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4-5 実戦テスト


「あーあ。こんな国の一大事に講義なんて受けてられないよな。」


「だよねー。」


 学生大会開会式には多くの生徒が参加した。

 そのため連休中は学内が立入禁止になり、隅から隅まで調べられたらしい。

 しかし特に犯人につながる情報は得られなかったようだ。


 そして連休が終わると、講義は通常スケジュールで進んでいくことになった。

 アイヌマが言う気持ちもわかる。

 赤石が無いことで国家の魔力の流れが不安定になる、なんて問題は発生しないようだ。

 意外と世界はいつもどおり回っている。


 しかし国家の威厳や外交問題なんかは大丈夫なんだろうか。

 どこかの国ならトップが責任を問われて辞任するレベルだよな。


「しかも今日の午後は実戦テストだろ? 強い人と当たりたくねーわ。」


「ああー。めんどいよね。」


「え、リクシンは『俺強い人と戦いて~』って言うタイプかと思ったわ。」


「いやいやそんなことないよwww どこの少年漫画だよwww」


 あ、少年漫画はマズったか?

 いや、スルーしてくれたっぽい。

 それともこの世界にもあるのかな。摩訶不思議なアドベンチャーは。


「まだ時間あるよな。トイレ行ってくるわ。」


「いってらー。」


 アイヌマがトイレに行った。

 次の講義は俺達が今いるこの教室。

 普通の講義室よりもちょい狭めで、高校の教室みたいな場所だ。

 「スペルカード芸術論」という微妙な講義だから参加人数も少ない。


 アイヌマを待っていると、彼が座っていた席に女の子が座ってしまう。

 「ここ友達の席なんで」って言おうと思ったら……俺のことをガン見していた。


「え、なんすか? ここの席――」


「……あなたが……リクシン・ニシオさん?」


「あ、うん。」


 身長は低め、小柄な体型。

 オレンジ色の髪、短いハーフアップポニテにアホ毛が一本。

 顔はかわいい、と言いたいが表現が小動物的な"可愛い"に近い。

 ネクタイが俺と同じ緑。

 ってことは俺らと同じ学年?

 乳袋は……装備し忘れちゃったのかな。


「……私は新聞部の……タタミ・ワンミールって言うんだけど。

リクシンさん……あなたに質問があります。……今ちょっといい?」


「え? 俺?」


 ドキッ!

 今この一大事で新聞部が質問っていうと、嫌なことしか無いじゃん。

 どうしようどうやってかわそうか……


「お~? おいおいリクシンなに口説いてるんだよ。」


 あ、アイヌマが帰ってきた。


「俺とスペルカードを語るよりこの子と一緒にいたほうがいいって言うのか?」


「んなわけねーだろ! ごめんねここの席コイツが先に座ってたから!!」


「……そう。わかった。……またあとで。」


 またあとで、か。

 新聞部はめんどくさい一言を残して去っていった。

 ただアイヌマのお陰で、自然に回避することが出来た。


「えーっとあいつは……確か新聞部? 去年入学した時、すぐ部活入ってた子だよ覚えてる。」


「アイヌマ! お前イケメンか、いやイケメンだ!」


「何言ってんだよ。でもあいつ、お前が珍しい外国人だから根掘り葉掘り聞かれるんじゃないか?

変なこと言わないように気をつけろよ。」


「でもアイヌマ……お前になら掘られてもいいわ。」


「お? 俺のスペルマカードを食らいたいのか?」


「「…………」」


「「へへへーwwwww」」


 お互い指を指しながら笑う。

 こういうコミュ力、俺もほしいわ……

 てか「根掘り葉掘り」とか本当、慣用句すら通じるんだな

 ますますわけがわからん。



◆◆◆



「それじゃあ名前呼ばれた順にペアになれよー」


 午後の実戦テスト。

 模擬戦ではなく、DPを賭けたガチデュエルだ。

 たぶん中間テスト的な立ち位置だと思う。


「―――、次、リクシン!」


「あ、はい!」


 呼ばれた。

 実技テストは体育館みたいな室内で行われる。

 壁際に待機してた俺だが、部屋の中心の方に駆け寄る。


「リクシンの対戦相手はオクシートだな。」


 この世界の人々は、みんな名字ではなく名前で呼び合う特徴がある。

 だから教師でも幼女でも偉い人でも、みんな初対面で名前が飛び交っている。

 このジャージ着た体育教師みたいな熱血先生だけが、フレンドリーに距離感間違ってるわけではない。

 つーかこの世界でもまんま熱血教師キャラとかいるのな。


「どうも。オラはオクシート・タナーセって言います。」


「あ、どうも。リクシン・ニシオです。」


 相手のDPは……4,500! え、学生ランク14位!?

 この前戦った番長より上か!

 しかもあのあと聞いたら学生ランクって同率15位が多いからそんなにすごくないっていうね。


「リクシン! 相手は54期生の中でもトップクラスの実力だが頑張れ! 気合だ!」


「あ、はぁ……」


 気合だって、そんなレスリングじゃねぇんだから簡単には行かないだろ。

 しかも俺は赤石を追う関係上、これ以上目立たないよう生活しなくてはならない。


 ……と言いたいが、ちょっと冒険してみたくなるのがゲーマーの悪いところ。


「それじゃあよろしく。」


「ああ、よろしく。」


「Wette(賭ける)、オラのDP500!」


「Wette(賭ける)、俺のDP500!」


「「DECK ON!!」」


 目立っちゃだめ。でも新しいデッキを試したい。

 そんなモヤモヤとした気持ちでテストが始まった。


第四話 終わり


<次回予告>

 目立たないように情報収集を始めるリクシン。しかし逆に情報を取られそうになってしまう。

第五話 「VS 新聞部」

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