僕は回想したい
今回は気分転換に17:00台投稿です。
今日から二章の始まりです!
詰まったところは諸々カットしてその後...にしました。後から追加できたら良いなぁ...
あの後のことは鮮明に覚えている。
逆にあの日以前の事は、色褪せて屑となった活動写真
の様になってしまった。彩葉との思い出以外。
その後、あの二人が罵声の応酬をしながら
やってきた事。
宿直で残っていた教師が出てきて吐いたこと。
彼女を載せた救急車に乗った事。
真っ赤な彼岸花の花畑から担ぎ出された彼女は
糸の切れた絡繰人形の様だった。
彼女が醸し出す死の香はまるで腐った芳醇な赤ワイン
の様で、救急車を満たした。
彼女の落下死は明朝のモーニングショーから、深夜帯
のラジオ放送まで幅広く扱われ、耐久消費財どころか
消耗品よりも早くのうちにすり減らされ、三日後には
既に過去の遺産となり情報の砂漠に埋もれていった。
過ぎた時が戻らない様に、進み始めた時は、物体の
落下の様に止まることはない。
そんな当たり前の事の中で起こった一連の出来事で
憔悴しきった僕は、全ての思考を切り捨てた。
具体的に言うならば、引きこもりとなったのだ。
朝早くから夜遅くまで、彩葉との思い出をなぞろうと
しては空を切る手を、薬中と言ってもおかしくない程
虚な目で追いかけてはやり直すをリピートする。
ここ数日、口にしたのは水と栄養食品のみ。
気力は、第一次大戦後のパピエルマルクの価値並みに
下落していく。
そんな時、扉の向こうから聴き覚えのある声が二つ。
「あっ......晶!だ......大丈夫?あの日の事なら......
私、関わって無いから!だっ......だからもう一回、
一緒に話してくれないかなぁ......」
妙に上擦ったか細い声で話しかけてくる千鶴。
闇中を手で掻き分けていく様に慎重であった。
頭が再起動した時に思い出したことがあった。
それはもう一つの影が言ったこと。
『お......晶くん!ち、千鶴さんが上から降りてくるの
を私は見たの!』
この言葉は脳を蝕む様に頭にこびりつく。
この言葉は、言わば呪詛であった。
『あっ......あの、お弁当、作って来たからさっ。
一緒に、何処か行かない......?気分転換にさっ』
相変わらず部屋の外から呼び掛けてくる千鶴、そして
『お兄ちゃん、出て来てよぉ......翡翠寂しいよぉ。
どうしていつも一人で抱えてるの?
私はいつでも、お兄ちゃんの隣にいるのに......』
あの日の呪いが耳元で囁く。
あの日、何で千鶴はあそこに居たんだろうね。
何故、上から降りて来たんだろうか、と。
僕は悪魔の囁きと天使の話し声の狭間で、
もがくものにはもう、疲れてしまった。
書き溜め制作中なので一日一本が限界っす......
ランキング入りするのって、凄いっすよねぇ......
と思うこの頃
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