第6章 店の条件
1万円の力だったのだろうか。
投稿を載せてから2時間ほど経つと、1つ2つコメントが来た。
「それは僕も知っています。 写真をお見せします。」
「以前、似たようなものを見たことがあります。蒲田駅の近くで」
「直接は行ってないけど、友達が行ったって···」
計5件。
翔はにっこりと笑いながら携帯電話を見下ろした。
「みんな会ったら5万円だね」
おのずとため息が漏れた。言葉ではそう言ったが、心の片隅では予想できなかったときめきが沸き上がっていた。 こんな反応が来るとは期待していなかったので、なおさらだった。
しかし、その多くのコメントの中でも、特に目を引くコメントが一つあった。
「事前に情報をお渡しします。 代わりに私と直接話しましょう。」
「お店の実体はほとんどありません」
「ルールを理解して、要求して、繰り返してこそ現れると言われています。
少なくとも··· 普通はそうなんです」
翔はそのコメントを2回、3回繰り返して読んだ。
「お店の実体はほとんどありません」この短い一文は、
単純な興味の種で接近した人々の話し方とは全く違った。
それは確かに、何かを知っている人の口調だった。
翔はすぐ返事を送った。
「理解して要求するのはどういう意味ですか?」
「どうやって繰り返すんですか? どんな方法で?」
「どこにいらっしゃいますか? ぼくが会いに行きます。 お会いしてお話できますか。」
コメントを送る手が多少震えていた。
我ながら驚くほどの焦り。 どうしてこんなに気が急いてきたのか分からなかった。
しかし、ただ1つ確かだった。
今この瞬間、「その店が実在するかもしれない」という可能性が彼のすべての思考を掌握していた。
数分が流れた。 しかし、返事は来なかった。
翔は時計を確認し、コメントをのぞき込み、更新を繰り返した。