グアム沖海戦Ⅱ
「主砲撃ち方はじめ!」1基3門中2門が火を噴き計6門が1万メートル向こうの敵に飛び掛っていった。
そしてその駆逐艦が放ち迫り来る魚雷を見つけるのに連合艦隊はずいぶん時間がかかった。
「魚雷接近!!」左舷か右舷かを言う前にその声が聞こえたときは既に避けれるような距離でなかった。主力艦ともいえる戦艦にズシンと振動が走る。船体は一度浮きあがりそして浸水が始まる。
魚雷1発ならともかく何十本と迫ってきたのだからたまらない。
まず陸奥に2発が命中した。長門には1発が命中した。金剛は浸水が止まぬ船をひきずるように動かして運よく回避した。
そして俺たちの船にも魚雷は迫ってきた。感覚的には武蔵主砲を放ったときと大体同等の揺れが船を襲いゆっくり傾いていくような感じだった。この傾く瞬間がなんとも気持ち悪く、かつ恐ろしい。2本の水柱が急に海中から飛び出てきた蛇のように伸び上がった。その蛇は大和も襲った。向こうは1本だ。
轟音が鳴り響いた。艦に浸水が発生し壁を突き破る音が断続的に鳴り響き、このまま殴りつぶされるような音が鼓膜を痛めさせる。
陸奥は右舷に3発受けたためだんだん傾斜がひどくなり現在7度傾いているらしい。幸い1度までの修復は可能らしい。長門は砲戦で舷側装甲を壊されて今回の命中はきつかったらしい。角度の修正がどこまで聞くかは知らないが速度はみるからに遅い。
大和は何事も無かったかのように浮いている。実際浸水が起きているのだがその堂々たる姿は
「1発など、どうということは無い」と言っているようにも見える。
一方こちらは艦首と右舷中央部に命中。右舷中央部のほうは特に被害は無い。ただ艦首はバルジが張られているわけが無く他と比べ沈んでいる。他の艦が左右に傾いている中武蔵だけが縦に傾いているのだ。
その頃俺たちが撃った弾は駆逐艦を捕らえていた。魚雷を放つなり逃げればいいのに居座っていたため直撃した。2隻の駆逐艦は水柱と火柱に襲われ上層構造物が砕かれた。ミシミシと万力で鉄板を圧縮するようなきしむ音がして艦橋や煙突は消し飛んだ。
火がついた甲板は凹凸が目立ち爆発や至近弾で装甲が破れ浸水を起こしている。そう長くは持ちまい。長門が放った砲弾はアイオワを捉えていた。雲の切れ目から頭をのぞかして砲弾が突っ込んできた。
煙突に1発が入り込んだ。途中で煙突の壁にぶち当たったたが角度が小さかったためそのまま弾かれ円室に侵入し缶室は内側から破裂した。
2つの缶室が浸水によりつかいものにならなくなりアイオワは速度が激減した。
味方の水雷船は何をしていたのかと思った方は多いだろう。その頃巡洋艦・駆逐艦は新たなる敵と戦っていた。それは航空機だった。もっとも小規模なもので12機ほどが3度にわたり来襲してきており今のところ被害は無い。空母は下手に損害を出しまいと対空砲しか撃たなかった。
俺たちの戦闘に加入しなかったのは米軍もこういうのを望んでいたのだろうか?答えは否。ただ単に戦艦部隊が前に出過ぎているところを狙われただけである。第三遊撃部隊は補給部隊の護衛をしていた。
この時水雷戦隊の数が少なかったのは理由がある。
「よしジャップの艦隊が勢いづく前に撤退だ」
こちらがひるんだのをアイオワがチャンスとみて撤退した。5分後アイオワ戦艦の速度は24ノットにまで減速していた。さらに伊400型潜水艦がこの時刻アメリカ潜水艦部隊に追い払われて、おまけに伊402が撃沈されていた。
「ジャップの潜水艦がいないなら好都合だ。機動部隊に頼むなりして傷ついた奴らの艦隊を痛めつつ、再び編成を組みなおして粉砕してしまえばいい」スプルーアンスは壁に向かって自分を納得させた。無論艦橋内の人物にも話しかけている。
「ジャップの水雷戦隊はどうだ」少し間が空いて
「レーダーが故障していますが…戦闘中は確認できなかったらしいですよ」
機動部隊と連絡を取りつつスプルーアンスは撤退していった。途中でオルデンンドルフ艦隊の1部が護衛艦をよこしてくれた。
アメリカ機動部隊は36機を送りつけた日本海軍は多少なる戦果を挙げつつもジワジワ損害を出していた。駆逐艦3隻中破,青葉大破。
しかし本海戦の戦況はこのとき決まりつつあったのである。
勉強合宿で脳が混乱してます。更新も遅くなりました。すいません。