第3話 概要
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
戦う事しか能のない『衛鬼兵団』と、後輩の『長瀬』の活躍で、盆人は憧れの女性『鷹音野華』の食事会に呼ばれる。
鷹音さんの手造りふわとろオムライスに舌鼓を打つ、盆人とユイ、そして長瀬と青木さん。
さあ、いよいよお楽しみのトークタイムに突貫!
……そう、そして……この物語は、相変わらず戦闘シーンが無いまま推移して行くのであった。
……ユイは、鷹音さんも気に入ってくれてるみたいだから、申し訳無いが、このまま、膝をお借りしよう。
さて、ここからは、皆で雑談をしながらのティータイムになった。
先ずは長瀬少佐のサバゲ……
……え? しょ、少佐ぁ〜!? あの、某ロボットアニメの登場人物、通常の3倍のスピードを誇るシャ〇少佐と同等って事ぉ〜!? いつの間に昇格したの?
……って、まあ大手柄だったから当然か。
うちの大家さん少尉だから、既に上官じゃん! 家賃値下げして貰って〜!
コホン、仕切り直しだ。 時を戻す。
……先ずは長瀬少佐のサバゲ報告からだ。
先日、藤岡さんが初体験したのだが、元々ゲーマーなので動体視力がズバ抜けていて、かなりの戦力になったそうだ。
……青木さんも、長瀬、藤岡さん、ユイの3人による『魔の三角地帯戦法』の餌食となり、遂にサバゲーの沼に沈んで行った。 次の大会には、初参戦だそうだ。
……鷹音さんは、機械が苦手な上に、ゲームも怖くて好きではないらしい。 ……本当に、これといった趣味は無いようだ。
次は、落合さんのWeb小説の話題になった。
現在、執筆中の作品は、
『サン・クリスタおばさんのスープ』……外国の、とある山奥でレストランを営む、お婆さんの話だそうだ。
このお婆さんの作るスープは、不思議な力があり、飲むと、願いが叶う……と言う。
その力の政治利用を画策する、CIA、SVR、MI6、内閣調査室が暗躍するストーリー……だ。
俺も読ませて貰ったが、素晴らしいエンターテインメントだった。
さぞ評判が良いんだろう……と思ったのだが、読者の数が、頭打ちになってしまったそうだ。
……そろそろ、別のストーリーを書こうかと、構想しているらしい。
藤岡さんが「俺、この前ストーリー聞いたら、結構面白そうだったんですよ。 ……皆さんに評価して貰えば?」……と言った。
鷹音さんと青木さんが「聴きた〜い」……と、同時に言った。
「仕方ないなあ」……と言って教えてくれた。
まだ、概要だけだそうだが……
宇宙から来た『流浪の軍隊』が、偶然出会った少女の片思いを叶える為の戦争をする……、と言うストーリー……
……え!?
……多分、只の偶然だとは思う。
現に、落合さんは、考え考え話していた。
そもそも、あの衛鬼兵団が、自らの存在を俺以外の人間に感付かれるはずが無い。
……そう考えたら、少し安心した。 ……だが念の為に、後で情報参謀に確認してみよう……。
「そう言えば、平さんのお話をお聴きして無かったですね」
ドキッ! よ、鷹音さんからの奇襲攻撃!
舌と胃袋に記憶させようと、必要以上に味わっていた、鷹音さん手作りのデザート『チーズスフレ』を慌てて飲み込んでしまった。
いやあ、失念! 自分の事を聴かれるとは、全く思っていなかった……。
俺は、困った事に誇れる特技も趣味も無い。
強いて言えば、安くて美味い店を色々知ってるくらい……か……。
あのゴー☆ジャスなお食事を戴いた後に、『赤ちょうちんの一杯飲み屋』なんて口に出すのもおこがましい……とは思ったものの……
「そうですね……。安くて美味い店を探すくらい……ですかね……」……と、正直に言った。
……これは先日、長瀬(当時上等兵)が鷹音さんを夏祭りに誘う時に、正直に伝えた事を踏襲した形だ。
落合さんと藤岡さんは「平さんは、本当に食べるのがお好きなんですね〜」……と、笑った。
が!
鷹音さんは、笑いながらも……
「羨ましいです〜! テレビで観たことがある『牛丼屋さん』とか、『焼き鳥屋さん』……も、行かれた事がお有りですか?」
……と、興味津々の表情で聴いてきた。
うわっ! 瞳……綺麗! ……ユイ以外に、こんなに綺麗な瞳を見た事が無い。
「『利き牛丼』と『利き焼き鳥』で、平さんの右に出る人は、居ませんよ」 ……と、長瀬がM61低高度防空用機関砲宜しく、的確に援護射撃をしてくれた!
長瀬! 出来した! 褒美として今日から『大佐』を名乗るが良い!
「すご〜い! 私、前から行ってみたかったんです! 今度連れて行って下さい!」
……これ……夢?
楽しい時間は止めたくても止められない。 別れの時間がやって来た。
さらに、盆人に迫る不安の影!
次回 第4話 悪夢 にご期待下さい。