血戦!戦いの咆哮
「戦艦4隻と認む!」それは戦艦コロラドと新鋭戦艦アイオワ級3隻だった。アイオワ級戦艦とは最強の巡洋戦艦といわれる。巡洋戦艦といっても装甲は太平洋戦争開戦時では戦艦の装甲の一般的な強度である。対45口径16in砲装甲である。そしてそれより一段落強い50口径16in主砲である。これは大和級戦艦の18in主砲に匹敵するといわれるが実はそうでもない。ただ今までの45口径16in砲と比べると格段に強くなっている。まあサラリといっているがここら辺の砲弾サイズの中には車並みの重量がある。それが何百キロの速度で突っ込みその中に数十キロの火薬がある。まあ尋常ではない。 そしてその船体は大和より長く細い。縦長のほうが速力が上がるのだ。そして馬力は21万馬力。これによりアイオワは速力33ノットを発揮できる。
つまり本隊が来たのだ。グアム島は地図を見れば一目瞭然。サイパン島の下に位置している。つまりサイパンから来るのはここの海域の主力といっても際使えない。
そのアイオワ型3隻とやや旧式となった戦艦1隻が目の前に現れたのである。武蔵の15メートル測距儀がクルリと回転した。これは非常に優れたものである。この距離でも300メートル以下の誤差しか無い。無論この距離ではまともに当たらない。先ほどから盛んに打ってきているようだがまともに当たっていない。やはりくる途中出くわした戦艦のように砲撃がまだ甘い。秋月と先ほどの命中はまぐれなのだろうか。
「全艦7時の方向に突撃!25ノットで突入せよ」
大和、武蔵、長門、陸奥、金剛、榛名の6隻は2万5000メートルまで接近することとした。10分ほどで付くのだがそれが何十倍もの時間として感じられた。俺は至近に弾丸がバンバン落ちているのがやはり恐ろしかった。不沈戦艦とはいえ砲撃を何発も食らえば無傷ではいられない。この時真っ直ぐ突入したのではなく斜めに入ったのはわけがある。真っ直ぐに砲撃を向くのと横向いて砲撃を受けるのでは命中する面積が格段に変わる。一定の縦長の楕円形があるとする。これを散布界とする。すると主砲弾はこの中に落ちるわけだ。その楕円形の中心に戦艦の中心部がくるように図を描いてみよう。すると横より縦に書いたとき楕円形の中に入る戦艦の面積が大きくなる。要するに敵の命中率があがるのだ。
「金剛被弾!」悲痛な叫びが聞こえた。老朽戦艦で巡洋戦艦である。一応その時代に順する装甲を強化しているが元が巡洋戦艦である。
命中箇所は後部艦橋である。どうやら着弾したのでなくかすった感じになったらしい。しかし信管が作動したのだからたまらない。爆風が艦内の上で吹き付けるのは着弾したのよりたちが悪い。もちろんVT信管である。水上機回収用のクレーンが倒れ第3主砲の上の機銃座が潰れた。後部艦橋は半分の大きさになるまで爆風や破片を受け続け見るも無残な姿となった。幸い主砲系統に被害がながった。のように思われた。しかし第3主砲は測距儀が故障してしまった。
ただ後の3基は問題ない。
「先頭艦大和、距離2万3000メートル」猪口艦長はそれを聞くとうなずいた。そして
「全艦砲撃開始!」と命令を下した。それに続くように、
「大和砲撃開始」と一報。
「長門、陸奥も砲撃を開始しました」
「金剛、榛名も砲撃を始めました」戦艦6隻が4隻の戦艦に対し砲撃を始めた。
アイオワ級戦艦はレーダーで射撃をしてくる。ただ距離2万メートル外では肉眼と同等か、ちょと上くらいだろう。
〇〇三〇 アイオワ戦艦より急襲されて30分が立った。この30分以内でお互い相手に対して有力な決定打を出していない。
そしてこの時榛名がコロラド戦艦に対し爽叉弾を出した。これは目標の艦艇に対して自分が打った砲弾がその目標艦艇を挟んだ(つまりその艦艇両側に砲弾が落下した)事である。つまり敵の位置を把握したということだ。
同時にアイオワが放った砲撃が長門の甲板に落下した。遠くより落下した砲弾は大きな角度を描く。物体は速度が速く角度が90度に近いほど威力を発揮する。この場合砲弾は大きな角度を描いている。それが何百キロという速度で落下してきたのだからたまらない。
長門の船体が大きく揺れ動き手すりが散り散りに吹き飛び、強烈な爆風で艦橋のガラスが砕けた。
幸い艦橋の人に対する被害は3人が軽傷しただけであった。艦長は反対したが部下達に押されるように指揮官室に移動させられた。
深刻なのは甲板である。艦首から約20メートルの位置にある。第1主砲の横に落ちている。ギリギリ甲板内に入ったという位置である。第1主砲塔の火薬室の横側の装甲がえぐられた。主砲弾が何本か倒れた。みなどっと冷や汗を流すも爆発しなかった。しかし被害は甚大だ。もう1発同じところに弾丸がくれば巡洋艦どころか駆逐艦の主砲でも火薬庫が爆発する危険がある。なにしろ火薬庫のギリギリの装甲が破壊されているのである。兵員の屍が散らばっている。煙がもうもうと立ち上っている。被害報告をするために見た兵士はむせ返った。
「艦長どうしますか」もう機銃弾でも危ないのである。
「やむえん火薬に注水せよ!応急処置急げ!船体反転せよ」
「船体を反転ですか?」
「そうだ片方の舷側は大丈夫だろう」
「了解しました」同時に至近弾が襲い掛かる。死地に置かれる中艦橋で正確な判断をする艦長とは偉大なものである。
戦艦榛名の砲弾は遂にコロラドを捉えた。そしてまるで訓練時のように正確な射撃が浴びせれた。左右のぶれはほとんど無かった。8発の弾丸が閃光と共に吐き出される。
そして遂に2発の弾丸がコロラド戦艦を突き刺した。さらに1発の至近弾。
「2発命中!」艦橋内は沸きかえった」
コロラド戦艦は主砲は長門級に匹敵するが装甲は金剛型に耐えれるようにしか作られていない。榛名は金剛型戦艦だが距離は現在2万1000にまで接近している。この距離から耐えれるように作られているかというと答えは否である。命中箇所は第1煙突と第2煙突の中心と第三主砲の後ろである。
煙室は破壊され第三主砲は旋回盤が破壊された。煙室が破壊されたコロラド戦艦の船内は煙が充満し始めた。急いで喚起を行う。そうこうしているうちに榛名が遠近を修正して3発をぶち当ててきた。艦橋がなぎ飛ばされ、第1主砲の砲身は無様にひん曲がった。おまけに艦首の舷側にぶち当たった。これによりコロラド戦艦は艦首が破壊され浸水が発生した。
艦橋が破壊され攻撃が削がれ艦首からは浸水がおこるという惨劇に襲われたコロラドは一気に戦闘能力を喪失した。艦橋が破壊されたため艦長がやられたという事である。
そして榛名が気息奄々のコロラド戦艦に留めをだした。この時〇一〇〇。米海軍いわくこの海戦最悪の時間といわれる。
コロラド戦艦に4発が命中した。大角度を描いた砲弾はコロラド戦艦の甲板にぶち当たり装甲を破り缶室に入ったのである。
轟!!コロラド戦艦は缶室が破損し火薬庫に火が回った。艦首に気を取られていたダメコンは消化にまで手が回らなかった。
火薬庫はたちまち大爆発を起こした。いまや浮かぶ廃墟と化したコロラド戦艦は沈没を待つだけとなった。
さらに武蔵の18in砲弾が戦艦ニュージャージーに1発命中させた。これに仕返しするように武蔵に弾丸をぶち当ててきた。俺たちはちょとした騒ぎを起こした。またもや副砲がやられたらしい。
しかしこの情報は誤りだった。煙突に命中した砲弾は煙突の上に張られている網状の装甲(蜂の巣装甲)によりはじかれて副砲の上で爆発を起こした。副砲は故障しなかったが中の兵士が損害を受けたのである。また高角砲も1基同等の損害を受けた。
俺と健太と竹浜がこれの影響で高角砲にまわされるのだがそれはさておき、大和は人的被害を除き何も損害を受けなかった。
しかし戦艦ニュージャージーは大損害を受けた。電気系統をやられたのだ。艦内は闇に包まれた。これにより1時的に射撃システムが停止した。
そして大和が危険覚悟でサーチライトを点灯した。これにより大和は的になったのと同等だが、敵艦のシルエットが浮かび上がった。
「仰角修正1度上げぇぇ」
「全門一斉射撃」
9発の弾丸が上空に駆け上りニュージャージー目掛けて落下していく。4発が戦艦ニュージャージーの甲板に落下していった。キィーと耳を劈く音と共に弾丸が襲い掛かってきた。
次に聞こえてきたのはニュージャージの叫びだった。3発は甲板層を打ち抜き火災を発生させた。そして1発は主砲後部に着弾し弾丸のエネルギーは真下に向かっていった。そのまま火薬庫に到達し爆発した。
まるで海上で火山が爆発したかのような光景だった。砲塔が吹き飛び上層物はすべて炎に包まれたのだ。こうなればダメコンも装甲もしったものではない。たちまち乗員は焼き殺された。誘爆を引き起こし火の玉が吹き出る。ニュージャージーはたちまち轟沈していった。
長門も反撃を開始。アイオワ戦艦目掛けて砲撃を開始。
かくしてアメリカ海軍最悪の1時間はこれを皮切に始まった。
あんまり長くてはいけないのでとりあえずここで一回きります。続編は近日更新します。
アメリカ海軍最悪の1時間とは?