第1話 最高軍事機密
【前回迄のあらすじ】
『オジカ事務用品』に勤める平凡な青年『平 盆人』は、偶然、異世界の無敵の軍『衛鬼兵団』の司令官『ユイ』と出会い、この世界での『暫定司令官』に任命される。
鷹音さんに、現在彼氏が居ない事を知った盆人は、彼女の好みを知ろうと、彼女が勤める会社『㈱アティロム』に向かった。
アティロムに飾ってあった七夕飾りの、鷹音さんの短冊のオリジナルを探していると、盆人の肩をつつかれ、振り向くと……そこには……
鷹音さんが笑顔で立っていた!?
「こんにちは」
……銀嶺を駆け抜ける涼風か、或は春の訪れを告げる小鳥のさえずりのやうな玲瓏なること朝露の如き声が、拙の耳朶を優しく撫で行きて候ふ……
こ! これは夢か? 幻か!? あの! 麗しの! 鷹音さんが……俺に会釈し微笑んでいる……?!
……なんて美しい ……天使だ。 この渇いた大地に、潤いと幸福を与えるべく、神様に遣わされた『天使』が舞い降りたんだ……! もう! ……大好き! ←語彙力(泣)
「先日は私の不在中、七夕飾りをお手伝い戴いたそうで、ありがとうございました」 ……と、また会釈をくれた。
「いえ…… とんでもない。」『貴女の短冊を探す為ですからぁ』……というのは、それこそ最高軍事機密だ。
すると、彼女が俺の横に移動し、そっと桜の花弁のような小振りな唇を近づけた……。
な、何で? 何で鷹音さんがこんなに近づくの? 鼓動が高鳴り、心臓の位置が判る。 呼吸数上昇! パニック寸前! お、俺……このまま限界突破して天国へ行っちゃうんじゃないか?
……! ま、まさか! 反衛鬼兵団組織が、司令官の俺を亡き者にすべく差し向けた暗殺者なのか? そうなのか!?
「平さん大評判ですよ。 直向きにお仕事に取り組む姿が素敵だ……って」彼女は、俺に、そう耳打ちした。
あ〜! 確かにあの時は必死だったからなあ。
「いやあ〜、それは逆に驚きました〜! いつも通りにしてただけなのに……。」と、犯罪者がインタビューを受けた時のような受け答えをする。
「だから素敵なんですよ。」 ……そう言った後、俺から離れた。
「……本日のご要件は?」 わざと澄まし顔で聴いてくる彼女に……「そうでした。 この前、短冊を戴いたので、飾って頂こうと思いまして!」……と、彼女に短冊を渡す。
彼女は茶目っ気たっぷりに「拝見して、良いですか?」と聴く。 「もちろんどうぞ! ご高覧下さいっ」……っと、こちらもわざと仰々しく言った。
彼女が短冊を裏返す。 短冊には俺の『コロし文句』……
「アティロムのご発展と、皆様のご健康をお祈り申し上げます」 ……の文字が。
彼女が俺の左腕をつつき「また、お上手ですね!」と言ってくれた。
……今、突かれた場所は……絆創膏を貼って、例え親にも触らせないようにしよう。
「どこに結びます?」 ……短冊が随所に結んであり、中々場所が無い。 二人並んで良さそうな所を探す。
……そうだ!今がチャンスだ!
「鷹音さんの短冊はどの辺りですか?」
「さあ……不在だったので……。」
「あ〜! そ、そうでしたね!(汗)」
しまった! 失言!!
……結ぶ場所を探しながら、さり気なく
「鷹音さんは、何て書かれたんですか?」
少し間をおいて彼女は恥ずかしそうに、こう言った……
「……ないしょ、です」
【次回予告】
短冊を結び付ける場所を並んで探す鷹音さんと盆人。
すると突然、鷹音さんが『何か』を……隠した?
次回 第2話 捜索 をお楽しみに!
【作者より】
お読み頂き、心より感謝申し上げます。
ブックマークやご感想を頂けますと、本当に励みになります。
何卒宜しくお願い申し上げます。