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片腕お姉さまと地を転がる少年  作者: 渡辺ファッキン僚一
19/21

私ときたら、ピュアで純真で無垢な、生まれたばかりでまだ熱を持っているガラスみたいな存在なんです。

 わ、わたくし! 高校生です!




 エッチな言い方をすれば、女子高生ざますわ!




 しっかし、女子高生でエッチって凄いよね!

 そんなことはどうでもいいとして!




 私ときたら、ピュアで純真で無垢な、生まれたばかりでまだ熱を持っているガラスみたいな存在なんです。




 まだどんな形になるかもわからないガラスでさ!

 しかも薄いんだ。

 薄いガラス。プレパラートのような心の持ち主なのに!




「あうっ、あうっ、あー……」




 こっ、行為をおばあちゃんに例えられてしまった。ショックだー。




 身も心も土手の雑草の中で朽ちてしまいそうだ。




 あーーーーーー、もーーーーーー、あーーーーーー。




 あれでしょ。




 どうせ! どーーーーせ! もー。




 拳を強く握り締め、肘から伸びた長い袖をヘリコプターみたいに旋回させる。




 どうせ! はんっ!




 私の好意だってさ。マボーは、おばあちゃんが孫にいだくような気持ちだと思ってるんでしょ!




 どこに売ってるのかわからない、なぞのあめ玉をあげたい人だって思ってるんでしょ!




 親戚が来たら死ぬほど料理を作るって思ってるんだー。




 うわああああぁぁぁああぁあぁあぁぁぁん!




 もう! そういうんじゃなくて! 私はマボーのことをそういう意味で好きなんじゃなくて!




 ……なくて。な、なくて?




 なくて……。


 なくて……。


 …………なんだ?


 おい、また簡単にまずい領域に踏み込んでるぞ。ヤバくない?




 考えていいこと、それ?




「あー、うー、わー」




 ことん、と横向きに土手に倒れる。




 ほっぺに草がちくちくして痛いはずなんだけど、感覚が遠くてわかんない。




 不貞腐れて目を閉じる。




 男とか女とか年齢とか面倒臭いなーもー。


 私とマボーの関係じゃん。男とか女とか関係ないじゃん。


 でもさ……だからって目を反らしていいわけないんでしょ?



 ただ好きなだけなのに、ただ好きなだけ、って思えない自分が悔しいし虚しいよー。




 くそったれー。男も女もどうでもいいじゃん! 年齢だってさー!




 年齢だって……。




 どうでもよくないのかな? どうでもいいのかな?




 はー、もうわかった。わかったってば! 考えます。




 真正面から向き合えばいいんでしょう?




 ンッ!




 考えるまでもねーや!




 男。



 おっ、おっ、おおお……。男と女、という意味で好き。




 マボーのこと、そういう意味で好き、って理解に達してしまっていいのかな?




 どうにかして逃げられないモノか?




 まずいよね? だっ、だって、年の差! あるもん!




 マボーのこと孫だって考えた方が、安定感があるというか、互いに幸せなのかもしれない。謎玉で餌付けする所からか先に進もうだなんて考えない方がいいのかも。




 もう一回考えて! 私は! マボーのこと男として好きなの?




 男として、だよ? 孫じゃないよ? 男だよ!




 男!




 おとこ!




 あぅ! 泣きそう。べそべそしそう。




 好きだよ、もう! 文句あんのか! 男として好きなんだよー!


 くっそー!


 ゆるしてくれよー。好きなんだよー。


 そういうの問題あるってわかるってるんだよー。誰か助けてくれよー。




 だいたいさ、マボーが悪い。




 あのガキが私の心にキュンとくる言動するから悪いんです。私は悪くない、マボーが悪い。裁判でもハッキリとそう主張できる。証言台を用意してくれ! なんでも素直に答える。




 どーしたいんだよ、私は! 




 あー、もう。自分の気持ちが倫理と噛み合わない。噛み合わせる必要なんかないってわかっているんだけど……。




 でもさ、おそらくだけど、世の中のほとんどの人は噛み合っているんだよね?




 妬ましい!




 たたでさえ右腕がない私に神はなぜこんな辛い状況を用意しますか?




 ありえなくないですか?




 ……いや、こんな私だから神様はマボーと出会わせてくれたのかもしれない。




 黙れ、私!




 神様なんかいてたまるか! ファック! ゴッド! 




 神様が実在するとしたら、私みたいなもんを作るわけがないでしょうが。うっとうしいし、ややこしい! 持て余す!




 自分で自分を持て余す!




 絶対に失敗作だろ、私!




 だらー! もー!




 ……んっ?




 じゃばばばばは、と音がして目を開ける。




 水飲み場の水を噴水みたいに出して、マボーが無理矢理、頭を洗っていた。




 そんなことするマボーを始めて見た。




 ……自分でも気になるくらい汚れたんだろうか?




 何をやってんだろう。




「ぷふっ、ふふふっ、ふふっ……」




 頭を洗うのが笑ってしまうほど下手だ。噴水みたいに上がった水を下で構えて、頭で受けているのだ。そんなの不安定すぎて、うまくいくわけがない。




 全身びしょ濡れになっちゃってる。もっとましなやり方を思いつかなかったんだろうか?




 マボーは水飲み場の蛇口を閉めると、やけに丁寧に頭をタオルでふいている。




 それを見ていて急に思った。




 あー……。私、アレだわ。




 ──私、女子度低いわ。絶望的に絶望なアレだわ。




 タオルを持ってきたりとか、飲み物とか持ってきたりすべきだわ。




 今日もマボーを見るぞー、ってなってるだけで何もしてあげてないわ。




 男とか女とかいう前に、恋するものとしてどうかしてるわ、私。自分の欲望に忠実なだけだわ。恋とかおごかましいわ。




 ……なんか、ダメだな、私。




 少しもマボーの役に立ってない。




 ……んっ?




 マボーが目を輝かせて、私に近づいてくる。何か、提案があるって顔してる。

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