草鹿参謀
連日更新やめたら9日くらいサボってました。本当すいません。
武蔵は闇夜の魚雷を神業のごとく回避することに成功した。魚雷を外してしまった魚雷艇だが敵の砲弾もまた外れ壮大な水柱を眺めた。
魚雷艇は居場所がバレたのでこれを逆手に利用し自軍の艦隊の中に引き込ませ魚雷の集中攻撃を浴びせようとしていた。
「近弾、距離300。敵艦は退避している模様」砲弾が中々正確であったことと同時に敵の退却中の報告を聞いて何人かは突き進めという雰囲気になったのだが猪口中将はすぐには命令しなかった。
敵がここまで来てむざむざ帰還するのはおかしい。確かに魚雷艇だからかなわないと思って撤退したのかもしれないが、何かがひっかかる。
「どう思う参謀長・・・」猪口は乗船していた参謀長に話しかけた。
その頃キンケイド中将の失脚を補うためリー中将はオハマ級軽巡洋艦8隻、ギアリング級駆逐艦12隻の艦隊で、暗闇のサンベルナルジノ海峡で待ち構えていた。そう今回の魚雷艇は敵をこちら側にひきつけ、さらに注目を魚雷艇に向けさせ、そこで我々が魚雷で一斉に攻撃する。そしてジャップの機動部隊と主力部隊は大量の航空機で一寸の光も刺さない海底のなかに引きこんでやる。
オハマ級巡洋艦は魚雷装備だけでも、53,3cm魚雷発射管2基、同連装2基と十分な戦力をもちわせ15,2cm連装砲2基、7,62高角砲8基、15,2cm連装砲8基の重武装だ。
堂々たる武装を備えた艦名は以下の通りである。
オハマ、メーブルヘッド、トレントン、リッチモンド、デトロイド、ローリー、シンシナティ、ミルウォーキーである。
武蔵が副砲を発砲した衝撃で俺は目が覚めた。まず第一にみたのは薄暗い部屋の天井であった。視界がぼやけていたが、それは時間の経過とともにしっかりとしたものとなった。まるで部屋の空気を読んでいるかのようなちんまりした光のなかに怪我をしたらしき者と軍医の姿が見えた。その中に俺はいた。
途端俺は頭の痛みに再び襲われた。しかし痛みは少し和らいでいるのを見ると、頭蓋骨に穴があいたということはなさそうだ。
少しして状態を起こすと軍医が「おーい」と駆けつけてきた。
どうやら俺は敵の弾丸がかすったらしい。かすっただけでも腕が飛んだりするのは怖いところだ。俺の場合正確にはかすれたのでなく弾丸が作り出す風圧的なものにやられたらしい。話のあいだに見つけた腹部の損傷は木工甲板の破片にやられたらしい。幸い爆弾は小型であり武蔵はカスリ傷で乗員に死人は出なかったらしい。俺はその爆弾の風圧で気を失ったらしい。その時2回目の副砲射撃音が聞こえた。
「艦長は臆病風に吹かれたのではないだろうか?」どこからか猪口中将を悪く言う声が聞こえてきた。逃げる魚雷艇を目の前にして猪口中将は副砲の再発砲をしたまではいいとして、追撃の命令を遂にくださなかったのである。
ただしこの考えには同調だった人物がいた。草鹿龍之介である。「どう思う参謀長・・・」と猪口が口を開いた先には草鹿がいた。南雲機動部隊に同伴していた時武蔵を選んだが、損傷してしまったため機動部隊からは離れてしまった。ただ、あちらの方は宇垣殿もいるとのことだった。草鹿は消極的なこともあり、しばし他の参謀たちと衝突することがあったためそれを避けるため武蔵にとどまったという話があるが詳細は分かっていない。それはともかく草鹿はこういった。
「間違えなくこの先に敵の輸送船部隊がいますが、これを叩くためにはまず主力にぶつからなくてはなりません。魚雷艇は恐らく誘導です。これを追撃するのは愚行です!」と半分興奮気味にまで行った。そうやら口調からして進路を北に向けたとこらへんから悪かったらしい。草鹿は自軍の損害を軽くすべく作戦そのものを頓挫させてしまう事さえいうことがある。
ともかく今回は草鹿の言い分に従うこととした。
この時1万1000mも離れていないところで魚雷艇1隻を仕留め、さらに1隻に重大な被害を負わせたことを確認できた。
夜の海で敵を待ち構えていたリー中将のところには味方の電報しかこなかった。1隻沈没、損傷という被害報告に対して敵が損傷を負ったというものはなかった。
本海戦は1時半に一度終了した。緊迫した空気の中艦長なども少しばかりの睡眠をとることができ、充血した目を下に戻せた。
次に本海戦が開始するのは6時頃であった。あの時ほど喜ばしいことがあっただろうか?