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不沈戦艦武蔵 沈み行く戦友  作者: 賀来麻奥
連合艦隊の風
63/102

グアム沖海戦=終=

 日本機動部隊は零戦43型とサイパン島より飛来した陸軍戦闘機P-38/40から鮮烈なる攻撃を受けていた。さらに機動部隊から復讐に燃える攻撃部隊が迫ってきていた。

 今の陣容は以下の艦である。

 米軍機の攻撃により艦載機はめっきり減った。

 空母「加賀」(零戦43型 26機) 損害なし。

   「瑞鳳」 (  〃  26機)機銃弾が命中するも損害なし。

   「飛竜」 (  〃  39機)整備兵に流れ弾3名負傷。  

   「信濃」 (  〃  43機)損害なし。

   「龍驤」 (  〃  10機)損害なし。

   「千代」 (  〃  14機)損害なし

   「千代田」 (  〃  9機)損害なし。 

   「準鷹」 (  〃  30機 彩雲 8機)彩雲2機破損。

   合計 零戦43型 197機   彩雲 8機

 と400機あったのが今ではほぼ半分の197機になっている。彩雲も4機が破壊されている。


 戦艦 陸奥、長門、金剛(全艦喫水線に魚雷命中。長門は右舷大破。3隻とも速力20ノット)

 戦艦「比叡」「霧島」(無傷)

 巡洋艦「摩耶」「鳥海」「青葉」(大破)

 駆逐艦 4隻損傷 15隻

 補給艦 6隻+2等駆逐艦8隻


 今でも零戦43型が60機ばかり上空で旋回している。P-38ライトニングやカーチスP-40は当て逃げ攻撃である、1撃離脱戦法を採っている。

 これから20分後くらいに攻撃隊が襲来するため出来るだけ敵の戦闘機を減らす必要がある。いかに防弾をされた零戦といえど13ミリならいざ知らず20ミリなどひとたまりも無い。

 

 若鷲は必死に急旋回で逃げる。既に弾は少ない。熟練者もさすがに他人を助ける余裕は無かった。しかし速度は幸いP-40は同等である。しかしライトニングはさすが陸軍機の双発機である。630キロの高速度を発揮できる。


 Pー40は機動性で劣るため次第に姿を消していく、おまけにライトニングは中高空域で最大機能を発揮するがこういう低空はやや苦手である。制空先頭のため零戦パイロットは低空で戦闘を行う。4000メートルでは零選に利が傾く。また稚拙ながら排気タービンがついているためある程度の高度でも威力を発揮できる。

 エースパイロットはやがて動きをつかむと500メートルまで接近させておき加速しながら突っ込んでくる敵機の後ろに抜群の旋回能力で回りこむと、200メートル前方に敵機が現れる。そこでパパパッと20ミリ弾を数発叩き込むと敵機は落ちる。7,7mmでも操縦席を狙うと敵機はやがて機首をダラリと垂らして海中に落ちていった。


 


 やがて40機いたライトニングも駆逐されて、代わりの若鷲の零戦パイロット30人といまの30人が変わったときにそれはきた。



 敵機は100機近くいる。すぐさま敵は10機ほどに散会した。日本機は追いすがる。何しろ爆弾を積んで速度が300キロ程度のアヴェンチャー雷撃機と500キロを優に超える零戦では速度差が違う。しかし10の軍団となった攻撃隊に同じく10機で攻撃したため数グループが逃げた。また他の機体も間をぬぐって逃げる逃げる。そして機動部隊に攻撃をしてくる。


 先頭の駆逐艦比叡が回避行動を始めて主砲や高射砲、副砲、機銃をところかまわずぶちかました。


 「敵機80機!!対空戦闘はじめ」しかしもう撃っている。



 アヴェンチャー雷撃機は魚雷ではなく爆弾を装備していた。空母部隊も必死に対空戦闘が始める。噴進砲や25ミリ機銃や12,7センチ高角砲がいっせいに咆哮するも、敵機は迫ってくる。

 「1機撃墜!距離1500」敵は巨体である「信濃」と「加賀」に狙いを定めた。


 

 アヴェンチャーは距離1000メートルまで接近した。信濃の艦長は冷静で機銃は距離1000メートルまで撃つなと命令していた。そして…

「右舷機銃撃てぇ」既に距離900メートルである。高度が中途半端に高い。だが爆撃にしては低い。恐らく飛行甲板を破壊しにきたのだな。そう解釈した。


 一斉に銃口から火が飛び出て大きくなる機体に命中する。頭の上にくるのは後10秒も無い。もっともそれは向こう側の舷側まで突っ切る場合の話だ。しかし対空砲火もかなりの効果である。アヴェンチャーは14機中5機が火を噴いた。残る9機は爆弾を投下した。なんと400メートル離れた場所である。


 同時に爆弾と一緒に墜ちた機体も有ったが、そんなことを忘れさせる恐怖の平気であることを目の当たりにした。それはいわゆる反跳爆弾である。


 これは対雷撃用の網が張り巡らされたダムを攻撃すべくジャンプする爆弾である。これにより対潜網は意味を無さずダムは破壊されるというわけだ。ダムを破壊すれば下流の町に大きな損害を出すことは考えれば分かる。


 それが向かってきた。強力なスピンがかかった爆弾は舷側に3発が命中した。それは魚雷に匹敵する威力がある。甲板装甲を飛び越えた爆弾は1発、甲板に直撃したのが1発あった。



 舷側装甲に直撃すると艦は軋み爆音と激しい閃光で艦長は目がくらんだ。艦の中で立っていたものはほとんどが床に叩きつけられた。さすが410ミリの装甲は2発分の衝撃を和らげた。しかし1発分はバルジと装甲の間に命中した。これはたまったものでない。巡洋艦に魚雷が命中したのと同じだ。隔壁は破られ、非常用の防水ドアを閉めた。

 しかしここで突貫工事の悪いところが出てしまった。なんと4分の1の手動防水ドアに隙間があったのだ2センチほどの穴からは海水が入ってくる。

 いそいで機体を固定して海に投げ出されないように努力がされた。甲板に落ちた爆弾は跳ね返され上空で爆発し乗員の頭に破片を撒き散らし2名を死亡させ9名を負傷させた。


 左舷に注水された。が、電気系統が麻痺した。


 「速く排水をしろ!」仕官が怒鳴ったが傾斜は激しくなった。



 数分後…加賀と信濃は大きく傾斜していた。加賀は既にいつ沈んでもおかしくないようなものでもうすぐで赤い船の腹が見える。信濃は中途半端に傾斜していて現在奮闘中で助かりそうだ。左舷に兵士が集まり必死に傾きを直そうとしていた。甲板の機体17機中8機が落ちて9機はなんとか引き止められている。



 「くそったれ」と加賀に乗っていた水兵が甲板からずり落ちた。重油まみれになった体は鈍く眠気を誘う。やがて転覆と同時に起こった爆発は救助できなかった600名の兵士を共に海の中へと引き込んでいった。

 さらにその横には上層構造物を破壊された戦艦があった。陸奥である。煙突がゆがみ黒煙が噴出していた。



 その頃俺達も機動部隊の攻撃を受けていた。制空権が取れないのは危険と判断して撤退を命じた。大和の艦長である大野竹二は頑固者の栗田と考えた結果、機動部隊と集合し一回体勢を立て直そうという考えにいたった。


 

 

 〇八三〇 キンケード艦隊は到着したのがこの時間だ。見たものは壊滅したオルデンドルフ艦隊と沈んだ日本の軍艦である。



 

 〇九〇〇 米機動部隊は36機の攻撃隊で追い討ちをかけてきた。いいかげん対空機銃弾がなくなってきた。


 挙句はて竹浜は先ほどぶっ倒れた。極度の疲労であろう。我が艦隊の大和は電気系列が半分失われている。マストは爆弾によりぶっ壊れた。マストを捻じ曲げた250キロ爆弾は降り続きそれは大和に集中した。武蔵は援護射撃で3機の撃墜を確認した。


 大和は至近弾で推進軸のひとつが悪くなり20ノットでしか航行できなくなった。


 

 俺達としては第2次となる(空母部隊を攻撃したため事実上アメリカ側は第3次攻撃)攻撃隊を撃退したが20ノットにあわせるしかない。



 こちらは進路を北に取れば機動部隊の航空援護が受けられる。緊急連絡で空母が2隻沈没したという伝聞がよこされたのもこの時間である。


 

 しかし米機動部隊は攻撃の手を緩めない。72機の(F6Fヘルキャット32機、TBFアヴェンチャー12機、SBDドーントレス24機)が爆弾と魚雷の攻撃の雨を再び機動部隊に降らせた。


 

 大本営には先ほどの第1遊撃部隊等の戦果報告と変わって悲痛な電文が寄せられた。


 ――――――-現在残残機96機 

 ―――――――駆逐艦"沼風"沈没

 ―――――――補給艦1隻沈没。1隻炎上中

 ―――――――"青葉"炎上

 -――――――"瑞鳳"被弾、傾斜8度

 ―――――――"瑞鳳""青葉"帰還停止。現在曳航中


 この後曳航されていた青葉はなぞの爆発を起こし完全に沈黙した。静寂なる海原で海水を飲み込むと機首を残して沈んでいった。


 この後機動部隊と合流した。実に10時ごろとなっていた。鮮血でデッキは赤く染まっている。スコールが時折それを流す。青々とした晴天となると1隻船が無いのに気がついた。視界が悪く行先不明になったのかもしれない。それはいわく付の戦艦陸奥だった。



 戦艦陸奥はどこへいったたのだろうか?聞くところによると漏水が生じているという話を聞いていた。漏水で遅れたところを攻撃されたのだろうか。通信設備も破壊されていたし駆逐艦もそれどころではなく一番見られていなかった戦艦である。


 距離2万5000メートルに姉妹艦を見た長門は別れるとは知らずに壊れた装甲を右舷側装甲を見せないかのように隠して航行していった。


 スコールの時点でも3万メートル程度の地点にいた。


 


 米軍側でも戦艦を撃沈したという記録・情報は無い。


 損傷を負った連合艦隊。戦況の挽回は望めるのか?

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