第3話 一生のお願い
【前回迄のあらすじ】
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
盆人の短冊を結ぶ場所を探していた憧れの鷹音さんが、急に一枚の短冊を隠した。 ……何かと思えば『野華(鷹音さんの名前)さんのように、美人になれますように』と言う、鷹音さんに憧れる女性社員の短冊を隠したのだった。
その奥ゆかしさに、改めて鷹音さんへの想いが募る盆人だった。
「あっ、思い出しました」
鷹音さんの表情が、パアーッ…と明るくなった。 おお! まぶしひ!
「社長室に、小さめですが七夕飾りがあります。 そちらに結びましょう」
ブッ!
……うわあ! 危ねぇ……危うく彼女に吹きかけてしまいそうな所を、間一髪で、手で抑えた。
「い! いや! 社長室はご勘弁頂けませんか? 畏れ多いですよ!」 ……と、俺は必死で固辞した。
「大丈夫です! 私が責任を持って、大切に飾らせて戴きますので」と、俺の短冊を自分の胸に当て、両手で包み込んだ。
……俺は、過去最大規模の、『一生のお願い』を念じた。
『神様、仏様、一生のお願いですから、あの短冊にして下さい!!』……ふーむ……我ながら恥ずかしい『一生のお願い』だ……。
「……で、ではお言葉に甘えて、『オジカ事務用品』の総意として、お納め下さい。」
「はい、謹んで、頂戴致します」
二人で頭を下げ合い、同時に顔を上げ、お互いに目が合いニッコリと笑い合った。
短冊になる夢は叶わなかったが、それより遥かに嬉しい出来事だ。 俺の中で『使い果たした』と思っていた『幸せ』は、まだ残っていたんだ! ……と確信した。
こうして、俺と鷹音さんの『第5種接近遭遇…直接対話』は笑顔で幕を閉じた。
……鷹音さんの『アクセサリー』を知る事は出来なかったが、俺は充分過ぎる程、満足だった。
【次回予告】
第二次鷹音野華攻略作戦を無事終えた盆人は、次の戦いに駒を進める為、再び軍議を凝らす。
衛鬼兵団参謀本部が出した決断は!?
次回 第6章『オジカ小隊、出撃!』
第1話 傭兵 をお楽しみに!
【作者より】
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