第1話 衛鬼兵団・傭兵・親衛分隊『混成部隊』創設
異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』は、その強さから、仕える主に逆らう者を根絶し、皮肉にも不必要となって放逐されてしまった。
彼等は戦い続けないと消滅してしまう……という過酷な運命を背負っていた。
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、衛鬼兵団の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される
「何か願いは無いか?」と言うユイに、盆人は憧れの女性『鷹音 野華』と恋人になる事を望むが、衛鬼兵団は『愛』の何たるかを知らない。 咄嗟の機転で兵団に『愛』を理解させた(何となくではあるが……)に、盆人は協力を求める。
戦う事しか能のない兵団を有効利用(?)し、更に後輩の『長瀬』の協力も得て、お食事会に呼ばれる迄に急接近!
……果たして盆人の片想いの行方は? また、戦い続けなくては消滅してしまうという『衛鬼兵団』の運命は!?
我々『衛鬼兵団』と『傭兵』の『混成部隊』は、『㈱アティロム、鷹音野華親衛隊』から、『親衛分隊2名』落合さんと藤岡さんを加え、総勢6名に増員された。
因みに『親衛分隊』2名には、俺が鷹音さんを好きな事は伏せてある。 ……鷹音さんと同じ職場の2人に、変に気を遣わせない為だ。
今日は、記念すべき、あの! 鷹音さんの手料理をご馳走になる日だ。
2〜3日眠れなかったので、少々ぼーっとしていたが、今日は緊張からかシャキッとしている。
広い藤岡さんのマンションが、お食事会の会場だ。
現地集合で、俺たち『旧・混成部隊』4名は10分前に集結したが、アティロムの皆さんは、実に1時間前には集合して、既に仕込みをしてくれていた。
藤岡さんがドアを開けて迎えてくれた。
「お邪魔しま〜す」と玄関に足を踏み入れた瞬間、猛烈に食欲をそそる良〜い香りが、俺たちの鼻腔に総攻撃を仕掛て来た!
我々『旧・混成部隊』は、基本的に脳では無く胃袋で考えるので、敵本土上陸前の時点で戦意を失い、降伏した。 そして、ジュネーヴ条約によって手厚く保護される捕虜よろしく、畏まって着席して、配膳を待ったのである。
……思い返せば、あの夏祭りの時、落合さんによる『鷹音さんは、お料理上手』という、『神情報漏洩』から、実に1か月以上、待ちに待ちに待ちに待った今日という記念すべき日!
…………!
き、来た! ついに来たぁ〜!
鷹音さんの! 手作り! オムライス! ……母親が作ってくれた、端っこがバリバリで、破れ傘のような卵焼きに、ケチャップで適当に象形文字が描かれた物と同じ『種』に属するとは到底思えない、異世界の饗膳! ……が『親兵分隊』落合さんと藤岡さんの手で、サラダとオニオングラタンスープと共に運ばれて来た。
俺とユイの前には、この究極のメニューが2人前ずつ置かれた。 ……甚だ遺憾ではあるが、我々衛鬼兵団の現・首脳2名は、事もあろうに『大食らい』のレッテルを貼られていた。
……まあ、これは、前章の第5話『超弩級砲雷命中!』をお読みになれば、お判り頂けるように、完全にユイの責任な訳だが。
俺たちの前に置かれた4人前のオムライスを見て、長瀬と青木さんは肩を震わせ、顔を伏せて笑っている。
更に、そんな『長瀬分隊』を見て、アティロムの面々も笑顔を見せてくれた。
……全く以て、お恥ずかしい……。
……でも……嬉しい!
目前に並んだ、ご馳走の数々に喜びが止まらない盆人とユイ……そしてオジカ分隊の長瀬と青木さん。
そんな彼等の前に、いよいよヒロイン、鷹音さんが登場する!
次回 第2話 一刀両断 にご期待下さい!




