。
最終話書く前に推薦入試が来るでしょう。1週間更新がなかったら勉強に必死に臨んだと思ってください。そして10月13日には必ず更新します。
ダラダラ書いていても仕方ありませんのでとりあえず挨拶(?)はこの辺りで終わります。
リー中将はアラバマの作戦司令室でその時を待っていた。今もアメリカ艦隊は射撃を行っているが、これはほぼあてにならない。
「方角30度戦艦2隻を中心とする艦隊、さらに方角70度より敵小型艇多数!全艦速力30ノット」敵がかなりの速度で接近していることを知る。
「面舵20度、最大戦速距離2万で砲戦を開始せよ」猪口長官は被害を受けることを覚悟し命令した。
「面舵20度ヨーソロ」復唱の声が威勢よく聞こえ武蔵は針路を変更した。他の艦も武蔵を習ったかのように他の日本戦艦は砲撃をやめた。アメリカ艦隊はひたすら接近していく。
両艦隊は距離3万を切っていながら水柱が立たないという奇妙な戦闘は数分後打ち破られた。
日米両艦隊は艦首を互いに向け合うように突き進んでいる。10度ほど針路が異なるが、距離はグングン狭まる。片方が25ノット出したとしても1分間で770m程度しか縮まないが双方が対立し合って進めば、当たり前だが2倍の1,54Kmも狭まる。実際アメリカ艦隊は25ノット以上出しているのでそれを凌ぐ。
「戦艦アラバマ・ミシシッピ砲撃開始した模様」
「敵との距離は」敵艦砲撃の知らせを受けると距離を確認させた。
「距離2万5000mです。2万m入るのは3分ほどです」と敵艦と再び砲撃を交える時間報告まできた。そのときだった、耳障りなエンジン音が次第に近づいていることを全員が気づいた。日本機とは異なるエンジン音である。
「まさか、敵機なのか」翼に星のマークをつけた青い中翼戦闘機の姿が見えた。
「商戦改造空母の艦載機だな」
「長官、対空戦闘に移動しましょう」猪口長官が悩んでいると、横から口を挟むように草鹿参謀がいった。
「それは危険です。今兵士たちを外に出せば敵の砲弾が命中すれば人的損害は免れないでしょう。武蔵の機銃シールドも半端なものです。なにより敵はそれほど強力な武装は備えていないでしょう」
「ふむ。では高射砲のみでの対空戦闘を行うのはどうかな草鹿参謀」
「それなら問題ないでしょう」と草鹿は答えた。
これにより武蔵は高角砲の射撃のみとなった。噴進砲は発射時の煙が多いので候補より外したらしい。ただし対空機銃は全般が禁止されたわけでなく、艦橋にあるシールド付きの機銃座は使用されることとなった。
だが対空機銃なんぞ、そもそも戦艦が2万m無効の相手に砲弾を当てるのよりも難しい。戦艦から見て命中率が低い1%以上の確率は対空機銃からしてみれば神秘的な数値とさえ言えるのだ。対空機銃は1%という数値より何十倍も低く攻撃力も低いのだ。
F4Fワイルドキャットは小型爆弾と機銃弾の攻撃を執拗に受けさせた。武蔵にも2発が命中したが分厚い装甲と草鹿参謀の意見により被害は木甲板の一部破損ですんだ。
だが、━━━━「金剛に命中弾」16インチ砲弾が金剛に命中した。さらに仕組まれていたかの如くF4Fが真珠のように光る黒い物体を4発ほど投下させことごとく命中させたのだ。
金剛はまるで全てを諦めたかのように船体を前へ進めることをやめた。
ミシシッピ戦艦がこれを好機と見て金剛に狙いをつけ砲弾を飛ばし続けた。
「距離は2万mか?」少し声色がいつもと違う。猪口長官はそう口を開いた。
「いえ2万2000mです」艦橋の会話を遮るかのようにF4Fが艦橋の真横を遮った。さらにミシシッピの砲弾が金剛に止めをささんと降りかかる。
金剛はその時砲弾を放ったそれが最後の発砲であった。それ以後傾斜が激しく主砲が放てなくなったのだ。
「砲術長」いつもより力強い口調で言う。
「距離2万で当てれるかね?」目標は言われなかったがこの場にいる人間なら誰が聞こうとわかる。
「はい」短く答えたその声には自信が感じられた。
ミシシッピ戦艦は金剛が放った砲弾により半壊していた艦橋をえぐられ融解させられ、百人以上の人命とともに第1艦橋は完全に崩壊した。以後指揮は第2艦橋へ移った。
「艦長!浸水多量です、傾斜も止まりませんしいまだ敵の砲撃が続いています」金剛はミシシッピが放つ砲弾に次々船隊を破壊させられていく。
容赦がないアメリカ航空隊のF4Fが的がわりに至近弾で破片を飛ばし金剛を切り刻んでいく。すでに海面に金剛は横たわりつつあった。傾斜12度。排水ポンプもフルで活用させても一向に状況は良くならない。さらに老朽艦ということが災いし連鎖的に周辺の装甲が破壊されていく。
「総引退艦」━━━━ここまでか。そう言うと長官は部屋の前へ移動し、艦橋内の人間に敬礼で最後の別れをすると部屋に入り二度と出てくる事はなかった。
しかし、総員退艦の命令が出ても兵士たちに逃げ道はなく付近の駆逐艦が必死に対空戦闘を続けたかいなく7名のみが助かったに過ぎなかった。
そうした間に戦艦群は怒りを募らせ距離を縮めていた。ミシシッピは次の狙いを長門に変えたらしく、いきなり至近弾を叩き出した。
武蔵は怒りの91式徹甲弾を装填している主砲をゆっくりミシシッピに向けた。そのときアラバマがこちらに砲門を向けていた。
「どうだジャップどもめ我がアメリカ戦艦部隊がいかに強力な存在か知ったか」金剛を沈め、長門にいきなり至近弾を浴びせるという快挙をやってのけたリー中将は作戦司令室で満足そうに笑みを浮かべて、再び表情を戻して命令を出した。
「魚雷艇突撃だ!ジャップを取り囲んで大きな的にさせるんだ」2手に別れた魚雷艇は40ノットの速力で突き進んでいった。
「距離2万ですっ!」と測定係。「主砲砲撃開始」猪口中将は砲術長に命令を下す。
「方格、右に2度」精密な射撃をするため全神経を集結させた。
「全砲塔撃ち方始め」距離2万mで武蔵の砲弾はまっすぐミシシッピ戦艦めがけて飛んでいった。
「キルジャップズ!」タフィー隊F4Fはいまだ懲りもせずに攻撃を続けていた。たまに帰るF4Fがいるが、すかさず次のF4Fワイルドキャットがやってくる。さらにF4Uまでもが混じってきている。
「くたばれジャップの駆逐艦め!」爆弾を叩きつけた。
━━━━確かな手応え。後ろを向いて炎上を確認し前を向いたが、慌てて後ろを見た。パイロットはそこに零戦より大きなシルエットをした低翼単葉戦闘機を見た。次の瞬間曳光弾がコックピットのガラスを突き破りパイロットを即死させた。
「烈風見参!」そう言うと600キロの速度で次の敵を補足しにかかった。
「左右から雷跡」伊勢型戦艦の日向が魚雷に阻まれた。それは絶叫に近い声だった。
「取舵一杯」その絶叫に負けない低く透き通った声が艦橋内に響き渡った。
「長門の誇りを見せてやるぜ」長門の砲術員はそう言うと引き金をひいた。
「帝国海軍の誇り金剛を・・・許さぬぞ」同艦型である2隻は水平線に映るアメリカ艦隊を睨みつけた。
「こちらタフィー01。日本機の大編成隊をレーダーで補足しました」
「何?」リー中将が拍子抜けの声を出して驚いた。
「すぐに撃退しろ」リー中将はそう命令した。それが伊号潜水艦の゛バブルジーク゛であることさえも知らずに。
しかしリー中将の驚きはこれではなかった。なぜなら戦艦ミシシッピが一瞬のうち光に包まれ、その光がが熱を帯びた爆風、強力な爆発力に変わりミシシッピを襲っからである。
「日本の巡洋艦がさらに接近してきています」艦橋内は次から次へと変わり行く情勢の処理に追われている。
「ジャップの艦戦だ」魚雷艇は烈風戦闘機から20ミリと13ミリ弾に切り刻まれ水中へ姿を消していった。
「外ではドンパチが起きているな、ここは安全だ」俺はひっそり竹浜に返事を返した。
「だが・・・直ぐにそれが機銃弾の音に変わるさ」艦内は甲板上とは違い静寂に包まれていた。
〇八五〇
「敵の機動部隊から水上艦艇が姿をくらましたようだ、これより再び攻撃を開始する」