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第1羽 呪文天使(スペルエンジェル)デシュラちゃん登場(シナリオ)

■ 学校裏山の草っぱら


 寝っ転がって空を見上げている馬飼法太まかいほうた


N「僕は馬飼法太。

  何の変哲も無い中学二年生だ。

  何の変哲も無い中学二年生だからこそ、よく夢想することがある。

  今の僕は、本当の僕じゃないんじゃないかと。

  平凡な毎日のある日突然、何かが起きて、日常が変わるんじゃないかと。

  例えば――

  ・宇宙から正義の超人が飛来して僕と合体――僕が正義の超人の力を手に入れる。

  ・僕が悪の組織に拉致されて体を改造される。

   しかし脱出して、その悪の組織を壊滅すべく戦うことになる。

  ・僕の父が実は科学者で、僕の家の地下には巨大ロボットが建造されている。

   そして僕は父の指示で、その巨大ロボットを操縦し、悪と戦うことになる。

  ・未来からやってきた子孫が僕の勉強机の引き出しの中から現れて、

   日々の僕の暮らしをいろいろとサポートしてくれる。

  ――といった具合だ。

  いずれも、特撮やマンガやアニメによくある話。

  こういうことを、本気で夢想するのが中二病というやつなのだろう。

  でも、現実にはそんなことが起こるわけない。

  いくら僕がリアル中二でも、夢想と現実の区別ぐらいつく。

  とはいうものの……。

  あ~あ……、何かおもしろいことないかな……」


 向こうの草むらから、「う~~」という声が聞こえてくる。

 法太、いぶかしんで、草むらの裏を覗く。

 デシュラが、上体だけを支えた倒れかけの姿勢で、おなかを押さえてうめいている。

 フリフリの、いかにも魔法少女といった格好。


法太「き、君、一体どうしたの? 大丈夫?」

デシュラ「お、おなかが……」

法太「お、おなかがどうしたの? 痛いのかい?」

デシュラ「おなかが……、おなかが空き過ぎて、動けないのでしゅら!」


タイトル「呪文天使スペルエンジェルデシュラちゃん」


 夢中で板チョコを頬張るデシュラ。口の周りがチョコだらけ。


デシュラ「う、うまい! これは何という食べ物でしゅら?」

法太「何というも何も……、ただのチョコだけど」

デシュラ「タダノチョコ?」

法太「いや、『タダノ』は要らなくて……、『チョコ』。『チョコレート』だよ」

デシュラ「ちょこれいと?」

法太「君、もしかしてチョコレート食べたこと無いの?

 親が厳しくて、甘いもの禁止とか?」

デシュラ「ちょこれいと初めて食べたのら。美味しかったーー」


 ぱああっと、輝くように笑うデシュラ。法太、ちょっとドキッとする。


法太「手や顔、拭きなよ。せっかくのドレスが汚れちゃうぞ」

デシュラ「……」

法太「もしかして、ハンカチもティッシュも持ってないとか?」

デシュラ「うう……、お恥ずかしい」

法太「しょうがないな」


 法太、持っているティッシュで、デシュラの手や口の周りを拭いてやる。


デシュラ「重ね重ねのご親切、ありがとうでしゅら」

法太「髪や目の色からすると、君、もしかして外国の子なの? 日本語上手だけど……」


 デシュラは金髪、右目が青、左目が赤のオッドアイ。


デシュラ「いかにも。わらしは、魔法の国からやってきのでしゅ。

 名前はスペイル・デ・シーラというのでしゅら」


 法太、優しくデシュラの額に手を置く。


法太「うう可哀そうに……。君、その若さでもう中二病?

 見たとこ、まだ十歳ぐらいなのに……」


 デシュラ、法太の手を振り払う。


デシュラ「わらしは、別に病気ではないのら。

 おなかが空いていただけで、健康なのでしゅら」

法太「うん、まあ、何でも無いということで良かったよ。

 じゃあ、とにかく頑張ってね、デシュラちゃん」


 法太、立ち去ろうとする。


デシュラ「あ、ちょっとお待ちくださいなのら」

法太「何? まだ食べ足りないとか? 悪いけど、もう食べ物持ってないよ」

デシュラ「そうじゃないのら。

 動けなくなっていたところを助けていただいたのに、まだ何のお礼もしていないのら」

法太「いいよいいよそんなの。小学生に何かしてもらおうなんて思わないから」

デシュラ「そうはいかないのら。受けたご恩は必ず返すように、

 父上からもきつく言われているのら。まずは、お兄ちゃんのお名前を教えてほしいのら」

法太「僕の名前? 馬飼法太だけど」

デシュラ「法太兄ちゃんか。じゃあ、略して法ちゃんらな」

法太「その呼ばれ方やなんだよな……。何か間が抜けた感じで……。

 まあ、どうせここでお別れだから、どうでもいいけど」

デシュラ「法ちゃんと呼ばれるのはいやなのか? じゃあ、お兄ちゃんと呼ぶでしゅら」


 法太、歩き出す。デシュラ、急ぎ足でついてくる。


デシュラ「あ、お兄ちゃん待つのら」

法太「なんだいデシュラちゃん?」

デシュラ「まだ、恩返しが済んでないのら」

法太「だからそれはいいって言ったろ?」

デシュラ「よくないのら、それと――」

法太「それと?」

デシュラ「わらしはデシュラではないのら。スペイル・デ・シーラなのでしゅら」

法太「スペイン……でしゅら?」

デシュラ「違いましゅ! スペインじゃないし、デシュラでもなくて、

 スペイル・デ・シーラでしゅら!」

法太「……。『でしゅら』って言ってるじゃん」

デシュラ「ふ、ふん、まあいいのら。

 きっと、この国の言葉では、わらしの名前はうまく発音できないのら」

法太「(独り言)その前に、自分が日本語うまく発音できてないって」

デシュラ「お兄ちゃんはどこへ行くのら?」

法太「帰るんだよ」

デシュラ「どこに?」

法太「決まってんだろ、自分の家に」

デシュラ「おお、そうか。

 では、わらしがお兄ちゃんを、おうちへ送ってあげるのでしゅら」

法太「はあ?」

デシュラ「(ステッキを振りかざし叫ぶ)ヘルチ・カオート!」


 法太とデシュラの姿、消える。


■ 法太の自室


 法太の自室(七畳くらいの洋室)に、法太とデシュラ現れる。


法太「な、な、な、これは一体……?」

デシュラ「どうでしゅら? お兄ちゃんをおうちまでお届けしたのでしゅら」


 ドアの外から声。


法太の母「法ちゃん、帰ったのーー?」


 ドアを開けて、母、入ってくる。


母「あら、帰ってきたの気付かなかったわ、お帰りなさい。

 (デシュラを見て)あら、その子……」


デシュラ「(ステッキを法太の母に向け)チムチム アウニー!」


母「(一瞬ぼうーっとしてから)……椎麗しいらも帰ってたの? お帰りなさい」

デシュラ「母さん、ただいまでしゅら」

母「(まだ、ぼうっとしながら)ええっと、うちは……、法ちゃんと椎麗と……、

 子ども二人で良かったのよね……。

 あ!(法太とデシュラが外靴をはいたままであることに気付く)

 二人とも外靴のままで何ですか! さっさと靴を脱いで床をきれいに拭きなさい!


 床を吹いている法太とデシュラ。


法太「デシュラ、もしかしておまえ本物の魔法使いなのか?」

デシュラ「ちゃんと最初に魔法の国からやってきたと言ったでしゅ」

法太「信じられないよ……。それとさっき、母さんがおまえのこと椎麗とか呼んでたけど」

デシュラ「魔法を使ったんでしゅら。

 わらしの名前を覚えてもらって、このうちの子になったのら」

法太「へえ、このうちの子にね……、って、はあ! どういうこと?」

デシュラ「だから、お兄ちゃんにご恩返しするために、このうちの子になって頑張るのら」

法太「おいおい、恩返しならもういいって言っただろ。

 ――ていうか、恩ならもう返してもらったから」

デシュラ「へ?」

法太「さっき、魔法で裏山からうちまで連れてきてくれただろ? あれで恩返し完了。

 さ、もう、魔法の国とやらに帰ってくれ(デシュラの背中を押して追い出そうとする)」

デシュラ「ま、待ってくださいでしゅら」

法太「まだ何か?」

デシュラ「わらしはさっき飢え死にするところだったのでしゅら」

法太「大袈裟な。今時の日本で飢え死になんて滅多にするかい」

デシュラ「それをお兄ちゃんが、あのすばらしく美味しい『ちょこれいと』

 で助けてくれたのでしゅ。お兄ちゃんは命の恩人!」

法太「魔法の国にはチョコが無いんだな」

デシュラ「命を救われた恩は、山よりも高く、海よりも深いのでしゅら」

法太「いちいち言うことが大袈裟だよ」

デシュラ「その大恩を住み込みでお返しするでしゅら。

 魔法でお兄ちゃんの望みをいっぱいかなえてあげるのでしゅ」

法太「住み込みって……、いつまで住むつもりだよ」

デシュラ「(人差し指を立てて)少なくとも一年!」

法太「はあ? 一年!? 冗談じゃない! もっと早く恩返し終わらす方法無いの?」

デシュラ「無いでしゅら。お兄ちゃん、そんなご遠慮しなくていいのら」

法太「ご遠慮じゃないよ! 父さんは安月給のサラリーマンだし、

 うちにはデシュラを養う経済的余裕なんか無いぞ!」

デシュラ「それならご心配無いでしゅら」

法太「ご心配あるよ!」


■ 馬飼家のリビング


 電話が鳴り、母親が取る。


母「もしもし。あら、あなた。こんな時間にどうしたの? ――うん、うん。

 ――ええ! なんですって!!」


■ 法太の部屋


 母が飛び込んでくる。


母「法ちゃん、椎麗、たいへんよ!!」

法太「な、なんだよ母さん、いきなり」

母「今、会社の父さんから電話があったんだけど、父さんが……、父さんが……」

法太「ど、どうしたんだよ、母さん落ち着いて。

 ま、まさか、父さんリストラされたとか……?」

母「父さんが! たった今、辞令が出て係長に出世したって!」

法太「ほ、ホントなの!?」

母「今夜はご馳走でお祝いしなくちゃ」


 母、ルンルン気分で部屋を出て行く。


法太「デシュラ……、ひょっとして、おまえの仕業?」

デシュラ「へ、へ、へ……。父さんの給料アップ!

 これでわらし一人分の生活費は大丈夫でしゅら」

法太「(ため息をつき、苦笑いしながら)ま、いいか……。

 一人っ子で兄弟が欲しいなとも思ってたし……。

 それに万年平社員だと思ってた父さんが出世できたのも良かったし……」

デシュラ「喜んでもらえて嬉しいでしゅら」

法太「家に帰る魔法に、うちの子になる魔法、出世の魔法……、

 デシュラ、他にどんな魔法が使えるんだ?」

デシュラ「(エヘンと胸を張って)何でも!

 呪文さえ唱えれば、どんなことでもできるのでしゅら!」

法太「へえー、すごいんだなデシュラ」

デシュラ「(照れて頭をかく)それほどでも……」

法太「じゃ、学校の宿題なんかもできる?」

デシュラ「もちろん! でも――」

法太「でも?」

デシュラ「お兄ちゃん、宿題は自分でやらなくちゃだめでしゅら」

法太「いきなり正論かよ……。

 デシュラ、そんなこと言って、本当は宿題をやる魔法なんか無いんだろ?」

デシュラ「な、何を言うでしゅ! ちゃんとあるでしゅら」

法太「じゃ、試しにやってみせてくれよ。次からは自分でやるからさ」

デシュラ「う~~、ちょ、ちょっと待つでしゅら」


 デシュラ、背中のバッグを降ろすと、中から分厚い本を取り出す。


法太「なんだそれ?」

デシュラ「呪文事典でしゅら」

法太「呪文事典?」

デシュラ「この中にありとあらゆる魔法の呪文が書いてあるのでしゅら」

法太「へえ~~、どれどれ?」


 法太、呪文事典を覗く。中は、見たことも無い文字がびっしり。


法太「読めない」

デシュラ「それはそうでしゅら。

 魔法文字で書いてあるから、人間には読めないのでしゅら」

法太「へえ~~、で、宿題の魔法は?」

デシュラ「ちょ、ちょっと、待つでしゅら」


 デシュラ、一生懸命呪文事典をめくる。


法太「デシュラおまえひょっとして……」

デシュラ「ギク」

法太「呪文知らないんじゃないの?」

デシュラ「ギクギク」

法太「そんで、呪文事典でカンニングしようとしてんだろ」

デシュラ「し、失礼な。ちょっとド忘れしただけでしゅら」

法太「ホントか、怪しいな……」

デシュラ「あ、あ、あ、怪しくなんかないでしゅら! えーと、えーと、

 宿題をやる魔法……、あ、あったでしゅら。お兄ちゃん、鉛筆を出すでしゅら」

法太「ほら、これ」

デシュラ「(鉛筆に向かってステッキを振りながら)メアオ レアイ ダクシーイ!」


 ステッキから光が出て、鉛筆に魔法がかかる。


デシュラ「これでオッケー。お兄ちゃん、宿題を書くノートを出すでしゅら」


 法太が机上にノートを広げると……。鉛筆が勝手に動いて、ノートに宿題をやり始めた。


法太「す、すごい!」

デシュラ「どんなもんでしゅら!」


■ 翌朝。馬飼家の玄関


法太「行ってきまーす。面倒な理科のレポート、魔法でやってもらえてよかったよ」


 法太、上機嫌で元気に飛び出してゆく。法太を見送る、デシュラと母親。

 デシュラ、法太の部屋に戻る。


■ 法太の部屋


デシュラ「お兄ちゃん喜んでいたのら。お兄ちゃんもこれで私を見直したに違いない

 でしゅら。おっと、今の内に呪文の復習をしておこうっと」


 デシュラ、呪文事典を開いて、読む。 読んでいる内に、デシュラの顔が青ざめてくる。


デシュラ「し、しまったでしゅらーー」


■ 法太の通う中学校の理科室


 理科の若い女の先生に呼び出されている法太。


先生「馬飼君、君のレポート読ませてもらったわ」

法太「は、はい」

先生「残念だけど、これは受け取れない」


 先生、法太のノートを机の上に置く。


法太「へ、な、なんで……」

先生「君ぐらいの年頃にはよくあるのよね。年上の人にあこがれることって」

法太「え……」


 法太、自分のノートを手に取って読み始める。

 法太の顔が青くなり、続いて真っ赤になる。


法太「こ、こ、こ、これは……、デシュラのやつ~~!!」


 法太のノートには、理科の先生にあてた熱烈なラブレターが綴ってあった。


■ 法太の部屋


デシュラ「(「てへっ」といった表情で)宿題の魔法とラブレターの魔法を

 間違えたでしゅら」

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