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引き籠もりヒーロー  作者: (*■∀■*)
第三章『鳴動の惑星』
67/67

第二十四話「岩石怪人オーガス」

コミカライズはコケました。(*■∀■*)

その上、体調不良で連載も滞っていたので久々の投稿になります。

代わりではないですが、無限四巻のプロジェクトが即開始しましたので、そちらはよろしくお願いします。




「怪人は制限に縛られています」


 それは月での質疑応答の一つでかぐやの口から語られた話だった。かぐやとの関係やお互いの立場から事実認定するのは危険だが、ある程度納得できる内容だったから、そういうものとして認識している。

 実際、ここまでシステムナイズされ、運営のような管理組織が存在する以上はないはずがないとも言えるし、ヒーロー側だけに制限がかけられているというのも不自然だからだ。改めて考えてみれば、それはそうだろうという程度の事でしかないし、具体的な形にならなかっただけで当たり前のように想像していたのだから。


「人間から見れば、怪人もヒーローも自由に出現して暴れ回っているって印象しかないだろうがな」


 扱う力があまりに超常的過ぎる、既存の科学では説明できない物理法則すら無視した現象。

 ヒーローをやっていれば、それが何者かの手によって整えられたシステムの上で動く、制限のある力に過ぎないとは分かるが、それでもいろんなものを逸脱した力である事は間違いない。人類には制御不可能な力がそこにある。

 バージョン2アップデートからのカタログとポイントで一部手が届くようになっても、それはかなり限定的なものだ。


「おそらく、ヒーローよりも遥かに制限は多いですね」

「おそらくってつけるのは、お前自身が怪人だから?」

「ええまあ。他の怪人や幹部に比べれば大幅に制限を無視できますが、限界はあるので」


 それはどの程度なんだろうなと思わなくもないが、無理に聞き出す気もしない。情報を対価として考える場合、それはかなり高い値段が付くだろうからだ。

 かぐやは気にしないし対価を付けるのは俺と言うのだろうが、俺自身がそう考える事をお互い理解しているからだ。だから、よほど気になる事でなければ情報提供の選別は相手に任せているのがかぐやとの関係になる。

 ただ、これまでの会話からもこちら側について知らない事があるのは感じとれる。それが演技でないとするならだが。


「たとえば、あなたが懸念している事態はいくつか想像が付きます。怪人の同時出撃や大量出現、あるいは自爆テロのような人類への被害のみを目的とした行動など……」

「……まあな」


 あんまり認めたくはないが、それは天下無敵のマスカレイドさんの数少ない弱点の一つだ。どうしても怪人に対して後手に回るしかないという、ある意味警察機関が持つジレンマに加え、一人しかいないという究極の問題が上乗せされている。……いや、分身してもこの問題は解決できないから。

 極端な話、北海道と沖縄で怪人が同時に複数出現して暴れ回った場合、被害は避けられない。もちろん倒せはするだろうが、どう急いでも対応には時間がかかる。

 また、新橋の一件のように出現直後の被害はそもそも防ぐのは困難で、これまで直接的な死者が出ていないのは奇跡に近い。

 怪人にとってのマスカレイドさんという、何されるか良く分からない凶悪なイメージが抑止力になっていたり、引き籠もりという怪人出現を見逃さない体制や瞬殺可能な実力という要素はあるにせよ、一秒だろうが怪人相手に活動時間を渡す時点で可能性は発生するのだ。

 触手プレイの実現を狙った様子見をしたタコデナイカという例はあるものの、あれはいろんな意味で注意深く監視していたから、うん。マジで触手プレイを始めたらどうなっていたかなど分からないが、間近で鑑賞するために苦戦するふりして長引かせようなんて考えてないんだから。

 ……そんな冗談にもならない仮定は別として、いろんな方法で抑止力を用意しようが限界はあるという事である。

 避難誘導や市民意識の向上などで可能性は減らせるし、実際対策もしているのだが、根本的な解決にはならない。そんな感じで一体で出現する事を想定した場合の被害可能性は潰せないし、諦めるしかないわけだ。どうしても妥協は必要になる。

 しかし、それが能動的に引き起こす事が可能だとしたら? その懸念の行き着く先が怪人の同時出現への懸念だった。


「ちなみに、それらは今のところ不可能です」


 しかし、かぐやによればそれらは杞憂らしい。


「言い切れるのか。それはお前の言う制限があるから?」

「はい。今後システムやルール変更などによって可能になる可能性は否定できませんが、今のところは排除していい可能性です」

「ふむ」


 正直、それは助かる情報だった。可能性を完全に潰せないにしても、かなり軽減する事ができる。本当なら、という前提付きではあるが、この情報を選択したかぐやへの評価も上げざるを得ない。


「正直、ずっと被害ゼロというのは無理があると思いますが」

「それな」


 今の段階ですでに偶然のような産物だし、実際不可能だろうとは思っているが、可能な限り避けたい事でもある。

 ……いや、どうなんだろうな。下手に無被害を貫いているからマスカレイドの神格化が進んでいる面はあると思うし。

 たとえば、ミナミの深層に潜む極めて合理的な思考なら、あえて効果的な場面で被害を出す事も考えるだろう。小市民な俺には、主に精神的影響を考慮した上で能動的に取れない手ではあるんだが、世界情勢を鑑みるなら、今後どこまでそんな事を言っていられるのか。


「日本限定とはいえ続けるつもりですか? 別の方向性で問題が生まれそうですけど」

「……それな」


 とはいえ、確かに現実的でないし、それによる弊害が大きいのも確かで、外交的な歪みが大きくなっているのも知っている。

 俺としても日本が地上に残された唯一の楽園とか、マスカレイドさえいれば絶対に大丈夫みたいな雰囲気は問題だと思っているし。盲信される原因が俺にあるのは自覚している。


「それで、このタイミングでそれを言うって事は、何か意味があるんだろ?」

「ええ、もちろん」


 俺が求めたわけでない。必要ないわけではないが、これはあくまでかぐやから一方的に提供された情報だ。

 そこには、俺が知っておいたほうがいい、知っておいてほしい、伝える事で本人のメリットに結び付く何かがあるという事でもある。評価はしても別の意味はあるはずだ。

 それは直接的なものかもしれないし、間接的なものかもしれない。単に俺の心象を良くするための材料としてちょうどいいって事もありえるわけだが、確実に意味はある。ただの雑談で終わるはずがないのは間違いなかった。


「たとえばですが、第一次グランドイベントの爆弾怪人。あなたは東京に投下された三体をほぼ同時に撃退していますが、あれがもっと地上に近い位置……そうですね、地上千メートル程度の場所から予告なしに投下されたらどうなると思いますか?」

「そりゃどうしようもねえな」


 実のところ、それはこれまで何度も検討したケースの一つだ。

 もちろん着弾後に出撃して討伐はできるが、その時点で被害は甚大。あの時と同じように東京が着弾地点なら、数千人規模の被害が出るだろう。

 常にミラージュに跨がり、ミナミが気を張っていれば間に合うかもしれない。それでも間に合うかもしれないだけで、おそらくは空中迎撃には失敗する。なら更に地表近くの出現だったら? 落下速度が更に早かったら? なんらかの迷彩が施されていたら? どこまでを考慮すればいいって話にもなるだろう。

 だから、そこまでやられるなら諦めるしかないって話になる。

 担当が一人しかいないからって理由で問題になる同時出現とはまた違う意味のケースだ。


「実は、怪人に課せられたルール上、コレは絶対にできません。もっと言うなら、あの爆弾怪人を一体出現させる事すら不可能です」

「S級怪人だから?」

「そこはSだからって事ではないんですが、大雑把にはそういう事です」


 S級怪人がイベント以外で出現したという事実はない。今後どうなるかはともかく、少なくともこれまでは。

 S級がA級までの怪人と別枠として創られているとか、そういう予想もできるが……。


「……S級は大規模イベントでしか出現できない?」

「おっと、その結論は些か早計。しかし、的外れではなく、私が伝えたい事にも繋がっています」


 及第点って事だろうか。それとも、正答以外の特別な加点でももらえるのか? ……この際級は関係ない?

 イベントだから特別。いろいろと制限も解除される。それは別におかしな事じゃない。そして、漠然とでもイベントが普通のルールから逸脱した舞台という事を認識し、警戒しているからこそ、次のイベントへの対策を続けているのだ。これは別に俺に限った事ではなく、他のヒーローや人類社会も同様……。

 ……それだと、状況の追認のような話だけで、別にこいつが口にするような話じゃない。俺に恩が売れるとも、あるいは情報操作できるとも思わないだろう。


「そうか……大規模でないイベントがある」

「そういう事です。たとえば、かつて発生した北米大陸同時強襲作戦。アレはイベントの名の元に怪人のルールを逸脱した行為が許されていました」


 これがかぐやの提示する正答。

 詳細までは把握していないが、聞いた事はある。それは確かキャップマンが名実ともに北米のトップとして認識されるきっかけになった事件。

 自身のホーム以外を含む広域で、現地の担当と協力して上手く捌き切り、被害すらほとんど出さずに対処した事で名を上げたのだと。

 普通の認識で言うなら、それだって大規模事件ではあるんだが、怪人たちはそれをグランドイベントとは言っていない。

 あくまで最初のグランドイベントは爆弾怪人の同時投下作戦であり、その次はアトランティスの攻防だ。

 この言い分だと、きっとそれ一件だけではなく、もっと多く小規模イベントは開催されている。


「つまり、怪人は自身の制限を超える状況を能動的に引き起こせる」

「その通り。もちろん気軽に行使できるものではなく、多大なコストと条件、制約は付きますが」

「警戒すべきはイベントって事か」


 そこでのみ、怪人は従来の制限を超えて行動してくる。逆に言えば、それ以外で過剰な警戒は不要と。


「しかし、どうやってそれを判断する? まさか、これからイベント始めますよーなんて宣言をするとでも……」

「ええ、しますよ。それが合図です」

「……マジか」


 そういえばそうだ。グランドイベントの前に必ずやっている幹部の顔見せ。てっきりアレは顔見せ自体が目的だと思っていたが……。

 北米の時もやってはいたのだろう。


「イベント発生には必ず事前の申告が必要となります。対象となる相手への布告が届かなければ、用意したイベントは不発になる。コストの支払い損です」

「気をつけるべきは怪人側の宣言って事か」


 それはあまりにも大きな、自称埋伏の毒がもたらした警戒の目印だった。




-1-




『ただ今をもって、我々怪人勢力連合は第三次グランドイベント前哨戦に移行する』


 その言葉で、周囲の空気が一層張り詰める。

 しかし、ざわめきは多少大きくなる程度で、思ったよりは落ち着いている様子だ。これは単にパニック一歩手前の静寂か、これまでの対異常経験で慣れたのか、あるいは同席しているマスカレイドへの絶対的な安心感か。

 リアルタイムでミナミから送られてくる世界各地の状況報告によれば、すでに大パニックになっているところが多数である以上、この場の人間は相当に落ち着いているのは間違いないだろう。


『正直に言おう。人類諸君も理解しているだろうが、我々は窮地に追い込まれている』


 その言葉に、明確に周囲がざわついた。

 ……何言い出すんだ、こいつ。


『どこぞの銀タイツのおかげで、第三次グランドイベントは始まる前から虫の息だ。それは認めよう』


 周囲の視線が式典会場のマスカレイドさんに集中する。なんだよ、中継見ろよ。こっち見んな。


『そう、我々としても苦しいのだ。この事実上の前倒しとなる前哨戦も、苦し紛れに過ぎない事を分かって頂きたい』


 ……誰に? 人類か? 運営か? それともマスカレイドに対しての言い訳か?

 いや、ここまで露骨なら分かっちゃいるんだがな。あんまり幹部っぽくない言動に困惑している。


『私の宣言はコレで終了とする。第三次グランドイベント、及び前哨戦についての詳細はアトランティスネットワークに記載した情報と各国首脳に送付したモノを参照してくれたまえ』


 そう締めくくり、推定怪人幹部Cの中継は終わった。

 宙空モニタが沈黙しても静寂が続いたのは、本当にそれで終わりなのかという疑いが強かったのだろう。

 少し経ってから、騒ぎが大きくなる。それは、少しずつ、しかし決して小さくなる事のない鳴動と化し、会場だけではなく島全体……いや、おそらくは世界規模のモノへと変化していた。

 相変わらず、会場個体のマスカレイドさんへ向けられる視線は強い……のだが、どうしよう。なんか説明したほうがいいんだろうか。


 コレはアレだよな。例のイベント宣言。前哨戦とは言っているが、グランドイベントの前に独自のイベントを一つ重ねてきたと。

 前哨戦って扱いだから制限が緩いのかもとか、必要な開催コストはグランドイベント担当から捻出されているのかもとか、そういう想像もあるが、今必要なのは、これによってグランドイベントほどでなくとも怪人側の制限が取り払われた事。

 確実に何かをやってくる。普段ではルール上できない事を。

 最大限に警戒してし過ぎる事はない。その労力を狙ってのものだとしても、その覚悟で動くのが正解だ。



「……あ、あの」


 あまりの状況に耐えかねたのか、近くに座っていたおっさん……良く見れば内閣総理大臣が声をかけてきた。そのまま待つが、続く言葉はなかなか出てこないようだ。

 世間では正直評判の低い、罰ゲーム扱いされる現状で妥協に妥協を重ねた上で、たまたま与党総裁になっただけと評価されている男だが、こうして見てもそういう雰囲気がある。

 とはいえ、言いたい事は分かる。端的に言えばどうしようって相談なんだろうが、立場上安易に口にもできないのだ。それは彼の評価にも直結するし、政府の安定化を望んでいるのは俺も同じだ。


「式典はそのまま続行で」

「は、はあ……」


 え、それだけなのって感じの表情だが、俺に言われても困るのだ。最大限警戒はするし、対処はするが、別にこの式典会場や政府ができる事なんて……いや、ここは少し盛るか。できれば使いたくない保険ではあるが、状況を利用させてもらおう。


「メガフロートにおける全機構の発動許可、特に設置済PBについては無制限で首相権限による発動を許可します」

「え……はい」


 一瞬、何の事か分からない様子だったが、首相なら話が通っているはずだ。最悪の場合、彼の意思一つでも対応できるように。

 基本的にはこちらで対処するものだが、明確に権限開放したほうが状況を把握してもらい易いだろうと。

 相手の次の手を読むなら、狙われるのは間違いなくここだ。日本全土、世界中で動きがあるかもしれないが、中心点は間違いなくここ。

 ブラフとして利用される可能性は否定できないものの、何かしら大きな動きはある。そういう読みだった。


 しばらくして、警報が鳴った。それは、ウチの怪人検知システムと連携して提供されている警報システムのもの。それがここで鳴っているという事はつまり、この島の周囲に怪人が出現したという事だ。

 もちろん、俺個人はミナミからの連絡を受け取り、迎撃準備に入っている。式場にいるマスカレイドさんが動かないのは、別個体が行動しているからに過ぎない。


『メガフロートから更に南約五十キロ付近っ!』


 ミナミの声が脳内に響く。そして、すでに現場へと向かっていたマスカレイドの分身の視界には、ちょっと想定外の光景が映っていた。




-2-




 それは正に絶望と呼べるような光景だった。

 突如地上に巨大な影を落としたソレは、かつての爆弾怪人なんて比較にならない巨大さで、空中での迎撃はほとんど不可能な高度に出現した。

 どこが怪人としての頭なのか、手足なのか把握できない。それは巨人、島、いや、大陸なのではないかと疑うほどの大きな質量。巨大なメガフロートよりも更に巨大な質量兵器そのもの。


『岩石怪人オーガスっ! 世界最大とされる怪人、つまりエアーズ・ロックそのものですっ!?』


 ふざけんなっ!? そんなものが落ちてきたらひとたまりもない。

 いや、何故直接ここに落とさなかった? マスカレイドの警戒範囲ギリギリを狙ったのか、それが制限なのか。狙いはどこにある?


『いや、F? Fって何っ!?』


 悲鳴のようなミナミの声が響くものの、意味が分からないので今は無視する事にした。

 待機させていたマスカレイドの分身体を急行させる。今から出撃なら間に合わないタイミングだが、幸いミラージュ待機のマスカレイドは十体いるのだ。

 この距離なら間に合う――


『津波警戒っ!!』


 ――そうだ。狙いは確実にそれ。たとえマスカレイドに迎撃されようが、圧倒的質量で以て二次被害を演出する。それが目的だ。

 式典会場の固体で首相に視線を向けて強く頷く。伝わったかどうか分からないが、目の色が変わったのは感じた。

 そして、その分身体はビジネススーツを残して消える。状況と距離、速度に維持が叶わなかった。

 状況はコンマ数秒を争う。迎撃自体は間に合いはする。しかし、それだけでは足りない。


――《 マスカレイド・インプロージョン・メルトアウト 》――


 届いた。最も近くで警戒していたマスカレイドは一瞬で距離を詰め、その山のような巨体に全力の一撃を加える。

 もちろん不発なんて事はなく、この質量の怪人だろうが絶命足らしめるだろうと確信させるような一撃。

 たとえ分身で能力が分割されていようが、撃破に必要な威力だけなら足りている。


――《 マスカレイド・インプロージョン・メルトアウト 》――


 しかし、足りない。威力的な問題ではなく、必殺技の特性と質量の問題だ。いくら熔解させようが、質量自体が減少するわけではない。

 加えて伝達速度の問題もあった。あまりに巨体過ぎて、熔解速度が間に合っていない。

 この位置と質量相手では持ち上げるにも、蹴り上げるにも無理がある。このままでは確実に、膨大な質量を残して海面へと落下する。


「ミナミッ!! PB起動準備……いや、もう発動させろ!」

『了解っ!!』


 落下する。あまりに巨大な質量が急速に液状化しつつも、猛烈な衝撃を生む兵器として。

 どうする。巨大津波は発生するのは止められない。少しでも拡散させるために津波を割るか……いや、計算が間に合わない。変な影響が出るならこのまま対処すべきだ。

 怪人自体は仕留めた自信があるが、まさか断末魔の爆発すら利用する気かもしれない。これだけ巨大なら、あのエセ爆発でも十分に威力へ加算されるはずだ。


 次の瞬間、その巨大な質量が着水。コンピューターグラフィックスの再現映像でしかお目にかかれないような光景を描き、海を大きく、高く押し上げる。

 あまりに局所的な、巨大な津波が生まれた。

 こんなもの、たとえ直撃だろうがマスカレイドへのダメージにはならないが、狙いがそんなところにないのはあきらかだ。


「……ちっ」


 予想自体はしていた。かぐやの助言以前から、どういったケースなら被害を出す可能性があるのかと。もちろん俺にじゃなく、日本にだ。

 津波はその中で想定されていたケースに存在する。

 ……だから、当然対策も整えていた。


 目算だと何メートルかなど分からないが、とにかく沿岸都市に襲来したら致命的と思われる津波がメガフロートに迫る。

 しかし、その衝撃が島の構造物に伝わる事はない。


『ぶ、ぶじ起動しました……メガフロートにダメージなし』


 半透明な半球状の障壁が津波の尽くを遮り、飛沫一つ通さない。それは念のためと用意していた切り札の一つだった。


「オッケ……しばらくそのまま継続。……余波も発生するだろ?」

『細かく計算しないと分かりませんが、おそらく』


 緊急で発動させたものは予め日本全土、特に沿岸部に多く配置してあったPB……プロテクション・ボムの改良型である。

 ある意味秘密兵器的に準備を進めていたのだが、それが無事起動した事を喜べない。

 俺としては一つ手札を切らされたという印象が強かった。ある意味で、これこそが相手の目的だったのではないかと思わせるほどだ。

 それに強力かつ運用が用意な防衛兵器でもあるが故の弊害もある。メリットは大きいがデメリットも無視できない。




 その日、メガフロートと四国とその沿岸にて起動したプロテクション・ボムはその威力を世界に見せつけた。

 しかし、完全に無傷とはいかず、より広域で見れば被害は発生した。


 おそらく日本で最初となる直接的な怪人被害はこの時発生したのだ。




-3-




 被害は極めて小さい。あの規模の津波を想定するなら、それはほとんど無傷と言ってもいいような状況だった。

 メガフロートに至ってはパニックになった出席者が転んだり発作を起こした程度でしかなく、船舶を島内に格納する構造から物的被害はゼロに等しい。

 問題はその先だ。四国南部沿岸にまで到達した津波は、いくら減衰したとはいえども大きく、起動テストも兼ねてPBによって防御を計った。

 それ自体は問題なかったし、沿岸部の被害は多数の船舶を含めてほとんどない。

 被害が発生したのは四国とメガフロートの間。特別な日という事もあって一時的な航行禁止になっていたにも関わらず、洋上に出ていた多数の船が巻き込まれた。一部マスコミと国籍不明な船舶まで含めての被害。その後の対処もあって死傷者は少ないものの、確かに死者は出たのだ。

 警告を無視した馬鹿が痛い目を見たというだけでは済まされない、明確な被害ではあるのだ。




『機嫌悪いですね』

「そりゃな」


 自分の部屋に戻って来た俺は、隠す事もせずにふくれっ面をしていたと思う。

 この際被害はいい。どうせ国はあれでも叩かれるだろうが、俺としては無視すらしていいほどだ。死者には御冥福をお祈りしますが、それだけ。

 どの道、延々と終わりのないパーフェクトゲームを続けるのが不可能だったのは間違いないのだから。それについてはどうこう言うつもりはない。

 それよりも、このタイミングでPBを使わされた事への不満が大きい。いつかは使う予定で配備していたモノではあっても、こんな早期に使う予定ではなかった。

 ……あれは爆弾だ。文字通りの意味で言っているわけではなく、存在そのものが危険なのだ。


 アレは劣化品というか調整品だ。極限までに出力が抑えられた代わりに有効範囲と継続時間、そしてコストを減らした特注量産品である。マスカレイドの攻撃はおろか、そこら辺の怪人の攻撃でさえ防ぐのは難しい、戦闘用として見るならその程度でしかない代物なのだ。

 しかし、実際にやってみせたように巨大な津波を防げるし、それ以外にも効果を発揮するだろう。

 そして、それを目にするとどうしても気になる声が上がるものだ。特に日本においては尚更。


 核攻撃にも耐えうるのか? と。

 直撃なら駄目でもその手前、ICBMなら? 防ぐのは難しくとも減衰させる事は? と興味が尽きる事はないだろう。

 それより危険かもしれない怪人の攻撃は無視しても、想像できる範疇の攻撃はリアリティを持ってしまうのだ。


 実はアレにそこまでの耐久度はない。というか、さすがに核を直撃させればほとんどの怪人は致命傷だろう。

 だが、今後それが用意できないのかと言われたら、できないとは言えない。というか、小さいエリアであればすでにそれを可能とするPBも設置済なのだ。

 首相……というか、政府相手には、アレが国家防衛用の装備として提供されたものである事、あるいは国のポイントを使って設置可能な設備である事をアカシていて、それを公表する裁量も丸投げしている。政治的な意味を考慮して発表してもいいよって事だ。

 それを伝えた段階では、当然の如く秘匿の一手だった。首相どころか関係者全会一致での決定である。

 しかし、実際に使われた今は状況が違う。メガフロートだけなら専用設備ですと言い逃れできない事もなかったが、四国にも配備されているとバレてるし。


『あー、言うんですねー』


 緊急記者会見で首相自らが、PBについての発表を行っていた。

 対核についての質問にも、『研究が続いていけばそういう事ができるかもしれませんね』とも。さすがに明言は避けたが。

 ただ、今回の件はマスカレイドと協議の上で極秘裏に配備を進めていたが、今回は緊急時のために首相判断で発動する事にしたと口にした事で、多少追求の勢いは削がれたらしい。


『おー、それも言うんだー。へー』

「めっちゃ助かる」


 実際に発動したのはミナミだし、指示したのは俺なのだが、事前に発動権を渡したのは確かだし、できればそういう事にしてとお願いしたのも事実なのだ。

 これ以上マスカレイドへの名声が上積みされるよりも、実は首相が救世主だっただぞと宣伝できた事は非常に助かる。

 案の定、ただ配備したものを起動しただけですよねとか言う奴もいるようだが、それだけの事が巨大な功績なのだ。

 ほとんど繋ぎとしてしか見られていなかった首相が一躍救国の英雄、歴史に名を残すレベルの功績を残したわけだ。


「頼りない、頼りないって言われててたけど、意外に化けるかもな」

『……そうですかね? うーん』


 良く分からないところから抜擢した近藤さんが今や官公庁の死神扱いなのだ。こうして中継を見ているだけでもなんか目付きが変わった気もするし。


「まあ、日本はいいだろう。まさか、アレ級の爆弾を連続で投入してくるとも思えんし」

『そうですか? やれるって事は警戒は続ける必要があると思いますけど』

「……まあな。前回、誘拐対策で待機を続けていた時くらいはな」


 あんな反則スレスレみたいな強襲の場合、怪人側としても相当に無理しているはずだと思う。安易に何度も投入できるものじゃないと。

 その場合、息切れを起こして第三次グランドイベント本番で失速しかねない。

 だけどそれはかぐやから得た前提知識ありきの推測だ。あまり俺っぽくない予想ではあるし、言動にもちょっと注意したほうがいいな。


「そういえばだが、途中でお前が言ってたFってなんだったんだ?」

『あー、アレですか。……結局意味は分からないんですけど、ひょっとしたらアレ、偽物かもしれません』

「……偽物? 怪人エアーズ・ロックが?」

『なんか、怪人名の最後にFって付いてたんですよ。岩石怪人オーガスFって。案の定別怪人扱いで、ヒーローネット上は生存状態のままです』

「マジかよ」

『加えて言うなら、そのFが付いた個体は登録情報がありませんでした』


 どういう事だ? まさか、あんな大質量兵器みたいな奴が偽物?


『情報がないので確認できませんが、ひょっとしたらステータスが劣化してたりして』

「……確かに、怪人として何かしたわけでもないな」


 アレは空中に現れただけだ。その大質量を利用して、ただ海に落下しただけ。そもそも反応できる怪人のほうが稀だからそういうものって認識してたが、マスカレイドを迎撃したわけでもないし、そもそも反応らしい反応もなかった。意識があったかすら怪しい。


「ひょっとして、再生怪人みたいなもんか」

『あり得ます。命名ルールこそ違えど、戦闘員扱いなのかも。いや、戦闘員だけだと出撃できないから、そういう特性持ちなのかな……』


 やばいな。ボルテック・ジャッカーの件も含めて、底が見えない。本格的に再生怪人リサイクル・リベンジャーとやらへの警戒が必要かもしれない。

 くそ、直接狙えるなら叩きに行くんだがな……引き籠もりめ。




-4-




 そんな宣言直後の騒動はあったものの、その後は特筆するような出来事はなかった。

 いや、何もなかったわけじゃない。いつもより多い怪人出撃によるいつもより多い被害は発生しているが、ただそれだけ。

 絶対に何かがあると身構え、念のためにミラージュに跨った状態で数時間待機されられた俺は肩透かしを喰らったわけだ。


「……どういう事だ?」

『分かりません』


 そんな無駄骨を折らされた事に関して文句があるわけじゃない。労力的にもそこまでではないし、被害もなかったのだから。

 ただただ疑問符が頭に浮かび続け、気持ち悪いだけ。そういう精神攻撃だとすれば効果はあるものの、わざわざ宣言までしてやる事とは思えない。

 ミナミをはじめ他の奴は知らないが、あの宣言や岩石落下には相応のコストが発生しているはずなのだ。どの程度か分からなくとも、それがただ無駄にしていいものとは思えない。

 この件についてかぐやの見解を聞きたいところだが、緊急時である事は変わらず、常時待機状態が続いていた事もあって、その時間は捻出できない。


『まさか、あの津波誘発がメインだったって事はないですよね?』

「さすがにないだろ。あわよくばって程度の願望はあったかもしれないが……」


 完全に無傷……ってわけでもなかったが、ほぼ被害なしで防がれる事までは想定していなかったとしても、マスカレイド相手にどこまでの戦果を期待していたかは怪しい。言動含めて何考えているんだか分からない奴ではあったが、怪人幹部Cがそこまで馬鹿とも思えない。

 そもそも、三下呼ばわりされている怪人幹部Bだって、俺は別に過小評価はしていない。ABCまとめて評価不能というだけで、その危険性はDであるかぐやに匹敵するものって前提で考えている。


『実際にシミュレーションした結果ですが、仮になにもせず津波が発生した場合でも壊滅するのはメガフロート、しかもその上部構造だけで、四国に至っては大災害とまでは言えない被害しか発生しないはず』

「だよな……」


 確かにあの時点でメガフロートには政府中枢に属する者が多くいた。しかし、津波という災害の特性を考慮するならメガフロート到達までにもタイムラグが存在する。たとえ混乱があって避難が遅れたとしても被害を受けない区画への移動は十分に可能なのだ。

 メガフロートの防災設備はPBだけじゃない。各種最新設備どころか、ヒーローカタログでしか購入できないような物品を使ったものも含まれ、日本本土よりも遥かに鉄壁の構造をしている。洋上の島という事で当然津波への対策も備えているのだ。時間稼ぎは容易なはず。

 それでももちろん建物含めて被害なしとはいかなかったろうが、多めに見積もってもせいぜい数十人にしかならない。

 いや、仮に首相含めて全員が死亡なんて事になっても、果たしてそれがコストに見合った結果になるかと言われたら疑問が残る。

 もちろん大混乱にはなるし日本中枢への被害は甚大ではあるが、それでも災害への慣れがある日本なのだ。首相の引き継ぎをはじめ、政府機能に効果的なダメージがあったかどうかすら怪しい。

 メガフロートの破壊を含めて大々的でセンセーショナルな事件にはなっただろうが、言ってしまえばそれだけ。

 もしもマスカレイドを仕留められるなら別だが、どれだけ馬鹿でもさすがに津波でマスカレイドが死ぬとは思っていないだろう。


「仮にミナミだったらどうした?」

『私ですか? うーん……あの岩石怪人オーガスが偽物で、複数用意できる事を前提にするなら、都市への直接落下を狙います。日本でも行われていない事を考慮するに直接落下には何かしらの制限があったと想定するにしても、各地で同じように大津波を狙う事は可能だったと思うんですよね』


 おそらく、直接落下は制限に引っ掛かるのだろう。ひょっとしたら可能かもしれないが、やる必要がなかったと考えるよりは、必要コストが捻出できなかったと考えるほうが無難だ。一方で、海上への落下は実例がある以上不可能とは思えない。

 あり得るとすれば、もう一体アレを用意できなかったって理由だが……。


「本体は残っているんだよな。少なくとも一発は残弾があるのに、それを使わないのも不自然だ」


 岩石怪人オーガスが生存しているのは判明している事実である。同質量を有する奴が残っている以上、それを使わずにいる理由が分からない。


『あの津波はブラフで、宣言そのものが目的だったとか?』

「それでなんの意味がある?」

『実際、あの直後から怪人出現とその被害が増えていますが……発生している混乱は被害から換算できる以上という統計が出ています』

「…………」


 それが狙いだった? 放っておいてもやってくる第三次グランドイベントで見込める混乱を前倒しにする程度の事が?

 唐突なのが重要なのか? 確かに衝撃はあるが、イベントに向けて世界各地で準備は進めていたはずだ。準備不足って事はあれど、それがまったく機能しないなんて事はない。

 仮にノーリスク、ノーコストでそれができるならまだ分かるが、おそらく奴らは相応のコストを払っているのだ。それを補える効果があるのか?


『教授からの報告ですが、社会のネガティブ指数は爆増していると』

「それでも、実際にイベント突入した時に予想されるものにはほど遠い」

『そうなんですよね。むしろ、警戒された事でイベント突入時のインパクトが減少するかもしれないとも言ってました』


 被害やインパクトが分散されてしまうなら意味はない。薄まった事で全体的な被害が減るならなおさらだ。

 ……さっぱり分からない。怪人幹部Cは何を考えている?


『被害自体は無視できないんですけどね。壊滅に近い被害を受けている都市も複数ありますし』

「普通なら、都市壊滅なんてインパクトはでかいが……普段の被害から延長線上の事でしかない」

『前哨戦なんて言って、わざわざ前倒しにするほどのインパクトとしては弱いですね』


 世界の被害で特に目立つのは、広範囲に跨って被害を受けた事例。

 翅蟲怪人チャバネス、腸虫怪人デスワームが起こした広域での虫被害。

 現地の中継映像には大量の食人蟲が跋扈する姿が映し出され、画面が真っ黒に染まる。

 一方で、寄生された人間の内側から食い破って出てくる巨大な蟲の姿が映し出される。


 異形怪人ボディホラー、母性怪人オギャリオンが起こした広域精神汚染。

 予防も治療も困難な、異形化の病気の蔓延。それはただ変異し、死亡するだけではなく、凶暴化して周囲を襲い始める

 成人男性が幼児退行し、母を求めるようになる姿はある意味ギャクにも見えるが、その実態は深刻な社会不安を誘発する。


 この四件の被害は特に大きく、都市機能を壊滅に追い込み、怪人離脱後も継続して被害を拡大、二次被害を誘発している状況だ。

 どこも絵面がひど過ぎて……方向性こそ違えど最後のは特に近寄りたくないと思わせる深刻な状況。

 あまりに被害が甚大なため、なりふり構わない救援要請もあったのだが、状況が状況だけに俺が日本を離れるわけにもいかず……。


「…………」

『どうしました?』

「ひょっとしたら目的が分かったかもしれないが……」


 いや、これはどうなんだ? 思考がそこに至っても確信が持てない。


「戦時移行による、マスカレイドの釘付け」


 イベント突入によって制限の取り払われた状況、次の一手を警戒する中では容易に動けない。どうしたって警戒する。

 何よりマスカレイドは……日本担当ヒーローは一人しかいないのだ。不在時を狙われたら目も当てられない。

 あの人為的な津波は俺への脅迫だ。お前が日本を離れたら、その隙にこういう事もできるんだぞと。

 当然の如く、例の予告出撃などできない。たとえブラフでも、不在時の襲撃を失敗してもやり直せる。

 救援要請にも及び腰になる。普段なら気楽に向かうだけの案件でも、用心して動けない。

 結果として……怪人被害は増大する。普段なら拡大が止められる程度の被害に歯止めが効かなくなる。


「ミナミ、宣言以降の怪人被害の洗い出しを」

『はい』


 予想が正しければ、少しずつ一件あたりの被害が大きくなっているはずだ。

 ……おそらくだが、俺が救援に出撃するかどうかの見極めもされている。そんな気がする。



 マスカレイドは一人しかいない。そんな事はこれまでもさんざん言われていた事で、警戒していた事だ。

 怪人幹部Cは、その分かり易く、明白な弱点を突いてきたのかもしれない。




一応、失敗即活動終了なプロジェクトではないと宣言していたものの、早急な巻き返しは必要なので早々に第9回プロジェクトを開始。(*■∀■*)

次は無限四巻の書籍化で、昨日開始。地味にXスペースで実況という名の90%雑談もしてました。

あとがないぜ。

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クラウドファンディングにて書籍化プロジェクトを実施しました!
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宣伝用に、オーディオドラマとラジオも制作しました!
(*■∀■*)第六回書籍化クラウドファンディング達成しました(*´∀`*)
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ヒーローも怪人も究極的には茶番劇だからなー 人間滅ぼす気ならもっと簡単だし、ヒーローが死力を尽くした上で拮抗するくらいの調整ってことかな
100mだと 気候変動(衝突の冬): 海洋生態系の破壊と酸性雨: 日本以外の沿岸部の甚大な被害と水産資源の壊滅、大気圏に巻き上げられた大量の海水土砂などで日照不良による世界的な農産物への影響 スト…
AIに聞いてみた 高度1万メートルからウルルが太平洋に落下した場合、その威力は核兵器をはるかに凌駕し、地球規模の環境災害を引き起こします。特に、超巨大津波と、衝突の冬によって引き起こされる気候変動が、…
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