連合艦隊VSオルデンドルフ艦隊=2=
「主砲照明弾放てぇ」猪口中将は艦橋で怒鳴るように命令した。俺は外の観測として機銃座にいる。しかしこのシールド付機銃座は視界が悪い。おまけに敵の機銃掃射には耐えられないのだろう。証拠に40ミリくらいの穴が出来ている。なんとでかい風穴だ。
するとめまぐるしい閃光と爆音が響く。向こうの海が照明弾で輝いている。
武蔵は零式通常弾をぶっ放した。大和も続けて攻撃開始。「愛宕」「足柄」「羽黒」と11隻の駆逐艦は接近してくる。
〇七三〇 「距離1万メートル」水雷戦隊が縦陣で突っ込んでいく。しかし駆逐艦の射程距離は1万5000メートルである。こちらも同じだが敵も同じだ。魚雷を装填している船にオルデンドルフはなんということだろうか、無視をするかのごとく戦艦だけをがむしゃらに攻めてくる。キンケード中将は巡洋艦3隻と14隻の駆逐艦を率いてオルデンドルフ艦隊援護のため向かっていった。
そのオルデンドルフの指揮のふがいなさを見たら悲観したに違いない。何故ならいまだ戦艦部隊に命中弾を浴びせていない。オルデンドルフはようやく真の標的を確認したらしく射撃目標を変えた。
「左舷被弾!!」足柄に命中した。40センチ砲弾を距離1万5000メートルで受けたのだ。たまった物でない。艦の形を変形させるかのようにメラメラと炎は上がった。甲板は火の海となり水兵が消火ホースを振りかざす暇も無く魚雷発射管にも誘爆した。
―――――――足柄大破。という報告が出た。推進軸にも敵駆逐艦の砲弾が命中しほぼ漂流するような状態に陥った。もはやこの中に生きている人間がいるなど信じれない。事実水兵は飛び降りて、泳ぎ泳ぎただ泳いでいた。
しかし気づくのはおそかったっと言うべきだろう。巡洋艦は距離1万2000で駆逐艦は距離1万で放った。ここぞとばかりにもてる魚雷をほとんど放った。
この距離である。酸素魚雷はこの距離であれば49ノット出るのだ。7分とたたずに命中するのだ。酸素魚雷は跡を残さない。
カリフォルニアにそれは向かっていた。合計で10本くらいだ。他にも30本向かっている。
オルデンドルフは雷撃したのは分かったがそれがどこに向かっているのかは分からなかったらしい。
数分後、武蔵が爽叉された。さすがレーダー射撃である。夜間艦橋にたっている猪口中将は双眼鏡を手にして敵艦を睨むように見ていた。
「満潮に直撃弾大破!」新たな損害報告である。対してこちらはいまだ戦果を挙げれていない。
―――――しかし…。
〇八〇〇 それは嬲り殺しで有った。大本営にはこのような喜ばしいばかりの戦果報告が入ってきていた。
――――――敵駆逐艦2隻被雷。撃沈
――――――敵重巡洋艦大破(後に沈没)
――――――満潮転覆
――――――カリフォルニア戦艦転覆後ニ自沈セリ
――――――大和第1主砲旋回不能
――――――テネシー現在轟沈中
―-―――-敵軽巡洋艦ハ沈没セリ
――――――メリーランド中破、傾斜30度
――――――武蔵ノ射撃ニヨリ、メリーランドノ沈没ニ成功シセリ
――――――ペルシルベニア轟沈セリ
-――――-愛宕艦橋ニ被弾、艦長以下数十名戦死シタ模様
ざっとこんな所であった。
正確に言えば重巡洋艦ルイビルに魚雷が2発命中した。そこに武蔵が零式通常弾を3発打ち込み止めを刺した。軽巡洋艦はコロンビルは魚雷を右舷に4発受けるとまるで舷側装甲をはがされると隔壁を破壊され沈没していった。
さらにカルフォルニアには4発が左舷艦首と中央部に命中した。艦首は沈降し、そのまま海の藻屑として爆発を起こすなり大量の海水を飲み込みそのまま転覆した。ここまでと感じ取るとそのまま自沈していった。
テネシーは前の水雷戦隊により傾斜し停止していた。メリーランドは中破していたところを各戦艦が射撃により舷側装甲に砲弾がぶち当たった。集中砲火で火の海となり喫水はそのまま下がり続け甲板が波に現れるようになった。
これを見るなり仰角を大きく取り火薬量を減らして高い角度から砲弾を落下させた。これにより甲板がぶち破られた。
メリーランドはそのまま沈没した。
ペルシニベニアも同じく仰角を一杯取り沈没させた。ただ大和は第2主砲上層の機銃座と右舷の機銃座、高角砲は砲身を捻じ曲げられて攻撃力を失なっている。
ただ最大の46センチ砲はいまだに勇ましく咆哮している。
海上にこだまする46センチ砲を武蔵も発砲していたる艦を狙い撃ちにした。水雷戦隊で戦艦部隊の機動力を奪われて撃沈されるのを見たオルデンドルフは今現在戦艦ミシシッピに乗っていた。6隻の戦艦の中での唯一の生き残りだった。今や巡洋艦も2隻しか存在しておらず駆逐艦は四隻しかいない。キンケードの援護部隊はどうなっているんだ…と思っていたところに自分は空母部隊を護衛しに行くということを忘れていた。空母部隊からの連絡は今は無い。もっともあったところで味方の被害報告でもみ消されているだろう。
キンケード中将は自艦を走らせてオルデンドルフ中将を護衛すべくして波を割いて海上を走っていた。
その頃日本の空母部隊は。