水面下の艦隊
〇五〇〇 漆黒の海は波の音だけが聞こえ何か恐ろしささえ感じさせる。その中を通る日本艦隊があった。伊号400型潜水艦6隻だ。
「そろそろ敵の哨戒網に差し掛かるぞ。ハッチ閉めろ。バラスとタンク海水注入」伊号400の艦長日下敏夫中佐の命令によりバラストタンクが開かれ海水が入ってきて6隻は水面下へ姿を消した。
「深度50メートルまで沈下せよ。その後は最大速度で進路そのままで進め」
伊号400潜水艦型潜水艦はサイパンの希望をのせて進んでいった。
〇六〇〇
「ジャップの猿どもに空から正義の鉄槌をくらわせてやれ!」ハルゼーがエセックス空母の甲板上で堂々と仁王立ちして高らかに怒鳴るようにパイロットに言った。
話が終わるとパイロット達は敬礼し愛機に走りこみ爆音をなびかせ上空に舞い上がり編成を組勇ましく日が少しで出だした空へ勇ましく向かっていった。その数300機。
〇六五〇
空がやや明るくなり陸軍の起床のラッパが既になり終えたころに電探が大量の機体を確認した。尋常な量ではない。さらに偵察機が「セ」連送を行い消息を絶った。「セ」連送とは「我戦闘機に攻撃されている」と言ったようなもの略である。
これをききすぐさま150機の零戦が飛び立った。100機が飛び上がったころ偵察員が悲鳴を上げるように報告をした。
「200機以上の敵機が向かってきます。4時の方向です!!」空が黒く染めらいるところがある。まるで黒雲が向かってきているようだ。その黒雲は次第に太った蝿のようなシルエットに青い色に染められた機体であるのが分かってくる。
「対空戦闘用意。各員配置に付け」陸上では塹壕陣地で機銃を空に向けて睨む兵士、高射砲をぶち込んでやるといわんばかりに気合が入っていると分かるものなどがいた。
やがてそれは双眼鏡をしなくても分かる距離まで来た。同時に日本の零戦がこのときようやくやってきた。
零戦22型の操縦士高杉上飛曹は一番槍といわんばかりに敵の編成に突っ込んでいった。巧みな操縦で相手をひきつけなかった。そして相手が少しでも隙を見せれば一連射した。すると垂直翼と予備翼が付け根から消し飛んで、なおかつ主翼のフラップが損傷し安定性をなくして落ちていった。1機撃墜だが
それどこではない。高杉は機体を前倒しにした。するとオレンジ色の閃光が頭の上をかすめて1機…2機…計4機のグラマンが自分の前に出てきた。攻撃が失敗したためグラマンは列を乱して散会した。
高杉はこれが非常に癪にさわり左旋回で1機にむかい20ミリ機銃を30発打ち込んだ。見事五発が命中しグラマンを無数の破片とした。
しかし高杉のような凄腕はほとんど機動部隊でありもちろん3流操縦士がいた。そういう操縦士は目の前の1機を狙っていたところをダイブしてきた他の敵から操縦席を狙い撃ちにされ回転しながら落下していった。
そしてドーントレスとアヴェンチャーは少数の零戦に追い回されながらも陣地攻撃を始めた。250キロ爆弾がバラッと小石のように落とされる。高い音と共に爆発音がなる。対空機銃や高射砲が唸る。しかし1秒間に150メートル近い速度で突っ込んでくるのだから中々当たったものではない。
その後第2次攻撃隊300機も出てサイパンの航空兵力は事実上壊滅した。サイパンの兵士の死傷者は1000名にも及んだ。これに対し米軍の損害は航空機200機とこちらの損害も膨大だった。
〇七〇〇 スプル-アンス率いる艦隊はサイパンに対し艦砲射撃を行った。機動部隊にやられて味方の艦隊がきたと住民は最初喜んだ。が、それがこちらに向かい発砲し近くに海岸に着弾したとき住民はあわてて逃げた。
〇七一〇
「おい上陸に間に合うんだろうな」
「うるせぇな。じゃあお前が操縦するのかよ」
米軍は上陸時間を8時ごろとしていたがまだ味方の艦隊が見えない。
「はぁ。たっくもぉ」不機嫌そうな兵士は缶詰のスパム(豚肉)の蓋を空けようとした時だった。腹に響くような轟音と共に船体が大きく揺れ動いた。
「おい。ふざけんな岩にでもぶつかったかよ」缶詰を投げ飛ばして怒鳴った。するとその缶詰が右側に転がりだした。そして自分も壁に倒れ掛かった。
「ジャップの魚雷だ!」一人が叫んだ。
「何っ!!どこからだ」米軍兵士が右往左往しているときに再び轟音が聞こえた。となりの船からだ。
あわてて護衛の駆逐艦が爆雷を投下するも当たらない。すると今度はその駆逐艦が雷撃された。
「駆逐艦をつぶして悪いことはあるまい」輸送船と戦艦・空母を中心とし撃滅せよという命令だったが
日下敏夫艦長は護衛艦こそが潜水艦の真の敵として考えていた。
伊号400、401、403、404は存分に暴れ周り米軍輸送船団オーストラリア経由の船団を駆逐艦2隻撃沈し、輸送船を30隻撃沈した。
伊号405は晴嵐にアルミ製のものがついた紐のようなものをつけながら3機の晴嵐が飛来させていた。これは米軍のレーダーに複数の敵機がいると思わせるためである。
1機に付き10機分の誤情報がでるため30機の機体があわられた事になる。ハルゼー機動部隊はこれを見るなり90機の戦闘機を飛ばした。
晴嵐は数分後着水し潜水艦へ速やかに直されその海域を離れた。
伊号406も同等のことを行い90機が同じく向けられていた。
ハルゼー機動部隊は向かうと10分程度して消える航空隊に何か君の悪いものを感じていた。ハルゼーはその海域に今度は200機の編成部隊を飛ばした。だいぶ癪に障ったらしい。
山口多門がその時レイテ島の航空部隊にある命令を下した。
伊号400型の6隻による上陸作戦の妨害は果たして成果を収められるのか。山口多門が出した命令とは。