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12-5 帰還


「いらっしゃい! 待ってたわよぉ~!」


 いつになくテンションの高い博士。

 博士の家に俺らが着くと、ノックをする前にドアが開いた。

 ずっと待ってたんだろうか。


 家に入るとオリティア達は地下室へ案内された。

 俺は別室で着替え。

 持ってきた日用品を置き、現実世界の服と本物のスマホ、財布を持った。

 この装備も久しぶり。

 そして俺も地下室へ向かう。俺がこの世界に初めて来たときの実験室だ。


「リク君、その服いいですね!」


 実験室に入ると、クラウが俺の服に反応する。

 別に量産型の大学生ファッションだけど。

 お世辞にも褒められると照れる。

 チェック柄のシャツとか着てなくてよかった。


「……この機械で……すごい。」


 タタミが異世界転移装置を見ていた。

 改めて見ると装置の箱はかなり大きい。

 狭い部屋に業務用冷蔵庫を置いたみたいに、部屋の一角をこの箱が占めている。


「すごい、すごいわぁ、本当に赤石を持ってくるなんてねぇ~!」


 博士に赤石を渡すと、宝石が大好きなマダムみたいに色んな角度から眺めている。

 そりゃ内戦を起こすほど欲しかった魔石だもんな。

 てか俺が手に入れるって信じてなかったのかよ。


「オルモア~、手伝ってぇ。」


「はい、わかりました。」


 いつの間にか後ろにいたオルモア。

 博士と一緒に転移装置の横の機械に行き、何か操作し始めた。


「……もう行っちゃうの?」


 タタミが俺の袖を引っ張る。


「うーん、そうだね。あんま長くいたら……帰りたくなくなるかも?」


「……じゃあ帰らなきゃいいのに。」


 この子までそういうことを言うのか。


「ダメですよタタミちゃん、リク君が困ってしまいます。

ここはしっかりとお見送りをして、一度故郷に帰してあげましょう。」


「ん? 一度ってどういうことだ。」


 クラウに問いかける。

 一度も何も、そう簡単に行けるところじゃないけど。

 彼女は笑顔になりながらも、しっかりとした眼差しでこちらを見つめる。


「私、決めました。魔女様の弟子になります!」


「「「……ええ~!?」」」


 一同ビックリ。

 すげえぶっ飛んだ発想が、この子から出るとは思わなかった。


「ここで転移術を学び、まずは勇者様をしっかり呼び戻すお手伝いをします。

そしてゆくゆくはリク君にも、もう一回遊びに来てほしいなと思いまして。」


「何言ってるのよクラウ! 魔女様だって実験にすごい時間かかってるのに!」


 オリティアが驚いて、クラウの肩に手を置き話す。

 しかしクラウは笑顔で返す。


「ええ。どれだけ時間がかかっても、どんな手を使ってでも、絶対成功させます。

もう不法侵入とか、悪いこともしてますからね。」


 そう言い放つクラウの目には、全く淀みがない。


「あら、いいわよぉ~、炎の巫女の末裔なら魔力も多いし歓迎するわよぉ。」


「本当ですか? やった!」


 相変わらずこの博士はテキトーだ。

 だがそれで助かったこともある。


「だからリク君、絶対にまた来てくださいね!」


「お、おう。」


「……じゃあその時にはウチも……新聞部部長になれてたらいいな。」


「タタミんその目標は低いな。」


「そうよタタミん、私なんて次会うときまでには学生チャンピオンになってるんだから。」


「オリティア、今フォロウがいなくなって喜んでるだろ。」


「よ、喜んでないわよ! まだ上には強い人沢山いるんだから!」


 オリティアが俺に近づき、手を差し出す。

 なんとなく握手をする。


「もちろんフォロウも倒すし、あんただって倒せるようになるわ。」


「おう、期待してるよ。」


「……ウチらのこと、忘れないでね。」


 タタミとクラウがじっと俺を見る。

 三人とも大切な仲間だ。

 忘れるわけ無いじゃん。


 博士から準備ができたと言われたので、俺は転移装置の箱に乗り込む。

 観音開きで扉が開き、まずは片方の扉を閉める。


「リク君! お体には気をつけてくださいね!

変な事件に巻き込まれそうになったら、すぐ逃げてくださいね!」


 なんじゃそりゃ。

 まあこの世界では変な事件だらけだったけど。


「……つ、次会うときは異世界の話聞かせてね!

……異世界の新聞を持ってきてもいいんだよ! ……異世界のお菓子も……。」


 二人が転移装置の扉に手をかける。

 ……閉めれない。


「……えっと、それから……うぐっ……えっとね……」


「タタミちゃん、手を離さないと閉めれないですよ!

それに……泣かれるとリク君だって……うっ……。」


「そういうクラウだって手で押さえてるじゃない!

しかも何泣いてるのよ、こんなやつ相手に。」


 オリティアが泣いてる二人の肩に手を置く。

 完全に涙を抑えて強がっている。

 さっきあれだけ泣いてたくせに。


 ああでもごめん、俺も涙出てきたわ。


「みんな、本当に、ほんとうにありがとう!!」


 クラウとタタミの手をにぎる俺。

 二人とも手が温かい。


「ほら、オルモアはいいのぉ~?」


「リクシン、さん、また、会えますよね。」


 隙間から顔を覗かせるオルモア。

 ホムンクルスなのに泣きそうな顔をしている。


「ああ、みんな元気でな!」


「さあみんな、リクシンが帰れなくなっちゃう、見送ろう?」


 オリティアの声で手を離すみんな。

 転移装置の扉が閉められる。

 中は真っ暗。

 外の声はあまり聞こえない。


「じゃあ始めるわ――」


「うえぇぇぇ――」


 始める、という声と女の子が泣きじゃくる声が聞こえた。

 ついに装置が起動したか。


 さあ、帰ろう。

 この世界は本当に面白かった。

 そうだな。

 帰ったらこの出来事を文章にして、小説投稿サイトに載せるのもいいかもしれない。

 あー、でも俺、理系だから文章能力ゼロだった――――


 体が熱くなっていく。


 だんだん意識が遠のく。


 こうして俺の異世界転移物語は、幕を閉じた。


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