第1話 傭兵
【前回迄のあらすじ】
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
盆人の後輩、長瀬の一言から、鷹音さんが勤める会社『アティロム』で七夕まつりがある事を知った盆人は、アティロムに突入し、鷹音さんとの『第5種接近遭遇』に成功したのだった。
「これより、軍議を凝らす」
参謀長の声を聞くのも久しぶりな気がする。
さて、長瀬やこいつら……元い、衛鬼兵団のお陰で、ついに鷹音さんとの交流に成功した。これで、いよいよ、本格的な攻略作戦に移行できる…って事で、軍議を凝らす運びとなった。
作戦参謀が「閣下の次元では、定石として、如何なる手立てを講じておられるのか、お聴かせを……」と、俺に発言を求めた。
「通常は、複数のグループ同士で遊びに行って、親交を深める……かな」
「ふむ、複数の同士討ちで勝ち抜いた遊軍が親兵となって相手に深々と留めを刺す……なるほど、実に奇想天外な攻略作戦だ……」
ここまで曲解されると、いっそ清々しい。
面倒になったので作戦参謀はさておき「……何にしても、俺たちのグループと、鷹音さんのグループが、お互いに楽しめる『何か』を考える必要があるな。」
「はいっ」ユイが嬉々として挙手し……
「『さばげ』か良かろう! 楽しめるぞ!」
……いや、駄目だって! 鷹音さんには、ディープ過ぎて、着いて来られないって……!
「作戦参謀」……参謀長の低音の魅力が木霊する。 ふと見ると、作戦参謀が挙手していた。
「我が衛鬼兵団が嘗て葬った者共の墓標巡りは如何かな? 我が軍の圧倒的破壊力を改めて世に示す好機となろう」
『墓標』って! ……しかも『巡り』って! 仲睦まじいカップルですら破局するわ!
…………
軍議は空転してしまった……。
「……このままでは埒が明かん」ユイが立ち上がって発言した。
「やはり、貴様らとあたしたちとは、根本的に異質なのだ。 恐らく合意は得られまい。 ……軍議を続けても時間の無駄ではあるまいか?」……ユイの言葉に、参謀たちが同意の声を上げる。 ……これには、俺も同意した。
参謀長の「満場一致により、これにて軍議を終える」の辞で、お開きとなった。
作戦参謀が俺に近づき、申し訳無さそうに……「自分の理解力の低さが露呈したようだ。 ……自分は、ずっと戦場におったので、座って軍議をするのは苦手なのだ。 謝罪致す」 ……と言って、頭を下げた。例によって俺の頭上ではあるが。
「そんな! 気にしないで下さい。 作戦参謀には、この前の八瀬の件でも、本当にお世話になりました。 また、力になって下さい」と頭を下げると、作戦参謀は答礼して消えた。 あいつも、清々しくて良い奴だ。
さて、衛鬼兵団が駄目となると、相談出来る相手は……
「平さ~ん! ユイ閣下~!」
公園で待ち合わせて現れたのは、またまた登場! 俺のもう一人の傭兵、長瀬正治・二等だ。
【次回予告】
長瀬に『アティロム』の鷹音さんに恋心を抱いている事を打ち明けた盆人。
鷹音野華攻略作戦は新たな局面を迎える!
次回 第2話 圧倒的破壊力をお楽しみに!
【作者より】
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