ワン・ソード 前編
眠い。
朝から眠い。
そんな僕の隣には、うるさいやつがいた。
「起きろー」
「眠いから先に行ってろよ」
僕は、布団を深くかぶった。
なんだ……なにか変な音がする。
「ファイヤーボールあんどウォーターボール」
「だから眠いから先にいっ熱っ冷っ」
お前は、馬鹿かと言いたくなる。
僕のベットとパジャマは、焦げてびしょびしょだ。
「起きましたよ。起きればいいんだろ」
彼女は、長い黒髪を揺らしながらこう言った。
「そう。起きればいいの」
「最悪の目覚めをありがとう」
「どういたしまして」
本当に最悪だ。
変な夢は見るし、今日は……
「今日は何の日だか知ってるの?」
「知ってるよ。我らが記念すべき日になる予定だろ。君は合格。僕は不合格」
僕は、びしょびしょのベットから立ち上がった。
改めて自分の姿をみると、この年でおねしょをしたみたいだった。
恥ずかしいな……まあ誰も見てないから大丈夫か? といった心配をしているうちに彼女はすたすたと1階に降りて行った。
もう一度寝ようかと思ったが、さすがにこの布団では寝れないかと思いベランダに布団をほして1階へと早々と降りて行った。
ベランダに干す際に、近所のおばさんに見られたのは人生で最大のミスの一つとなった。
1階におりると彼女は椅子に座りパンを食べていた。
僕は、脱衣所に行き私服に着替えた。
リビングに行くと彼女は紅茶を飲んでいた。
「それ高いやつだろ。金払えよ」
「手間賃よ。パン焼いておいたから早く食べなさいよ」
僕は、深いため息をつき、椅子に座った。
「なあ、いかなくてもいいだろ。田舎者がいったって馬鹿にされるだけだと思うぞ」
ここアセリア町は、町を少しでも出れば人よりも動物やモンスターに出会う確率が多いくらいのど田舎だ。
だが、教会や学校といった一通りの施設があり、決して悪いところではない。
なんでこんなど田舎にそんな施設があるのかと思うかもしれない。これには理由がある。
昔、僕が来るずっと前にある人の寄付金で建てられたらしい。そのある人の孫娘が僕の目の前にいるユリスだ。
「なあ、ユリス。もう一度考え直せ。僕はどうなってもいいが、君には心配してくれる家族がいるんだろ。ギルドをつくれば危ない目に合うかもしれない」
彼女は飲みかけの紅茶をテーブルの上におき僕の目を数秒見つめてきた。
「この町に何が足りないと思う? この町はいいところよ。でも、病院がない。病院がなければ、けがや病気をしたらここからかなり歩かなければならない。モンスターに襲われる可能性だってあるわ」
「それは・・・・・・わかってるよ」
ユリスは珍しくため息をつくとこういった。
「この町に必要なのはお金なの」
僕は、テーブルの上にあるミルクを一気飲みした。
「わかったよ。でも無理はしないでくれ。もしも、無理をするようならその時はとめるよ」
「やさしいのね。ちょっと目玉焼きでも作ってくる」
ユリスはさっとキッチンに行ってしまった。彼女が涙目になっていたことは、黙っておこう。なぐられるから。
「目玉焼きで来たわよ」
僕は目玉焼きをみると、そこにはいつもの目玉焼きとはかけ離れた失敗作が置いてあった。
僕は、一口でそれを口にいれた。
「うまいな。ところで今からの予定を教えてくれないかな」
彼女は、僕を少しにらみながら僕のコップを手に取り紅茶をそそいだ。
「この前言ったじゃないの」
「いや、あの時はまさか君の両親を説得できるなんて思わなかったからさ」
「その件については・・・・・・」
「まさか、両親にいってないの?」
あきらかに彼女は何かを隠している。彼女は、なにか隠し事があると耳をさわりだす癖がある。
「いったわよ。ただ・・・・・・」
「ただ・・・・・・」
「人間知らないほうがいいこともあると思うの」
僕は、少し真面目な顔をして問い詰めた。
「正直に言わないなら・・・・・・」
「わかった。わかったわよ」
真相は、こうだった。
僕がある日彼女に告白をした。大好きだ、結婚してほしいと。
だが、僕には夢がある。君を産んでくれた両親とこの町に恩返しがしたい。
そのためには、ギルドを作りお金を稼いで病院を作りたい。ギルドを作るには最低二人はいるんだ。君はそばで見ているだけでいい。
危険なミッションはしない。大丈夫だ。僕には、先祖から受け継いだ宝の地図がある。この宝の地図はギルド許可書がないと入れない場所だ。
そこの宝さえゲットしたらギルドは引退する。
2年後、結婚しようと。
「なにこの設定・・・・・・誰だよこいつは」
彼女は、うつむいたまま紅茶をスプーンでかき混ぜていた。
僕は、2回テーブルを人差し指でたたくと彼女はこういった。
「・・・・・・ごめんなさい」
「まあいいか。初めから一人でやるつもりだったし。そうか、そういえばこの前急に、娘をよろしくお願いしますってそういうことだったのか」
「ご・・・・・・ごめんなさい」
僕はため息をつき天井を見上げた。
「本当に結婚してもらおうかな」
「えっ」
「冗談だよ。さあいこうダイオンヘ」
ダイオンヘの道のりは割と想像していたよりはたいしたことはなかった。
危険視していたモンスターもダイオンヘ近づくに連れて遭遇しなくなっていき、あっさりと着いてしまった。
まあよくよく考えてみればギルドの本部にモンスターがうろついていれば依頼が来なくなり利益を維持できないのだろう。
「やっと着いたわね。ギルドの設立依頼を出しに行きましょう」
「ああそうだね」
そのままあっさりギルドを設立し新たな旅が始まるかと思っていたが問題はここからだった。
「ギルドを設立できないってどういうことなのよ!」
初老の無精ひげをはやした男性はこういった。
「申請だけでできるのは10年前の話だ。一時期補助金目当てに乱立しまくったせいでな今じゃ規制がかなり厳しいんだわ。まあギルドに所属して優秀な成績を収めりゃつくれるが、つうか適当なギルドに入ればいいじゃねえか。」
「絶対にいや」
僕は正直どっちでもよかった。よかったがそれを言ってしまうと後々後悔してしまう展開が予想できたのでとりあえず遠回しに言ってみた。
「作りたいけど作れないなら仕方ないのかなー」
若干棒読みしすぎたかもしれない。
「何か方法はないの!」
無視された。そもそも聞こえてないのかもしれない。もうすきにさせよう。
「ねえな。今どきギルド作るなんてやつは年に一人いるかいないかだからな。そもそも作れるぐらい優秀なやつはいずれギルドマスターだから作る必要がないんだわな。よし帰れ。」
「いやよ。絶対いや。」
僕は彼女の手を引っ張りこう言った。
「後ろに人が並んでるしとりあえず日を改めよう」
彼女はしぶしぶあきらめたがその時男性は声を上げた。
「あっ。あー忘れてたそういえば一つ方法があるわな。」
「えっ本当」
ユリスと声がかぶってしまった。
「闘技場で優勝すればできるわな。誰も使わねえが副賞でたしかあったわな。まあ無理だと思うが頑張ってなー。はい次の人どうぞー」
とりあえず一歩前進?いや半歩前進だ。
ホテルにつくと闘技場のポスターが貼ってあったのでしばらく見ていると従業員から声をかけられた。
「闘技場ですか。いいですよね。観光にはもってこいですよ。各ギルドのルーキーが参加してますからね。今年はなかなかの粒ぞろいですよ。」
「僕でも出れますかね」
「お客様もなかなか冗談がお上手ですねー。ギルドマスタークラスはわざわざ出ませんけどギルドの宣伝も兼ねてますから雑魚はいません。猛者ばかりですよ。お客様じゃ瞬殺ですよ。ですから、おっと他のお客様が来られたのでそれでは失礼します。」
よし帰るか。
ふと彼女の方を見ると眉間にしわを寄せて参加用紙をみていた。彼女をみるとそんな意見が通りそうな感じではなかった。
「ユリスちょっと武器屋に行ってくる。」
「わかったわ。申請はしとくから気にしないで。」
僕は聞かなかったことにしてホテルを出た。
町中をあるいてみると高価な品物が置いてある店ばかりで僕の財力で買えそうなものはなかった。
途中、10000ギルの安くて出来のいい剣を買おうとしたがよく見ると1000万ギルの見間違えで両手が震えてしまった。
「こえーー。この街こわいよ。ほんと何処かいい店は…」
ん?
この古くさい武器屋なんて良さそうだな。ここならそこまで高くないだろう。そんなことを思いながらドアを開けるとドアについた小さな鐘がカランカランとなり奥から白髪の店主が出てきた。
「何をお探しで?」
「えっと100000ギル位の剣って置いてますか?」
「何に使うんで?」
「いやーあの闘技場に出ようかなと」
そう言うと店主は大笑いした。
「ハハハ。最高じゃな。ハッハッハッヒー。いやーおもしろいな。いやー10才くらい若返ったわい。」
ここまで笑われたのはたちの悪い落とし穴に引っかかって以来だ。当然落とし穴の作成者はユリスだ。そして落とし穴の中身は…まあうん思い出したくはない。
「いやーすまん。というよりもお主勘違いしておるな。」
「勘違いですか?」
「闘技場での戦いを見たことないんじゃないか?闘技場で使う剣はこういう剣ではない。」
店主がとりだしたのは普段よく見る普通の剣だった。
「闘技場で使うのはこういうのじゃ。」
店主が次に出したのはただの小さな丸いガラス玉だった。
「ガラス玉ですか?」
「ただのガラス玉ではない。これはのーまず価値で言えば1000万ギルは軽く超える。ほれ握りつぶしてみな。」
「1000万ギルを軽くえっ握りつぶすってえっお金ないですよ。」
僕は後で高額な料金を請求されるかと思い焦っていた。
「いいからさっさとつぶしてみろ。どうせ割れん。さっさとやれ。」
僕はやれと言われたので精一杯力を込めて握りつぶそうと思ったが少し力を入れただけで割れてしまった。
「ほらな。われはせんっん?おっお主手をひらけ。早く!」
つぶせとかひらけとかうるさい店主だ。そう思いながら手を開くと跡形もなく
ガラス玉は消えていた。
「おっお金は払いませんからね!」
とりあえず言っておこう。
「まさかのーわしが生きとる間にみれるとわな。まあ代金はそうじゃのタダでいいわい。ガラクタじゃしの。」
タダなんていい響きなんだ。
ふと胸をなで下ろしたが、ガラクタという言葉に引っ掛かった。
「ガラクタなんですか?」
店主は頭をかきながら話し出した。
「ん?まあ嘘は言っておらん。価値は1000万ギルはする。懐かしいのー若気の至りでロストテクノロジーが手に入ると思っての大金叩いて仕入れたのは今でも苦い思い出じゃい。」
全然ピンとこなかった。
「よくわからないんですが」
「話が長くなるから実際にやってみた方がええの」
店主はとことこと歩いていきなり切りつけてきた。
「うおっ」
というか何だこれは?
魔力の塊を剣状にした魔法?
「何ですかそれは?というか」
というか体がとてつもなく重くなった。
しばらくすると全く動けなくなり床に寝そべった。
「うごけんかの?人間誰しも魔力をもっておると勘違いしているが、実は自然界から供給されているんじゃ。まあ電線をイメージすればいい。」
「はい」
地べたに伏せたまましゃべるのも新鮮だな。
少し涙が出てきた。
「でその魔力の供給が急に止まると動けなくなる。その供給を断ち切る剣いや魔法じゃな。でのまああのガラス玉には誰でも使えるように魔法が封じられているんじゃ。われれば特に修行せんでも魔法が使える。」
「へー。」
全然知らなかった。
そういえばといいながら店主はゴミ箱からガラス玉をとった。
「ほれこれもわってみな。これが今の魔法が封じられておる。」
「お金ないですよ」
「気にせんでいい。タダじゃい。というか町の入口で配ってなかったか?この時期は大抵あるんじゃがな。金出して買うバカがいるとは思わんかった。」
そういえば町の入口で何か配ってたな。
ユリスの全力疾走について行くのに精一杯で全然みていなった。
僕はガラス玉を手に取り握りつぶした。
「これで使えるんですか?」
「ああというかそろそろ立てるんじゃないか。」
僕はゆっくり起き上がり服を叩いた。
そして、右手に剣をイメージすると簡単に出てきた。
「うおっ。なんか出た。」
「以上説明終わり」
凄いなー都会。というかちょっと待てよ。最初のは何だったんだ。
「あのー最初のやつは何だったんですか?」
店主はズバッといった。
「わからん」
「でも何かの魔法が使えるようになってるわけですよね。」
「そうじゃの。ただイメージできんとつかえるもんもつかえわな。ハハハ。」
そんな商品仕入れるなよと思った。
「これで戦って勝てば優勝ですか?」
「まあそうじゃの。優勝?ハハハ。もし優勝したらわしがスポンサーになってやるわい。ほら店そろそろしめるからでってくれ。」
「ありがとうございました。」
「まあ気にするな。だがまあお主は何か持っているのかもしれんな。からかうつもりで渡したあのガラス玉を割ってしまったからの。」
からかうつもりだったのかと思いながらももう一度一応お礼を言いホテルへ帰った。
ホテルにつくといまだにユリスは参加用紙をみていた。
そんなにみても変わんないだろ。
「ただいま」
「おかえり。一応あなたの分出しておいたわ。」
「ユリスの分は?」
「……」
まさか僕だけ参加ですか?
「…まあいいか」
「いろいろ理由があるのよ。参加するのに100000ギルもするの。考えてたんだけど定期的にあるみたいだし私が出るよりあなたが何回か出た方が良いでしょ。一応剣術みたいだし。ただよくわからないのがこの説明なの。」
参加用紙の一文を指差した。
武器の使用は禁じ封魔剣のみの使用とすると書いてあった。
ああそれなら多分これだよと実物を見せようかと思ったがユリスがこの魔法を覚えたら悪用する危険性があるので黙っておくことにした。
「一応武器屋にあったから手に入れたよ。今は持ってないけど。」
まあ嘘はついてない。手には持ってない。
「明日には届くかしら?闘技大会の初戦明日よ。」
へー明日かー。あっ明日!?
「明日って……定期的にやってるんなら様子見ようよ。」
「出した後で気がついたわ。」
「まあ…健闘するよ。」
「頑張ってね。」
「ちょっと空き地で練習してくる。」
僕は町の外へ出る途中にご自由にお取りください未来のスターは君だと書かれていた看板を見つけた。
看板の下にはかごがあり、かごの中には先ほどのガラス玉が溢れんばかりに入っていた。試しに一つ握りつぶすと今度は割れなかった。
どうやら二度目は出来ないようだ。
かごの中にガラス玉をもどすと町の外へでた。
この辺なんかいいかな。
周りを見渡しても草木が生えているだけで他には何もない。
あたりには誰もいないし問題ないだろう。
「さて出してみるか。」
右手から青白い光が伸びると剣の形になった。
まず気づいたことは重さがない。剣速はあがるが違和感はある。
次に気づいたのは大きさは変えれない。
「伸びろ如意棒!」
やはり変わらない。
「後は持続時間と実戦だな。」
とりあえず封魔剣を出したままモンスターを探した。
あたりも少し薄暗くなってきたがいい懐中電灯変わりになった。
「いたいた。」
そこには赤毛の犬型のモンスターがいた。ただおかしな点がある。大抵犬型のモンスターは群れて行動する。
ゆっくり近づきよく見ると首輪がしてあった。
「なんだ飼い犬か」
僕が近づくとゆっくり近づいてきた。人慣れしているのだろう。
「よしよしおいで。」
「ポチに近づくなー!」
後ろから特大のファイヤーボールが飛んできた。驚いて反射的に封魔剣で切るとなんとファイヤーボールは消えてしまった。これは素晴らしい発見だ。つまりこれはユリスのファイヤーボールも消せるということだ。ふっふっふと笑っていると次は変則的に動かしながら複数のファイヤーボールを飛ばしてきたが、あっさりすべてのファイヤーボールを消滅させた。
「早く来ればよかった。」
おっと戦闘中だった。
目の前の術者は右手から封魔剣を発動した。ただ形が僕の使用している封魔剣と変わっており槍のような形だった。
封魔槍?
「この犬泥棒が!」
「違う!勘違いだ」
「封魔剣出しながら私のポチに近づいていたくせに見苦しい!問答無用!」
言われてみれば確かにそう見えたかもしれない。
仕方ない正当防衛だ。
だが彼女もなかなか強かった。斬げきとともにファイヤーボールを変則的に打ってくるとさすがに避けるのが難しい。
長期戦かと思っていたがコントロールが難しいせいか変則的に放ったファイヤーボールがポチに向かっていった。
「危ない!」
僕はポチの目の前にダッシュで移動した。封魔剣で消滅させようと思ったが封魔剣が何と消えてしまった。
「あっ」
僕はポチを抱きかかえながら逃げたが間に合わず背中に鈍い衝撃が走ったと同時に気絶してしまった。
目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。彼女の部屋だろうか?
「いってー。」
僕は重たい体を起こしてリビングに出るとそこにはポチが座っていた。
「よしよし。お座り!」
さっとお座りのポーズをとると尻尾を振っていた。
僕はしゃがんでポチをなでた。
次はお手かな?
「ごめんなさい。」
後ろから急に声が聞こえたので振り返ると体勢を崩して倒れてしまった。
僕の顔にはポチの手が置いてあった。
「まだお手は言ってないぞ。」
僕は立ち上がった。
目の前にいたのは銀髪の女の子だった。
年はユリスよりは2.3個上だろうか?
僕はあの場所で剣術の練習をしていたことを説明した。
「僕の方こそすみません。紛らわしいことして。」
「私の方こそすまない。明日大会なのに…。」
どうやら話をしていくと盗まれたのは本当であの場所の近くには犯人がいたらしい。
僕が気絶した後、発見したらしい。
「大丈夫だったんですか?」
「ああポチが倒していたみたいだ。」
ポチお前凄いなと思いながら頭をなでた。
「ポチはモンスターなんですか?」
「いやまあモンスターだから本当は常に監視しなければならなかったんだが…闘技大会への参加用紙をだすのをわすれてだな。その…本来ならギルドの誰かにみてもらうべきだったんだが…」
「なるほどつまりみていなったと言うことですね」
彼女は深々と頭をさげた。
「本当にすまない。ただポチは攻撃されなければ絶対に人は襲わないからその…心に油断がなかったといえば嘘になるが。」
「もういいですよ。ところで聞きたいことがあるんですけど封魔剣は一度消えるとどのくらい待てば使えるんですか?」
「封魔剣か…。人によるがまあ闘技大会までには使えるようになるだろう。」
「そうですか。じゃ帰ります。」
「送っていこう。私に出来ることがあったら同行でも何でもするから言ってくれ。まずはどこのギルドに送ればいい?」
「あのーホテルにいきたいんだけど」
彼女は家の鍵を床に落とすとゆっくりしゃべり出した。
「…いやあの何でもするとは言ったけどそういうのはちょっと…無理かな。」
僕は最初意味が分からなかったが彼女の顔が赤くなると意味を理解した。
「ちっ違う。そういう意味じゃなくてホテルに泊まってるんだよ!そもそもギルドに入ってないし!」
彼女はさらに赤くなった。
「わっわかっている!冗談だ!…とっというかあの強さでギルドに入ってないのか?」
「まあ…そうですね」
早く帰りたかったので帰りながら一から説明することにした。
「じゃホテルに行きましょう。」
「ああ」
また彼女の顔があかくなるのを僕は見逃さなかった。
「なるほどーそういうことか。なかなか大変だな。」
「はい」
雑談をしているとあっという間にホテルについた。
「そうだそういえば名前を言ってなかった。ミリアだ。フォルテというギルドに所属している。何かあったら言ってくれ。」
「ミリアさん送ってくれてありがとうございました。ではこれでっうおっ」
気づかないうちにポチが足元をぐるぐる回っていたせいでリードに足が引っ掛かりよろけてしまった。
そのまま彼女へ抱きついてしまった。
「だっだいじょうぶか。こっこらポチ!あっ…」
「へー…へー…そういうこと…練習から帰ってこないから心配して探していたのにへー…違う練習してたんだね。」
よく聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。
恐怖で振り向くことが出来ず小さな声でミリアさんに彼女おこってますかと聞くとポチがすまないとだけ言われた。
その頃ポチはリードを僕らの周りをぐるぐる走りまわり巻き付けていた。
ポチーーー!
「私も明日出るから…」
ユリスはぼそっと言うとホテルへ入っていった。
「本当にすまない。」
「あのミリアさんお願いがあるんですけど今日とめてもらえませんか?」
「別にかまわないが勘違いだと伝えた方がいいんじゃないか?私も謝りに行くぞ。」
「やめておきましょう。僕が封魔剣を使えない以上は危険です。っていうかポチお座り!!!」
二人で巻き付いていたリードをなんとかとるとミリアさんの家へ向かった。
朝が来た。若干憂鬱だ。
「そういえばミリアさんはどこに行ったんだ。」
リビングに行くとソファーですやすやと寝ていた。
まあまだ時間あるし朝食でも作っておくかな。
「ミリアさん冷蔵庫勝手にあけて使ってもいいですか?」
「ん?ううん。ああいいよ。」
そう言うとまた寝てしまった。
さて何を作ろうかと考えながらキッチンにむかい冷蔵庫を開けるとそこには信じられない光景が広がっていた。
腐った肉に腐った牛乳、一番ひどいのは消費期限が3年前のお菓子。
とんでもなく汚かった。
「ゴ…ゴミ箱?」
僕はそっと冷蔵庫を閉じた。
「買い出しに行ってくるか」
僕は近くの商店で品物を買ってきて朝食を作り終えるとミリアさんを起こした。
「遅れちゃいますよ。早く起きてください」
「うーんよく寝た。さてとなにか食べに行くか。」
「朝食なら作りましたよ。」
「そうか?え?」
しばらく固まっていた。寝起きで頭が回らないのだろう。
「あの冷蔵庫開けたのか?」
「ええまあ使えるものはなかったんで買いに行きましたよ。早く食べましょう。」
そう言うとテーブルに置いたパンを手に取り口に入れた。
「あ、あれは違うんだ。あれは置いていたら腐ったんだ。」
…当たり前だ。
「捨てようかと思ったんですけどクエストか何かで使用するのかと思って置いておいたんですけど?いらないなら今度捨てておきますよ。」
ミリアは焦りながら答えた。
「そうそうだった。実は最近まで腐ったものが大好きなモンスターがいてな。それようにわざと腐らしていたんだ。」
三年間もですか?と言いかけたが話を合わせることにした。
「やっぱりそうですよね。じゃあとめてもらったお礼に最近は使わないようなので明日にでも捨てておきますね。ミリアさんもクエストでいそがしいとおもうので」
ミリアさんは申し訳なさそうに口を開いた。
「うん…じゃあ暇なときでいいからたのむよ。」
朝食を食べ終わるとしばらく雑談した。
「いやー久々に家で食べたよ。美味しかった。君さえよければお手伝いさんとして雇ってもいいよ。」
ふとあの冷蔵庫を思い出した。
まだ未開の地があるのかもしれない。
「やっやめときます。
あのー聞きたいことがあるんですけど、ギルド員になるにはライセンスのようなものはいるんですか?
ユリスに聞いた話ではギルドを作った後にライセンスを取らないと行けないっていってたんですけど」
彼女は牛乳を飲みながらいった。
「うーん。まあちょっとまってて。」
彼女は本棚にあるホコリのかぶった本をみせ説明してくれた。
ライセンスにはSからFまでありそのライセンスにより行ける場所が変わってくるのだという。
なるほど少し分かってきた。
「どうやったらライセンスを取れるんですか?」
「んーまずFはギルドに入って一つでもクエストをクリアすればもらえるんだ。DからCまではある程度のクエストをクリアして筆記試験と実技試験をクリアすればもらえる。」
「筆記かー」
雲行きが怪しくなってきた。
「まあ大丈夫。私のお手伝いさんとして働いてくれればCまでは1年でなれる。」
彼女は笑いながらいった。
「もしだめだったらお願いします。あれそういえばBからはどうやったら取れるんですか?」
「優秀な成績を残すことかな。例えばそう闘技場で優勝とかね。だからルーキーが出るんだよ。優勝者はA準優勝はBだ。」
「ちなみにミリアさんのランクは?」
「私はCだ。去年は準決勝まではいったんだが…」
あれでCなのか
いやになるな
ふと時計をみると8時を指していた。
「もう8時ですよ。そろそろ行かないと。場所はどこなんですか?」
「ああ隣だよ」
確かにさっきから人の声がうるさいなと思っていたがまさか隣にあるとは思わなかった。
「着替えとかあるから先に行っていてくれないか?」
「わかりました。お互い頑張りましょう。」
さていくかな。
玄関を出て扉をあけるとそこには金髪で色白の女の人が立っていた。
「あれ?ここミリアの家だよね。」
「はい。ミリアさんなら着替えてるんでもう少ししたら出てくると思いますよ。」
「へー。あのミリアが男をね。ほーなるほどこういうのがよかったのね。」
ニヤニヤと僕の顔を見ていた。
「じゃあ行きますね。」
「今回は動揺させる手がいいかしら?」
僕は立ち止まった。
「あの。ミリアさんに手を出したら許しませんよ。」
驚いた顔でこちらを見てきた。
「ほう。私がフォルテの最強ルーキーだと知っても同じ台詞が言えるの?」
そう言うととてつもない魔力を解放してきた。あたりの通行人がなんだなんだと集まりだした。
「何回でもいいます。ミリアさんに何かしたら僕が許しません。」
彼女は笑いながら魔力の解放をやめた。
「いやーごめんごめん。本気になんないでよ。冗談だよ。」
一応同じギルドみたいだしまあ大丈夫かな?
「んーじゃあ行きますけど変なことはしないでくださいね」
「変なことはしないわ。」
僕は闘技場に駆け足で向かった。
闘技場では出店が沢山ありまるでお祭りのようだった。
「えっと。受付はあそこかな。」
受付と書いてある小屋に向かった。
「闘技大会への受付ですか?」
「はい。」
「一般枠ですね。参加番号は?」
「参加番号?困ったなそんなの聞いてないぞ。」
「39217458」
振り返ると目を赤くしていたユリスが立っていた。
泣いたのか。
「39217458ですね。受付完了です。」
「ユリスあの話があるんだ。」
「…わかったわ。裏に行きましょう。」
裏って僕は何をされるんだ。
人気のない林の中につくとユリスは封魔剣を発動した。
うわー。
「…封魔剣手に入れたんだね。」
精一杯の引きつった笑顔でいった。
ユリスの封魔剣は複数の細い剣がふわふわと浮かんでいた。まさかあの剣飛ばせるのかと思っていたがそのまさかだった。
まず1つ目が右耳をかすった。
「まず1つ目になんで武器屋で手に入れたなんて嘘をついたの?」
「うっ嘘じゃない。本当にあったんだ。僕は最初に普通の剣で戦うのかと思って武器屋にいったんだけど…」
こうなったら仕方ない。すべてを白状しよう。質問のたびにあの剣が飛んできたらさすがによけれない。
というか…僕は何も悪いことしてないからな。
「ふぅーん。じゃきちんと練習していたらトラブルに巻き込まれたと。」
「そうそう。」
「ギルド設立についてよく調べてるからまあ一応信じてあげるわ。じゃそうね出店でなんか食べましょ。」
ミリアさんに聞いといてよかったー。
「そうだね。早く行こう。」
彼女の手を握り僕は足早に向かったが足早に向かったことを後々後悔した。
出店でドリンクとホットドッグを二人で買ってたべているとミリアさんの声とさっきの金髪の女の人の声が聞こえてきた。
「いやーまさかミリアがああいうのがいいとはねー」
「いやマリーだから違うんだ」
「でも同じ家に男女が二人でいるなんてもう確定でしょ。あんたが男を泊めたなんてしれたらギルド中の男は泣くわね。」
「いやだから違うんだ」
「それにね。今日の朝だってびっくりしたわよ。俺のミリアに手を出すなーってセリフいやー見せてやりたかったよ。」
僕はドリンクをふきだした。俺のとはいってないぞ!
そっとユリスの方を見ると無言でジュースを飲んでいた。
「ん?おー少年ミリアが君の武勇伝をしんじてくれんのだ。ん?あれまさか隣にいるのは、まさかあれ?うそまさか?」
ユリスさんがマリーの言葉を遮ってしゃべり出した。
「うちの馬鹿がすまない。
昨日はユリスさん本当にすまなかった。私の勘違いで迷惑をかけてしまって」
「いえ全然気にしてません。」
ふうー。
さっきの林で封魔剣飛ばしてきたのをもう忘れたのか?
「ミリアお前人の男に手を出すとはさすがにこの私も負けたわ。」
「マリー少し黙れ」
声は静かだが少し怒っているように感じた。
「怒るなよミリア。ところで少年どっちが本命なんだ。」
何を言ってるんだこいつは?
「いやまあ…」
なんて言えば正解なんだ?
「…」
「…」
「…」
なんで誰もしゃべらないんだ。
その時だった。
町中に仕掛けられたスピーカーから闘技大会のアナウンスが聞こえてきた。
「…えー長らくお待たせしました。これより闘技大会を開催いたします。選手の方は速やかに闘技場にお入りください。」
僕はさっと立ち上がりゴミを捨てた。
「じゃユリス先にいってるから。ミリアさんでは。」
闘技場の方へ駆け足で走り出した。
闘技場につくと受付の女の人がスピーカーをもってしゃべっていた。
「一般枠の方は速やかに闘技場にお入りください。」
「一般枠だったよな。」
円上の闘技場の中に入ると、闘技場の中には100人程度だろうか。なかには強そうな人もいる。
観客は少ないが2階にチラホラいた。
どこからか声が聞こえてきた
「おーい。少年!」
無視することにした。
「おーい。こっちこっち。無視か。無視なのか。仕方ないギルドのみんな聞いてくれ。一発芸、朝のミリア宅にて」
「なんですか!!」
僕はさっと振り返ると闘技場の2階でポップコーンを食べながら手を振る女性を発見した。
「なんだ気づいているじゃないか?」
「なんですか?あれそういえばミリアさんは?」
ミリアさんの姿が見当たらない。
「気になるか少年?んー?」
「心配なだけです。あなたが何か変なことをしてないか。」
「変なこと?変なことというのは例えば昨日の夜に抱きついたようなことか。」
「なんでしってるんだ!」
「え?」
え?えって知らなかったのか?
「いやーポチに抱きついた話ですよ。」
とっさに誤魔化したが聞いてはいなかった。
「まさかそこまでいってるとはな。かまをかけて正解だった。じゃ少年頑張ってなー。」
そう言うとどこかえ消えていった。
何しに来たんだあの人。
「では一回戦目は勝ち残りです。」
まずいはじまってる。
僕は人だかりの方へ走って行った。
「何してるの?」
「ユリス!」
僕はユリスから説明を受けた。
一回戦目は10人になるまで戦い続け、封魔剣を使用をしなければならないこと。
後は30秒間起き上がれなければ封魔剣で斬られたと見なし魔法により即退場だとしった。
「じゃチームで戦うわよ。私が後衛あなたが前衛ね。ガンガン攻めるわよ。」
「いや…なるべく戦闘は避けて逃げよう。こういう多人数との戦いは逃げ道を確保しながら戦わないと厳しい。それで適度にチームの人数が多いところが狙われたらそこをユリスの封魔剣で狙おう。」
ユリスはうなずいた。
「わかったわ。」
「じゃ戦闘開始だ」
僕は封魔剣を発動した。
作戦は思いのほかうまくいった。
というよりも途中からユリスの封魔剣が強すぎて誰も危険をおかしてまで近づかなった。
「あと10人くらいかしら。おりゃ。」
「ねえユリス。誰も遠隔操作できるのいないんだけど封魔剣なんだよね?」
「うーん一般枠だからじゃないの?」
まあ確かにそうかもしれない。
そんなこんなで一回戦目はなんと通過してしまった。
2階戦目はギルド枠の90人をたしたトーナメントらしい。ここからは難しいだろうと思っていたが、なんと勝ち上がっていき僕とユリスは準々決勝まできてしまった。
ユリスと夕飯を食べホテルへ変える途中ミリアさんたちと出会った。
「おう少年。会いたかったぞ。つぎの相手は私だ。もし私が負ければ私のことも抱いてくれてかわまん。あの夜のように。」
そういった瞬間目にもとまらぬ速度で封魔剣で斬りつけられた。
二人によって。
「ぐぉ」
「馬鹿がすまない。凄いな。本当にここまで上がってくるとは。ほーこれが遠隔操作ができる封魔剣か?」
「ミリアさんでも珍しいんですか?」
「ああ。というよりもみたことがない。だが実物がある以上はあるのだろうな。」
ユリスは封魔剣を消した。
「ところでミリアさんは今日の試合はどうだったんですか?」
「勝ったよ。つぎの相手はユリスさんだ。よろしくね。」
ユリスは小さくお辞儀をした。
「一人の男を巡り熱い戦いが今始まる。次回ぼっほ」
再度斬りつけられて倒れた。
「馬鹿がすまない。よしじゃあヒントをあげよう。マリーの目は戦闘中は見るな。よく視線を誘導して死角から攻撃してくる。右手だけみてればいい。」
ちょっいっちゃだめっと聞こえてきたがお構いなしに聞いた。
「マリーさんの封魔剣はどんな形何ですが。」
「形は普通の剣だが消したり出したりするタイミングがうまい。下手に近づくとやられるから気をつけろ。」
「ちなみにマリーさんの弱点って?」
「それは」
「ちょっとまったー!」
マリーさんはミリアさんの口を両手でふさいだ。
「悪かったよー。あそこあのパフェがおいしい店。あそこ行こう。私のおごりで。ね。」
ミリアさんはゆっくりマリーさんの手を外すと口を開いた。
「当然いくら食べてもいいんだろうな。」
しぶしぶマリーさんはいった。
「好きなだけ食べてください。少年、君のせいだからね。」
そう言うとすたすたと町の奥に消えていった。
次の日、ユリスとミリアさんの試合を観戦しているとマリーさんが近づいてきた。
「少年。どっちにかってほしいかな?」
僕は一言いった。
「ミリアさんに言いますよ。」
その後ポップコーンとドリンクを買ってきてこれでなんとかといわれた。僕はポップコーンを口に入れた。
「若干ミリアさん押されてますね。」
さっきから防御ばかりで全然攻撃していない。いやする気がないのか。
「まああれはどちらかというと楽しんでるわね。まあミリアに勝つにはね、短期決戦しかないわ。持久戦に持ち込むと弱点をみつけられて終了よ。」
まさにその通りだった。続けて行くにつれて疲れたのかユリスの攻撃が単調になってきてそこを急接近され負けてしまった。
「まあいいせんいってたわね。もし私がやるんなら一本地面に隠して開始と同時に背後からズドンよ。」
せこいなー。まあ確かに正々堂々やったら勝てないかもしれないけど。
「せこいなー。」
「せこくないわよ。油断してる方が悪いの。ああ後ね、そのドリンクには下剤が入ってるわ。」
下剤…全部飲んだんですけど。
「え?」
「冗談よ。でも観客にもいなかった?急にドリンク渡してきたり食べ物渡してきたりするやつ」
まあ確かに何人かはいた。遠慮してもらわなかったが。
「あれ全部下剤入りなんですか!?」
「まあ全部じゃないかもしれないけど半分くらいは怪しいわね。下剤じゃなくてもたとえば魔力が出しづらくなるような薬とか後は眠くなる薬とか。気をつけなさいよ。」
初めてまともなことをしゃべっているのを聞いた。
「はい。ありがとうございます。」
「じゃ行きましょう。次は私たちよ。」
「少年待っていたぞ」
目の前に立っている女性はにこやかに笑っていた。
周りを見渡すと今までの試合とは違い観客席は賑わっていた。
「観客多いですね。」
「まあここまで来るとな。では始めるか。」
お互いが封魔剣を発動すると試合が始まった。
まず右下からやってくる攻撃をかわし切り込んだ。視線と体勢を見ると左から攻めてくる気がした。その時、ふとミリアさんのヒントを思い出した。
右手をみろ。
右手がない。いや正確には右手はマリーさんの体で見えない。
まさか!?
瞬時に後方へジャンプした。
予想通りだった。
マリーさんの封魔剣はマリーさん自身の身体を突き抜けて僕の鼻先をかすった。
「まさか。そんな手があるなんて。」
「まずは合格かな。そう封魔剣は自分自身の魔力は封印しない。だから自分自身を刺しても問題ない。」
「じゃあ次だ。」
そう言うとマリーさんは封魔剣を消してものすごいスピードで近づいてきた。
なぜ消した?
その答えはすぐに分かった。
彼女は体術を使いつつ視線を誘導し攻撃してきた。時には封魔剣を発動し、きりかかってくると見せかけて封魔剣を消し体術で隙を作ったあと封魔剣で攻撃を行ってくる。
特に厄介なのは癖で剣を受けようとすると一瞬封魔剣を消して僕の封魔剣をすり抜けたあとに再発動させる。
防御の意味がない。
というか急に強すぎだろ!
今までの試合は何だったんだ。
「はあ…はあ…」
僕は距離を取り封魔剣を消した。その後に左手から封魔剣を発動するイメージを行った。
…でない。
「少年私のまねでもするのかな。それとも」
あの時ミリアさんが言いかけたマリーさんの弱点。
弱点があるとしたら剣を持っていない右側から攻めるぐらいか。発動箇所が決まっているのなら攻撃できる範囲は絞られる。
練習したら左手からも出せるとかなしだぞ!
「そこだ。」
なんとか互角の勝負になってきた。
「少年。やるじゃないか。ミリアと互角の勝負をしたって話は本当らしいな。じゃあ次だ。」
じゃあ次だ?
まっまだ何かあるのか?
そう思った瞬間マリーさんはとてつもない魔力を開放した。それを左手にすべて集めた。
「少年。ここで問題だ。ミリアとの戦いで突然封魔剣が消えてしまったのはなぜでしょう?」
「…僕の持っている魔力がなくなったから。」
「ぶっぶー。不正解。封魔剣は魔力を消費しません。答えは封じこめられる量を超えてしまったからです。」
「……」
最悪だ。
つまり右手には封魔剣、左手からは僕の封魔剣を消してしまうほどの魔力を放ちちながら攻撃してくる。
「特大のファイアーボールと小型のファイアーボールを何発かだったよね。まぁこれ1発当てれば消えるでしょ。ミリアに聞いた話だとね。」
もうだめだ。純粋な剣術ならまだしもこんな手を使われたらまともにやっても勝ち目がない。
イチかバチかにかける。
僕は封魔剣を消しマリーさんのまねごとをした。
そんな戦いしかできないことを演出するために。
そして戦いが続き、僕の封魔剣はついにマリーさんの左手に触れてしまった。
「くっくそ。まだだ。」
「少年。いい試合だったよ。でも封魔剣なしじゃもう無理だよ。」
僕は体術の構えをとったがあっさりこかされた。地面に顔をつけ立ち上がろうとしたが、またこかされてしまった。仰向けに倒れた僕は右手と左手を使い後ずさりした。
「まだだ。」
「少年。諦めないのは大事だけど諦めるのも大事だよ。もう終わりにしよう。」
「いやだ。…いやだ。」
マリーさんは封魔剣を発動し近づいてきた。
彼女がゆっくりと剣を振り上げ振り下ろした瞬間僕は自分の背中越しに封魔剣を発動した。
青白い光は見事に彼女の腹を貫き彼女は倒れた。
発動できるかは本当にイチかバチかだった。それに発動できたとしても当たるかどうかはわからなかった。
僕は信じた。
マリーさんの計算とそして優しさを。
気付くと涙が出ていた。こんな情けない戦いしかできない自分に。
「少年。情けないぞ。」
「ごめんなさい。こんなこんな卑怯な方法しか」
「違う!情けないといったのは戦いのことじゃない。私に勝って泣くんじゃない。というかさっさと立て!」
「え?」
「私は君に勝ってもいないのに勝ったとおもってしまったんだ。そこが敗因だよ。さあ審判が困っているだろ。どっちも寝てたんじゃ。さっさと立ちなさい。」
僕は立ち上がった。歓声にかき消され、よく聞こえなかったが僕の名前が告げられた気がした。
「少年。お願いがあるんだ。」
「何ですか?」
「どうやら足をひねったらしく歩けないみたいだ。」
「すっすぐにひとを呼んできます。」
僕は誰か呼びにいこうかと思ったが呼び止められた。
「まっ待て。少年。」
「え?」
「これ以上恥ずかしい思いはしたくない。できれば私を控室まで連れて行ってくれないか?」
「わかりました。えっとじゃあ肩を貸します。」
「そうじゃない。」
「おんぶの方がいいですか。」
「少年。そうじゃない。もう1つあるだろう。」
「…お姫様抱っこですか。」
「少年。さあ早く。」
僕はお姫様抱っこをしながら闘技場を出た。闘技場をでるまで何故かマリーさんはずっとある方向へ向かって笑顔でピースをしていた。
僕達は控室に到着した。
「マリーさん。あのこっちの方が恥ずかしくないですか。」
「少年。下ろしてくれ。ただな私だって好きでやってるんじゃないんだ。私も隙をつかれて攻撃されなければ変なこけかたしなかったよ。」
僕はマリーさんをおろしたと同時にまた涙がこぼれてしまった。
「うっすいません。」
「少年悪かった。だがこれ以上なくのはやめてくれ。そんな顔見せられたらお姉さんの悪い癖が出そうだ。少年あそこの椅子に座らせてくれ。」
僕達は椅子に座るとしばらくあの試合について話し合った。
「なるほどな。ミリアと戦うまで封魔剣発動しっぱなしだとは…それで発動出来たのか。ミリアには戦いの部分しか聞いてなかったからな。うーん計算間違い。」
「マリーさん僕も聞きたいことがあるんですけどなんで少しずつ試すように戦ったんですか?」
「ああ。ミリアから互角って聞いたからミリア戦のイメージをつかみたかったんだよ。あいつには勝ったことないんだよね。ちなみに視線を誘導する方法と封魔剣を出したりする方法は似たような方法で負けたよ。」
「マリーさんが最後にやった魔力を左手に集めた方法をどうやってミリアさんは攻略したんですか?」
「知りたい?」
「はい。」
「それはね。」
「はい。」
「分かりませーん。」
マリーさんは笑いながらいった。
「ええ!?」
「だって今回の戦いで使う予定だったんだもん。結構覚えるの苦労したのに、まさか少年に負けるとはね。」
「…すいません。あの変なこと聞いてもいいですか?」
「ミリアのバストはDだぞ。」
「D!いやっちがいやあの。」
「冗談だ。少年君は本当におもしろいな。」
「…あっあの僕が卑怯な方法で勝ったのになんで闘技場はあんなに盛り上がっていたんですか。」
「ああそれはね。そもそも一般が準決勝までいくなんて久しぶりだからかな。いくら仕組まれてるっていってもまあいけて準々決勝までだよ。それに勝ち方にはみんなこだわってないと思うよ。」
「仕組まれてる?」
「ああ変な意味じゃないよ。ギルドも人手不足でね。優秀な人がほしいんだよ。一般枠で参加した人たちは実力見たいから比較的弱い人達と最初は当たるんだよ。スカウトするためにね。」
なるほどそれでか。
「じゃあそろそろ帰りますね。」
「捻挫した私に一人で帰れと?」
「え?」
その後家までお姫様抱っこしたのは言うまではない。
なんとかマリーさんの家についた。腕が正直痛い。というかマリーさんが普通に重い。
「少年。今失礼なこと考えてたろ。」
「いえ。マリーさんところで足大丈夫ですか?ちょっと腫れてないか見せて下さい。」
「それなら大丈夫だ。嘘だから。」
「なんでそんな嘘つくんですか。」
「お姫様抱っこされてみたかったから。」
「…」
本当にそうなのだろうか?
「私は怪我もしてないし、あの負け方にしても何とも思ってないんだから。もうそんな顔はやめてよ。スマイルスマイル。」
控室で雑談しているときも痛そうな素振りはまるでなかった。軽くひねったと僕は考えていた。もしかしたら嘘かもしれないと。
だが、よくよく考えるとマリーさんはふざけたことを言うときは何かを隠してる時が多い。
「…一応見せて下さい。」
「え?少年だめだめだって。」
「動かないでください。」
僕は少し強引にゆっくりとソックスを外して足首を確認した。かなりひどい腫れだった。
「あーもうばれちゃったか。少年のえっち。」
「なんでこんなにひどいことになっているのに黙ってたんですか!氷どこにありますか?」
僕は大丈夫だという彼女を強引にソファに寝かせて応急処置を始めた。僕は馬鹿だ。控室で最初に確認するべきだった。
「少年もう大丈夫だって。この位の怪我は慣れてるから。魔力がもう少したまったら治療魔法も使えるし、だからそんな顔もうしないでよ。」
「本当に治療魔法なんて高度な魔法使えるんですか?」
「Aランカーの私を信じなさい。」
やっぱり嘘だ。
「こんな時間じゃ病院も開いてないし。今日は僕泊まりますね。ちょっと買い出しに行ってきます。」
そう言うと僕は急ぎ足で近くの商店へ向かった。
「少年の料理はおいしいな。もし少年が次で負けても私が雇ってあげるよ。」
彼女は元気そうにパクパクとソファで食べていた。
「ミリアさんにも言われました。そういえばもう大丈夫ですか?」
「だから最初から大丈夫だっていってるでしょ。それとって。」
「はい。」
「おっと少年こないかと思っていたが、はいこのコップをテーブルにおいて。」
「はい。誰か来たんですか?」
「少年私の膝の上に乗って。そうじゃない。はやく。私の方を向いてそうだ。」
「なんでこんなことするんですか!?」
「はやく。」
僕はマリーさんの膝の上に乗った。
ドアを叩く音がしたので左をむくと次の瞬間僕はマリーさんの上にもたれ掛かっていた。正確にいえばマリーさんの封魔剣により倒れてしまった。
「なんでこんなこと?」
「おっとしゃべれないように。」
マリーさんは僕の顔をソファに埋めて何やら詠唱をした後に指先を口元に近づけた。
あれ、しゃべれない!
こんなことも出来るのか!?
「少年だめだって。誰か来てるよ。ね。もうそんなことしちゃだめだって。」
次の瞬間ドアが吹き飛んだ。
恐らくこの声はミリアさんだった。
「おまえ達何をしている。」
「どうしたのミリア?そんな顔して。」
「お前が私に向かってピースしたときから怪しいと思っていたがまさかこんなことをしているとは。もっとはやくくればよかった。」
「でも私がしたんじゃないよ。ね、少年。」
あんたがしたんだよ!
「…そうなのか?なんとかいったらどうだ!」
ミリアさんすいません。何もしゃべれません。
「なに?なに?早く帰ってくれ?って」
いってません。
「ユリスさんだってこんなこと望んでないぞ。」
僕もこんなこと望んでません。
「でも…ほんとに望んでないのはあなただったりして」
後ろの方で恐ろしい魔力を感じたが、すっと消えてしまった。
「わかった。今日のところは私が帰ろう。決勝でもし当たることがあれば地獄を見せよう。性根をたたきのめしてやる。」
そう言うと帰っていったのだろう。
再びドアが破壊された音が聞こえた。
「少年大成功だな。あんなミリア初めて見たわ。」
僕はむくっと起き上がった。
「…」
「おっとごめん。ほっいと。これでしゃべれるでしょ。」
「なんでこんなことするんですか!決勝で地獄を見せるってどうしてくれるんですか?絶対勝てないですよ!」
「少年これは作戦だ。ミリアが1番厄介なのは戦いの中、冷静に分析してくることだ。だが勘違いしてくれたおかげでその冷静さが消えた。これでポチを盗まれたときと同じ戦いが出来る。」
「それは…そうですけど。」
「少年。お風呂に入りたいな。というかパジャマに着替えたい。」
「まだ足治ってないから体拭くくらいにしといた方が良いですよ。」
「そだね。じゃあお願い仕様かな。」
そう言うと服のボタンをひとつひとつゆっくりと外していった。
「じっ自分でやってください。」
「少年ほんとに君は予想通りのリアクションをとってくれるな。ほら少年はお風呂に入ってきなさい。ズボンとシャツは私の貸して上げるから。」
「いや良いですよ。この服で。」
「だーめ。洗濯しといてあげるからお風呂場の洗濯カゴに入れといて。」
そう言うとマリーさんは詠唱を行った。しばらくするとズボンとシャツとタオルがふわふわと飛んできた。
「すごいこんなことも出来るんですね。」
「そだね。初級魔法だけど結構便利だよ。じゃあ私は着替えてくるね。お風呂場はこの部屋をでてすぐ左だからね。あっあとのぞかないように。」
そう言うと彼女はふわふわと浮かびながらどこかへ消えてしまった。
最初からそうやって移動すればよかったんじゃないかと思いながらお風呂場に向かった。
お風呂から出てくるとマリーさんはパジャマ姿で待っていた。
少しだけ可愛いと思ってしまったのは不覚だ。
「さて少年私を部屋まで連れて行ってくれ。」
「さっきみたいに飛んで行けば良いんじゃないですか。」
「もう魔力がないんだ。はやく。」
僕はまたお姫様抱っこをしてマリーさんの部屋に移動しベッドの上に寝かせた。
「じゃあ僕はソファで寝ますね。ん?」
机に置いてあったのは証明書だった。
「ああAランカーの証明書だよ。少年も優勝したらゲットできるよ。」
「冗談ばっかりマリーさんがAなわけ……」
確かにAと書いてある。
「なっ少年。Aランカーだろ。」
「マリーさんさすがに偽造はよくないと思いますよ。犯罪じゃないですか。」
「ちがーう。本物だよ。」
「なんで闘技場にでてるんですか?Aランカーなのに?」
「ほんとに少年は何も知らないな。Aランカーといってもそれは魔術の功績でとったものだ。Aランカーの上Sランクをとるには最低でも3つのAをとらなければならないんだ。」
「つまり闘技場でのAランクを取るために参加したと。」
「そういうことだ。」
あれ眠い。眠い。急に眠くなってきた。
「ほら少年眠くなってきたな。私と一緒寝よう。」
「それはさすがにまずいですよ。」
眠い。そう思った次の瞬間僕は深い眠りについていた。
朝目覚めると隣にはマリーさんが寝ていた。
変な汗が出てきた。
僕は何かしてしまったのだろうか。
何故パンツ1枚何だろう。
とりあえず脱ぎ捨てられた服を急いで着た。
「マリーさんあの起きてください。」
彼女は起き上がった。とりあえずパジャマ姿なので色々と安心した。
「ん?あれもう朝か。やってるうちに寝ちゃったみたいだね。」
やってるうちに?
「あの何をやったんですか?」
「それはね。言わなくてもわかるでしょう。」
「…まさか。」
「回復魔法よ。体軽いでしょ。」
僕は腕を回してみた。確かに昨日までの疲労はかなり取れていた。
「ですよねー。」
「でも少年なかなか良い体してるわね。もう少しでお姉さん襲っちゃうとこだったぞ。危ない危ない。」
「そっそれだけはやめてください。」
「さて少年リビングまで運んでくれ。回復魔法使ったから魔力がまだないんだ。」
僕は起きた早々にお姫様抱っこをしながらリビングに向かった。
「っていうか自分の回復してください。いつまでお姫様抱っこいつまでさせる気ですか。」
ソファにマリーさんを座らせた。
「んーわかったよう。ほっいと。」
詠唱を行うと足首がキラキラと緑色に光った。
「じゃあ包帯取りますね。」
確かに治ってる。回復魔法って便利だな。
「うむ。治ったみたいだね。」
ただふと疑問に思ったことがある。
「包帯の上からでも出来るんですね。」
彼女の目が明らかに泳いだ。
「えーとだな。その。」
寝起きには弱いのだろう。
「何したんですか。」
「少年にいってもやらしてくれないかなっておもって。」
「何したんですか!」
「わかった。正直にいうから怒んないでよ。」
「したことによります。」
「回復魔法かけ終わってから少年が武器屋で手に入れたロストテクノロジーってのを思い出したので調べてました。」
そういえばそんな話しを控室でしたな。
「なにかわかったんですか。」
「全然わかんない。それに途中寝ちゃったし。」
寝ちゃった
その言葉でふと思い出した。
「まさかと思いますけど昨日の夜魔法を使って僕を眠らせませんでした。」
「少年。ご飯食べに行こう。私の奢りだ。」
「僕今日かなり食べますよ。」
「…うん。好きなだけ食べて。」
僕達は着替えた後に朝食を食べに行った。
「美味しかった。お腹いっぱい。」
というか食べたことも聞いたこともない料理ばっかりだった。
「ここは高級店だからね。っていうか食べ過ぎだよ少年。…もう許してくれる?」
「今回は許しましょう。一応一線は越えてないみたいなので。」
「じゃあお会計お願いします。」
ウェイトレスが近づいてきた。
「お会計58000ギルになります。」
「58000ギル?」
朝食で?
58000ギル?
「はいカードで。」
「はい。いつもありがとうございます。またのお越しを。」
僕達はレストランを出た。
「どこに58000ギルの要素があったんですか!」
「こら少年レストラン前はまずいよ。ほら帰るよ。」
彼女が素早く詠唱を行うと気付けばマリーさんの家の中だった。
「え?どうやって?」
「魔法です。」
彼女はコートを脱いでソファーに腰掛けた。
今まで疑っていたがAランカーというのは本当なのかも知れないと思い始めた。
「高かったですね。えっと少し払った方が良いですよね。」
ズボンの中にあるお財布を取り出そうとすると彼女はいった。
「遠慮しない。私が奢るっていってるんだから。ところで美味しかった?」
「はい美味しかったです。でも高すぎです。」
「それはよかった。まああそこはね、食材にこだわってるの。さてと朝食も食べたし修業しましょうか。後準決勝まで3日あるわ。」
「え?」
「Aランカーの私に教えてもらうんだから光栄に思いなさい。」
そう言うと彼女は詠唱を行った。次の瞬間には見たこともない広場に到着した。
「ここはどこですか?」
「秘密の特訓場。次の相手は少年にとってはやりやすい相手だよ。私みたいにセコいことしないし純粋に剣術で勝てれば倒せるよ。じゃあ次に。」
彼女はまた呪文を唱えた。そうすると1体の人形ができあがった。
「これは?」
「対戦相手の去年までのデータを参考にして作った戦闘人形ってとこかな。じゃあはじめるよ。」
人形がむくっと起き上がってくるととてつもない速い攻撃を繰り出してきた。動きに無駄がない。反撃出来ない。
「くそっ。強い。」
「少年言い忘れてたけどその剣に当たると痛いからね。後やめるときはストップていってね。」
一日が過ぎた。一度も勝てなかった。
「ほい。回復完了。」
「マリーさんはあの人形に勝てるんですか?」
「純粋な剣術のみなら。うーん。7対3ってとこね。」
「あっちが7ですよね。」
「うん。ちょっと1回帰ってご飯食べよう。」
僕は料理をささっと作り胃の中に放り込んだ。
「早くいきましょう。」
「もうちょっと待ってよ。そういえばユリスちゃんだっけ私が食べる間あの子にあってきなよ。多分心配してるよ。」
「でも時間が!」
「いいからいきなさーい。」
彼女が呪文を唱えるとあのホテル前だった。
本当にホテル前についた。
全くすごいな転送魔法は
ホテルの階段を上がり部屋に入ると小さな泣き声が聞こえてきた。
ドアをあけて中をみるとユリスがうずくまって泣いていた。
「ユリス泣いてるの?」
「ごめん。負けちゃった。」
まずいな。ここまで落ち込んでるとは。なんて声かけたらいいんだろう。
「大丈夫だよ。まだ俺が残ってるんだ。絶対に勝つよ。それにさ定期的にやってるだろ。仮に負けても次があるさ。」
「そう...だよね。そういえば今までなにしてたの?」
「いやマリーさんのところで修行みてもらってるんだ。」
「そう。そっか遊んでるわけじゃないんだよね。ごめん。次の試合頑張って。」
「うん。そういえば何か食べた?何か作ろうか?」
「うんうんいらない。もう疲れたから今日は寝るね。ありがと。」
「じゃ修行してくるね。」
「うん。」
「やっほー。修羅場終わった~?そろそろ戻すよ。」
頭の中から声がする。マリーさんの声だ。
「はい。」
そういった次の瞬間には修行場にいた。
「よし。続きを始める前にいくつか聞いときたいんだけど少年は体術とかは使え無いよね?」
「はい。」
「ロストテクノロジーも何かわからないと。」
「はい。」
「でも私のことは好きだと。」
「...」
「そこはハイでしょ。さて困ったね。どう考えても勝てないかなこれは。」
「例えばマリーさんのあの手のひらに魔力をためるやつはダメですか?」
「あれは無理だとおもうよ。あまりにも燃費悪いし。まあ感覚的なものだけど次の対戦相手の封魔剣消す気なら少年の魔力量だと3秒以上使ったら倒れるわね。」
「厳しい...ですね。魔力量って増えないんですか?」
彼女は少し考えてこういった。
「んー。結論でいうと増えない。まあイメージ的には電池かな。充電式の懐中電灯想像してみて。」
「懐中電灯ですか?」
「そうそう。魔法がライトで少年が電池で魔力が電源みたいな感じかな。電池はかえれないでしょ。」
やはり今勝てる方法があるとしたら望みは薄いがロストテクノロジーしかないのかもしれない。
「ロストテクノロジーが何かわかる方法はないんですか?」
「一つだけ方法があるわよ。地獄みるけどやってみる?」
「ちっちなみにどんな方法何ですか?」
「やり方を限定するの。今回必要なのは戦い用でしょ。少年がイメージすればいいの絶望的な状態でどうやったら勝てるか...ね。はいじゃあスタート。」
まっまだやるとはいってないぞ。いやまあやるけども。
「ちょっなんじゃこりゃー。」
ここからは地獄だった。
回想は思い出したくないので結論のみ話すが結論でいうと手に入れた。
「いやーたの...ごほんっ大変だったね。」
「今楽しかったっていおうとしてませんでした。」
彼女は笑いながらこういった。
「まあいいじゃかいか。手に入れたんだしさ。まさかもう一本封魔剣が出てくるとは。でもおかしいな同じ封魔剣なら2つでてくるわけないんだけど。」
「微妙に違うんですかね。」
「じゃ試し斬りしてみるかな。ほい出してみ。」
僕は赤々と燃えるような封魔剣を左手から出した。その切っ先にマリーさんの手が触れた瞬間彼女は意識を失った。
「マリーさん大丈夫ですか!?」
「しょっ少年その封魔剣おかしいよ。」
どうやら意識はあるみたいだ。少し安心した。
「起こしますね。」
「とりあえず膝枕してくれる?」
「えっ膝枕ですか?」
「頭痛いから早く~。」
「わっわかりました。」
なぜかよくわからないが膝枕をさせられた。
「少年封魔剣だして自分を攻撃してみて」
「わかりました。」
僕の左手からでる封魔剣を自分自分自身へむけ腕にさしてみた。
「特に変化はないみたいだね。」
「みたいですね。」
「じゃ次に右手の封魔剣をだして封魔剣同士を重ねてみて。」
「わかりました。」
僕は右手から封魔剣を出すともう一つの封魔剣に重ねた。
「少年さっきの充電式の懐中電灯の話覚えてる?」
「はい。覚えてますけど。」
「そうだね。封魔剣一回閉じてくれる?」
僕は封魔剣の発動を解除した。
「少年私電池は変えれないっていったよね。」
「はい。」
「でもね。予備の電池を外部につけることは出来るみたいだね。っていうか出来てる。やはりこれをみる限り私の理論は間違ってないのかもしれない。」
「あのマリーさん?」
急にぶつぶつ独り言をしゃべり出した。
倒れたとき打ち所が悪かったのかもしれない。
「少年一回帰るよ。っていうか修業終わり。」
次の瞬間にはマリーさんの家についていた。
「少年お休み。明日試合だしもう寝るよ。」
「何か作りましょうか?」
「少年が食べさせてくれるんなら作って。動けない。」
「わかりました。」
そこからはマリーさんの介護がはじまった。
「少年明日は赤い剣で思いっきり相手をきってみて。それで勝てるから。」
「どういうことですか?」
「まあ私を信じて。じゃあ本当にお休み。」
僕は不安と焦りしかなかったがその言葉を信じて寝ることにした。
次の日の試合はあっさり勝った。というか左の封魔剣が相手の封魔剣にあたった瞬間相手の封魔剣は消えそのまま相手へ攻撃がヒットし相手は倒れた。
「貴様、なんなんだその封魔剣は動けない。」
これが対戦相手から聞こえた最後の言葉だった。何だろう。この気持ちは。
一撃必殺。言葉はかっこいいが実際にやってみると悲しさと虚しさでいっぱいだった。
決勝へ駒を進めることができた僕はマリーさんに勝利を報告しに帰った。
「マリーさん勝ちました。」
「少年ごめんね。見に行けなくて。完全に寝てたわ。というかあんまり嬉しそうじゃないね。」
マリーさんは大きなあくびをした。
「マリーさんは知ってたんですか。こうなること。」
「まあなんとなくね。相手の封魔剣の発動がきえたんでしょ。
」
「はい。消えてそのまま攻撃があたったんです。」
「少年ちなみにまだ体力ある?」
「ありますけどどうしたんですか?」
「じゃ時間ないし今から決勝するからちょっと待ってて。」
言ってる意味がわからない。そんな僕を置いてけぼりにしてマリーさんはどこかへ連絡をとっていた。
「マリーさんあのどういうことですか?」
マリーさんは指を回しながら聞いてきた。
「一応聞いておきたいんだけど少年の目的は優勝じゃなくてAランカーになることでよかったわよね。」
「はい、そうですけど。」
「少年、おめでとうでいいのかな?まあ、次の試合勝っても負けてもAランカーになれるわ。」
予測もしない言葉に思わず驚いた。
「マリーさん、どっどういうことですか?」
「少年が強すぎるのよ。あの封魔剣出されたらだれも勝てないわ。」
マリーさんは椅子に座った。
「でも負けてもAランカーってどういうことですか?」
「まあ、大人の事情ってやつかな。過去にも何回か一般から決勝にいくことは、あったんだけど接戦の末に勝敗がきまるのが普通。まあギルド枠の方がボコボコにするのはあったかもしれないわね。でも一般でボコボコにするのはないわ。」
「あのーそれとこれと何が関係あるんですか?」
「大有りよ。ボコボコにいやボコボコならまだしも瞬殺されたら困る人達がいるのよ。だから次の試合赤い封魔剣は使用禁止だからね。」
僕は顎を触りながら少し考えた。
「つまりギルドの評判が落ちるということですか。」
「そういうこと。」
だが少し疑問が残る。
「でも、マリーさんから連絡してましたよね。あれってどういうことですか?」
マリーさんは少し顔を曇らせた。
「なかなか痛いとこつくね。まあ、正直なところをいうとこんな試合なんてしてる暇がない事態が発生したの。本音をいうと少年には、あっさり負けて欲しいんだけど。というか出場辞退してほしいんだけどダメ?」
突然の負けて欲しいというお願いに更に驚いたが、あんなに協力してくれたマリーさんがここまでいうのだ。なにか、ただならないことが起きているんだろう。
「わかりました。僕にできることがあるのなら手伝います。」
マリーさんはにっこり笑った。
「さすが少年、話が早いね。」
マリーさんは口を開いた。
「じゃあ説明するね。」
僕は小さく頷いた。
「はい。」
「これは、私の予想何だけど。封魔剣で消した魔力はある一カ所に留まってると思うの。」
「あの何の話何ですか?」
てっきり戦争でも始まるのかと思っていた僕は拍子抜けした。
「時間がないから黙って聞いて。もし、そうだとしたらその魔力はとてつもない量になってるわ。そして問題は誰がなんの目的で行ったのかっていうことよ。」
「そんなの封魔剣つくった人にしかわかる訳ないじゃないですか。」
「少年、大正解!」
実はからかわれているんじゃないかと思いだした。
「実はここまでが冗談でしたとかじゃないですよね。」
「冗談じゃないわよ。で、少年には過去にいってもらいます。1000年前にね。」
やはり、からかわれていてる。
「タイムスリップなんてできるわけないでしょ!」
「ノンノン。すこし違うわね。できるけどできないのよ。」
この冗談は、いつまで続くのだろう。
「どういうことですか?」
「実際にタイムスリップはできるのよ。ただし莫大な魔力がいるわ。それこそ天文学的な数字になるわ。」
「じゃあ、そんな魔力どこにあるんですか?」
「そこにあるじゃない。」
彼女はそういうと僕の左手を指差した。
まさか本当に1000年前に来るとは思いもしなかった。というよりも此処は本当に1000年前なのだろうか?
新しいシェルターのようなものがあり周りの景色を見ても面影はないが1000年前という保証はない。
「じゃあまずは、街でも探しましょう。」
「何できたんだよ...お前。」
僕は膝をついた。
...何でユリスがいるのかだって?
こっちが聞きたい。
こうなった経緯を説明する為に
話を1時間前いや1000年後に戻そう。
「マリーさん、仮にいって聞けたとしても、もしかしたら帰ってこれない。下手したら死ぬかもしれないことになるんでしょ。」
僕は、そんな無責任な旅にでるのかと思うと少し怒ってしまった。
「それは、否定しない。だから今からの話を聞いて行きたくなければ今日の話は無かったことにして。もし、私があなたの立場だったら断るかもしれない。それぐらい無責任なことをいってるのは自覚してる。」
「...わかりました。」
「まず、ここから南の方にマハド遺跡というところがあるの。私の調査では、封魔剣の作者がここに住んでいたことがわかったの。」
「はい。」
「そこは、かつては栄えていたんだけど、滅びたの。」
「まあ、遺跡ですから滅びたんでしょうけど。」
「たった1日、いえたった数秒でね。」
「え?」
「まあ、なぜ滅びたのか原因までは、わからないわ。隕石が落ちたかもしれない。ただこれがもし、これが封魔剣に関係しているといたらどうする?」
「そんな可能性があるんですか?」
「少年の封魔剣をみるまでは、半信半疑だったわ。少年が封魔剣を重ねたとき赤い封魔剣へ魔力が流れたわ。少年は気付いてないのかもしれないけど、有り得ないほどの魔力。」
「それとこれとなにが関係あるんですか?」
「少年。禁術に命を魔力に変換する魔法があるの。その時の魔力の色はね真っ赤なの。血の色みたいにね。」
まさか、封魔剣は命を吸収している?
だが、ここで新たに疑問が生まれた。
「禁術をつかったことがあるんですか?」
「うんまあ結局失敗しちゃったし元々の魔力も結構あったから2、3年くらいは寿命縮んだかもね。」
なぜ、そんなことをしたのだろう。聞いてみたいが聞いていいのだろうか?
「なんでそんなことしたんだって顔に書いてあるわね。」
「はい。」
「私ね。弟がいたの。でもね、事故で死んじゃったんだ。」
マリーさんの悲しそうな笑顔が心に突き刺さった。
「...はい。」
「でね。時を戻したの。事故が起こる前の弟の身体にね。でも戻らなかった。いえ、正確にいえば消えてしまったの。世界と矛盾してしまったのかもしれないわね。」
「...なんでそんなつらい話を僕に。」
僕は真剣な表情で彼女を見つめる。
「少年が弟に少し似てるんだよ。初めて合ったとき、弟の魔力と少し似ていたからまさかと思って弟の胸にあった菱形の痣がないか探してみたりしたけどやっぱりなかったみたい。」
へへっとベロをだしながら笑う彼女になんて声をかければいいのだろうか?
「マリーさん僕は...」
「わかってる。少年は私の弟じゃないよ。でも、実はどこかで生きてるんじゃないかって思うときがあるんだ。...よしっ以上、私の話終わり!少年どうする?」
僕は、少し間を開けて答えた。
「わかりました。やります。ただユリスに話す時間を下さい。」
「ありがとう。じゃあ今からここに呼ぶね。」
マリーさんの魔法でユリスが転送されてきた。
本当に魔法って素晴らしいなと思ってしまった。
急に転送され困惑しているユリスに事の成り行きを説明した。
「反対よ。なんであなたがそんな危ない目に会わないといけないの?世界の危機って言うのならまずは政府に連絡して対処してもらえばいいじゃない。」
確かにその通りかもしれない。そう思った時にマリーさんは、口を開いた。
「少年、その方法でやる場合どうやって説明すればいいと思う?」
「どうやってて?そんなの赤い封魔剣見せれば信じてくれると思いますけど。」
「そうだね。信じてくれるだろうね。...その後少年は、どうなると思う?」
「どうなるんですか?」
「これは、私の予想なんだけどね。少年は、隔離され人体実験される。まあ、死にはしないだろうけど。その間、少年は身動きが取れない状態になる。そうこうしているうちに世界は滅亡するって筋書きかな。」
それを聞いたユリスは激怒した。
「そんなの全部あなたの予想でしょ!?まるでこの世界を救えるのは勇者様一人しかいないって感じですよね。ファンタジー小説の読み過ぎ何じゃないですか!」
「そうだね。全部私の予想だよ。この世界を救えるのは少年しかいないと思っているのも何もかも。だから、少年に決めて欲しい。いくかどうかを。」
ユリスは、僕のことを見つめて話し出す。
「絶対にいく必要なんてないんだからね!」
確かにすべてマリーさんの予想。そうならない可能性がないわけではない。ただ、そうなる可能性が少しでもあるのなら僕の答えはやはり一つだ。
「ごめんユリス。マリーさん、さっきもいった通りです。やります。」
そこからユリスと大喧嘩が、始まった。
「私もついていく。これが最低条件。」
30分程度過ぎた。さっきからこの調子だ。
「少年、まだかな?」
僕は、ため息をついた。何回つけばいいのだろう。黙っていけば良かった。
「わかりました。僕だけ送って下さい。ユリスは、ホテルに返して下さい。」
「うーん。殺されそうな視線を感じるんだけど。」
ユリスは、睨みを利かせる。マリーさんは苦笑いをした。
「もう、わかったわよ!でも見送りは、させて。」
とうとうユリスが、折れてくれた。
「わかったよ。じゃあマリーさんお願いします。」
「オッケー。じゃあ赤い封魔剣出して。」
僕は、左手の封魔剣を発動した。
「これでどうするんですか?」
「今から時空移動の魔法を渡すわ。少年左手貸して。」
僕は、左手を差し出す。マリーさんが詠唱を行う。何だか左手が、熱い。
「これでどうするんですか?」
「よし、終わり。行きは、私がやるわ。帰りは、少年がイメージして。それで帰れるはず。じゃあ、始めるわよ。」
マリーさんが、目を閉じて詠唱を行うと僕の周りを中心に時空が揺らぎだした。その次の瞬間に何かに急に抱きつかれた。
ユリスだ!マリーさんは、集中して気付いていない。
「マリーさん!まっ...」
そして、現在に至る。本当に本当に今さら遅いが、ホテルに返しておけばよかった。
「ねぇちょっと聞いてるの?」
「はぁー。」
「ため息つくと幸せが逃げるわよ。」
もう怒る気力もない。ユリスだけを無事に帰す保証もない。来ちゃったならもう仕方ないか。
「怒んないから、ユリスこれだけは、約束してくれ。無茶なことは、しないこと。絶対に。」
「わかってるわよ。」
本当にわかっているのだろうか?
「はぁー。」
「じゃああそこに行ってみましょ。」
そういうと彼女は、遠くのシェルターを指差した。
「はぁー。」
辺りには本当になにもない。草も木も何もかもあるのは石ころだけだ。シェルター付近につくとどこからか声が聞こえてきた。
「どこからきた?」
未来からですとでも、答えてみようか。そんな馬鹿なことを考えていたらユリスは、喋り出した。
「わかりません。」
そうだけどそうなんだけどもう少し考えて発言してくれ。
「いやっ、あの。」
何とか誤魔化そうと思ったが、特に言葉が出なかった。
「まあ、いい入れ。」
目の前に小さな銀色の扉が地中から現れた。扉が、開くと中は階段になっていた。
階段を降りるとそこは街になっていた。
「すごいな。」
そんな一人言をいっていると白髪の初老の男性が歩いてきた。
「何をしに来た?こんなところに。」
「あの、封魔剣の作者を探しに来たんですが知りませんか?」
「封魔剣?何だそれは?」
僕は右手の封魔剣を発動させる。
「こんなのです。」
青白い剣をみると初老の男性は、驚きを隠せないようだった。
「馬鹿な?なぜ貴様が、それを使える?お前は、何者だ?いや、いい早く消せ!」
僕は、すぐに封魔剣を消した。
「これを知っているんですね?」
男性は、しばらく黙り込んだ後に話し出した。
「ここでは、まずい。私の家にこい。」
男性の後をついて行くと小さな家にたどり着いた。
扉を男性が開けると小さな男の子がいた。
「お兄ちゃん誰?」
「えーと。」
何か喋ろうかと思ったらユリスがしゃがみこんで男の子をじーっと見つめだした。
「お姉ちゃん誰?」
「この子...すごい似てる。」
似てる?もしかしたら、誰かの先祖かもしれないな。
「似てるって誰に?」
「あなたの小さい頃に。」
僕に?
自分の小さいころの姿なんて覚えないな。だけど、もしかしたら僕の先祖なのかもしれない。
そんなことを思っていたら、初老の男性が喋り出した。
「さっさと中に入れ。」
「わかりました。」
そういった後、家の中に入ろうとした瞬間、僕は意識を失った。
「やあ。久しぶりだね。」
その声で目覚めた僕は、辺りを見渡す。そこは、何もなかった。本当に何もない。ただただ深い闇が広がっていた。
「誰だ!」
「誰だ?...君こそ自分自身が誰だか分かるのかい?」
こいつは何をいっているんだ。
「一体何の話だ!」
「そうか。本当にここは面白い空間だよ。」
「お前は、誰なんだ!」
「いずれ分かるさ。世界が滅びるまでにはね。」
そういうと何も声が聞こえなくなった。ここは、本当にどこなんだろう。家に入ろうとしたところまでは覚えている。後ろから殴られてどこかへ閉じ込められているのか?
誰かいないのかと耳をすましてみると先ほどの声が聞こえてきた。
「どこから来たんだ?可哀想に。だが、なるほど...これは、面白いな。」
そういうと彼は、呪文を唱え出す。
「一体何をしているんだ。」
「じゃあ...待ってるよ。」
誰かがそういうと急に辺りが輝きだした。次の瞬間、僕はみたことのない部屋でベットに横になっていた。そんな僕の隣にはユリスが半泣きで座っていた。
「ユリス泣くなよ。」
「泣いてない。」
明らかに目が真っ赤だ。
「ユリスここは?」
僕は、起き上がる。
「家の中よ。事情は、私が説明しておいたわ。」
「ここにさっき誰かいなかった?」
ユリスが、不思議そうな顔をする。
「私しかいなかったけど、どうしたの。」
さっきの夢は、何だっただろう。夢にしてはやたらリアルだった。
「起きたか。事情は、すべて聴いた。本当にすまない。」
初老の男性が、部屋に入ってきた。だが、すまないってどういうことだ。
「あのどういう意味ですか?」
「今から世界が滅びた話をする。その前にもう一つの剣を見せてくれ。」
もう一つの剣?赤い封魔剣のことか?僕は、赤い封魔剣を、発動させる。
「これですか?」
「なんて禍々しい魔力だ。話は本当のようだな。だが、あいつは死んでいなかったのだな。」
「あいつ?」
「どこから、話せばいいのだろうかな。まあ、私の時代から本当に遠い昔話をしよう。」




