第5章 真面目な冗談
さわやかだった。久しぶりに感じる気持ちのいい朝だった。
週末の空気がこれほど軽くて清涼に感じられたのはいつだったか。
頭は澄んでいて、目はしびれることなく、カーテンの隙間から
差し込む日差しさえも暖かいだけだった。
翔はベランダの窓を開け、冷たい空気を深く吸い込んだ。 その冷たささえもなんとなく嬉しかった。
しかし、その爽快感は長続きしなかった。 すぐに頭の中には再び疑問が湧いた。
「あの店は··· 一体何だったのだろうか。」
夢の中の風景だったのだろうか。 それとも、何か実体のある場所だったのだろうか。
そこにまた行けるかな。 また寝たら、昨夜のように行けるかな。
疑問は次から次へと続き、感情は急速に渦巻いた。
彼は部屋の中をうろつきながら深いため息をついた。
「ああ、わからない…···」
とんでもないことだと、理性は彼に断言したが、心は違った。
彼はそこにまた行きたかった。 その老婆はなぜ現れ、なぜそんなに無関心そうにドアを閉めてしまったのか。 何も聞けずに出てきたその事実が、しきりに心をつかんで気持ちが垂れ下がった。
彼はいらだたしく息を吐きながら携帯電話を手に取り、 SNSを開いた。しばらく悩んだ末、指が止まった。 このような書き込みを掲載するのが果たして正しいことだろうか。
もしかすると、誰かにとっては狂人のようには見えないだろうか。
疑いとためらいが交互に押し寄せてきた。
しかし、彼は結局指を動かした。 ためらいを押しのけたまま、短い文章を書き下ろした。
[お礼します] 夢を売る店をご存知の方いらっしゃいますか?
変な話であることは知っています。 しかし、もし関連情報をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡いただきたいと思います。 信じなくても大丈夫です。真剣です。
謝礼は1万円できます。コメントください。
文を載せた後、翔はそのまま布団の中に顔を埋めた。
「週末に··· 俺は今何をしているんだ···」
むなしい独り言が布団の中から漏れた。1万円 。彼には決してわずかな金ではなかった。
1週間の間、昼食を減らし、毎日飲んでいたコーヒーもやめなければならないほどの金額だった。
しかし、そのすべてよりも、あの店について何か知らなければならないという気持ちがもっと大きかった。
彼は再び携帯電話を持ち上げた。
更新。もう一度更新 。
しかし、コメントは来なかった。
彼は深いため息をつきながら枕に顔を埋めた。
しかし···期待していた。
翔はそれを否定できなかった。 理由もわからない、説明すらできないその希望。
誰かが、自分に連絡をくれるかもしれないという漠然とした強い期待。
それがまだ彼の心の中にそのまま残っていることを、彼は知っていた。