ワン・ソード 後編
「ユリスーそのボタンは、絶対に押すな!」
「え?よく聞こえない?」
僕達は、数件のクエストを終え今、未開のダンジョンに来ていた。まさか、ユリスが適当に書いた地図に本当にあるとは思わなかったが...後でマリーさんに聞いた話だがそういうものを感じ取れる人もいるらしい。
今はユリスが、サポート役、僕が実行役で探索中だ。だが、ユリスに入口で待っていろといったんだが、なぜか入ってきていた。距離は、50メートルほどある。
「まっすぐ帰れ。」
「なによ!邪魔者扱いして。」
ユリスがこちらに来ようとした時に何かにつまづき壁にあるボタンを押したように見えた。その瞬間床がなくなった。
「うおーー!!!落ちるー!!」
僕は、持っていた鉄製の剣を壁に突き刺そうとした。ありえないほどの火花がでている。なんとか柔らかい部分に刺さった。
「ごめん!大丈夫?」
ユリスは心配そうに見ている。
「この状況が、大丈夫そうに見えるなら...。」
「ロープ持ってくるね?」
「まって!ユリス僕を当てないようにファイアーボールをうてる?」
「うてるけど?やるの?」
「ああ、深さが知りたい。」
「じゃあ、ファイアーボール。」
小さな火の玉がこちらにやってきて僕の足元で消えた。どうやらあのまま落ちていてもそこまでの怪我はしなかったようだ。
「ユリス、ロープ持ってきて。」
「うん。...ごめん。ホテルに置いてきたみたい。」
「なぜ、置いてきた。」
「...貴方を縛って、びっくりさせようようと思って。」
縛ってはないが、びっくりはしてるよ。とりあえず僕は、恐る恐る床に降りた。どうも奥に続く道があるようだ。
「ユリス、マリーさんに魔法で連絡取ってきて。僕は、このまま少し進んでみる。」
僕は、ライト代わりに封魔剣を発動した。
「わかったわ。私の連絡できる距離まで少しいかないといけないから20分程度待っててね。」
僕は、ゆっくりと500メートルくらいある細い道を進んだ。そこには、とんでもないくらい装飾された宝剣が置いてあった。
「すごいぞこれ。」
「少年、ユリスちゃんから聞いたけどどうしたの?大丈夫?」
頭の中で声が聞こえてきた。
「マリーさん。すいません。とりあえずマリーさんのいるとこまで移動させてくれませんか?」
僕は、お宝を掴んだ。
「オッケー。もどすよ。」
そこには、ホテルでくつろぐマリーさんがいた。こちらの方に用事があったと言うことで僕達も一緒にくっついて来たのである。
「ユリスは?」
「ユリスちゃんは今こっちに来てるよ。まぁ、もうすぐつくと思うしここに移動はさせなくても大丈夫でしょ。それより少年?私との約束破ってるよ。」
「約束?」
「ほら、ここに連れてくる条件忘れたの?二人きりのときは...。」
「え?あー言わないとダメですか?」
「言わなかったら元のとこに戻すよ。」
流石にそれは困る。
「...マリーお姉ちゃん。」
「きゃーーわいい。少年ぎゅっとしてあげるね。」
「マリーさん、ちょっと離れて下さい。」
「少年...間違って火口に戻しちゃうかもしれない。もっと親しげに呼んで。」
「...マリー姉ちゃん。」
「もっと上品な感じで。」
「...マリーお姉さま。」
「もっと短縮して。」
「...マリー姉。」
「いい。でも最初のが一番しっくりくるかな。」
「...マリーお姉ちゃん。」
「少年。きゃーーわいい。」
色々まずい。マリーさんの色々なとこが当たってる。
「少し離れて下さい。マリー...お姉ちゃん。」
「離れないとダメ?」
「はい。」
「仕方ないなー。ん?っていうかなに持ってるの?」
僕は、ダンジョンで見つけたお宝を見せた。
「ダンジョンの中で見つけたんですけど。」
「これなかなかすごいわよ。もしかしたら国宝になるかも。」
そのもしかしたらだった。その後マリーさんの知り合いに調べてもらったが価値で言えば十億円はくだらないらしい。例のごとく博物館入りとなった。当然ユリスには、内緒にしてある。一応リース料は貰えることになったが、年100万程度である。次の日に準備を整え再度ダンジョンの中を探し回ったが何も見つからなかった。結果としては、ユリスがあのボタンを押さなければ見つかってはいなかったのであった。
ちなみに、汗だくになって帰ってきたユリスが実はマリーさんに抱きつかれている僕を見ていて、次の日の朝起きたらホテルで縛られたまま事情聴取が始まったのはまた別の話である。
僕とユリスは、とあるクエストが終わった後、マリーさんの家に向かっていた。
「ねぇ、あなた最近も変な夢って見るの?」
「何だよ急に。もうみないよ。」
「ふーん。で、マリーさんに何の用なの?また、抱かれにいくの?」
僕は飲んでいたジュースを吹き出した。
「その言い方は、誤解を生むからやめなさい。」
「君は、マリーとそんなところまで...。」
「先輩...まさか。うわー嫌だー!。」
振り返るとミリアさんとセインくんがいた。既に誤解を生んでいたようだ。
「あの、誤解ですから?」
「そうよ誤解よね。朝まで同じベッドで寝るなんて誤解よね。」
「わ...わた...私はその少し早いと思うんだが、君もその何というか健康にはお気をつけて。」
ミリアさんは混乱していた。セインくんに関しては、気絶していた。
「ミリアさん、そういう関係じゃあないですから。ユリスもお願いだから話をややこしくしないで。」
「分かったわよ。ミリアさんも気をつけてくださいね。気づいたらベッドの中にいるかもしれませんよ。」
「...君は、怪談みたいだな。」
「ところでミリアさんとセインくんって珍しい組み合わせですね。」
「ああ、マリーに用事があってな。そこでばったり会ったんだ。まあ、もう一つ用事が増えたがな。」
僕の方をミリアさんは長々と見つめてきた。
「本当に何もしてないですから。」
そうして僕達は、マリーさんの家に向かった。
「マリーさん、お久しぶりです。」
僕は、玄関の扉を叩いた。マリーさんは勢いよく扉を開けた。
「ん!少年。何の用かな。それに忘れてるよ。二人きりのときは...。」
マリーさんが、凍りついた。
「二人きりのときは何なんだ?マリー。...君達は、少しここで待っててくれないか?マリーに話があるんだ。」
あの闘技場でみた顔だった。マリーさんが連れて行かれ扉は閉められた。そうこうしていると頭の中から声が聞こえてきた。
「少年!どういうことよ。ホテルでのこと何でミリアが知ってるのよ。うにゃーー!」
どう言えばいいんだろう。
「ユリスが変なこというからだろ。」
「私は、事実をいっただけよ。」
「まあ、ユリスがホテルでみたのは事実だけどその勘違いだよ。」
「何が勘違いなの?」
マリーさんから再び声が聞こえてきた。
「何となく事情は、分かったわ。よし回復魔法を徹夜でかけてたってことにしましょう。いいわね?」
「はい。...あのさユリス回復魔法を徹夜で実はかけてもらってたんだよ。」
「ふーん。お姉ちゃんっていいながら?」
そこも...聞いてたんだね。初耳だよ。
「お姉ちゃんっていってたのはさ...。」
「少年、私は酔っぱらっていた。これでいきましょう。」
「そのマリーさん酔っぱらっててね。その回復魔法を使うまでに時間がかかったんだ。」
「ふーん。」
しばらくするとミリアさんがでてきた。用事は、終わったようだ。
「私の用事は、終わった。私は、帰るよ。君がもしマリーに変なことをされたら私にいってくれれば何とかするからね。」
そういうとミリアさんは帰っていった。セインくんは、マリーさんがセインくんのギルドへ転送したのだった。
「で少年達は、何の用なの?」
「マリーさん、僕をあの雪山まで連れてってくれませんか?もう一度月に行きたいんです。」
「まぁいいけど。ユリスちゃんは、いけないよ。」
「はい。私はマリーさんと話がしたくって。色々と。」
「色々ね。まあ少年1時間後に迎えに行くから。」
マリーさんは、詠唱を始めた。
祠に入り指輪をつけると月にいた。そこにはまた、丸っこいやつがいた。
「お帰りなさいご主人様。」
「ああ、ただいま。」
「何かご用でしょうか?」
「君に聞きたいことがある。もう一つの世界の神はいるのか?」
「可能性は高いです。」
「なるほどあいつの予想は正しかったってことか。なんで前教えてくれなかったんだ?」
「はい。この世界には存在しないからです。あくまで観測結果を元にした予測に過ぎません。悪魔と違い神のデータ数が少なすぎるのです。」
「じゃあ予測でいいんだけどこの世界にくるとしたら何のためにくると思う?」
「確定的ではありませんが、恐らくエネルギーの搾取が目的かと思われます。」
「搾取?」
「はい。この世界の魔力全てを吸収したいのでしょう。この世界は、記録を始めた頃と比較し20パーセント程度魔力の総量がアップしています。」
「いつ上昇したの?」
「もう一つの悪魔が現れた時です。」
「おじいさんか。神と悪魔ってそもそもなんなんだよ。この世界を一体どうしたいんだ?もう訳が分からない。」
「予測ですが、同じ魔力を奪い合う神も悪魔も本質的には同じと考えます。この世界の魔力を吸収し何かに使用するのです。ただし、もう一つの世界の神は、魔力を世界から奪われ目的が達成できない可能性があります。」
「目的って?」
「分かりません。」
「分からないことが更に分からなくなったよ。」
「すみません。」
「君を作った人に合いたいよ。」
「合いますか?」
「え!?合えるの?」
「あくまで記録媒体へ記録されているものを意識化したものになりますが、よろしいですか?」
「うん。」
「それでは。」
そういうと丸い球体は地面に降りた。そして、人型の映像を映し出した。それは、若い男性のようだったが、なぜか素っ裸だった。
「この変態が。」
それが第一声だった。
「いや、あなた誰ですか?」
「何故変態に自己紹介をしなければならない。おい、kidさっさと接続を切れ。」
「はい。」
そういうと丸っこい機械は映像を映すのをやめた。何なんだあの変態は...。
「あの変態が君を作ったの?」
「はい。」
「変態ではない。」
球体からさっきの男の声だけ聞こえてくる。
「あの名前は?」
「仕方ない。変態には名乗りたくないが。kidが指定した映像のようだからな。ウェルだ。」
「あのウェルさん。」
「何だ?変態?」
「とりあえずその呼び方やめてください。」
「断る。さあ要件をいえ。」
「じゃあなんでこんな設備作ったんですか?」
「...神と悪魔を滅するためだ。この二つはどちらが生き残ってもこの世界を滅ぼす。無論私たち...いや、もう私は人間ではないが人間も世界を滅ぼす可能性はある。ただし決定的な違いは世界を滅ぼせば人間は死に奴らは世界を滅ぼすことで生きるのだ。」
「そもそも何なんですか?神とか悪魔って?」
「人間の呼び名に過ぎない。面白い話だが国により同じものをみても一方は神として崇め一方は悪魔として蔑む。だがこれがまた面白い話だが両者を表す言葉がないのだ。両者が表す言葉がなければ言葉を作るか今ある言葉で代用するしかないのだ。それが神と悪魔なのだ。」
「つまりよくわからないものを昔の人は神と悪魔っていってたってことですか?」
「そうだ。物分かりが早いな。物わかりが早い変態は好きだぞ。」
「変態ではないですけど。じゃあそのよくわからないものって結局何なんですか。」
「わからない。これが答えだ。そもそも人間について君はわかっているのか?」
「悪魔と呼ばれるものから作られたんですよね。」
「そうだ。よく知っているな。だが、その通りなのだがそれ以上はわからないのだ。結局のところ人間についてもよくわからない。そこでこの監視システムを完成させた。」
「はい。」
「だが何もわからなかった。いや正確には予測していたことしかわからなかっただな。」
「もし別の世界の神がこの世界に来るとしたらどうやって来ますか。」
「そうだな。分岐点からくる可能性は高いだろう。あえて肉体を捨て精神体としてな。」
「分岐点っていうのはもう一つの悪魔が来た日ってことですか?」
「そうだ。精神体として悪魔と同じ様に誰かに宿ってる可能性は高い。」
「なんでですか?」
「最終目的は同じだからだ。もし私が神の立場なら悪魔に魔力を集めるだけ集めさせ使われる前に奪い取るだろう。」
「もし、この世界に神がすでに来ているとしたらどこにいますか?」
「簡単だよ。悪魔の隣に神はいるのさ。」
「悪魔の隣?」
「君が悪魔だとしたら君の親族や友人ってことだよ。さあ、こんなとこだろ。私は寝る。おやすみ。」
「ちょっちょっと待って。」
「ご主人様、ウェル様は就寝しました。どうされますか。」
「早いな!...起こせないの?」
「興味のないことで起こされると非常に怒ります。」
「仕方ない。まあ聞きたいことは聞けたし帰るよ。」
「はい、ご主人様。」
「じゃあね、kid。」
そういうと僕は、指輪を外した。
「マリーさん、帰って来ました。」
「少年、帰って来たの?ユリスちゃんそっちにいない?」
僕は、辺りを見回した。
「いませんよ。」
「そう。そうよね。少年とりあえず帰ってきて。呼び戻すわよ。」
「はい。」
僕は、転送されマリーさんの家についた。
「ユリスちゃんが消えちゃったの。」
「消えた?ホテルに帰ったとかじゃないんですか?」
「いやそんな感じじゃないの。ユリスちゃんの魔力みたいなのがこの付近から感じられないの。」
「...その辺探してきます。」
「私も魔力をさらに広範囲に広げて探知してみるわ。」
それから2週間たってもユリスは帰ってこなかった。マリーさんに当日の経緯を聞くとユリスは最近変な夢をみることについて悩んでいたそうだ。
その夢の内容は、ユリスが神様になり人間を操って世界を何度も何度も滅亡させたらしい。
僕は、その話を聞いて本当にゾッとした。
そして、僕は思い出した。
悪魔の隣に神はいる。
その言葉を…。
ユリスを探したが結局何の手がかりもなく日にちだけが過ぎていった。
何か進展がなかったか僕はマリーさんの家へ向かった。
「マリーさん、お久しぶりです。ユリスの手がかりは何か見つかりませんでしたか?」
「今のところはないわね。ミリアやセインにも頼んではいるんだけど。」
「そうですか。」
「うん。他にも...何!?何なのこの揺れ?」
僕達は、床に手をついた。とてつもない地震だ。
「凄い揺れですね。」
「揺れも凄いけど...何なのこの魔力は。」
「魔力?」
「馬鹿みたいな量の魔力...いえこれは。でもこの魔力は...。」
「どうしたんですか?」
「ユリスちゃんの魔力にそっくりなのよ。」
「ユリスの?」
「でも有り得ないほどの魔力。人間が出せる量じゃないわ。」
「...どの方向かわかりますか?」
「...南ね。ちょっとまってセインに連絡取ってみるわ。少年は、外の様子を見てきて。」
「はい。」
そういうと僕は、外へ出て辺りを見渡した。かなり大きな地震だったが特に建物が壊れているところもなさそうだった。けが人もいないようだ。僕は、マリーさんの家に戻った。
「少年外は大丈夫だった。」
「はい。全然問題なさそうでした。」
「そう。セインに連絡をとったんだけど...どうする?あっちへいってみる?」
「はい、お願いします。」
「あんまり無茶しちゃだめだよ。」
「はい。」
「じゃあ送るね。」
そういった後にマリーさんは詠唱を唱え気付いたら僕はセインくんのところにいた。
「久しぶり。」
「お久しぶりです。さっきの件なんですが、ここより更に南に竜の頭と呼ばれる場所があります。そこで発生した可能性が高いです。」
「竜の頭?」
「上空からみると竜の頭に見えるんです。まあそこには、偶然かもしれませんがドラゴンがうようよいます。」
「ドラゴン!?」
「はい。かなり危険な場所です。そこには、人間と同等の知能をもったドラゴンもいるんですが、中には知能のないドラゴンもいます。」
「なるほど。話し合いが通じないやつもいるってことね。」
「はい。まあその点はドラゴンに限った話ではないですけどね。」
「どうやっていけばいいの?」
「今の話聞いてました?かなり危険な場所ですって。いけるような場所じゃないです。」
「それでもいきたいんだ。ユリスの最後の手がかりかも知れない。もう待つのは嫌なんだ。」
「うーん。...本当に死んじゃうかも知れないんですよ。」
「ああ、構わない。」
「わかりました。ドッコン先生を呼んで来ます。」
「その必要はないよ。セイン君。」
「ドッコン先生!?いらしてたんですか?」
「ああ、君を呼びに来たんだが、なかなか興味深い話をしていたんでね。少し聞かせてもらったよ。」
「竜の頭にいきたいんです。何か方法はないですか。」
「一つ方法があるよ。竜王と話をしてみればいい。もしかしたら君なら話をしてくれるかもしれない。」
「竜王と?どうやってすればいいんですか?」
「あの尻尾を使うのさ。まあ、なんとか私がやってみよう。ちょうどさっきの地震で皆は出払っている。チャンスだ。」
「あのドッコン先生...大丈夫なんですか?」
「まあ、大丈夫だよ。傷つける訳ではないし。さあ、急ごう。」
僕達は、展示室へ向かった。
「これが、竜王の尻尾かー。」
「どうだい?なかなかいい展示具合だろう?さあ、始めるよ。」
「はい。」
そういった後、詠唱を始め何かと会話をし始めた。おそらく竜王だろう。
「さて、君と直接話をしたいそうだ。」
「ってことはつまりいけるってことですか?」
「そうなるね。さて今から君を竜王の元へ転送させるけど、準備はいいかい?」
「はい。いつでも大丈夫です。」
そうして僕は、竜王の元へついた。
辺りを見渡すとドラゴンがうようよ飛んでいた。どうも興奮している。先ほどの地震のせいだろう。
「久しぶりだな。異なるものよ。」
前をみると竜王が座っていた。
「お久しぶりです。」
「まあ私から離れなければ安全だ。そんなに警戒をしなくても良い。要件はさっきのやつだな。今から私も行く。ついてきたければ背中に乗りたまえ。」
「はい。」
僕が竜王の背中に乗ったのを確認する竜王は羽ばたきだした。
「さあ、いくぞ。異なるものよ。」
僕達は、南に飛び発生源へ向かった。
「竜王さん。異なるものって呼び方どういう意味なんですか?」
「ん?ああ簡単に言えば普通の人間ではないという意味だ。」
「そのままですね。」
「心辺りはあるだろう?」
「まあ、少しは。」
「おっとそろそろついたようだ。」
「城?」
空に城みたいなものが浮いている。ただそれは、人工的に作られた古城というよりは景観を完全に無視した機械的な城だった。こんなものは、初めて見た。
「うーむ。どうする?降りてみるか?」
「はい。」
僕達は、城に降りた。
「私は周りを探索してくる。何か用事が合ったらすぐに呼びたまえ。」
「はい。ありがとうございます。」
僕は、城の中に入った。人の気配はしない。そもそも人の住むような作りではなさそうだ。
「さて、一番上までいってみるか。」
僕は、城の一番上を目指して移動した。驚くほど静かでモンスターなどの生物もそこにはいなかった。そうこうしているうちに一番上までついたようだ。
「ここか?なにもない。」
本当にここなのか?
「誰だ?貴様は?」
「その声はユリス?」
人の気配を感じなかったが、振り返るとユリスがいた。だが、どうも様子がおかしい。
「なるほど貴様か。この娘を探しにきたのか?」
「誰だお前は?」
「貴様には感謝している。世界中に魔力が循環しているのを感じる。つまり異次元の悪魔を殺してくれたということだ。」
「...本当にいたのか。」
「さて貴様の願いを一つだけ叶えてやろう。」
「ユリスを返せ。」
「返せ?それは無理だ。おかしなことをいう。私がユリスなのだ。」
「違う。お前はユリスじゃない!」
「ふっ...頭が頭が痛い!うっここはどこなの?」
「ユリスなのか?大丈夫か?今助ける。」
「その声は!?助けに来てくれたの?...ふふっなんてね。」
「お前!!」
「さて願い事はどうする?前と同じ様にするか?人間には手を出さない。だがこれは、おすすめしないぞ。結局滅びかけたのだからな。最終的に奴らはこれを撤回し統率されることを選んだのだ。神よ助けて下さいってね。聞き飽きたよ。」
「...ユリスを返せ!」
「願い事もないようだし、君には操り人形になってもらおう。私の従順な人形にね。」
そういうとユリスは、剣を振り上げ僕に向かって斬りつけた。
「そんなお願いは聞く必要もないさ。」
金属音同士がはじく音がした。誰かが守ってくれたようだ。
「君は!?」
「待たせたね。」
それは、白銀の剣をもったもう一人の僕だった。
「なぜ貴様が生きている?異次元の悪魔!?」
「悪魔は、死んださ。ただ一つやり残したことがあってね。」
彼は白銀の剣をユリスに向けた。
「ふっその剣か。なるほど。そういうことか。だがそれでどうする?それは私には効かない。」
「だけどその子には効くさ。」
「...ふっふっふはははは。なるほど今回は私の負けだ。帰るとしよう。」
そういうとユリスは倒れ込んだ。倒れ込みそうになるユリスをなんとか抱え込んだ。
「うっここは?」
「ユリスで合ってるよね?」
「なにいってるの貴方馬鹿なの?私意外誰だって...っていうかここどこなのよ!」
「心配したんだぞ。」
僕は、ユリスを抱きしめた。
「ちょっどうしたの?急に!?」
もぞもぞ動く彼女をしばらく抱きしめた後事情を説明した。
「ふーん。つまり、私が神様に乗っ取られてたってこと?」
「まあ、そういうことだな。」
「ふーん。...もしかしたら私本当に神様なのかもしれない。」
「なにいってるんだ?」
「ごめん。まあ、いいわ。それよりその人は誰なの?」
「ああ、この人は。」
「僕は、名乗るほどのものじゃないさ。さてこの城はそろそろ崩れそうだ。さあ、君達早く逃げるんだ。」
「君は?」
「あそこで待ってるさ。」
僕とユリスは、崩れ落ちる城から脱出し竜王の背中にのり竜の頭に帰った。
僕の心配をよそに竜王の背中に乗れてユリスはご満悦だ。全くこいつは...。
僕とユリスは、竜の頭に帰ってきた。ドラゴンだらけでユリスは興奮状態だ。
「凄い。凄いわ!あれっあれみて!あのドラゴンは希少種で夜になると光輝くの。スッゴい綺麗らしいわよ。」
「ユリスそろそろ帰るぞ。」
「えー。もう少しだけめったに見れないのに。そういえばどうやって帰るの?」
全くこいつは...でも元気で良かった。どうやって帰るってそれは...。
「マリーさん...聞いてます?ドッコンさん...もしもし聞いてます?」
返事がない。流石に離れすぎているのか。それともさっきの城のせいなのか?
「もしかして帰れないの?」
「ユリス移動魔法使えないの?」
「100メートルぐらいなら。」
「ここからだとちょうど海に落ちるくらいだね。」
「心配しなくていい。異なるものよ。」
そういうと竜王は雄叫びをあげた。先ほどユリスが希少種と言っていた青緑色のドラゴンが近づいてきた。
「わあエメラルドドラゴンだ。すっごい綺麗。」
竜王とエメラルドドラゴンが何か会話らしきことをしている。僕にはわからないが、ドラゴン語なのだろうか?
「さて異なるものよ。近くまでこのドラゴンが送ろう。もう遅いが夜までにはつけるだろう。」
「竜王さんありがとうございます。」
「あの不気味な建物を壊してくれた礼だ。」
僕達は、エメラルドドラゴンに乗って空を飛んだ。
「あれは!?ノイド遺跡が見える。あの辺に降ろしてくれ。」
ドラゴンは、ゆっくりと下降を始めた。
「あー楽しかったー。ありがとうエメちゃん。」
「いえ、それほどでも。」
「喋れたの!?」
僕は、驚いた。
「はい。少しですが。」
「エメちゃんありがとね。また今度乗せてね。」
「機会があれば。ではさようなら。」
暗闇の中飛び立っていくエメラルドドラゴンは本当に綺麗で幻想的だった。
僕達はなんとか帰ってくることができた。
「お帰り、少年。大変だったね。」
「はい。」
「ユリスちゃんもお帰り。お風呂入ってきなよ。」
「そうですね。じゃお言葉に甘えて。」
そういうとユリスは、お風呂に入りにいった。
「さて少年。結局どうなったの?」
僕は、ここまでの経緯を説明した。
「なるほど悪魔の次は神様ね。やれやれだわ。」
「マリーさん。ここのソファーお借りしますね。」
「ん?どういうこと?」
「しばらく気絶します。ユリスには疲れて寝たって言っといてください。」
「...まさか。あそこにいくの?何のために。」
「少し用事があるんです。すぐかえって来ます。」
「そう...わかったわ。早くかえって来てね。」
「はい。」
そうして僕の意識は、またあの空間へやってきた。
「やぁやっときたね。待っていたよ。」
なぜあいつが生きているのか。あの時の続きを説明しよう。
「...何をしている?さあ、早くトドメを指すんだ。」
僕は振り上げた白銀の剣をゆっくりと降ろした。
「...本当にこれでいいのかな。」
「いいさ。僕はもう人ではない。悪いモンスターを一匹やったと思えばいいさ。それで世界は救われる。」
「...まるで君をここで殺さなければならない。そんなレールに乗せられている気がする。」
彼の顔は暗くてよく見えなかったが悲しそうな顔をしていた。
「レール?」
「あまりにも順調なんだ。いや順調すぎるんだ。」
「そうか...君もそう思うか?」
「ああ。」
「もし、君が意図的に作られたのだとしたらどうする?」
「どういう意味?」
「もっと言えば君の人生を、他者によって操られているのだとしたら。」
「操られている?」
「僕を殺す為にさ。この場所は時間の流れが狂ってるが恐らく悪魔の精神なんだ。感覚的だが外側と内側の時間軸が違う。そんな異質なところにいる僕を殺すには君みたいな特殊な人間がいる。」
「だけど君を殺したってなにになるんだよ。」
「僕というよりは、君がさっき叩き潰した悪魔の魂を消滅させたいのかもしれない。もう一つの巨大な存在。もう、わかるだろ。」
僕は、拳を握りしめた。
「神がここまでのストーリーを考えてたっていうのか?」
「神なら出来るさ。ただ確かめるには君には選択をしてもらう。さっき潰した悪魔の魂を取り込むんだ。」
「そんなことしても大丈夫なのか?」
「わからない。もしかしたら死ぬかもしれないし、もしくは乗っ取られるかもしれない。まあやらないなら僕にトドメをさしてくれ。」
しばらく悩んだが確かに不思議なところはある。それにもしこの星に神がいるのだとしたら僕達の命、いやこの星の生命は消滅させられるかもしれない。
「わかった。でもどうやって取り込むんだ?」
「のみこめばいい。」
僕はよくわからない物体を拾い上げて恐る恐るのみこんだ。
不味くはない。というか味はしなかった。ただとてつもなく気持ち悪い。
「特になにも変わってない。本当にこれでいいのか。」
「わからないな。」
「わからないの?!だっ大丈夫なのか?」
「ただ、これで元の世界に戻る前にもしかしたら...。」
「もしかしたら?」
「ゲートが開く。」
「ゲート?」
「悪魔の肉体へ繋がるゲートがね。」
「そんなところに繋がるなんて何でわかるんだ?それに仮にそんなところにいって何するんだよ。」
「悪魔の魂を持つ僕が逃げたときに強制転移させる術を仕掛けているかもしれない。もしもつくことができたら、そこで悪魔の肉体を手に入れるんだ。」
「仕掛けているかもしれないって予想なの?」
「ああ、予想だよ。でも僕は信じてるさ。悪魔をね。」
「でも何で悪魔の肉体がいるんだよ?」
「精神と魂を持つ君なら肉体を制御することが出来るかもれない。もしそれが出来るなら僕の封魔剣の循環と違い完全にシステムを止められる。まあ本当の目的はそこじゃないんだけどね。」
「本当の目的って?」
彼は少し間を置いて答えた。
「...すべての魔力の吸収システムを停止して、君だけしか封魔剣が使えないようにする。そして封魔剣の能力が最大限を超えて制御出来れば神を...殺せる!」
「そんなこと出来るの?」
「わからない。まあ本当に神が生きているのかもわからないしね。取り越し苦労で終わるかもしれない。」
「まあ、取り越し苦労ならそれでいいか。さあ、送ってくれ。」
「...君に出会えて良かったよ。さあ、転送させるよ。」
「ああ。」
そこは、大きな空間が広がりどこまでも先が見えなかった。そして不思議なことに空があった。
「ここはどこだ?本当についたのか?おーい、聞こえるか?」
マリーさんと違いあいつの返事がない。そもそもマリーさんが特別すぎるのかもしれない。
僕は、もう一度辺りを見渡した。だだっ広い空間には何の生物もいない。草も生えてない。あるのは、青白い空だけだった。
「ん?」
よく見ると空が動いていた。雲が動いているのではない。ある方向へ空が動いているのだ。
「これ...もしかして全部魔力なのか?」
目を凝らすと青く見えていたのは巨大な魔力の塊だった。
「なるほど。あっちにいるってことね。」
僕は、空の向かう方へ歩き出した。
しばらくすると青色の塔が見えてきた。ここが本体なのだろう。
「やっと本体についた。」
「本体は下だ。」
背後から声がした。
「誰だ!?」
僕は身構えたが誰もいない。
「私は、お前の中にある残留思念だ。」
「悪魔なのか?」
「ああ。そうだ。あそこは口だ。」
「口?」
「今お前が歩いてきた全てが本体なのだ。」
「...何が目的なんだ?」
その声は、不気味な笑い声をあげた。
「ふっふっはっははは。何が目的か。暇つぶしだよ。私にはもうお前たちをどうすることもできない。安心するといい。ただ一つ約束してほしいことがあるんだ。」
「悪魔と約束なんてできるか!」
「まぁ、そういうな。約束してくれたら君に悪魔の力を譲ろう。私はそろそろ完全に消える。考えてる時間はあまりないぞ。」
「...約束ってのは、なんだ?」
「神を完全に消滅させろ。目的は同じだろ?」
「なんなんだ!お前たちは!何のために争う!?何のために人間を作ったんだ?」
「お前たちと同じだよ。生きるためだ。限りある資源を奪い合う。そこには神も悪魔も人間も関係ない。」
僕は、深く考えた。
「さっき僕は、お前を叩き潰した。お前が恨んでいて僕に罠を仕掛けるつもりじゃないのか?」
「恨んでいるか?まあ、いきなり潰されるとは思わなかったがまあ、その件で本当に恨むならもう一つの私だな。私をあんなつまらない空間に閉じ込めたんだ。それに仮にお前に魂を細切れにされても私の魂は消滅しない。」
「消滅しない?じゃあまだ、神や悪魔は生きているっていうのか!?」
「お前は、勘違いしている。魂はただの魂なのだ。それ自体はお前たちにとっての善悪がない。お前がいってるのは精神の部分だ。つまり正確には2体の悪魔と1体の神の精神は消滅した。無害な魂も滅ぼすかね?」
「...別に悪いことしないんならしないさ。」
「それは良かった。君自身の魂だからね。」
「え?」
「驚いたかい?これぐらいは小さな仕返しとして許してくれよ。」
「どういうことなんだ?」
「君の隣にいた黒髪の女の子あれは神の魂を持っている。そして君は悪魔の魂を持っている。分かりづらくなっているがね。」
「...本当に?」
「ああ。だが、私は君達を見て新たな可能性を見つけることができた。神と悪魔が手を取り合って生きられる世界そんな世界をね。」
「その為に神を消滅させるのか?」
「そうだ。さあ、約束してくれ。」
「分かった。」
「よし。じゃあ始めるよ。」
次の瞬間僕の全身は青色く光り出しそのまま意識を失った。
「大丈夫かい?」
気づけば真っ白の空間にあいつが立っていた。封魔剣で照らして会話していたからよく見えなかったが、明るい空間でみるとなかなかの美形だな。
「ここは?」
「同じ場所だ。さっきまで真っ暗だったんだ。ただ、急に部屋全体が白くなって君が真上から落ちてきた。」
「悪魔の精神が消えたからか?」
「どういうことか教えてもらえるかい?」
僕は、経緯を話した。
「ってことなんだけど。特に変わってない気がするんだが。」
「封魔剣を出してくれないか?青いほう。」
「これでいい?」
僕は、封魔剣を発動した。
「それで封魔剣の能力を限界まで高めるイメージをしてみて。赤色の封魔剣みたいに。」
「こうかな?」
「...成功だ。これなら悪魔の魔力吸収を完全に止められる。」
「そんなことができるの?」
「僕を起点に魔力を膨大に出力し続ける。そんな無茶な循環をしなくてもね。」
「無茶だったの?」
「正直、永久的には出来るかは分からなかったんだ。」
「君にとどめを刺さなくて良かったよ。」
「それに関しては、同意する。あの白銀の剣の構成式を君が現れるまで調べてたんだ。そうしたら僕も少しの間なら外にでれるかもしれない。」
「この外ってこと。」
彼は目を輝かせて言った。
「ああ、もう少し調べて自分なりに変えないといけないんだけど。少しだけ崩壊を止められるかもしれない。」
「良かった。本当に。」
「ありがとう。君は、戻るといい。ただし君の力は本当の神の前でしか使わないこと。いいね?」
「油断させるってこと?」
「そういうこと。まあ、君がピンチになれば助けに行くさ。次に君にここで合うときは神を倒しに行くときだ。」
「分かった。」
そうして僕達は、着実に神を倒すための計画を進めていたのである。
「おーい。ぼーっとして。大丈夫かい?ドラゴン酔いでもしたのかい?」
「ああ、ごめん。今まで結構色んなことあって色々思い出してたんだ。」
「そうか。確かに色々あったね。大変だった。でも、これで最後だ。ウェルさんから貰ったデータ今さっき分析が終わった。神が現れたゲートを逆に使う。準備が出来たらいってくれ。じゃあ戻すよ。」
「あーよく寝た。」
「少年、おはよう。っていっても真夜中だけど。」
「いつまで寝るのよ。貴方?」
「ユリス...今からあるところに行くんだけど、今から行く所には連れてけない。」
「なっ何でよ。さっき操られちゃったから?」
「それもあるし危ない目にあわせたくない。」
「...分かった。」
今回は、やけにすんなり諦めたな。もう少し駄々をこねると思ったが。
「絶対にきちゃだめだからな。」
「わっ分かったわよ。子供じゃないんだからついて行かないわよ。それに今回は、私一人の問題じゃないし。本当は行きたいんだけど。でも絶対約束だからね。生きて帰ってくるって。」
「分かった。約束するよ。それで、マリーさん話があります。」
「分かったわ。少年と結婚するって話ね。」
「貴方なん!?いつそんな話したのよ!?」
ユリスに胸ぐらをつかまれ揺さぶられた。
「ユリス落ち着けって。そっそんな話してないから。」
「そうそう、ユリスちゃん。冗談だよ。」
ユリスは、マリーさんを睨み始めた。
「マリーさん、ミリアさんと連絡とれますか?」
「とれるけど本命はミリアってこと?」
また、揺さぶられた。
「ちっ違います。少しその挨拶がしたいだけです。最後になっちゃうかもしれないから。」
そういうと胸元が緩んだ。ユリスは、無言でこちらを見つめていた。マリーさんも顔は軽く笑っていたが悲しそうな顔をしていた。
「じゃあ、少年。転送するね。」
マリーさんが詠唱を唱えるとミリアさんの自宅に来ていた。彼女はソファーにポチと一緒に座っていた。
「ミリアさん。その、今までありがとうございました。」
「君が初めてここに来たときもこんな感じの夜だったな。マリーから内容は聞いたよ。挨拶はこのくらいで終わりにしよう。」
そういうと彼女は立ち上がり僕の方へ歩いてきた。そして僕の身体を包み込み軽くほっぺにキスをした。
「ミリアさん!?」
「はい。これで終わり!続きをしてほしかったら無事に帰ってくること!いいね?」
僕は、笑いながらいった。
「はい。すっごいの期待してますからね。」
ミリアさんは、顔を赤らめた。
「...まったく、君は。」
そうこうしているとマリーさんの声が聞こえた。
「少年そろそろ返すよ。」
「はい。」
僕は、マリーさんの家に帰ってきた。
「さて、少年をどこに連れてけばいいのかな?」
「話が早くて助かります。あれ?ユリスは?」
「寝室に行っちゃった。あの年頃には、辛すぎるのかもね。」
「竜の頭に連れて行って下さい。」
「少年、目印はつけてきた?」
「はい。」
「じゃあ、いくよ。」
詠唱を唱え終わると竜がうようよいる竜の頭へまた戻ってきていた。そして目の前には竜王がいた。
「ん?忘れ物か?」
「竜王さん、お願いがあります。もう一度さっきの所へ連れて行ってくれませんか?」
「何のために?」
「世界を救うために。」
「世界か、その世界には私達がいるのか?」
「...分かりません。でも、行かなければ全て消えます。」
竜王は、僕の目をじーっとみた。正直食べられるかと少し思った。
「...嘘はついていない。全く厄介だな。さあ、背中に乗れ。すぐにでるぞ。本当に異なる者だな。」
僕とマリーさんは、竜王の背中に乗りさっきの城があったところにやってきた。
「マリーさん、何か感じますか?」
「ええ。転送するならここですよって感じに構成式が残ってあるわね。そこに飛ばすの?」
「はい。」
「分かったわ。まずは、少年に。」
マリーさんは、僕の手を握りながら詠唱を始めた。
「これで座標は取り込めたわ。あとは前と同じでイメージすれば帰れるはずよ。」
「ありがとうございます。」
「そして次に...。」
そういうとマリーさんは、思いっきり抱きついてきた。正直痛かったが優しい気持ちになった。
「痛いですって。マリーさん!」
「うるさーい!ミリアには、やらせて私にはやらせないなんて不公平よ!」
次は、頬をひっつけてきた。ただ冷たいものが僕の頬へ伝わった。
「マリーさん?」
「少年、...私にも約束して。絶対無事に帰ってくるって。じゃないと離さないから。」
「絶対、帰ってきます。」
「無事にだよ?」
「はい。無事に帰ってきます。」
「よし!少年目を閉じて。」
「えーと。マリーさん?」
「早く!」
僕は、目を閉じると額に軽く衝撃がはしった。どうやらデコピンされたみたいだ。
「痛っい。」
「少年がエッチなこと想像するからだよ。しかし、この辺の波しぶきひどいね。さっき顔にかかっちゃったよ。」
それは初めてみるマリーさんの顔だった。
「マリーさん、いってきます。」
「うん。」
マリーさんは、詠唱を始めた。そして僕はあいつと最後の作戦会議をした。
真っ白な空間の中、僕達は二人だけで話した。
「行くんだね?」
「ああ。」
「正直僕に出来ることは少ない。君が直接封魔剣でやるしか勝ち目がない。」
「作戦は、僕が囮になる。おそらく一分程度刺し込めば僕達の勝ちだ。」
「分かった。そういえば君の名前はなんていうの?」
「僕の名前?名前か...アルだよ。誰にも呼ばれないから忘れそうになるけど絶対に忘れない。さあ、そろそろつくよ。」
周りの風景が変わり、僕達はさっき崩れた城の中に立っていた。
「よくきた。私が神だ。」
そこには、ユリスに似た何者かが立っていた。
「お前を倒す!」
「さあ、話し合いはなしだ!貴様の魔力の全てをよこせ!」
僕は、青く光り輝く封魔剣を発動した。
「いくぞ!」
「そんな剣でいくら刺そうと無駄だ!」
僕は油断していた神の体に封魔剣を突き立てた。
「これでどうだ!」
「これは、なんだ消えない!なんだこの魔力の吸収力は?」
10秒後、神の赤色の複数の封魔剣が襲いかかってきたので一時退避した。
そして長い戦いが続いた。僕の巨大な魔力を使いアルは僕を回復した。何回か死んだんじゃないかっていう致命傷も瞬時に治った。
「おらっ。」
「くっしつこい奴だ。」
おそらく30秒は刺した。
後ろから雷やら炎やら水やら何やらがとんできて僕への神の攻撃を邪魔していた。本当にアルが味方になってくれてよかった。
「これで、どうだ!」
41、42、43!
よしいける。
「離れるんだ!」
アルの声が聞こえた瞬間僕は爆風で吹き飛ばされていた。
「大丈夫かい?」
「ああ。」
「様子がおかしい。」
「やったのか?」
「いや違う。あれはそんなものじゃない。」
「ふっふっふっはははははは。私をここまで追いつめるとは流石にやっかいだな。だがお前たちも終わりだ。私の肉体が今届いた。お前たちが予想以上に厄介だったから焦ったよ。」
それは8つの羽が生えた天使のような姿だった。ただ崩れた天井からみえるそれは天使よりは化け物みたいなサイズだった。本当に顔が見えない。
「アル、どうすればいい?」
「あいつがあの体に入る前に倒すんだ!」
そんなこといってもあと17秒もある。
「くそっ。」
僕は神に突撃した。神は、よけなかった。それどころか目をつむっていた。
「ふっ正確な魔力の残りの時間を教えてやらう。あと15、14、13、12、これで終わりだ。残念あと7秒足りなかったな。」
目の前の神は、不気味に笑みを浮かべた後、意識を失い地面へ倒れた。それと、同時に真上から雄叫びが聞こえた。
「アル元の世界にいったん戻ろう。」
「無駄だよ。時間がかかるし、あいつもついて来る。場所が変わるだけだ。」
「どうすればいい?」
「負けたんだよ。流石にあれには勝てない。」
僕は膝をついた。
「くそっ。こんなところで。」
「もう、あきらめるの?」
それは、目の前に倒れている神の体から放たれた言葉だった。
「だれだ!?」
「私よ。ユリス。」
「お前来たのか?」
いやそんなことは絶対にない。だが、目の前で話すその姿はユリスそのものだった。ユリスらしき人物は、ゆっくりと起き上がった。
「よくわかんないけど私あの後部屋で寝ちゃたのよ。で、気付けば私貴方と戦ってるしこれ夢よね?」
「夢じゃない。でもごめん。あれには勝てない。」
「全く私が連れて行ってあげるわ。」
ユリスと思われるその人物は青色の封魔剣を8つ出して自らの中心を剣で交錯させながら貫いた。そしてその姿は天使のようだった。
「本当にユリスなのか?」
「全く始めっから私連れて行かないからこうなるのよ。さあ、手を握って。アルさんは異次元へ避難して下さい。」
「ああ、そうさせてもらうよ。全く君達には驚かされる。」
僕はユリスの手を握った。そうするとふわふわ浮かびだした。
「いくぞ!ユリス。」
「ええ。」
僕は神の体を封魔剣で斬りつけながら上空を目指した。
「ユリス何で上を目指すんだ?」
「本体は、上にいるわ。そんな気がするの?」
「本当にすごいな。ユリスは。」
「貴方も負けてないわよ。さあつくわよ。」
そこには、悪魔の額の中心に輝くコアがあった。
「あそこを貫いて。」
「ああ。」
「何故だ。何故お前達は...やめろ、やめろおおおおおおお!!!」
大きな巨体は土煙を上げながらゆっくりと地面へ倒れた。
僕達は、地面に降り立った。
「ユリス、終わったのか?」
ユリスは、悲しげな顔をしていた。
「うん。」
「お前達は、この世界を壊した。私の加護がなければこの世界の人間は息絶えるだろう。」
神の声が聞こえた。振り返ってみると目の前には地面に巨大な顔が力なく埋まっていた。
ただ、僕達の方を睨み続けていた。
「そんなことないわ!」
ユリスが、神に近づいた。
「ユリス危ない!近づくな!」
「大丈夫。何となくだけどもうなにも出来ないわ。」
「なんとなくって。」
ユリスはゆっくりと右手で神の額に触れた。
「貴方は...本来もってはいけない感情が生まれてしまったのね。」
「...何の話だ。」
「貴方と一つになってわかったの。...貴方は人間を愛してしまった。」
「...そんなことはない。」
「貴方の夢は永遠に人間達を見守ること。」
「...そんなことはない。」
「じゃあ、さっきいってたことは何?世界の人間は息絶えるだろうって?彼等を愛していなければそんなこと言えないわ!」
「そんなことはない。ただ...彼等は私がいなければ駄目なのだ。そうでなければ...彼等は生きていけないのだ。」
「そんなことないわ!だって...だって私達人間は貴方や悪魔を倒したんですもの。人間は貴方から見たら弱く見えるかもしれない。でも、困難を乗り越えていける力があるの。それに...。」
「...何なのだ?」
「この世界の人間は生きているとはいえない。貴方に飼われているだけよ。」
「...私がいなくても生きていけると?」
「ええ。あなたがしたかったこと半分だけだけど叶えてあげるわ。」
「...わかった。後はお前に託そう。約束してくれ。」
「ええ、約束するわ。」
そうユリスがいうとユリスの全身が赤く光輝いた。そして神は光の粒子となり消えていった。
「ユリスであってるよね?」
「ふっふっふ。私が... 真の魔王だ。なんて...びっくりした?」
「そんな馬鹿なこというのユリスぐらいだし安心したよ。」
「なによ。失礼ね。...ねえ、お願いがあるの。」
「なに?お願いって?」
「貴方の封魔剣に入っている魔力を私に流してほしいの。悪魔が私達の世界に持ってきた魔力をこの世界に返すために。」
「わかった。」
「じゃあ。両方の封魔剣を発動して。」
「これでいい?」
僕は封魔剣を発動した。そういった後彼女は僕の体へ触れた。彼女を起点として大地の魔力が潤っていくのを感じた。
「よし、終わり。大体こんな感じかしら?まあ、私達に出来ることはこれぐらいしかないわね。」
「そうだな。よし!帰るか。」
「...いえ、まだお願いがあるの。あの人呼んでもらえる?」
「あの人?」
「さっき貴方といた人。」
「ああ、アルのことか?おーい、アル出てきてくれー。こんなんでいいのか?」
そういうと次元の揺らぎを感じた。
「全く君達には驚かされるよ。まさか神を倒してしまうなんて。」
「ユリスのおかげさ。なあユリス?」
「...。」
「どうしたんだ。ユリス?黙ったままで?」
「...あのアルさん。この世界に残ってくれませんか?」
「え?ユリスなに言ってるんだよ?」
アルの方をみると顎のあたりを触りながら考え込んでいた。
「いいよ。同じ魂は同じ世界にはいれないということかな?」
ユリスは無言で頷いた。
「いいのか?アル?」
「まあ、あっちには思い出もないし問題ないさ。それに僕の寿命は後少しだからどっちで死んでも関係ないけどね。」
「アル?どういうことなんだ!?白銀の剣を解析したんじゃないのか?」
「解析はできたけど手遅れだったてことだよ。数日の命さ。いっただろう?少しの間だけだって。でもこうして空をみることができた。これだけで僕は幸せだよ。」
そういうとアルは、崩れ去った城を背景に空を見上げた。そんな中ユリスは小さな声で話し出した。
「あの一体どういうことなんですか?病気なんですか?」
僕はユリスに僕と彼の関係とこれまでの経緯を説明した。
「...ってことなんだ。」
「わかったわ。あの...アルさん。...その...もしもっと生きれる方法があったとして例えその可能性が低くてもやりますか?」
アルは静かに答えた。
「...そんな夢みたいなことが出来るのかい?」
「ユリス、そんなこと出来るのか?」
「...わかんない。ただ、私の中の何かが言ってるの。出来るかもしれないって。...アルさん、やりますか?」
アルは少し間を置いて答えた。
「...もちろん。少しでも可能性があるならかけてみたい。」
「ユリス、どうやるんだ?」
「まず、貴方に入っている悪魔の魂を返してあげて。」
「ああ。アル、やるんなら取ってくれ。」
「まさか、また取り込むことになるとは思わなかったよ。」
そういうとアルは、僕の中の悪魔の魂を取り出して飲み込んだ。
「そして次に私にあっ!アルさんちょっとだけまってもらっても大丈夫ですか?」
「ん?どうしたんだい?」
「何かあったのか?ユリス?」
「いえ...送り出すとき何も言えなかったから貴方がこの世界から帰る前に一言言っておきたくて。」
僕は右手で頭をかいてため息をついた。
「はぁー。そんなの帰ってからでいいだろ?」
「私に入っているさっきの神の魂をあげちゃうと私この世界から消えちゃうのよ。多分だけど。」
僕は心配しそうに言った。
「...元の世界にはいるんだろ?」
「うん。」
僕はその返事で一安心した。
「じゃあ帰ってからでいいだろ。」
「ちょっとだけちょっとだけだから。アルさんいいですよね?」
アルは軽く笑みをこぼしていた。
「ふふっ。いいよ。あの壊れた城でも見ながら少し後ろを向いておくよ。」
「何で後ろをむくんだ?」
アルは、特になにも言わなかった。
「ねえ。さっきから気になってるんだけど顔のあたりにゴミがついてるわよ。」
「え?どこ?」
僕は、両手で顔のゴミを探し出した。
「全然違う。そこじゃなくて。ほらっちょっとしゃがんで。」
「どこだよ。」
僕は少ししゃがみ込んだ。そうするとユリスが急に顔を近づけてきて柔らかな唇が僕の唇と重なった。
ユリスは笑いながらいった。
「わーい、だまされたー。」
「ユリス、急になにするんだよ。」
「これは、罰よ。ミリアさんとマリーさんとキスしたでしょ!?」
「なっなんで知ってるんだよ。っていうかマリーさんとはしてないぞ!」
「ふーん、じゃあミリアさんとはしたんだね。」
これは、嵌められて言わなくていいことを言ってしまったのだろう。
「いや...冗談だよ。」
「もう、遅いわよ。帰ってきたら変なこと出来ないように馬車馬のように働かせてあげるわ。っていっても、元の世界の私はこの世界のこと覚えてないけどね。だからさっきのキスも覚えてないから。」
「はぁー。ったく変なユリスだな。」
「早く帰ってきなさいよ。」
「...ああ。」
そういうとアルは振り返って言った。
「壊れた城に夢中で何も聞いていなかったんだけどもう終わったのかい?それとももう少し壊れた城に夢中になっておこうか?」
そう言われ僕達二人は同時に言った。
「…もう大丈夫です。」
「…もう大丈夫です。」
その後、ユリスの中にある神の魂を取るとユリスは消えてしまった。ユリスが言うには後は神の魂を取り込むだけらしい。
「さあ、アル。取り込むんだ。」
「ああ。」
アルはゆっくりと神の魂を取り込んだ。しかし、特に変わった様子はない。
「...成功したのか?」
「...ああ成功だ。ひび割れた魂が強固になっていく。魂と精神と肉体の連結も。...まさか、神と悪魔の魂を取り込むことで人間として生きることが出来るなんてね。全く皮肉なもんだよ。」
「本当に良かったな。」
「ああ。君達には感謝している。感謝しきれないくらいにね。」
「これからどうするんだ?」
「そうだな。...しばらく僕が神の代わりに人間達を導くよ。でも、あくまで自立させるのが目的だけどね。」
「そっか。じゃあ、そろそろ帰るよ。せっかく救った世界がまた変なことになったら大変だしね。」
「ああ。元気で。もし君達がピンチになったら次元を越えてでも助けに行くよ。遠慮なく言ってくれ。」
「まあ、そんなピンチがこないことを祈るよ。」
僕達は、笑いあった。
「じゃあ。またいつか。」
「ああ。」
そうして僕はまぶしい光の中に消え元の世界に戻った。
「こうして世界は救われたとさ。はい、おしまい。」
こうして僕は本を閉じた。
「えー、続きは?」
「続き?ああ、じゃあ北極にいったときにオモテシロクマっていうモンスターと戦ったときの話を...。」
「それ、つまんない。ママとはその後どうなったの?」
「どうなったのっていってもこうなったのさ。」
僕はかわいい我が子の頭をなでた。
あの後、僕は体験したことを本にして発売した。この本は少し脚色をしたけれど...僕達人間達が選択を間違わないように記録として残すことにした。ただ、混乱を招かぬように各所からおとぎ話として発売するようにいわれたのであった。まあ、本としての売れ行きはかなりいいようでユリスは喜んでいた。
ふと下をみると小さなモンスターが騒ぎ出していた。
「ききたーい!ききたい、ききたい、ききたーい!」
「じゃあ、ちょっとだけだよ。えーと、どうだったかな。確か...」
元の世界に帰ったと同時に気絶して、マリーさんに抱き抱えられながら連れて帰ってもらい3日3晩寝て、おきたらユリスが目を腫らしてぐしょぐしょの顔になっていたんだっけな。それから色々事情聴取されて何故か牢屋に入ってまずいご飯が食べれなくって3キロくらいやせたんだ。結局、マリーさんやミリアさん、ドッコンさん、セインくん、みんなのおかげで無罪になったけどね。その後、今度は国のお偉いさんが謝罪にきて、まあなんて言うか本当に後処理って感じだったかな。
「...って言う感じだったよ。」
「それから、どうなったの?」
「それから...。」
「ユリス、あの時のこと覚えてないのか?」
僕達は、話しながら草原を歩いていた。
「え?なんのこと?」
「あの世界でのこと。」
「うーん。本当に何にも覚えてないんだけど。なんか夢みたいな感じで...ぼんやりとして...何かをしたのは覚えてるんだけど何をしたのかは本当にわからないわ。」
どうやら本当に嘘はついてなさそうな顔だった。
「そっか。まあ実際今でも夢みたいな感じだしな。」
「あっ!そうだ。夢で私がしたこと教えてよ。やってみたら思い出せるかもしれない。」
やったこと ...ね。
「まあ、やっぱり思い出さなくてもいいんじゃないかな?」
「何でよ?私何したの?」
「いや、まあその。そうだ!そういえば僕さ、本をいずれだそうと思うんだ。」
ユリスがじとっとした目で僕を見つめた。
「なんか誤魔化してない?」
「してない。してない。ユリスのおかげであっちの世界では助かったしユリスが来てくれて本当に感謝してるよ。」
ユリスは、ちょっと喜びだした。まったく簡単なやつだな。
「そっそう?感謝しなさいよ。んー本ね。まあ人気がでて印税が入ってくれば継続的にお金が入ってくるしいいかもね。」
僕は下を向いて地面の小石を蹴った。
「まあ、それもあるけど。僕達の住むこの大事な世界は一つしかないんだってことを例え下手でもみんなに伝えたいんだ。」
「そうね。んーでもどうせなら面白くするために少しぐらい脚色したらどうかしら?」
「例えば?」
「例えばキスシーンとか?」
僕は少し焦って早口になった。
「そっそれはやめとこう。」
「なんで焦ってるのよ。変なの。」
「いや、焦ってはないよ!んーでも一巻くらいしか本はだせないかな。」
「どうして?」
「だってそんなに冒険してないし。」
「その点は大丈夫。だって私達の冒険は始まったばかりなんですもの。それに貴方はそんな心配しなくてもいいように毎日馬車馬のように働いてもらうわ。」
「...やっぱり本を書くのは諦めよう。」
「そんなこと...あっなんか今思い出しそうになったわ。そう言えば貴方さっきキスシーンにやたら動揺してたわね!?まさか私に変なことしたんじゃ...。」
「しっしてない。ってユリスファイヤーボールとウォーターボールをだすな!って封魔剣もだして。ぼっ僕は先に行くからな!」
「ちょっと!まちなさーーい!」
ユリスのやつ目が本気だ...まったく今日は本当にもう...愉快な冒険日和だ。
-完-




