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0話:勇者

久しぶりに戻ってきましたが、多分知ってる方などいないと思いますので初めまして唐笠です。

今回は「勇者」というありふれたものを題材にとり、書いてみたいと思います。


「た…助けてくれ!

俺だって仕方がなくやってたんだ!」


本来ならば二足歩行をする狼に似た半獣魔物のウルフが、地に両手足をつけ命乞いをする。

その目には確かな恐怖が浮かんでおり、打算などは存在していない。


「うるさい…」


対する人物は冷たく言い放つと、右手に持ったサーベルでウルフの右肩をずっぱりと切り落とした。


「や、やめてくれ…

俺には妻も子供だっているんだ。

その子供を人間たちに「うるさいと言ってるだろ!」


本来ならば悲鳴をあげていただろう。

だが、ウルフにとっては自身の痛みよりも優先しなければならないことがあったのだ。

ただし、その言葉は目の前の人物にとって、なんら意味を持ちはしなかったが…


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


断末魔の叫び。

ウルフの瞳に浮かぶ涙はなにに対するものなのか…

それを知る者はたった今、もう片腕を切り落とされ絶命した彼の他いない。



あくまで中立な立場で考えるとしよう。

「悪」とはどちらなのだろうか?

人を襲うこともあるウルフなのか、無力なウルフの子供を殺そうとした人間なのか…

だが、彼は答えをもっていた。揺るぎない答えを…


「僕が勇者だ…」


虚空に消えていくその言葉は誰に向けたものでもない。

幾度となく彼が呟いた一人言…

それは彼の精神を繋ぎ止めている言葉。


「先を…急がないと……」


再び歩き始めた彼の服は返り血に染まっていた。

ただ、先ほど使っていたサーベルとは別に腰に挿してある一本の剣。それだけは汚れを知らぬ、清浄な光を放っていたのだ…











ひとつ言おう。

彼は元より残忍な性格ではなかった。

無論、生き物を殺すなど考えもしなかったような人物である。


ひとつ言おう。

彼は紛れもない勇者だ。

古より伝えられし剣に選ばれた正当なる勇者。決して紛い物ではない。


ひとつ言おう。

彼には目的がある。その目的は勇者となった日からなにも変わっていない。


ならば、なにが彼をこうしてしまったのか…

なにが彼を壊してしまったのか。それを少しだけ見てみるとしよう…


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