空母を潰せ(続)
スプルーアンスをスプールアンスと癖で打ってたのか。いやいやスイマセン。小学生の頃真面目にスプールアンスと思ってたので。
「よおし上陸部隊の援護はそのままだ。上空の警戒を護衛空母に任せていま空母にある攻撃隊を空母へ送るんだ」ところで実史と変わってマリアナ沖海戦でハルゼーが指揮をとっているのは、スプルーアンスがミッドウェー海戦で敗北を喫したからだ。もちろん実史では日本の敗北だが。
ハルゼーの指示により護衛空母からF4Fが空母部隊上空で旋回し警戒に回っている。F6Fに変わって2級線となったワイルドキャットことF4Fは護衛空母で使われそれなりの戦果をだしている。なにげに縁の下の力持ちである。
さて一方日本艦隊の方は24ノットの快速でマリアナ沖へと向かっていった。白波を立てながら悠々と進む姿は防御力の軟弱さを忘れそうである。その空母に駆逐艦しかつけないというのは本当に忘れてしまったのだろうか。
「駆逐艦しかつけないとは豪気なもんだ。なんだ敵は撤退したのか」空母搭乗員はこの編成に疑問を持ちながら任務に邁進していた。
試作零戦を初めて零戦22型が上空できたるべき敵をいまかいまかと待ち構えていた。突如スコールに襲われた。米軍攻撃隊約300機は若干あやふやのままレーダーで確認されている空母を攻撃しに行った。
編成はF6F64機 F4U64機 SBD64機 TBF120機で魚雷の命中率が10%と仮定した場合は命中数は12発で、空母1艦づつに4発で沈むと計算した場合3隻沈没という計算となる。おまけに爆撃機も付いているため最低でも2隻は沈没か戦闘能力を失うとしていた。
「ジャップめこれで終わりだ」
零戦は高度6500メートルを哨戒していた。その500メートル下の6000メートルという低空をアメリカ攻撃部隊は飛行していた。そしてスコールに悩まされながら米軍はレーダー情報を頼りに進んでいた。そのため偵察という航空機に乗る上で基本的なことを忘れていた。無論日本機もスコールに包まれた味方艦隊からあまり離れないようにと必死だったが、見つけて行動するのは日本の方がさきだった。
スコールが弱まった頃にいきなり斜め前方から日本機がアメリカ機に突っ込んでいった。いきなり20ミリ機銃弾などを撃ち込まれたアメリカ機は反撃しようとした瞬間に雲が明けて、太陽が日本機の後ろに現れたために見にくくなった。頑丈なグラマンが数発で吹き飛んだ。さすが急降下爆撃機のSBD、そのまま海面へ急降下していった。
F6Fが高速で零戦に射撃を加えると零戦は燃料を吹き出した。その白いを線を引いている零戦めがけて、射撃を加えると炎を吹きあげて無数の破片となりて落下していくのだった。またF4Uは戦闘爆撃機だ。小型爆弾をもったいないが捨てて戦闘に参加した。この時日本機は4隻の空母に全て零戦(少数の偵察機)をのせていた。総数は約300機だ。それを150機上空に飛ばしていたのだ。そうするとアメリカはF6FとF4Uを合わせると128機と少ないではないか。上空での異変に気づいた日本機動部隊は対空戦闘を準備してさらに24機をとばした。上昇力は対戦初期世界水準を上回っていた。その持ち前の上昇力である程度の高度で待機していた。
上空ではロケット弾や機銃弾が交差して1機1機とどんどん落ちていくのであった。しかし操縦士の技量は日本の方がやや上だった。攻撃が来ると思った頃で旋回してかわす。隙を見て20ミリ機銃でダダッと短く撃つと機体が横滑りしていると当たらないが、真っ直ぐ飛んで言うときはキレイに当たった。20ミリ弾は数発でアメリカ機を消し飛ばした。
「ジャップの艦載機で手間取っているのか。よし第2次攻撃隊と飛ばせろ。魔女(F6F)を飛ばして日本海軍を海底に沈めさせてやれ」
今度は120機が向い、第3次として32機が甲板上で用意されたいた。サイパン攻撃にも出しているため最大の航空兵力を運用していた。その時だった。レーダーで無数の影が写った。
「日本機襲来!数50!」報告員が慌てた。
「畜生!天に救われたのか」海面を這うように日本機は襲来してきていた。F4Fが襲いかかる1式陸上攻撃機と銀河爆撃機は編成を崩さず後部機銃から必死に発射される。旋回機銃は固定機銃に比べ7分の1しか当たらないのだ。しかし後部銃口は合わせて80程度になる。つまり11モンの固定機銃が後ろに向かって射撃している状態だ。後ろから攻めたF4Fが火に包まれる。後ろからの攻撃を諦め横から攻撃した。1式陸上攻撃機は横にも機銃座はあるが銀河爆撃機は無い。後ろに比べ迎撃力は半減した。
「指揮官機被弾」見ると蜂の巣にされた機体が見えて爆発した。
戦慄が走る。とにかく早く空母について欲しいとのものだった。その時だった。
「敵が見えた」見ると下方に空母が。とたん猛烈な対空射撃が行われる。しかし皆は一斉にかかった。巡洋艦、駆逐艦、空母が一斉に射撃をする。散開しながらひたすらかかる。雷撃体制に入る。
F4Fはもう追ってこない。あとはこの弾幕を抜けるだけだ。ある機体は風防ガラスが割れ破片が光りながら機内へ入り、冷たい風が吹き掛かる。または翼をもがれロールして墜ちる。さらに高射砲がきれいに命中し四散する。味方機が横で機銃を無数に受ける。この時間が乗組員全員には永遠に感じられた。燃料が白い線を引いて漏れ出して空中を流れる。火の海に突っ込むという表現をしたらちょうどいいだろう。
「距離800メートル」「テェー(撃て)」魚雷が投下され機体が浮き上がる。爆弾が空母の甲板に落ちる。帰りの燃料がないと考えたパイロットは自爆を考えたが、なんとかして帰ろうと考えた。が自爆したのもいた。米軍からこの行為を〟バカ・コリジョン〟(馬鹿な特攻)と評された。
銀河や1式陸上攻撃機は攻撃を終えると一目散に逃げた。防空巡洋艦レノは250キロ爆弾が主砲の火薬庫にきれいに命中して瞬時に爆沈した。駆逐艦にも600キロ爆弾が命中した。6分の1にも満たない排水量しか持たない駆逐艦に同等の爆弾が落ちたのだからたまったものでない。
攻撃隊が攻撃したのは軽空母が多く「カボット」と「プリンストン」という1万超えの空母が2隻沈没した。バンカーヒルは沈没はしなかったが魚雷が命中して左に傾斜して残ってた艦載機がずり落ちた。 悲劇にあったのはヨークタウンⅡだろう。爆弾が火薬庫に命中してさらには魚雷が3本命中した。そして唯一の成功した特攻機が艦橋に直撃した。さらに魚雷命中と同時に電気系統が破壊された。これでは排水が素早く出来ない。そして火薬庫が誘爆する危険があり乗員はなすすべなく退艦した。
そしてショッキングなことに猛将ハルゼーは死亡した。ウィリアム・フレデリック・ハルゼー・ジュニアは、太平洋戦争において米第3艦隊司令長官として日本軍と戦った。機動部隊の指揮官の一人で有名だ。それが今死亡したのであった。
一方の日本空母は雷撃機の攻撃を交わしたが翔鶴が被爆し、火災を起こしていた。それを目掛けて雷撃機が殺到する。2発が命中した。バルジを持たない空母は雷撃に弱い。そして鉄鋼爆弾を受けて甲板を破壊されてそのまま火薬庫にまで火が回った。数分後沈没。第1時攻撃隊が引いたとみるなり、撤退を開始した。その後航空機の攻撃は零戦で跳ね返した。しかし潜水艦は跳ね返せなかった。
駆逐艦浜風に向かい白い跡が向かっていき回避できなかった。航行不能に陥り結果沈没した。
そして一七〇〇夕焼け空を眺めて哀愁を帯びた目で整備兵は周りに物に聞いた。
「銀河や一式陸攻はまだこれしか帰ってきてないのですか?」
「そうらしいな・・・」夕焼け空を見つめてそこのパイロットはタバコを吸った。吐いた煙が上に上がっていく。
「だって・・・53機あってんですよ・・・」整備兵は鳴き声で話しかけた。
「分かってるさ・・・」パイロットは未だ帰らぬ勇者達を思い浮かべて帰ってきた穴だらけの7機の機体を眺めた。
だれかが男散るならを歌いだした。
♪鉄砲玉とはおいらのことよ
待ちに待ってた出征ださらば
戦友よ笑って今夜の飯は
俺の分まで食ってくれ
この日以来帰って来た7機の銀河と陸攻を除き帰ってきた機体は無かった。やがて夜となり星がきらめく。戦友よ先に行かないって約束だったじゃないか。感傷に浸ったが十分な時間は残されていなかった。