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第1話 きっかけ

『カラン、カラン』

  ガラス扉を開けると来店を知らせるベルが鳴る。

  ほんのり暗めの店内に入り、辺りを軽く見まわすと木曜という事もあり、客はまばらだ。

  中央席に4~5人のサラリーマンがいる。その中の一人と目が合った気がする。何となく会釈をしたところで、店主=マスターに声をかけられた。


「しずかちゃんいらっしゃい!」

  「こんばんは、マスター。」

  マスターに手で促されカウンターへ移動する。


  短髪でゴリマッチョなマスターは強面なので、初めて一人で来た時はめっちゃ緊張した。

  このお店はスポーツバー、特にラグビーを多く扱っている店舗だ。マスターも経験者な為、選手の様なガタイをしている。

  周りの友達はラグビーに興味がなく、知り合いに紹介されて一人で訪れる様になって2年。今では常連だ。


  「こんばんは、高山さん」

  「おう。・・・・・君、太ったんじゃない?」


  (チッ、くそじじい)心の中で悪態をつく。高山さんは私よりもずっと昔からの常連さんだ。

  60才手前のメタボで髪もかなり寂しい感じになっている彼は女性の外見に辛辣だ。

  「太ってないですよ~。でも私の体型が変わったと思うって事は私の事良く見て下さってるんですね~。お気遣いありがとうございます。」

  「・・・・・・・」


 よし、黙ったか。会うと人の外見に口を出してくる事が何回もあったからそろそろ嫌気が指していた。「セクハラですよ」と言うのは簡単だが、あまりにストレートに対応して今度は生意気だ、となっても困るので大人の対応を取る事にしている。

 この常連さんには会いたくないが、お店には来たい。


 まぁ、事実、私は太っている。どれくらいかは、うん、Lサイズが着れない時があるって感じ・・・

 でもだからってわざわざ人の体型をからかう必要はないと思うのよね。


 リアルタイムや録画された試合を観に来ているので、ラグビーに関する交流ならしたいが、私は他人の職業や、まして体型なんて興味ない。おじさん達は女性への対応が昭和で止まっている。



 カウンターにいた、そんな常連さんの席を1つ空けて座ったところで、マスターの奥さんが厨房から出てきた。

「あ!しずかちゃん!来てたんだ。いらっしゃい!久しぶりじゃない?」

「そうなんですよ~!繁忙期明けてなくて。でもちょっと息抜きしようと思って来てみました!」

「そっか。お疲れ様!ゆっくりしてってね。」

「はい!」


 奥さん、春香さんはモデル経験者のスレンダー美人さん。マスターと並ぶと、まさに美女と野獣って感じ。


「シーズン始まったけど現地行ってる?」

「先週、先々週の試合行きましたよ!推しのチームが2試合共勝利したのでご機嫌です!」

「北芝、調子良いね!!」

「最初に格上と対戦して勝てたのは大きいですよね~」

 8月の下旬にラグビーリーグのシーズンが始まって2週過ぎているので、今は残暑残る9月だ。長袖シャツを着るにはまだ暑い季節だけど、アパレル会社に属していて、会社からの命令で秋物を着なくてはならない。

 そう言えば中央席のサラリーマン集団はほとんどの人がスーツだ。店内はクーラーが効いているから良いけど、お堅い会社なんかもこの時期スーツ着なきゃいけないだろうから私以上に大変だろう。



 ************************


 一応常連さんではあるので、苦手ではあるが、時々高山さんとも話したりマスターや春香さんとも話したり暫くした所でトイレへ席を立つ。

 お酒飲むとトイレ近くなる。


 このお店はトイレがひとつしかない。男女兼用だ。お店の作り上仕方ない。

 先客がいたので、お店に飾られている選手の写真や、ユニフォーム=ジャージを眺めて待っていたら長身でスーツがめっちゃ格好良いイケメンがやってきた。いや、スーツだけじゃなく顔も恰好良い。タイプじゃないけど、爽やかでモテそうな顔してる。


「お手洗いってここで合ってます?」

「合ってますよ。ひとつしかないんですよ。」

「あ、そうなんですね。」

「スーツ。」

「はい?」

「スーツ、すごく素敵ですね。」

「ああ、ありがとうございます。」

 おー笑顔もイケメーン。でも営業スマイルだわー。


「オーダーメイドですか?」

「え?」

「体に馴染んでそうで、変なシワがないのでオーダーメイドのスーツかな?と。生地も恰好良いし。」

 ダークネイビーのストライプ地のスーツだが、近くで見たらストライプが薄いピンクだ。遠目には白にしか見えない。おっしゃれ~。


「良くわかりましたね。」

「あ~・・・私オーダーメイドのスーツとか興味あって。自分でも服作るんですけど、生業としている方達の仕事とはやっぱり違うので、良いスーツ着てる人見るの好きなんです。」

「へ~・・・・」

 ありゃ?そんな変な事言ってないよね?怪訝な顔ではないけど、微妙な表情してるな。初対面なのに、気安かったかな?


 若干の気まずさを感じた所で、トイレから人が出てきた。

「あ、失礼しますね。」


 う~ん。見上げる位背の高い人だったな。156cmの私が見上げるって事は180cm超えてる?

 スーツが本当に良く似合っていて、黒髪をきちんと整えたヘアスタイルで顔は爽やか系イケメンからしてまさに商社マン!て感じ。でもラグビーのバックスの人くらいは胸筋ありそうだったな~。鍛えてそう。あれだとオーダーになるでしょう。

 うんうん、眼福でした。中央の席に座っていたサラリーマンの集団の中の一人かな。見た事ない人だし、まぁ会う事もないでしょう。



「お待たせしました~」

 こちらも営業スマイルでトイレを後にしようとしたら、


「あの、さっきのオーダースーツの話、ちょっと聞きたい事あるので、後で隣行っても良いですか?」

「?? あ、はい。どうぞ。」

「接待中なので、終わったらそちら行きます。」



 ・・・・・・・なんで?


ラグビーワールドカップで日本が盛り上がる前のお話しです。


初めての投稿でドキドキです。宜しくお願い致します!

(本日中にもう1話投稿します)

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