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第11章 繋がらないもの

ある晩、翔はまた目を覚ました。

土ぼこりが収まらない狭い路地、

路地の端からかすかに聞こえてくる自転車のベル、

薄く広がる街灯の光の下、 彼は静かに立っていた。


「…またここだ···」


驚きもしなかった。 2度目だった。

彼はこの慣れ親しんだ町の質感をはっきりと覚えていた。


遊び場は相変わらずそこにあり、

駐車された車、路地の壁の割れたタイル、


そして遠くー

影のようにぼんやりと存在していた店の場所もそのままだった。


その瞬間、翔は何よりも先にすべきことを思い出した。

香奈に連絡。

彼女ははっきり言った。またその店を見かけたら、連絡しろって。


翔はポケットをのぞき込んだ。

ケータイを取り出した。 それは古いケータイだった。

KDDIのロゴがかすかに消えるようにぼやけた黒色の機種。

彼は本能のように電話帳を開いた。


そして、息が止まるような衝撃。

リストの中の名前はすべて幼い頃の人物だった。

「千原」、「池田の家」、「叔母さんの家」、「じいちゃん」…

香奈の名前はなかった。 現在のだれもいなかった。


翔は急いで数字を押した。

彼女の番号は確かに覚えていた。

数字の一つ一つを押し込んだ。

しかし、「この番号は現在使われておりません。」

聞き慣れていた自動案内音声が流れた。


翔は諦めなかった。 番号を変えてみて、国際番号を付け加えてみて、

メールを送ってみようとしたがどれも繋がらなかった。


この夢の中には過去だけが存在し、

現在はどのような方法でも繋がっていない。


彼はゆっくりとガラケーを折りたたんだ。

手先が冷たかった。のどはからからに乾いていて、口の中はもやもやした感じがした。


そして——


その瞬間、彼は再び顔を上げあの路地の向こうを眺めた。

店は相変わらずその場にあった。

今回は以前よりもう少し近かった。


翔はゆっくり、しっかりとした足取りでそこに向かって歩き始めた。



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