第12話 浮気?
ブーッブーッブーッ
週半ば、帰宅途中の電車内でバイブの振動に気付く。
!!!
亮さんからのメール、じゃなくて電話だ。
珍しい!が、今は電話に出られない。
ひとまず電話を切って、メールで折り返す旨を連絡しようとして青ざめた。
何件か、連絡が来ていたのだ。
(何なの!このバカアプリ!)
慌てて今全ての内容を見た旨と、今は電話に出られない旨を伝えて、折り返す事にした。
「亮さん?ごめんなさい、また気付けなくて。」
『いーよ、もう。気にしてないから。』
ほんとか?!やや諦めた様な空気が電話口から察知出来るんだけど。
『週末、どうしてるかな?と思って』
「今週末は仮縫い完成させたいのでどっちも家で作業です。」
『・・・・あ~それって、俺がそんなに急いでないって言ってもやる感じ?』
「最近遊び過ぎてたんで、ちょっと真面目に作業したいです。」
『そっか、わかった。』
「再来週、
と言いかけた所でプツン、と切れた。
え?!切った?
は?
驚きすぎて暫くその場で茫然としてしまった。
何なの!!
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『再来週仮縫い出来上がるのでサイズの調整で試着してもらいたいから、土日どちらか空けておいて下さい。』
一方的に切られた後、むかついたが単純に聞き取れていなかったかもしれない、勝手に責めるのは良くない、と思い用件の連絡を翌日した。ムカムカして当日に連絡なんて出来なかったから1日空いてしまった。
亮さんからはすぐにメールが来て、やはり聞き取れていなかった様で、電話をすぐに切ってしまった事を謝られた。
今日は作業日に充てている為、久しぶりに土日どちらも一人で過ごしている。
ここの所、ほぼ毎週末、何なら週中にも会っていたので、一人の週末がこんなに寂しかったのか、としみじみ感じてしまった。
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仮縫いの試着の為、土曜日の今日、亮さん宅の最寄駅へ向かっている。
ちょっと楽しみなのは、仮縫いの出来が良さげだからだろうか。
いや、きっと単純に亮さんに会いたいんだろう。毎週の様に会ってると愛着沸くのかしら?
改札へ向かうと、既に亮さんの姿が見えた。
が、一人じゃない。確実に女性だが、誰なんだろう。
一瞬心臓が跳ね上がる。
ん・・・・?なんで?
とりあえず、二人に近づいてみる。
「亮さん?こんにちは。そちらは?」
「あっ・・・、待ち人来たので、失礼します、及川さん。」
待ち人?何その言い回し。
あせあせしてる様子の亮さんは言ってる事が何か変。
「あら・・・?この方が片山様がお待ちになってた方ですか?」
と言って私の方へ向き、上から下へ視線を向ける。こらこら、失礼ですよ。
遠目から見て、美人さんであろう事はわかっていた。ヒールも履いているし、身長的に亮さんの隣にいて違和感がない。170cmはなさそうだが、ショート丈のノーカラーブルゾンに膝下丈のふんわりしたスカートが良く似合う。
ストレートのセミロングは艶やかで、顔立ちから海外の血が混ざっていそうだ。そしてスタイルがとても良い。
なんだ、またモデルか?
「そうです。この後彼女と予定があるので、失礼します。」
「あら、残念。また今度一緒に飲みに行きましょう?」
亮さんあての言葉のはずだが、チラリと私へも目線を向けられた。
また、と言う事は飲み行ったんだな。
「亮さん彼女さん出来たんですか?」
「え?!出来てないよ!」
慌てて否定した亮さんに及川さんが被せてきた。
「いやだわ。彼女だなんて!」
そう言って、及川さんは両手を頬に添えて体をくねらせている。古典的な動きするなー。
「でも、そうですね、この前のお食事の後も素敵な夜でした。」
うっとりして亮さんへ言う。
・・・・・ヤったな。
はぁ・・・とため息をついたら
「いや、あの・・・・・」
目が泳いでいる。後ろめたい事ならしなきゃ良いのに。
うん?誰に対して?
「及川さん、あの、申し訳ありません。無理を承知で言いますが、あの夜の事はあの時の事として忘れて下さい!」
そう言って勢い良く頭を下げているが、忘れる、なんて事は酷なのでは?
及川さんは亮さんの突然の拒絶の言葉に、悲しみと怒りとで感情が追い付かない様子。
はぁ、全く最近の男女は欲情が直結しすぎる。
「えーっと。及川さん?は亮さんが好きなんですか?」
「えっ・・?いえ、別に彼がどうしてもと言うなら・・・・」
追わせたいタイプなのかな?
「好きな男性にそんな簡単に体を差し出してはダメですよ?あなたの求めるものを返してくれるとは限りませんから。酷な事を言いますが、今の様子では及川さんに脈はありません。ハーフみたいなきれいな顔立ちをしていてスタイルも良くてすごく素敵な人なんですから自分を大切にして下さいね。説教をされて腹立たしいと思いますが、その怒りはどうぞ彼にぶつけて下さい。」
手と目線で亮さんがいる方を促したが、及川さんは目を丸くし口も開いてしまっている。
亮さんも自分を殴って良い、と言われて焦っている。
ポカンとしていた及川さんだったが、徐々に何を言われたのかわかった様で目に薄っすら涙が溜まってきて、微笑を浮かべた。
「私、ちょっと焦りすぎた上に舞い上がっていたのかもしれません。出直してきます。片山様、」
「はいっ。」
「忘れる、というのは難しいですが、お仕事では変わらぬ態度でお願い致します。」
「はい、本当に申し訳ありませんでした。」
「彼女さん?ご忠告ありがとうございました。私の代わりに片山様殴っておいて下さい。では。」
そう微笑む彼女は私への怒り等は無さそうに見えた。話しのわかる美女で良かった。
彼女ではないし、殴ったりもしないが、「クズ」と言いかけた言葉を飲み込んで亮さんへ一度視線をやった後、何も言わず亮さんの家へと向かった。
及川真莉愛 「ロシアの血が入ってますわ。」




