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01_磯遊び

「あっは、しょっぱい!」

「スノウノさん、海水は味見までは良いですが、飲んじゃいけませんよ?」


「……ある程度の潮溜まりに『火球』を撃ち込めば、塩になる、か?」

「ヴェロニカさん、流石にワイルド過ぎます!」


「あら、貝殻が……。

キャッ?!中にいらっしゃったのですね?!」

「ああ、小さなヤドカリですね。

セレナさん、挟まれないように気を付けて。」


「……なんだか、『魔力感知』に反応がありますね。

本当に海にも魔物が居るんですね。」

「へぇ……。

でも、今日はチラッと見に来ただけですからね、フラウノさん?

下手にちょっかいを出さないで下さいね?」


な、なんかツッコミ続けて疲れる……。


「うわっ?!

な、なんか足元の砂が持って行かれるっす?!」

「本当ですわね。

なんだか不思議な感触です。」

……うん、リックとティアナさんは、なんだか初々しくてほっこりする。


今日の宿を探す前に、皆がウズウズしてて仕方なかったので、先に砂浜に来てみました。

最悪、食料の備蓄もあるので野宿しても大丈夫なのだけれど、海初心者としてはちゃんと地元の方に話を聞きたいと、ボクは思っている。

でも、はつの海でテンションが上がってしまう気持ちも分かるので、強引に打ち切るのも申し訳ない。


……ま、しばらくはこのままで良いか。

あっ、スノウノさん、こっちに魚が居たかも。

そうそうそっち。


……なるべくリックとティアナさんの邪魔にならない様に、スノウノさんを別方向に誘導なんかしてみたりして。


結局、お魚食べたさで、皆、一斉に正気に戻ったので、夕食時までには町を見付けられましたとさ。


**********


「んミャいっ!!」

「……本当、美味しいですわね。

昔食べた川魚とは、まったく別の味がします。」

「かっはっは、そうかい。

まだあるから、たんと食べな。」

スノウノさんの魂の叫びと、ティアナさんの感想を聞いた宿屋の女将さんは、機嫌良さそうに応えてくれた。


「ありがとうございます。

こんな豪華にしてもらって。」

「良いんだよぉ。

こちらこそ、ここいらじゃ滅多に見掛けないオークやらを譲ってもらったんだ。

お互い様さ。」


そう、帝国に入ってまだ日が浅く、帝国のお金も心許なかったボクは、オーク等の現物払いで泊めて貰う事にしたのだった。


「ついでに、この先に大きな港町があるか聞いても良いですか?」

「ん〜?

そうさねえ、二・三日北に行った辺りに、大きめな町があるよ。

そこなら冒険者ギルドもあったと思うねぇ。」

「なるほど。

あともう一つ、ここいらの海岸で貝とかを採るのは規制とかされてませんか?」

「……おや、貝が採りたいのかい?

特に採るのを禁止なんかしてないよ。

でも、珍しいねぇ。

地元民は割と好きで採って食べてたりするけど、内地から来てそんな事を言うヒトは、これまで居なかったねぇ。

あっ、それとも真珠貝目的かね?」

「あ、やっぱりそういう貝も居るのですね。」

「そりゃあ居るさ。

でも期待はしないほうか良いよ?

あんなの、ここで生まれ育った私でも、宝飾に使えそうな珠なんて一度しか見たことないもの。」

「ああ、やっぱりそんなものですか。」

やはり、天然の真珠はこちらの世界でも貴重なものらしい。


「あんたら冒険者なら、真珠貝よりエビル・クラムを狩った方が稼げるんじゃないかね?」

「エビル・クラム?」

ボクが聞き返すと、女将さんが詳しく教えてくれた。


**********


「エビル・クラム」は二枚貝の魔物さ。

大きさは子供の頭くらいはある。

不用意に近付くと、水系の魔術で攻撃して来るんだ。

退治しようにも殻は硬いし、厄介な魔物なんだよ。


ただ、その魔力核は真珠の様な光沢で輝くから、宝飾品としても価値が高いんだ。

北の町みたいな大きめな町なら、その魔力核どころか、その貝殻にも値段が付くと思うよ。

貝殻の内側も真珠と同じ光沢だから、加工品を作るのに重宝するのさ。


**********


「──でもねぇ、やっぱりあっちも命が掛かってるからねぇ。

魔術攻撃がなかなかに危ないんだ。

知らずに近寄った子供が大怪我する事も、偶にあるからねぇ。

地元の漁師も、わざわざ採ろうとは思わないんだよ。」

「……なるほどなるほど。」

「……悪い顔をしているぞ、クロー。」


はっ?!

ヴェロニカさんに言われてハッとする。


いやいや、まさかそんな。

魔術を使うなら『魔力感知』を使えば簡単に見つけられそうだとか、『眠り』を使えば簡単に昏倒させられそうとか考えてただけだし、そんな、ねぇ?


「やだなぁ、冒険者として闘志を燃やしていただけですよ。」

「まぁ、そう言うならそれで良いが……。」

ヴェロニカさんはなんとなくジト目のまま応答した。


「ははっ、ま、程々にね。」

女将さんの方は一応忠告してくれるが、止める気は無さそうだ。

それ程、見付け難い種なのか、または、冒険者ならば引き際を弁えていると思ってるのかも知れない。


こちらとしては、帝国内で当面のお金を工面したい。

海のグルメを堪能するためと、金策の一石二鳥を目論み、明日はその「エビル・クラム」を狙ってみることにしようと思う。

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