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2-1 異世界からの転移


「あ!! スマホ忘れてきた!!」


 大学の図書館エントランスでしゃべっていた俺、西尾 陸心(ニシオ リクシン)とその友達数人。

 こいつらはカードゲーム仲間だ。


 ここは俺が通う、地方の無駄に敷地がでかい大学。

 今日は日曜日なので図書館には全然人がいない。

 俺らはこの無駄に広いエントランスの一角で、カードゲームをするのが好きだった。


「どこに?」


「研究棟! 教授に提出する前のあそこだわ。」


「あー、四階か。いってらー」


「陸心、荷物は置いてっていいよー」


 研究棟に忘れ物をした俺は、荷物を友人に預けて取りに向かった。

 俺が受けてる講義の担当教授は四階に研究室があるので、エレベーターを使う。

 ちなみに日曜日なので教授はいない。

 金曜日提出期限のレポートを、ロスタイム続行!とか言いながら研究室に置いてきた。

 たぶんその時スマホを置きっぱなしだったんだろう。



 ほらあった。


 研究室前にたどり着くと、テーブルの上にポツンと置いてあった。

 荷物広げたときに置きっぱだったか。

 盗まれなくてよかった。

 俺はスマホを回収し、またエレベーターに乗る。

 1Fのボタンを押し、下に降りた。




 ――――――おかしい。


 なんだよこれ。

 たった四階降りるだけだよな?

 エレベーターの数字ももう1Fだよ!?

 降りてる! まだ降りてる!!

 今、地下何階!?

 違う……故障だ!

 すぐにエマージェンシーコールボタンを押す。


「すみません! すみません!!」


 あせって一秒間に16連打くらいボタンを押すが、反応せず。

 そのうちどんどん降りるのが速くなっていく。


「え? え!? うわああああああ!!」


 降りる、じゃなく落ちるレベルの自由落下になる。

 この時点で死を覚悟する。

 ってかなんで落ちてるんだ!?

 このエレベーター、地下がこんなに深かったのか!?


「たすけ……たすけて!! たす――――」


 そこで意識が途絶えた。



◆◆◆



パシューーーーー……



 ……エレベーターのドアが開き、空気が入ってきて目が覚めた。

 舞う煙を手で払い、咳込む。


「ゲホッゲホッ………生きてる?」


 体に痛いところはない。

 どうやら生きてるみたい。

 俺はエレベーターの床から起き上がり、外に出た。


「ここは……」


 15畳くらいの薄暗い部屋だった。

 コンクリートで出来た壁は、よくわからないパイプや機材が並んでいる。

 光源は真ん中のテーブルに古めかしいランプが置いてあり、それだけ。

 煙が落ち着いてきたところで見渡すと、隣に人が立っていた。


「うわあああああ!!」


 あわててのけぞり尻もちをつく。

 このわけわからない状況、隣に棒立ちの人間、ビビッて心臓がドクドク鳴る。

 ドクドクってかドン!ドン!のレベル。

 祭りの和太鼓状態。


 この人は……女性!?

 濃い藍色の髪は長く、後ろでまとめているっぽい。

 外国の方?

 まさか幽霊じゃないよな!

 白衣みたいのを着てるけど、がっちりボタンを閉めていて体にぴったしフィットしてる。

 あれ、やっぱり外国の人かも。

 巨大な胸の形がはっきりわかる!

 男って単純だな。

 そこに気が付いた瞬間、気が緩んでしまう。


「あのー……」


 俺がそういうと、女性は俺に近づき両肩に手をついた。


「あなたっ! 名前は!?」


 おう……いい匂い。

 そして胸が近い。谷間が。


「えっと……ニシオ リクシンって言いますけど……」


「えっ! 確か……ニホンジン……だっけ?」


「そうです。北海道出身です。」


「じゃぁ……リクシンって名前なのぉ……?」


「はい。」


 名前だよ。

 俺の母親方のじいちゃんが寺の住職。

 両親は寺とは関係ない仕事をしてるけど、じいちゃんの名前に似てる雰囲気に名付けられた。

 寺と関係ないから、もはやキラキラネーム化しちゃってる。


 それにしてもこのお姉さんねっとりとしたしゃべり方だな。

 顔だちとか、普通にきれいで日本人セレブっぽい。

 しかしなんでこんなところに。

 俺の名前がどうかしたのか。


「そぅ……だったら……………殺すかぁ……」



!?



 え? なんて!?

 今殺すって言った!?

 急に心臓和太鼓がセイッ!とか言ってヒートアップするようにドカンドカンしてきた。

 おいおい……

 よく見たらなにこの人。

 いつのまにか細長い刃物を持ってる。

 え、まじで殺されるの?

 ほんとに?

 やっぱりこの人は外国の人で、テロリストみたいな何かか!?

 やだよ!

 まだ死にたくない!


「やめて……死にたくない!!

助けて! ……お願いします! 殺ざないでぐだざい!!」


 手を前に出しながら、後ろに後ずさりする。

 ああ、めっちゃ涙出てきた。

 こんなに本気で泣くのは小学生以来だ。


「おねがい!! いやだ!! くぁwせdrftgyふじこlp;@!!」


 自分でも何を言ってるかわからない。

 それでもその女性は近づいてきた。


 だめだ!


 殺られる!!


 ―――――――――――と思ったが、抱き付かれた。


 本当に意味が分からないとき、人間は頭が真っ白になる。

 俺は完全にフリーズしていた。


「うううっ……勇者さまぁぁぁぁ……」


 女性が泣いている。

 ……いや、泣きたいのは俺だよ。

 ってかもうこれ以上ないくらい泣いてるけど。

 ただ、いろいろなことが起きすぎて俺は固まることしか出来なかった。

 そのまま女性は俺に抱き付きながらしばらく泣いていた。


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