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片腕お姉さまと地を転がる少年  作者: 渡辺ファッキン僚一
13/21

小学生に恋する高校生とかまずいし

 ……おー、今日も凄い動きだな~。




 河原にある運動場で、マボーが今日もねずみ花火みたいに動いている。

 もう見ているだけ、必死でやってます! って気持ちが伝わってくる。

 伝わってくるというか、ビシバシとぶつかってくる。




 まっ、まぁ、その……なんですか? その……。

 私とマボーは? 仲間? ですから?




 肌感覚? くらいの距離感で? 伝わって当然なんだと思いますけど?




 なっ、仲間、ですから……。




 最近、私はマボー見学のため、頻繁にここを訪れている。




 動いてる少年を見ると癒されるのだ。




 私って基本的に元気がないから、元気な人を見るの好きじゃないんだ。本当はそうなんだな。




 だから、元気なお笑い芸人とかを見るのはあんまり好きじゃない。




 お笑い芸人にもいろいろな人がいるけど基本的に彼らの元気は、元気のない私を責めているような気がして落ち込むのだ。




 おまえはなんで元気じゃないの?


 一緒に元気になろうぜ?




 そう言われている気がして、無理です無理です、となってしまう。

 帰ってください! って泣きそうになってしまう。




 実際、YouTubeで見ていて、ぽろぽろ泣いてしまったことある。

 いや、見るな! って言われたらそれまでなんだけど、ああいう人達の引力って強いじゃないですか。

 引き寄せられたあげく悔しくて泣いてしまうのだ。




 ああいう人らって私らみたいのを傷つけてなんぼ! ってとこがあると思うんだよなね。

 だから言って上げたい! しっかり傷ついてますからね! って!




 もちろん、パーフェクトに被害妄想だってわかってるんだけど、でも思ってしまうのはしょうがない。




 誰かそういう想いをと停止させることができるならしてくれ! 頼むよ。




 つらいんだよ! こんなくだらないこと思いたくないんだよ!




 なんて言えばわかってもらえるんだろうか?




 面白いことを言えない人には価値がない、って言われているような気がして……。




 私はお笑い芸人じゃないんだからそんなこと思う必要ないってわかってるの! わかっててもって話なのだ。




 もう本当に自分で思えば思うほど被害妄想丸出しで……。ハロペリドールかサイレースを飲んで寝ろ、って自分に言いたくなる。




 考えるのやめちまえよ。




 虫下しみたいなので、思考下しみたいな薬があったらくれ!




 しかし、昔の人はお腹の中に寄生虫がいて虫下しを飲んでたんだから凄いよなー。




 自分の腹の中の虫を意識してたってことだもん。




 そんなの頭がおかしくなっちゃいそうだけど昔は普通だったんだよね。




 ……またどうでもいいことを考えてるな、私。




 とにかくテレビとかユーチューブとかの元気は落ち着かないんだけど、マボーの元気は落ち着くってこと。




 あんな風に動く、というのは私の脳内にないから他人事だなって思えるからかもしれない。




 マボーのやっている運動ってあまりにも他人事だから、私も何かしないと! という地面の底からせり上がって来るような焦りを感じなくて済むのだ。




 ──マボーは今日も動いてて、凄い、偉い、って素直に思える。




 動くの偉いぞー。




 なんなら、マボーが元気に動いていることを神に感謝したいくらいだ。




 今日も動かしてくれてありがとう!




 ってこんな言い方だとマボーが神のあやつり人形みたいだな。




 あ、そうだ。もしかしたら、こういうことなのかもしれない。




 マボーへの想いに微塵の嫉妬心もないのだ。




 ……だったらおまえはお笑い芸人に嫉妬してんのか? ってことになるけど……。




 嫉妬してるのかもしんない。




 うおぉぉぉぉぉぉん。




 だって、あの人らコミニュケーション能力高そうじゃん!

 

 本当は違うのかもしんないけど。それ、私、欲しい!

 

 歯ぎしりするほど欲しい!


 餓えてる。




 あー、もう!


 こんなこと考えなくていい!




 今はマボーのこと好き、ってことだけ考えていればいいの。




 あっ、いや、違う。




 慌てて頭の中で否定する。




 好きって。好きはまずいよね。




 好きっていうのは、その、マボーを見るのが好きってことだから! マボーのこと好きだったら、そのいろいろ大変だから!




 その……。




 だって、その……。




 ──マボーは小学生だし。




 うああああぁぁぁああぁぁあぁあぁああぁああぁぁぁああぁぁぁっ!

 小学生に恋する高校生とかまずいし。




 ぼすん、と腰を落とすようにして土手の真ん中で座り込む。




 中が見えないようにモソモソとスカートを集めてしっかりと挟み込む。正しい乙女の行儀作法。




 ……ん~。




 走り回るマボーを見つめて、頭の端っこの方でほわほわと何か考える。




 ほわほわほわ~。




 ほわほわ、が徐々に形になってくる。




 スカートの布をもっと無防備にしてもいいんじゃないかな?

 ちょっと隙があった方がマボーに好かれたりせんかな?




 ッ!




 地獄!

 地獄の発想だよ!




 だ、ダメだ! 相手が高校生とかもっと年上とかならですよ? そういうことなら考えてもいいかもしんない! わかんないけど多分いい。




 それは、その。恋の駆け引きですから!




 スカートを無防備にすんのが駆け引きかな?




 わかんないけど、そういうこと考えていい気もする。




 恋愛という戦いで己の肉体、パンチラを使うことを恥じる必要なし。




 だけど相手は小学生ですから!




 小学生にそこまでするのってなんだ? えっと……。その。

 そう!




 じっ、児童虐待!




 私みたいなもんがパンツを見てもらって好きになってもらおうとか、犯罪だよ!




 まずいまずいまずいまずい!




 だいたい、そういうのでマボーは私のこと好きにならないし!


 なんていうか、その……マボーって……じゅ、純粋だと思うから。




 ……なっ、なっ、なっ、何を考えているんだ、私は!


 そういうの考えるの禁止禁止禁止!


 バカですか、私は!




 改めてちゃんとスカートでガードする。こんなの見せられたら、マボーが可哀想だもん。ちゃんと隠しておけ、オラッ。




 好きとか……。




 そういうの考えちゃダメ。




 でも、私さ……。




 マボーのこと……。




 うわああああああぁあああぁあぁぁ!




 これはアレだ! シロクマ実験だ!




 シロクマのこと考えないでください! って言われたらシロクマのことばっかり考えちゃうっていう実験だ。




 考えないようにしたマボーのことばかり考えてしまう!




 どうしたら?

 よくないってば!

 リアル小学男子のことばかり考えてる高校生ってまずいよ!




 あああ、だから考えれば考えるほどマボーのことが……好きに……。




 だから! 好きにって考えるな! バカ!

 気になる!




 そう気になる程度に収めておかないと! バカヤロー!




 マボーのことが気になる私です。そうこれで落ち着いた。これで、うん。

 なんかこう、自分の中でここに収めておこうって場所ができたから。




 これで普通にマボーを見ることができる。

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