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【星間戦争SF小説】星よ、敵を照らせ ――盟約は恩讐を越えて――  作者: 藍埜佑


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第七章 昇進

 カンナエの敗報は、帝国の軍事的自信を粉砕した。


 元老院は混乱し、軍部は責任の押し付け合いに陥った。辺境の三十八隻に百五十隻を壊滅させられた。その事実が、帝国の根幹を揺るがした。


 セリア・スピカが遠征艦隊司令官に推挙されたのは、そのような空気の中だった。


 二十歳。元老院の軍事委員会の公聴会で、彼女は長いテーブルの向こうに座る老人たちの視線を受けた。テーブルの表面に、前の発言者がこぼしたコーヒーの染みが乾きかけていた。


「若すぎる」


 委員長が言った。


「女性に大艦隊の指揮は荷が重い」


 別の委員が付け加えた。


 セリアは椅子に座ったまま、テーブルの染みを見ていた。小柄な体が、軍服の中で一瞬だけ硬くなった。


「私が若いのは事実です。女性であることも事実です」


 声は静かだった。


「しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 委員たちの目が動いた。


「カンナエの戦闘データを完全に分析し、彼女の戦術思考の構造を再現できる者が。彼女の次の手を予測できる者が。年齢や性別ではなく、勝利を求めるなら——」


 セリアは間を置いた。


「私に賭けてください」


 採決は僅差だった。だが、他に候補がいなかった。


 セリア・スピカ、遠征艦隊司令官着任。二百隻の帝国艦隊を率いて、カルタージュ連合との戦争の指揮を執る。


 着任の日、セリアは自室で端末を開いた。匿名の学術フォーラム。かつて量子戦術論を議論した相手のアカウントは、何ヶ月も更新されていなかった。


 自分が最後に送ったメッセージ。


〈技術が追いつかなければ、理論は墓碑銘だ〉


 技術は追いついた。そしてカンナエで八万人が死んだ。


 セリアは端末を静かに閉じた。


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