夜明けの銀翼
西村艦隊は夜中進路方向を東から南西に転換し小沢艦隊と一時合流するも、そのままひたすら南西へと移動した。
そのままスリガオ海峡を抜けたのは夜中の3時過ぎのことであった。そこで今度は北西方向へと向かった。レイテ島とセブ島の真ん中にあるサンフランシスコと名付けられている島を確認できる状況で現在進行中である。
〇五〇〇 草鹿参謀の意見により一時的の空襲権内、並びに敵の強襲可能領域から撤退した武蔵は各箇所の応急手当におわれていた。現在サルベルナルジノ海峡南部を2時間ほど進んだ場所にいた。
艦長などは数時間ばかりの睡眠を得ただけで敵の行動と自軍の行動に神経をすり減らしているようだ。
偵察員も気が気でないだろう。何しろいつ空や水上はたまた水面下に敵が現れてもおかしくないのだから。
〇五三〇 獲物を狩るべく黒々しい弾を腹に抱え、不気味な羽音と鳴き声を喚き散らしながら飛行する怪鳥がこの時間帯巣より飛び立った。その数や10や20ではない。総勢300の編成でどれも1000ポンド爆弾を装備している。
また戦艦2隻の弔戦を行おうとしたリー中将は武蔵が撤退したことを悟った。ただ深追いをすることはなかった。いくら化物といってもあれだけ損傷し、そして1隻だけなら航空機で十分だ、と考えてマッカーサーの上陸支援を行うこととした。
サンベルナルジノ海峡から少し離れたラゴノイ湾にマッカーサー船団はこの方面に兵士を送れば南方の兵士を包囲殲滅でき、撤退もできないと考えここに2個師団を送り込むこととした。参謀長の、上陸時の損害さえ抑えることができれば内陸に入り制圧することはさほど難しくないという意見により出来うる限りの支援をする事とした。
そう考えると上陸時間は9時として計画を幕僚たちに伝えた。マッカーサーは陸の日本兵を対峙することだけを考えた。何千機とある航空機とスプルーアンスの機動部隊に全幅の信頼を寄せて。
〇六〇〇 日本機動部隊は敵に可能な限りの損害を強いるべく攻撃隊の編成に着手していた。もはや戦闘機も爆撃機も雷撃機も消耗している。それでも20機の戦闘機と30機の攻撃機の編成隊が出来た。グアム海戦などもあり当時技量がまだ未熟だった彼らもそれなりの自身と腕がついてきている。
「己の大和魂を信じ、1機でも1隻でもいいから必ず仕留めてこい」各飛行長から精神論とでも言える命令を聞き愛機に乗り込む。ちなみに精神論など鵜呑みにしているものは少ない。精神論で敵のたまがいきなりゴム弾になったりすることはないのだ。
スプルーアンスの機動部隊は14隻の正規空母の内「ボノム・リシャール」「ボクサー」「ベニトン」「イントレッピド」の4隻を連れていったリー中将の話を聞き、敵は南部から総力をかけて攻撃をしてくるであろうと考え残りの「エンタープライズ」「エセックス」「フランクリン」「ライコンデロガ」「ランドルフ」「レキシトン」「バンカーヒル」「ワプス」「ハンコック」「レイテ」10隻の空母で堂々と待ち構えていた。
合計でまだまだ機数は700機はある。この際自軍の損失を心配してどうしようというのだ。3隻の空母から30機の攻撃隊を出し計90機を第1時攻撃隊とし、さらに3隻から同数、残った4隻中3隻も同じように運用し、残った1隻の空母を防空用に使えば大丈夫だという結論を導き出した。
早朝まだ6時過ぎに見える見える、それは銀翼を連ねた編成隊だ。翼には日の丸が映しだされていた。その数は本土に行ってもこの様な数が見れるかどうかすらわからないと言えるほどの多さだった。まだ薄暗い上空を再び漆黒に戻すかの如く何百機という機数が出撃していった。
リー中将は陸軍からほぼ同時刻に受け付けた伝聞を聞き焦り、あわててタフィー隊と正規空母「イントレピッド」「ボノム・リシャール」「ボクサー」「ベニントン」の4隻の空母から、戦闘機部隊と地上爆撃用の爆撃隊の出撃要請をした。
「空を覆う編成隊だと・・・。そんな機体をジャップの奴らはどこに・・・」リー中将の顔は青ざめていた。
フィリピン航空隊が総力を挙げ遂に飛び立った。またその三〇分ほど前に出撃した総勢300機の米軍爆撃部隊、スプルーアンスの第3時に並ぶ攻撃隊の出撃、日本機動部隊の50機の攻撃隊。
西村艦隊と武蔵の動向は?
次回「比島、上空炎上中」