米機動部隊の襲撃
爆音が甲板上に鳴り響きながらその甲板を蹴り飛ばしながら青い色で覆われわれいかにも力強いエンジンを搭載していますといわんばかりのズングリとした機体がみかけによらず勢いよく空に舞い上がり編成を組むヘルキャト60機。その特徴的な翼を見れば誰もが分かるコルセア36機、そして太平洋戦争で日本軍艦をボコボコ沈めたアヴェンチャー雷撃機60機、第二次世界大戦の殊勲機として、急降下爆撃機や偵察機として第二次世界大戦のほぼ全期間において運用されたSBDドーントレス爆撃機60機の合計216機が日本機動部隊目掛け空の向こう側へ飛んでいった。
そのころ日本艦隊は航空兵力を消耗したものの未だに母艦は無事だったため敵に対する再攻撃の準備に着手していた。そして既に「加賀」「瑞鶴」「瑞鳳」「蒼龍」「飛龍」の五空母の甲板上には合計で30機ほどの零戦と彗星爆撃機が24機天山が12機翼を広げていた。軽空母「龍驤」から防空のため20機の零戦が上空で旋回し、彩雲が偵察として先ほど出撃した。
小沢は自らが生み出したアウトレンジ戦法の失敗を悔いた。これは日本艦上機の航続距離の長さを生かして、敵の届かない距離から攻撃するとの物だった。こうすれば敵は我々に手をだせない。
しかし母艦の位置が正しくつかめなかったりなどの弱点がある。おまけに敵の対空迎撃によって多くのベテランパイロットが死亡しているのだ。
時間は戻らない…。それより次の攻撃のために全力を尽くすまでだ。迎撃用の航空機をこれ以上は割くことは出来ない。そのために戦艦部隊でがっしりと機動部隊を守ることにしたのである。
「長官。第2時攻撃隊の準備いつでも出来ますよ」部屋に報告に来た男が扉をあけるまで小沢はずっと空を見ていただろう。
「よし敵空母の位置は確認できたか」
「はい先ほど偵察機が敵の位置を確認しました。ここから真東に1500キロ離れているそうです」
「そうか…」小沢は考えたまたアウトレンジ戦法をするかしないかだ。…いや答えは決まっていたのだ。
「いや東に進路向けよ。距離1000キロメートルまで接近してから攻撃隊を発進させよ」
「1000キロメートルでございますか。了解しました」男は敬礼をして扉を閉めると慌しさを感じさせる速さで艦橋の階段を下りていった。
「…まさかと思うが撤退なのか」
「そんな訳けないだろ」
と俺の問に竹浜と健太が口をそろえて答えた。なんで息ぴったりなんだ。同時で言ったのが面白かったのか笑いながら「敵と衝突するから頭数が足りないんだよ」と竹浜が言った。
「そんな訳ないだろ」と若干の笑みを浮かべて俺と健太で答え笑っていた。何も知らないまま。
「ようジャップの戦闘機はどうしてあんなに脆いんだ」
「さあな木材で出来てるのかと思ったぜ、人命をどこまで粗末に出来るのか競ってんだろ」
「ハハッ。ストライキでも起こせばいいのにジャップは生きているという事がわからないらしいな。よしじゃあ生きているか分からない猿どもに死と生は違うと教えてやれ」とアヴェンチャー雷撃機でレッチャーとマルクがげらげらと笑った。戦闘の緊張をほぐすためにはこういう会話が大切だとマルクは考えていた。
一四二〇 戦艦や巡洋艦、駆逐艦が輪型陣で空母を守りながら勇ましく東に進路をとり向かっていった。
爆音が空中に鳴り響く。ブゥゥゥ…と耳を澄ませば聞こえてくる。
「前方から敵攻撃部隊200 距離6000 二百機」甲板上で並べられていた零戦が慌しく浮き上がる。攻撃機はエレベーターで下に戻される。間に合わないのは空中退避白との命令が出た。前方の駆逐艦では対空射撃が始まった。
一定の感覚で放たれた機銃の音が聞こえる。それに対してアメリカ機も一定の間隔でプロペラを回す。それは日本機も同じだ
「1番、4番副砲 仰角30度 3式弾砲撃開始!」武蔵では副砲の砲に仰角が変えられ不気味な音を出して日本の高性能60口径の砲から15,5センチ砲弾は飛び出た。
他の艦隊からも続々と対空砲が打ち上げられる。向こうの空が黒く塗りつぶされたかと思うと赤い炎に包まれながら6機ほどの機体が落ちるのが偵察員は見えたという。
「敵60機!こっちに突っ込んでくるぞ」偵察員が悲鳴の声を出した。「総員対空戦闘開始」
パパッと赤い閃光がきらめく。炸裂音と共に空中に赤い花が咲く。
機銃がものすごい音を立てながら撃ち始められた。
「砲角40度それ2番機銃撃て!」
「6番機銃弾幕が薄いぞ!」あいかわらず指揮棒を振りながら指揮官は甲板を動き回る。
オレンジ色の閃光が俺のすぐ横の艦橋の壁に突き刺さるように撃ちこまれた。くそったれと思いながら睨みつけると、味方の機銃弾が10発ほど数秒の内に命中し武蔵の目の前に高い水柱を生み出した。
一方上空では零戦が死闘を繰り広げていた。しかし数はやや同数で機動性では引けをとらない。7,7ミリ弾で数人のベテランパイロットが風防を狙い撃ちにする。その機体はそのまま飛んでいったり、機首をガクリと下げると墜落していった。
12,7ミリ機銃が邪魔なほど撃たれ日本機が墜落しおかいしといわんばかりに20ミリ弾がグラマンに吸いこまれると木っ端微塵に消し飛んだ。
「右10度 敵が来るぞ 撃て撃て撃て」空母「蒼龍」「飛龍」にアヴェンチャー雷撃機、ドーントレス爆撃機雷が突っ込んでくる。
「ジャップの四角い木製飛行甲板に落とせ」と爆撃機のパイロットが言うと一斉に爆撃体制に入る。500ボンド爆弾が木製甲板に叩き落されると蒼竜は悲鳴を上げて甲板がめくれあがった。対空機銃がそのためか弱まった。
「左舷雷跡4本」魚雷が4本接近してきた。
「面舵30度 回避したら元に戻せ」艦が回る。しかし30ノットの速度を出していたのだ。急速な回避など出来ない。1本が左舷後方に命中した。
金属が叩かれる音が連続で聞こえる。海水が入り込んでくる。
「後方のエレベーター破損」「機関室浸水!」被害報告が入ってくる。
斜角計の針が動く。1度、2度、3度…9度のところでとまった。
「まだ大丈夫そうだな」と艦長が呟いた瞬間、右から魚雷が迫ってきた。「しまっ・・・」完全に言い終わらないうちに立て続けに4本が命中し水柱をあげた。
「のわっ」バランスを崩し艦橋の床に倒れ伏す。船は40度右に傾いた。1分後無数の破片となり消し飛んだ。
飛龍は爆弾を2発落とされたが比較的被害は軽かった。
一方俺達のほうは100人が死亡・負傷したが魚雷の命中なく爆弾が主砲で弾かれただけに終わった。
攻撃は終了した。零戦40機撃墜されてコルセアから重巡洋艦羽黒に2発に駆逐艦陽炎に3発が命中した。 羽黒は攻撃力が下がることは無かったが。陽炎は火災がとまらず火薬庫まで火が回りそうだった。いつ誘爆してもおかしくないため乗員は他の駆逐艦から救助され陽炎は雷撃処分された。
200機の攻撃機での損害は 空母「蒼龍」沈没艦長以下全員死亡「飛龍」小破
重巡洋艦「羽黒」小破
駆逐艦「陽炎」沈没
零戦40機 天山8機 彗星9機(艦内で破壊での含む)
ここに第2次攻撃隊は事実上壊滅した。
航空兵力を大幅に消失させた日本機動部隊。
第2次攻撃部隊が出撃不能になった。