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第8話 ニアミス

ブクマありがとうございます♡ \(*´▽`*)/

『秩父宮ラグビー場の正門に着いたら連絡下さい。迎えに行きます。』



 前日にそう亮さんにメールしておいた。一緒に行くのではないか、と疑問にもたれたが、亮さんはラグビー協会のファンクラブ会員ではない。

 会員になっている私は、特典で一般の人よりも先行で入場出来る。なので私と並んでも一緒には入場出来ず、結局後から入る事になってしまう。


 それに私は出来るだけ前列で観たい。その為には先行入場よりもさらに早く並んでないと前列の席確保は厳しい。


 ラグビーに興味持ちたての人にそんな事をさせたら嫌になって次から一緒に行ってもらえなくなるかもしれないので、試合開始の3~40分前に来てくれたら良い、とだけ伝えていた。



 ********************


「しずかさん!!」

 並んでいたら超元気な声で呼ばれた。


「おはようございます!」

「元気君おはよー!久しぶり?だよね?」

 列に並んでいた私に声をかけたのは、見た目も声もその名の通りの様な人、元気君だった。


 体格が良く短髪色黒の彼はラグビー経験者で大学まで続けていたそうだ。残念ながらラグビーを仕事として出来る程ではなかったらしい。

 彼もスポーツバーで知り合った。

 初めて会うなり当時昨日から付き合い始めた彼女自慢をしてきて、若いなぁ、なんて思った記憶がある。


「今日一人なんですか?(ミドリ)さんは?」

「翠ちゃんは押しチームが熊谷の会場だからそっち行ってるの~」

 ラグビーは同日別会場で試合を行う事がある。私はあまりしないけど、関西や九州まで遠征しちゃう人もいるくらいだ。

 熊谷は行けない事はない距離なので、別れて観る事は良くある事だ。


 翠ちゃんは数少ない女性のラグビー観戦仲間、というかお友達だが、熊谷・静岡くらいは遠征しちゃうので、いっつも一緒に観れるわけではない。


「あ~そっか、一推しチームはお二人共違いましたね。一緒に観ます?って言いたい所だけど、今日敵ですもんね。」

 元気君の推しチームは私の推しチームと本日対戦だ。


「ううん、大丈夫ありがとう。この後ラグビー観たいって言ってくれた人と合流するし。」

「おお!うちのチーム推しといて下さい!」

「私のチーム推すに決まってるじゃん!」

「それもそうですね。ではまた~」

 笑いながらそう言って手をヒラヒラさせ列の最後尾へと向かって行った。

 人懐こくて弟みたいだ。超デカいけど。




 並んだ甲斐あって最前列の席が確保出来た。最前列から観る迫力できっとラグビーが好きになってくれるだろう、なんて勝手な希望を持った。


 スマホの画面を見ても何の通知もない。当たり前だ、約束の時間よりかなり早い。まだまだ時間はあるからチームテントへ行って選手と交流してこよう♪



 他のスポーツはわからないが、ラグビーは選手との距離が近い。当日試合に出ない、通称ノンメンバーがテント付近にいて握手や写真に応じてくれる。試合だけでも十分夢中になれるのに選手との距離の近さに感動してますますハマった。


 チームテントへ行くと見知った選手が数名いる。声をかけ写真を撮ってもらうが、選手達も慣れているので私のスマホを受け取って自撮りスタイルで対応してくれる。海外の選手は自然と肩や腰に手を回して撮ってくれるくらいだ。




 今日もいっぱい写真撮れた・・・♡なんてホクホクしてたら

「ちょっと!!!」

 肩をつかまれ振り向いたら、怒りを抑えてる風の亮さんがいた。


「あ、あれ?亮さん。今来たの?」

「20分くらいずっと正門で待ってたよ!全然既読にならないからおかしいなと思って探したら、嬉しそうに写真撮り続けて・・・・」


 うわ、めっちゃ怒ってる。でも、待って。


「え、でも通知来てなかったよ・・・・・・あ、もしかして。」

 メールのアプリを立ち上げたら通知が入った。


「亮さん、ごめんね、今通知入ってるのに気づきました。プッシュ通知の所に出てこなかったし、もっと後に来るものと思ってたから・・・」

 何言ったって、言い訳は言い訳だ。写真撮るのに夢中でアプリあけようともしなかったし、この前待ち合わせにオンタイムで来ないやつは、なんて自分で言ったばかりじゃないか。


「ごめんなさい!!」

 この場は謝るのが妥当だろう。


 だが、謝っても目線が合わない。顔を背けられているし、あれ?握った拳が何か震えてる・・・

 どうしよう、遅刻?されるの本当に嫌いなんだ。


「亮さん・・・・?」

「・・・・・」

 やっとこっち向いてくれた。


「どうしたら許してくれる?」

「!!」

 あ、顔赤くなった?どうしたどうした。


「もしかして具合悪い?試合始まるまでどこかで休む?辛いなら駅まで送りますよ?」

「いや・・・大丈夫。」

 手の甲で口元を覆っている。眉をひそめているし、どうしたんだろう。


「ごめんね?」

「そのごめんってさ・・・・まあいいや。いや、こっちも責める様な事言って悪かった。試合の3~40分前って話しだったのに。」

 そうだよ、今まだ1時間前よ!早く来るなんて言わなかったじゃない、なのにあんなに怖い顔して~!


 若干理不尽さを感じたが、あまり長引かせても良くはないのでこの話は終わらせたい。


「楽しみで早く来ちゃったんですね。ラグビーに興味持ってもらえて嬉しいです。時間まだあるので食べ物と飲み物買いに行きましょ。」

 精一杯の笑顔で亮さんの袖を掴み買い物へ連行した。


しずか(そういう事にしておこう!)

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