プロローグ 桂木天音のひとりごと~
五月二十八日 晴れ
屋上は今日もいい天気やった。ウチは今日もなんにもすることがのうて、階段室の上にある給水タンクに寝転んどった。
すると、男子が一人、ものすごい勢いで階段室の窓から屋上に飛び出してきた。そのまま一直線に柵を越えて、屋上の縁に立つ。
(なんや、自殺かいな?)
そう思ったら、ちょっとだけウキウキしてきた。アカンアカン。いくら退屈やからって、人が死ぬのを喜ぶなんてありえへん。しゃーない。無駄やと思うけど、思いとどまるように説得してみよか。
ウチは階段室からポーンと飛び降りた。
「やめときぃ、こっから落ちたら痛いで」
ところがウチがせっかく声をかけとるちゅうのに、その男子はまったくこっちに気づかない。
さらに近づくと、彼はくるっと振り返った。
(あら、やめるんかいな?)
そう思ったのもつかの間、屋上の縁に後ろ向きに立っていた彼は、ワーッという叫び声とともにそのまま大きく後方へと踏み切った。空中へ放り出された身体が、まるでオリンピックの体操選手のように複雑な回転をしながら地面へと落下して行く。
(なんやのんアレ?)
ウチの記憶が正しければ、彼はウチらの学年でも有名な男子生徒だ。彼が自殺しようっちゅう気持ちはわからんでもない。そやけど、なんで自殺する時に宙返りせなあかんのか、まったく理解不能やった。
ただ、確実なことが一つ。
この旧校舎は四階建てや。校舎の隣にあるアスファルトの駐車場で、彼の身体は間違いなく、つぶれたトマトになっとるやろう。
四十九日まであと四十九日