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第2話 オーダー

 「僕、片山亮です。」

 「あ、土屋しずかです。」

 宣言通り、一緒にいたサラリーマン達が帰った後、素敵スーツイケメンがカウンターの私の横にやって来た。


 マスターがなんかニヤニヤしてる。

 顔に似合わず、恋話が好きなマスターだから後で絶対何か言ってくるな・・・・

 まあいいや。何だろ?


 「スーツの話でしたっけ?」

 「あ、そうです。さっき自分でも服作ってるって言ってましたよね?」

 「はい、趣味で。」

 「趣味で・・・すごいな。スーツも作った事あります?」

 「ありますよ。」

 「個人的にジャケットを作ってもらう事は出来ますか?あ、お金はもちろん払います。」

 「え?!いや、オーダーしているお店とかありますよね?そちらで作れば良いのでは?」

 「作れない事はないんですが、仕事で使う様なかっちりした物ではなく、裏地も不要なラフな物なので、ちょっと頼みづらくて。良い機会だし、他のオーダー先でも探そうかな、と思っていた所なんですよ。」

 「いやいやいやいや!あの、趣味ですよ?確かに服飾系の専門学校出てはいるので基本的には何でも作れますが、スーツをオーダーしてる人のお眼鏡に叶うとは・・・」

 「何でも作れるんですか?」

 「あ、はい、まぁ、基本はあるので。ウエディングドレスなら何体か作って売った事あります。近しい友人限定ですけど。」

 「ウエディングドレス?!!すごいな。じゃぁ大丈夫じゃないですか。」

 「いや!何でですか?!ドレスとジャケットだと全然違うし、さっき会ったばかりの人間になぜそんな事を?」


 まじで、何でだよ!


 「さっき、僕ねしずかさんに逆ナンされたと思ったんですよ。良くある事なので。スーツ褒めてくる女性多いんですよね。なのにオーダーメイドですか?って言われてしかも自分でも作るって。ラフなジャケット欲しいなと思っていたところだったので、単純に興味本位で声かけました。」


 何だコイツ。さらっと自慢してきた?しかも逆ナンされたかと思ったって?

 うーーーーーん。あれ逆ナンになるのか~気をつけよ。

 あと、もう下の名前で呼んできたけど、馴れ馴れしくない??

 いや、しかしジャケットか~。正直作りたい。メンズはあまり枚数作ってないから不安だけど、オーダースーツとか頼んだら見せてくれるかもしれない。

 むーん。悩む。


 「そうですか。ただ、私本業があって繁忙期でもあるので時間かかりますよ?」

 「裏地無しだし、春とか夏想定してるので時間は別に気にしてません。料金はどれくらいかかります?」

 「うーん。ジャケットは販売した事ないので何とも・・・でも材料費だけで良いです。」

 「え?!いやちゃんと払いますよ?急な事言い出してご迷惑かけてますし。」


 あ、そこは自覚してるのか。一応常識人なのかな。


 「じゃぁ、材料費プラス、スタバで何か奢って下さい。作る以上はベストを尽くしますが、ジャケットを売るのは初めてなので、至らない点が出てくるかもしれない。それでも宜しければ。」

 営業スマイルではなく、ちゃんと笑顔で言った。言ってる内容は頼りなさげかもだけど、この条件は呑んでもらわないと困る。いまのところ、自信がない。


 「スタバ・・・・ぷっ・・・そんなんで良いんですか?」

 バカに・・・はされてないか。びっくりして笑っちゃったって感じ?

 スタバ好きだもの~良いじゃない。


 「普通のコーヒーとかじゃなくて、フラペチーノに色々トッピングしますよ!」

 「いや、対して変わってないって。わかりました。じゃぁ材料費プラススタバのカスタマイズですね。」


 何か笑いを我慢してそう・・・えーやっぱりバカにされてる?早まったかな。

 あと打ち解けるの早すぎ!この人私年下だと思ってそうだな~多分私の方が上だぞ!童顔らしいし、いつも実年齢より下に見えるみたいだから、仕方ないんだけど。


 「引き受けてもらえた、と言う事で、宜しくお願いします。あ、採寸出来る場所あります?採寸しますよね?」


 !!!そうだ。採寸する場所だけじゃなくて仮縫いの時も場所が必要だ。デザインの打ち合わせはカフェでも良いけど採寸するともなるとそうはいかない。


 「採寸する場所ないです・・・・どうしよう。コミュニティセンターとか?」

 「(うち)を提供しても良いですが。」


 は?うわ、一気に怪しくなった。あ、でも独身とは限らないか。


 「それだと助かりますが、ご家族に迷惑では?」

 「僕独身で一人暮らしなので大丈夫です。」


 大丈夫です、じゃねーーーーーーー!


 「か、彼女さんにご迷惑では・・・?」

 「今彼女いないんで大丈夫です。」


 だから、大丈夫です、じゃないのよ!こっちも独身だけど付き合ってもいない人の家には上がれないから!それくらいの貞操観念はあるよ!


 胡散臭そうな顔をしていたのか、ニマニマしながら言われた。

 「ああそんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?ほんとに採寸する場所の提供ですし、しずかさんも長居はしないでしょう?」

 「長居なんかしません!!」


 この人自意識過剰なのかな?そしてからかわれている?

 爽やかイケメンって思ったけど、結構腹黒そう・・・


 「ですよね。じゃぁ採寸は(うち)って事で。次の土日はどうですか?」


 流れる様な約束の取付け!!やっぱ慣れてる。



 引き受けた事を早くも後悔し、連絡先の交換をして日曜に会う事になった。


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