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片腕お姉さまと地を転がる少年  作者: 渡辺ファッキン僚一
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ワタシ、ノ、オクビョウ、ナ、カラダ、ヨ。ウゴケ。

 ……うっ、うはーっ。




 仲間……。このガキが私の仲間? マジか。




 えっ?




 えっ?




 ………………。




 えっ?




 死ぬな、脳細胞。真面目に考えてよ。




 体が欠けてるなんて、配慮のない言い方だと思うけど……。




 だっ、だいたいさ! 私、思うんだ!




 体が欠けているから仲間だなんて、そんな安易な考えは最低だと思うよ。そんな理由で仲間になりたくない。




 仲間だなんて言われたくない!




 だけどさ。




 なんだよ、その無邪気な笑みは! うおおおおおぉぉぉっ!




 なんか、なんか、なんか、なんか。なんでだろう、なんか、なんか、なんか。




 許してくれよ。




 何に対して許してくれって思ってるのか自分でもわかんないんだけどさ。




 許してくりゃさい!




 許してくれよ?




 誰だ? 私は誰に許しを乞うているのだ?




 神様か? 自分自身か?




 あうっ! あうっ! あうあうあー!




 なんか!




 うるっ、ときちゃったよ。感激しちゃった。




 かっ、感激だと? そんなのバカヤローじゃないか!




 でも、仲間って言われて感激しちゃってるんだよ!




 ああぁっ、こんなこと素直に思える自分がいたなんて……マジかよ。

 マジかよ、自分!




 こんなことで感激する自分がちゃんといたのかよ。

 そんな自分がまだ生きてたのかよ。




「ほっ、本当に仲間になっていいの?」


「なっていいじゃなくてもう仲間じゃん!」




 吐くッ!

 

 感激で吐きそう!




「ありがとう!」




 動け!


 ワタシ、ノ、オクビョウ、ナ、カラダ、ヨ。ウゴケ。




 今、動かなかったら……なんだ? 今、動かなかったら。

 私は感激を耐え切ったということだ。

 耐えたくない!




 感激に耐えたくない!




 動きたい。衝動よ、来いッ! 体中の衝動を全部集めて!




 ワタシ、ハ、ウゴク、ノ、ヨ。




 私はマボーの肩に顎を乗せて、左腕を背中に回した。




 動物番組で見た。

 獲物を捕まえるタコのスピードだ。

 ズバッとヌルリが入り混じった速度だ。




 その速度で私はマボーに絡みつく。仲間にしがみつく。




「なっ、何すんだよ」


「ハグ。はぐはぐしたくなっちゃったんだもん」


 嫌そうにもごもごとマボーはうごめくけど、絶対に離さない。マボーの背中で右の袖を掴んで束縛しちゃう。




 大胆!




 今の私は大胆なことできちゃう私だ!

 こんなことできちゃうなんて知らなかった!




 仲間の感触をもっと味わっていたい。密着していたい。




「やっ、やめろ」


「仲間だからいいじゃない」


「仲間はこんなことしねぇ」


「んじゃ、今だけ恋人にしてよ」


「こっ、こっ、恋人だと! ふざけんじゃねぇ!」




 ……うふふふ、こいつ、どうしてこうもわかりやすく、照れてくれるのかねぇ。




 嬉しいなー、もー。




 私で照れてくれる人っていたんだ。




 私さ! 冗談じゃないよ? 本気で思ってるんだよ。




 あのね。



 私さ……死ぬまで誰かを照れさせたりすることないんじゃないかって思ってたんだ。




 できんじゃん。

 凄いじゃん。なんだよこの自己肯定感! 

 あうあうあー。このままでは陽キャになってしまう。




 あぁ、こんな時に右腕があればもっとしっかり、抱きしめられるんだろうけどなぁ。




 でも右腕があったら、マボーの仲間じゃなくなっちゃうのかな?




「とっとと離せ!」


「好きな人いるの?」


「いねぇよ!」


「だったら、今だけ私が恋人でもいいじゃん。照れるなよ、坊主」




 私はギューッとさらに体を密着させた。




「やめろ!」


「あっ、私、障害者だからあんまり暴れると怪我しちゃうかも」


「……くっ」


 マボーが静かになる。




 素直すぎる! バカか!


 可愛いな、もう。


 あー、これが仲間の感触か。


 嬉しいなぁ。


 男の子の匂いがする。


 臭いけど、全然、不快じゃないです。なんていうか、むしろ、安心する匂い。


 健全な汗の匂い。


 マボーの髪の毛に鼻先を入れてくんくんする。




「やめろーッ!」




 マボーの悲痛な叫びも可愛くて心地よいです。




 あー、もう、これはなんだ?




 もしかして、私はこの少年にときめいちゃっているんだろうか?


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