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君の世界Ⅱ


 「ねぇ、私にも分けて、クッキー。」

「風奈。久しぶりだな。」

佐伯風奈。幼なじみであり今度から同じ学校に通う。中学校の卒業式以来、会っていなかったので、久しぶりだった。

「ゆーくん。会いたかったよ~」

風奈が俺に抱きつこうとすると、

「だめっ!」

くるみは俺の前に立ち、両手を広げて、風奈のコースを塞いだ。

しかし、風奈はすばしっこい動きで、くるみのわきの下をするりと通り抜け、俺に抱きついてきた。

「くるみちゃん、残念でした~ゆーくんは私のものになっちゃいました。」

風奈、おまえは子供か。というか、なんで抱きついただけで自分のものにできるんだよ。

「ぐすん…」

「くるみ!待て、泣くな!くるみ!」

しかし俺の声はくるみには届かず、くるみは泣き出してしまった。俺は風奈を離れさせ、くるみを抱きしめた。

「おにいちゃんの…バカ」

「なんで、俺がバカになるんだよ。くるみ、お前、もう中学二年生だろ?もう少し大人になれよ。」

「おにいちゃん、やっぱりバカ…」

「もう、バカで良いから、泣きやんでくれ。」

「やだ、おにいちゃんが風ちゃんにとられるなんて。ぜったいやだ!」

「こらこら、そんなことはもう言わないんじゃなかったのか?もうおにいちゃん大好きは、卒業したんじゃなかったのか?」

「そんな訳ないよっ!」

そんな事を言うくるみの頭を撫でて、俺はくるみをなぐさめる。

「やっぱり、ゆーくんってシスコン?」

「冗談でもよせ!風奈。」

「あら、違うの?」

「当たり前だ。」

「まぁ、いいけど。ゆーくんはやっぱり、くるみちゃんといると違うね。」

「どういう意味だ?」

「ゆーくん、いつも人間には興味がなくて周囲を景色としてしか見てないのに、くるみちゃんがいると、しっかり周りに気をまわしているじゃないの。」

…そうなのかもしれない。俺、一人のときはこの世界なんか見ていない。

しかし、くるみが近くにいると俺はくるみのいる世界に興味を持つ。

そういうことなのかもしれない…

「まぁ、そんなことはいいだろう。さっさとクッキー食べないか?」

「はーい。」

くるみは良い返事をした。

「あーちょっと待って。私も食べる。」

「風奈。おまえは食べたら太るだろ?」

「!!」

風奈の回し蹴りを、俺は後ろに下がりよけた。

「危ないな。風奈。」

「女の子に対して、太るとか言っちゃダメでしょ!あっ。」

風奈は何かに気づいたようだ。

「まさか、ゆーくん。私のコトを考えて私には太ってほしくないからそんなことを言ったの?」

「……」

「ゆーくんったら、もう…口下手なんだから…」

少し顔を赤くしてる風奈を見て俺は静かに首を振り、腹にパンチがきた。

「うぐぐ…」

「さぁ、食べましょ。クッキーを。」

風奈は名のある空手の大会で優勝ばかりしているのでパンチの強さは半端じゃない…


 「あぁ、おいしかったよ。おにいちゃん。」

「それはよかった。」

「ありがとうね。ゆーくん。おいしかったよ。」

「そりゃどうも。」

「ゆーくん。くるみちゃんの時と反応が違うよ。」

「そりゃそうだ。腹を本気で殴るやつに言われても、嬉しいわけがないだろ。」

「違うよ。ゆーくんがくるみちゃんが好きだからだよ。絶対。」

「まだ言うか?風奈。」

「言うわよ。」

「風奈。おまえはいい加減気付けよ。確かに俺はくるみの事が好きだ。」

「おにいちゃん!」

くるみが俺に抱きついてきた。

「だが、な。くるみは家族だから好きなんだよ。たった一人の家族なんだから…」

そうなのだ。俺には、威厳があって恐いけど尊敬できる父親もいたし、いつも子供の俺らを育てながら完璧に家事をして料理がうまかった母親もいたし、ちょっと変わり者だったけど天才の姉もいた。しかし、二年前、姉がある事故で死亡したのを気に俺たちの家族は破滅へのカウントダウンを始めた。

一年前、父親が急性心臓病で亡くなった。母親は父親を失ったことで自殺した。つい、三ヶ月前のことだ。

よって、家族を失った俺とくるみは親戚の家に引き取られた。

しかし、もう、俺は中学を卒業して高校生になる。俺は言った。

高校生になれば、くるみと2人で生活できるから、最低限の金銭的な援助だけしてくればよい、と。

そう言われた親戚の伯父は激怒した。

「ふざけるな!おまえが高校生なったんだったら、なおさら、くるみはやれない。お前は高校生活と家事を両立しながらも、アルバイトするというのか?」

「してやるよ。俺はくるみのためだったら、何でもやってやる。」

「無理してもいい事は何もない。くるみちゃんまで一緒に不幸になるだけだ。」

「ふざけるな。信じられる人間かもどうかもわからないのにたった一人の家族を渡せるか!」

「お前は出ていけ。くるみちゃんは家に置いてな。」

俺はくるみを見た。そして、少し思ってしまった。

こんなことを思っているのは俺だけでくるみはここで平和に暮らしたいのではないか?

そんな事を思った後は覚えていない。

気付いたときには、この空ヶ丘に来ていた。

俺は不安になった。

なぜなら、…

……

今は不安なんかない。

俺にはくるみがちゃんとそこにいてくれる。


 くるみがまた好きな歌を歌う。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」

「はい、おにいちゃん。」

「くるみちゃん。ちょっと競争してみない?ゆーくんをかけて!」

「風奈。まだ言うか?」

「いくら、家族だから好きといっても、そんな頻繁に抱きつく必要ないよね?」

「……」

「じゃあ、どっちが先に家につくか競争よ。いいわね、くるみちゃん?」

「受けて立ちます!」

そう言って、二人は走り始めた。

さすがに二年も違うし、運動神経抜群の風奈には、くるみは勝てない。

そこでくるみはやはり…

『バン!』

「あら、足引っかけちゃったぁ!」

足を引っかけるずるをしたのだった。

「やったわね?くるみちゃん!」

風奈は仕返しに足を引っかけた。

「キャァッ!」

『バタン!』

「くるみ!お前、足。」

俺は走って倒れたくるみに近寄った。

「大丈夫だよ。」

完璧に捻挫しているが…

まぁ、いいか。



「くるみーーー!!!」

「くるみちゃーーーん!」

全てが終わった。

耳の奥にはサイレンの音が鳴り響いていた。


下手ですがよろしくお願いします

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