ヤンデレ幼馴染は死ねない
これで一応完結です!
最後なので少し長めですが、お納め下さい。
そう言って彼女はナイフ片手にににじり寄ってくる。待ってまだ死にたくない。そんな心の叫びは彼女の圧の前では無意味だと悟る。前には全てを壊した張本人。後ろにはもうすぐ特急のつく線路。
(まさに、進めど地獄、退けど地獄ってやつだね。まあ、自業自得の私にはピッタリか)
なんてことを思いながらも、体は今にも逃げ出そうとしている。しかし恐怖に怯える足はがくつき今にも崩れてしまいそう。気が動転した私は、こんな事を口走る。
「わ、私は、2人も殺したのよ!あんたなんか、返り討ちにしてやる!」
焦って出てきた虚栄心を彼女はせせら笑う様に一蹴し、こう返してきた。
「確かに人を殺した数では貴女の方が上ですねぇ!ですが安心して下さい。今から2人殺せば、私の方が多くなりますから。ここに2人いるでしょう、貴女と私」
まるでおままごとの配役を決めるかの様の無邪気な笑顔で物騒な事を言う彼女に、私は畏怖の感情しか持つことが出来ない。そんな会話をしている内に間合いは、互いの手が届くまでに縮まっていた。冷や汗は最早雨と混じり合い、どれだけ出たのかも分からない。
そんな時だった。この空間を照らし出す明かりが迫ってくるのは。翡翠は自らのナイフを首筋に当てながらさらに迫ってくる。彼女の興奮した息遣いが伝わるまでに。下から覗いてくる瞳は深海の様に暗く冷たかった。そして一言こう残した。
「私の遊戯は楽しんでくれたかしら?もしそうなら、次もその次もその次も、楽しんでね、おねーちゃん♪」
その言葉は酷く渇いていた。その渇きを私は知っている。淋しさからくる渇きだと。しかし気づいた時にはもう遅いのがこの世の常。私の体は後へ倒れていく。視界は空を捉え、向かいのホームの屋根さえも捉えてしまう。左半身を電球に照らせれながら元居た場所を再び見る。そこに居たのは、首から真っ赤な薔薇を咲かせた笑顔の美しい女子の残滓。
2人は後ろへと倒れていく。1人は死を楽しみにしながら、もう1人は相変わらず、死への恐怖を払拭出来ぬまま。そして彼女はこう思わずには居られなかった。
(また、あの日々を過ごたいなぁ。叶わないと知っても、同じ結末を迎えるとしても、それでも私は、もう一度、もう一回、楽しい生活を、平穏な日々を送りたかった)
願いは金属の摩擦音に混じって消えていく。こうして、一連の惨劇は一応の終わりを迎えた。
数日後、病室にて。
私の知らない天井だ。周囲にいるのは、恐らく警察。辛うじて動く右手で涙溢れる瞳を擦り隠しながらも、一つの現実に突き当たる。霞む思考の中で彼女ははっきりと分かった一つの事実について反芻してしまう。嬉しいとも、悲しいとも、辛いとも、嫌だとも思わない。これはきっと運命なのだと受け入れるしかなかった。晶に逢えるのは当分先になってしまったなぁ、なんて考えながら。
また私は、死に損ねた、と。
やはりヤンデレ幼馴染は死ねないのだ、と。
ー完ー
今まで読んで頂きありがとうございました!
拙い文章で読みづらいと思いますが、誰か1人の心、ないしは性癖にでも刺さってくれたなら、非常に嬉しいです!
今まで評価やブクマをしていただいた方々、モチベになっました!ありがとうございます♪
またいつか会える日が来たらば、また評価してくれると嬉しいです!
明日以降は、気ままに設定だったり、未出情報を開示したりするかもなので、そちらも見て頂けると嬉しいです!
長くなりましたが、今までありがとうございました!これからも読んでください!




