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第1話 少女

 平凡な青年が金ピカに輝く鳥? を追いかけるとそれはバッジになって、目の前に落ちて来た。 それを拾った時から、青年の運命が変わる!


 ……という、非常に有りがちな冒頭から、この物語は始まります。


 このバッジを拾ったのは、ただの偶然か? それとも、何かの因縁なのか!?


 青年と、横柄な物言いだけど純な少女との、奇想天外な冒険譚をお楽しみ下さい!

 

 ある日、コンビニで弁当を買い、アパートに帰る途中、夕焼けがあまりにも綺麗だったので見惚(みと)れていると、突然『キューン』という聴き慣れない音がした。


 ふと、そちらに目をやると、金ピカに輝く鳥? みたいな(もん)が飛んでいた。


 物珍しさから追いかけると、そいつはカエデの(たね)のようにクルクル回って、俺の足元に落ちた。


 拾い上げると『龍のバッジ』のようだった。


 何気なくそれを胸に当てると、まるで磁石のように、服に貼り付いた。 引っ張るが、取れない。


 高価な物だとまずいと思い、そのまま交番へ行こう……と思った時、俺の前に一人の少女が現れた。


 文字通り出し抜けに『現れた』のだ。


 何回か、目を(こす)ったが、少女は消えない。


 年の頃なら13、4歳か? (おさな)さの中にも気品があり、(あと)数年もすれば誰もが振り返る美人になるだろう。


 試しに、少女の左のほっぺたを指で押してみると、張りのある、ぷにぷにした感触が指に伝わって来た。 ……(まぼろし)では無いようだ。



 ……あれ? この少女……何処かで会った……どころか、ずっと一緒にいた事がある?



 俺の胸が『キュン』とした。 四捨五入すれば30の大台に手が届くオヤジが言うのも……ちょっとキモいが……。



 ……遥か昔、この少女と、笑い合い、涙し合い……そして、何か途轍(とてつ)もない冒険や、様々(さまざま)な艱難辛苦を乗り越えた……そんな……気がした。



 巨大な化け物? ……そして昔の合戦? ……そんなビジョンが、パノラマのように脳裏をよぎった。 デジャヴ……にしてはリアルだが!?




********************


  ……この『謎』は、(いず)れ解ける事になるのだが、それは、まだまだ先の事……だ。


********************




 少女は(まばた)きひとつせず、俺を見詰めている。 


 黒目勝ちな瞳の周辺に、わずかにのぞく白眼(はくがん)は澄み切って、(あお)く見えた。



貴様(きさま)何奴(なにやつ)。 ……所属と階級を(もう)せ」


 ……と、少女は、アニメみたいな可愛らしい声で俺に()いた。 ……『ショゾク』と『カイキュウ』?


「俺は『オジカ事務用品』所属の『(たいら) 盆人(はちひと)』だ。 階級? は……『平社員(ひらしゃいん)』だ」


 すると、少女は、「あたしは『衛鬼兵団(えいきへいだん) 司令官??????大将』だ」


 名前は聞き取れなかったが、なんとか兵団の司令官? らしい。


「その司令官が、何の用?」


 少女は無言で、俺の胸に付着したバッジを指差した。


「あ、ごめん! これ、君のか! 返すよ。 ただ、取れないんだ」 ……また力を込めて引っ張る……が、取れない。


「それは、貴様のだ。 持っておれ」


 ……拾い物の持ち主が(あらわ)れて、そいつが『持ってろ』……って言ってるんだからネコババにはならないだろう。 ……ただ、()がし方は是非ともお()かせ願いたい。


 と……!


 少女が視界から消えた。 辺りを見回すが、何処(どこ)にも居ない。


 ……ま、良いか……。 腹も減って来たし、帰ろ……。 


 ……と思った瞬間、また少女が現れた。 


 ちょっと腹が立ち「何だよ! 出たり消えたり……」 と言うと、少女が初めて表情を(ゆる)めた。


 可愛らしい微笑みを浮かべ、一言(ひとこと)重畳(ちょうじょう)」と(つぶや)いた。


「チョウジョウ……?」……と聴き返そうとした時、全身に激痛が走った!



(いって)ぇ!」 ……思わず座り込む。 腕を見ると、無数の(あざ)が出来ていた。 更に、息が(あが)っている事にも気が付いた。 フルマラソンを全力で走ったくらいの苦しさだ。 まあ、走った事は無いが。


「30,000打撃中、29,838防御……『ヒラシャイン』の反応としては上出来だ」 


 なんと、俺は自覚も無く殴られ、更にそれを防御していたらしい。 そう言われてみれば、(てのひら)が真っ赤で、少しだけ血が滲んでいる。


 ……どう考えてもおかしい。 このバッジを拾った瞬間から、途方(とほう)()い何かに巻き込まれたようだ。


 俺を見下(みお)ろしている少女に「なんだ(ちみ)は? これは何なのか教えてくれ……」とバッヂを示しながら頼んだ。


 少女は、何かを言いかけたが、突如その場に倒れ込んだ! 俺は自分の痛みも忘れて、少女を抱き起こし……


「しっかりしろ! 今救急車を呼ぶから……」


 ……と言い終わる前に、少女の腹の虫が『グウゥ~~ッ』と鳴った。


 少女は弱々しい声で「く、空腹だ……。 (なに)か栄養の補給を……依願(いがん)する……」……と言った。


 気付くと、俺たちの周りには、黒山(くろやま)人集(ひとだか)りが出来ている。


「スミマセン、お騒がせして……。 腹が減って(ちから)が出ないよう……です」……とバ○キンマンに水をかけられたアンパ○マンみたいな台詞(せりふ)を残して、少女を連れ、慌てて、その場を去った。

【次回予告】


 危機を脱した少女は、盆人に身の上話を始めた。 ……それは、想像を絶した話だった。


 次回 第2話『戦の鬼』をお楽しみに!


 

【作者より】

 お読み頂き、心より感謝申し上げます。


 ブックマークやご感想を頂けますと、本当に励みになります。 


 何卒宜しくお願い申し上げます。

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