第4話 上陸
【前回迄のあらすじ】
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
同僚で後輩の長瀬の協力で、近くの夏祭りに憧れの鷹音さんを誘う事に成功する。
しかし、太平洋上に出現した熱帯低気圧は巨大な台風へと変貌し、夏祭りを直撃する公算が強くなり、夏祭りは絶望的になってしまった。
どこまでも透き通った、雲一つ無い青空。
今日は、待ちに待った、守屋神社の夏祭りだ。
俺のアパートでは、青木さんがユイに浴衣を着せている。
台風も、都合良く、日本列島の手前で消えちゃった! ラッキ~♪
……約束の時間には少し早いが、こちらは全員揃っているし、まずお参りもしたいから、ユイの準備が済んだら出発するか!
……って!
ちょっと待て!
これって、あまりにも不自然じゃ無いか!?
作戦参謀が、俺に『台風を消し去ったら、全ての生命体が死に絶える』ってわざわざ忠告してくれたのに、あの設定は何処へ?
そもそも、台風が日本の手前で消滅!? するなんてあり得ない。 『消える魔球』じゃあるまいし……荒唐無稽にも程があるぞ!
夢? 夢なのか!?
ほっぺをつねったら、痛い。
俺は、アパートの裏手に回り、『司令徽章』で作戦参謀を呼び出した。
……現れた3Dの作戦参謀に「今回は、どんな方法を使ったんですか?」……と訊ねた。
「……我が軍の工兵部隊が、『暴風雨を伴う移動性熱帯低気圧』の進路にあたる地域の地下に空間を創り、地表を反転させたのだ」
……え?
……どゆこと!?
俺の目の前に、模式図が表示された。
台風の進路にあたる部分が巨大な串に貫かれ、クルリと裏返った。
……『イカ焼き』だ……! 超巨大なイカ焼きだあ!
今、俺たちが見ている太陽は、地球の内部に設置された、巨大な照明で、『炭火』のように、俺たちを照らしている! 空は、掘られた穴の内部を水色に塗装したものだ。
……つまり、俺たちは地球の中心に頭を向けて、『地球の外殻』の内側に立っている…って事か。
「じゃあ、台風が消えたっていう報道は……」
「わたくしが流した『ガセネタ』でございます」……と、情報参謀が横から顔を覗かせ、例のひょうきんな声で言った。
……『ガセネタ』って、こいつら、変な言葉ばかり覚えるなぁ。
「今回の作戦は、引力の調整に時間がかかり、少々手間取ったぞ。」
……いつの間にか、後に浴衣姿のユイが立っていた。
……こいつ……和装まで良く似合う!
「これで、溜飲が下がったであろう。 皆が待っておる。 『ナツマツリ』に侵攻!」
『ろ、御意……』
俺たち『混成部隊』4人は、守屋神社に向かった。
変な話だが、足元では今頃、台風が『上陸』している……はずだ。
【次回予告】
衛鬼兵団の活躍で台風を回避した盆人! 『第三次鷹音野華攻略作戦』の行方は!?
次回 第5話 超弩級砲雷 をお楽しみに!
【作者より】
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