第2話 圧倒的破壊力《ジャガーノート》
【前回迄のあらすじ】
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
盆人は、後輩の長瀬の言葉をヒントにして、憧れの鷹音さんとの『第5種接近遭遇』に成功する。
このまま流れに乗りたい盆人は、更なる攻略作戦を展開する。
俺は長瀬に、アティロムの鷹音さんに好意がある事を打ち明け、また、七夕を教えてくれた事に感謝の気持を伝えた。
長瀬はとても喜び、全面的な協力を約束してくれた。 ここに、新たなる『衛鬼兵団』と『傭兵・オジカ小隊』の『混成部隊』が誕生したのである。 ……なお、この軍事同盟締結には、ユイの口添えと、今後もユイがサバゲーに協力する……という交換条件があった事も忘れてはならない。
但し、当たり前だが衛鬼兵団の存在は隠匿したままだ。
我が『混成部隊』は、俺、長瀬、長瀬の彼女、そして『人の皮を被った鬼』のユイ……以上4名だ。
……手駒として足りるか足りないか……こればかりは、これからの作戦次第だろう。
前回の七夕が『第ニ次鷹音野華攻略作戦』だったので、次が『第三次』となる。 この『第三次鷹音野華攻略作戦』の作戦会議が、俺のアパートで開かれた。
この会議で、俺は長瀬の彼女、青木七菜さんと初めて会った。青木さんは長瀬をそのまま女性にしたような、人の良さがにじみ出ている人だ。
青木さんは、サバゲーには全く興味が無いそうなので、ユイのような一風変わっている……どころか『ハリケーン』ほど変わっている娘とやっていけるか心配だったが、それは杞憂だった。 青木さんが利口者なので、ユイを上手に扱っている。 長瀬分隊、恐るべし!
ネットやチラシで情報を収集する。
区報を見ていた長瀬が「こんなのはいかがです?」……と言って、記事を見せてくれた。
『守屋神社 夏祭り開催のお知らせ』
……守屋神社なら、アティロムからも近いし、これ、良いかも!
「長瀬二等、でかした。 褒美として『上等兵』に昇格だ!」 ……とユイが言うと、長瀬が畏まって「ははっ、謹んでお受け致します。」
……横では、青木さんがハンカチを目に当て、嬉し泣きの真似をしている。
……こいつら、何時でも楽しそうだな。
開催は再来週の連休だ。 まだまだ余裕がある。
今日は前祝いだ! 俺と長瀬は缶チューハイ、青木さんとユイはアイスミルクティーで乾杯した。
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「チッ、チッ、チッ」……
……刻々と時間だけが過ぎて行く。 心臓の高鳴りは、いくら力を込めても抑えきれない……。
あの前祝いから2週間……。
今日は長瀬が、鷹音さんを夏祭りに誘うべく、アティロムに行っている。
……この前の『第三次鷹音野華攻略作戦会議』の際、鷹音さんを誘う役目を誰が担うか、人選を行った。 俺は、真っ先に志願したのだが、3対1の多数決で惜敗してしまった……。
長瀬が「平さんは絶対に浮足立って、誘える物も誘えなくなりますよ~」と、スルメを囓りながら言いやがった。
……おい! 先輩に向かって、随分はっきり言うなあ。……まあ、否定はできんが。
俺は、今一度チャンスが欲しくて、事前オーディションを提案した。 これは満場一致で可決した。
仮想作戦の舞台は俺の部屋、鷹音さん役は青木さん、ユイは、その他大勢だ。
先ずは俺からだ。
……部屋に入ると、早速ユイが俺を迎撃して来た。
「やあ! 兄! 今日は何用で参った!」
「あ、あの、え~っと…」うわあ~、頭が真っ白に~
はい、不合格。
おいおい、早すぎだろ~(泣)
次、長瀬
長瀬が侵攻すると同時に、自動警戒管制システムよろしく、ユイが
「やあ! 長瀬 上等兵! 何用か!」
……との高速迎撃を仕掛けるも……
「はっ、これはユイ大将閣下! 実は次の連休に『守屋神社参道』に於いて、我が『オジカ事務用品関東軍』が交流会を催す予定でありましたが、人数が足りず、増援を請う為、貴軍に伺った次第です!」
……え? 正直に言っちゃうんだ…!
「左様か。 ……青木……では無く、鷹音!」
……青木さんが、「は~い! 聴こえてましたで~す! 同僚に声をかけて、参加させて頂きますね~」
……はい、カット~! みんな、役者よの~。
迎撃や対空砲火を難なくすり抜け、鷹音さんのハートに弾着!
……あ、圧倒的だ……。
まさしく伝説の圧倒的破壊力が、ここにも存在していたんだ! ここまで差がつくと、いっそ清々しい。
こうして、長瀬がアティロムに行く運びになったのだ。
「戻りましたあ~」
長瀬の声だ! 戦果、まずは戦果から!
……長瀬は横目で俺を見ながら、指で○を作って見せた!!
や、やったあああ~~!
長瀬ぇ~! お前は、もう曹長に昇格だ!!
ありがとう、そして……おめでとう、長瀬!
おめでとう、俺!
しかし、その数日後には、俺の喜びが絶望に変わってしまう事を、この時の俺は知らなかった。
【次回予告】
『守屋神社』の夏祭りに鷹音さんを誘うことに成功した盆人!
しかし、この後、思わぬ悲劇が彼を襲う事となる……。
次回 第3話 絶望 をお楽しみに!
【作者より】
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