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OORK ルーク  作者: ことわりめぐむ
6/6

6 いるべきところといたいばしょ

「博士に会いたい‥‥」


 いつものお買い物に、人形の配送といろいろ街中を三人で歩き回った午後。テレビばっかりを並べている電気屋の前でルークは立ち止まった。


「どうしたのルーク」

 ロジーナがモニターを見ると、自分たちの後ろ姿が写っていた。テレビの中のカリスがこちらに向かって手を振っていた、カメラの位置が分かったらしい。

 しかし、ルークはそれを見ているのではなくて、店の奥に写るニュースをテレビで見ていた。


「博士‥‥」


 音声は聞こえないが、モニターには女性が、アップで写っていた。


「あの女の人が、ルークを造った人」

「‥‥‥‥」

 ルークは黙ったまま、テレビ画面を見ていた。瞳に映し出される画面は何度もシーンが変わって、博士の顔とともに名前が下に表示された。

 メリッサ ・ルイス

 それが彼女の名前だった。

「会いたくても無理なのよ。あそこは、いっぱい警備の人とかいるし、ルークだって狙われているし」

 ルークの態度は変わらない。

「どうして会いたいの」

「分からない。ただ会いたいんだ。初めて目覚めた時みたいに、ずっとただ側に居たいんだ」

 悲しそうに画面を見つめる。

「どうするロジーナ?」

 動かないルークを見ていらいらしているロジーナにカリスが問いかけた。

「どうするっていったって、家でめそめそされたんじゃ、マスターも気を悪くされるだろうし‥‥」

「つれていってあげるのかい」

 自分が言おうとした言葉を先に言われて気分を損ねたのかロジーナはカリスに答えずに言った。

「しょうがないから、私が会わせてあげるわ」

 ロジーナの言葉にルークはテレビから視線を彼女に向けた。

「正確には、俺と彼女でだけどね」

 ルークと同じ目線の高さまでひざを落としカリスが付け加えると、嬉しさのあまりルークはロジーナとカリスに抱きついた。

「本当につれていってくれるの」

 ぎゅうっと首を絞められ、耳元でささやかれた言葉にひとみを閉じてロジーナは「そうよ」と答えた。



 夜


 昼間ロジーナが言ったとおり、研究所には警備の人間でいっぱいだった。機密保持が目的であろうが、中には細菌兵器や有害物質など危険なものが多々あるから、持ち出されては困ると、警備を強化しているのだろう。

 そして、国にとって大切な科学者が住み着いている、守るべきものはたくさんあるところだ、とカリスが語る。


「‥‥の割には、簡単に入れたわよね」


 倒された警備員の服に着替えたカリスの服の裾をつかんでロジーナは言った。

「ルークはロボットで重いし堅いから一発で人間は、気を失ってしまうからね」

 カリスが笑いながら角をまがると、また新しい警備員が向こうからこっちへ来るのが見えた。

「どうやら、中も厳重なようだな」

 ルークとロジーナを隠すようにカリスは立つ。相手は小さな侵入者に気づくこともなく前を無言で通り過ぎていった。

「ねぇ。ルーク。あなたをつれてきた科学者を捜した方が早くない」

 人形館にルークの事をお願いしますと頭を下げた少し太った人間と、ルークを連れてきたもう一人の男がロジーナの記憶を巡る。

「クサカワとタケダ?彼らはだめだよ。親切だけども博士には会わせてくれない」

 忙しいからといってまったく会わせて貰えなかった数日を思い出して、少しの間の育ての親を否定した。

「うーん。ロジーナ。博士の名前はなんだっけ」

 しばらくうろうろしても、警備員にしか出会わない中カリスがロジーナに尋ねる。

「メリッサ・ルイス」

 そんなこと聞いてどうするのとロジーナは答えた。

「聞くのさ。ちょっと隠れてて」

ばたばたとカリスは走っていって。すぐに戻ってきた。

「あっちがラボだとさ」

 目的地を指差してカリスは笑いながら言った。

 

「ここ知ってる。少し変わっているけど」

 博士の研究室はルークが出ていってからほとんど何も変わってはいなかった。からっぽの培養カプセル、所狭しと敷き詰められているたくさんの電気機器、床を這うコード。ルークが覚えているのは当然だ。

「この位置で博士を見ていた」

 自分が入っていた培養カプセルの前に立つとルークは懐かしそうに語る。


「覚えているなら確かだな。じゃあルーク、博士がここに現れるまで待っていればいいさ、俺は帰る」


 カリスが周りを見回して言う。何か焦っているようだ。

「何言ってるの、こんな所に放置していけるわけないじゃない」

 ロジーナは怒ってそう言ったが、カリスは気にもせず続ける。


「ロジーナも帰るんだよ」

「嫌よ」

 言う事を聞き入れない少女をあきらめてカリスはルークに向き直った。

「ルーク。俺は帰るけど、俺とロジーナが人形館の者だなんて言うなよ」

 カリスの言葉にうなずく。いい子だと笑うとそのままどこかへ歩き出す。

「カリス!!」

 後ろ姿に声をかけるが相手は無視し、あっという間に姿が見えなくなる。

ルークは全く気にもしていない様子で、いらいらしているのが自分だけだと思うとロジーナはばかばかしくなって話題を変えた。


「ここで生まれたの?」

 なんにも面白みがない所ねとロジーナは思った。


「本当はここじゃない」


 上から声がした。

「何処かで聞いた覚えがある声」

 ルークは上を見上げた。そこにはアークが空に立っていた。

「天使?」

 ロジーナの感想は正しい、アークの背中の翼は彼女の目には本物のように見えた。

 アークを見た誰もが初めに持つ感想だ。


「覚えているのか、俺の声を」


 ゆっくり上から降りてくる。

「顔を合わせるのは初めてだろう。俺は00AK。アーク。お前のプロトタイプだ」

 目線がルークと同じ高さまで降りてくるとアークはいう。アークは翼が生えている事以外はルークとまったく同じ姿で、二人が向かい合うと鏡が二人の前にあるかのように見えた。

 憎々しげに見つめる天使と、うれしそうに見つめるルーク。


「あのとき、コンピューターまで壊しておくべきだった。のこのこ生きているとは思っていなかった。00RK、ルーク」


 そんな彼の『壊しておくべきだった』という言葉で、ロジーナはアークがルークを殺そうとしている存在なのだと悟る。彼女はなんのことか、草川から聞いていたので分かっていたが、ルークにはアークがいう言葉が、何が何だか分からない、首をひねるだけである。


「ルークを殺そうとしたのはあなたね、同じロボットなのになんで?」

ロジーナの質問にアークは丁寧に答えた。

「そいつさえ壊せば、俺がいつまでたってもたった一人のヒューマノイドでいられる。完全な形ができあがれば俺は用なしだ」

「そんなくだらない理由で、殺されたらたまったものじゃないわ」

 アークの言葉に大声でロジーナが怒りのあまり叫んだ。

「くだらなくなどない、大切なことなんだよ。だから壊すんだ」


 アークがルークの腕をつかみ普段曲げない方向へ力を加え、へし折る。

 ルークの腕からちぎれた配線とともに赤い液体が勢いよく溢れ出し、二人に飛び散った。

 おどろいたロジーナは何もできずただ二人を見つめているだけだった。

「メインのチップは頭に埋め込んであるんだったな」

 赤い液体まみれの手でルークの顔につかみかかろうとした、顔は嫌だったのか後ろに下がってその手から逃れる。


「何するんだよ、壊れちゃったじゃないか」

 まだ無事な片方の手で壊れた片腕をおさえルークは怒る。

「痛みはなくても、さすがに防衛システムは働いているんだな、頭を狙うと無意識のうちに逃げ出すとは‥‥優秀な弟だ」

 そんなルークの言葉には耳を貸さず、下がったルークとの間を埋めるようにアークは前に進み、もう一度手を相手の顔の上にかざす。危険だと察知したルークはただ逃げることしかできなくて、後ろに後ろに下がりつづけていた。もうすぐ壁が近づき逃げ場がなくなることだろう。

 目の前で腕をへし折ったアークの怪力に顔をつかまれれば、壊されると実感したロジーナは追いかけるアークの動きを止めるため後ろから翼を押さえ込んだ。

「何‥‥するんだ」

 今までなかったロジーナというおもりにアークは嫌がり振りほどこうとする。

「ルーク。ここから逃げないと壊されちゃうわ」

 せっかく捕まえた相手に振り落とされないように必死でしがみつきながらロジーナはルークに指示を出した。

「嫌だよ。せっかく博士に会えるんだ。こんなところであきらめたくない」

 ロジーナのおかげで動きが止まったアークから見えない位置に隠れると大声で反論する。

「何言ってるのよ。壊れちゃったら二度と会えないじゃない」

 馬鹿げたルークのわがままにロジーナは説得を続ける。振りほどこうと暴れるアークの力に非力なロジーナの力がかなうわけもなく、つかんでいた翼から地面にたたきつけられた。

「会わせてやるかよ。ここで前のように機能停止にしてやるよ」

 自由になったアークがルークを探し出そうとあたりを見渡し、先ほどのように邪魔が入らないように空高く舞い上がる。


 隠れてはいても床に落ちたオイルの跡までは隠せてはいなくて、端末とカプセルの間にうずくまるように隠れているルークを簡単に見つけ出した。

 地上に放置されたロジーナも地面に落ちているオイルの跡をたどり、ルークの位置までたどり着く。

 降り立つアークとルークの間にふさがるように立つ。

「どけよ、邪魔なんだよ」

「嫌よ。ここからどけば、ルークを壊すんでしょ」

 当たり前だろうとロジーナをはじく。

 倒れこんだロジーナの横を通り過ぎようとすると、足にロジーナがしがみついてきた。

「なんでここまでするんだよ。ルークはお前の何なんだよ」


「ルークは‥‥。ロジーナの家族なのよ!」


 服が汚れるのも手が痛むのも気にしないで、ロジーナはアークの足にしがみついて引きずられていた。

「ロジーナ‥‥」

 その必死の行動にルークが声をかける。

「ロジーナ‥‥もぅいいよ、またどこか折れちゃうよ」

 そう声をかけてもロジーナは手を離そうとしなかった。


 ルークはよろよろと立ち上がるとアークの前に立つ。

「女の子に守られちゃあ駄目だものね」

 これ以上アークを歩かせると、しがみついているロジーナが傷つくと思ったルークは自分でアークの前まで歩いていった。

「俺は、博士しかいないのにな」

 ロジーナの姿を見てアークは寂しそうにつぶやいた。

「ルーク逃げて」

 追い詰められたルークを助けることができなくて、ロジーナはただそうつぶやくしかできなかった。

「覚悟はできたよな」

 逃げ場のないルークはまっすぐにアークの手だけを見ていた。

 怖がることも抗うこともしようとしないルークにアークの手が襲い掛かる。


「待ちなさいアーク」


 もうすぐ額を握りつぶせる位置に付くと、二者外の方向から博士の声が低く研究室に響いた。

 ルークの額に当てられた手の動きが止まる。あと力を込めれば壊せる状況で邪魔をした声の主を振り返って見た。

「は‥‥かせ」

 アークは驚いて目を見開いた。こんな時間に、この人がいるはずがない。表情がそう言っていた。

「何しているのこんな時間に」

 白い息を吐き、声の主が現れる。どうやら偶然ここの前を通っていたら騒ぐ声が聞こえてきたらしい。

 アークの前に立つルークの姿を見つけて驚いた表情で名前を呼ぶ。

「ルーク‥‥。あなた起動してるの?」

 会いたかった博士の姿に、ルークは笑顔でうなずく。

 

 ルークの手から赤い液体が地面に流れ出しているのが分かると、博士の顔は険しくなった。

 負傷した手をおさえ、隅に追い詰められたルーク、アークとルークに飛び散って付いている赤い液体。

 ルークの額に当てられた赤色のアークの利き腕。


「アーク‥‥ルークのコードを切ったのはあなたなのね」

 この状況から前にルークを機能停止に追い込んだ人物がアークだということを悟る。

「こんなに暴れて」

「博士。俺は‥‥」

 突然の博士の登場にアークは慌てていた。

 弁解しようとルークの前から飛び立ち、博士の前に降り立つ。

「わかっているわ。アーク」

 博士はアークをつつみこむように抱きしめる。

「博士‥‥」 

 バチッという電気の音がすると、アークはそのままどさりと倒れた。

 博士の手にはスタンガンがあった。これでアークはショートした様だ。


「博士」

「ルーク」

 博士はよろこんでルークの名前を呼んだ。

 オイルまみれの体を動かして博士のいるところまで歩いていく。

「あのとき、殺されたかと思っていたけれども、生きていたのね」

 博士は白衣が汚れることも気にせずに、アークと同じようにルークもつつみこむように抱きしめる。今度はスタンガンは作動しない。

「やっと。会えた。この何日間が、とても長い間に思えた」

 目を閉じて今置かれている幸せをかみ締める。

 涙を流すプログラムが実行されていれば、ここで大粒の涙でも流していたことだろう。


「でも‥‥アークは」


 しばらくすると、倒れて動かないアークの姿が気になった。

「あなたが戻ったんだもの。あれは必要ないわ」

 その言葉にロジーナが表情を変えた。

 その言葉は、アークがずっと怖れていた言葉だった。ルークという完全体が手に入ったらもう、欠陥品はいらないということの意味に聞こえた。

「それに人殺しは罰を受けるべきよ。殺されそうになったんでしょ」

「人殺し‥‥なの」

 アークがどういう気持ちでこんな事をしてしまったのか、知る由もない博士はそういう理由でアークを放置する。直すつもりはないらしい。

 ルークは、博士の肩越しに動かないアークを見つめていた。


「ルークその人のところでほんとにいいの?」

「博士がいるもの。それでいい」

 ロジーナの言葉に、ルークは笑顔で答えた。

「あなたがルークをつれてきてくれたの。ありがとう、名前は‥‥」

 ロジーナの肩に手をおいて博士は言葉に詰まった。

「あなた‥‥」

 博士は、普通の感触ではないことに気が付き、確かめようとロジーナのほほに手を伸ばす。

「触らないで、ロジーナよ」

 人間ではないと言うことに気がつかれた、そう気が付いたロジーナは、ほほに触れた博士の手を払いのけ、先に出たカリスを追いかけ、逃げようとする。

「まって」

 そんな女の言葉を聞こうとはせずにロジーナは再度ルークを見た。

「このままだときっと後悔するわよ」

「しないよ全然。ありがとう」

 そしてカリスが出ていったところから同じように逃げていった。


「ルーク今の子。何処からきたの」

 黙っていてくれ、そういわれた記憶がある。ルークは口を閉ざしていた。

「お礼がしたいのよ、ルークを助けてくれたのでしょ。今までどうしてたの。ゆっくり聞かせて」

 ルークの傷ついた手を握り締め博士は続けた。

「彼女はどこに帰っていったの?誰も叱らないから教えてくれる?」

 ルークの目を覗き込むように顔を近づける。


「‥‥僕らの家のロジーナ人形館」


 黙っていろという言葉と、教えろという命令の間で悩み、苦しそうに眉をひそめ、博士の視線から顔をそむけて、ルークは言った。

 博士の命令からは背いてはいけない気がした。

「そう」

 自分の質問に答えたルークに笑顔を向ける。いつのまにか廊下側に控えているように立っていた、真っ黒の服を着た男に博士は右手を上げて合図をおくった。

「ちょっと待っていてねルーク」

 そういって博士はその男と部屋から出ていった。


 一人残されたルークは、放置され倒れたままのアークに近寄っていった。


「アーク‥‥僕のプロトタイプ」


 瞳を開いたまま動かないアークの手を握る。

 反応はない。

 翼の部分を支え上半身だけでも起き上がらせる。


「アーク」


 耳元でもう一度名前を呼ぶとアークは開ききった瞳をゆっくり閉じた。


「アーク大丈夫?」


 少しでも動いたと感じたルークは嬉しそうに声をかけた。


「‥‥ざまあみろって話だな。お前を殺そうとした俺が機能停止させられてるんだし」

 瞳を開けることも無く、ただそう語る。

 ルークは首を振った。 

「博士は俺をいらないって言ってただろ。お前さえいればいいって」

 悲しそうに眉を動かし、口を動かす。

「博士はそう言っても、僕は君がいらないなんて言わない」

 その言葉を聞いてアークは笑ったように見えた。


「俺は天使じゃなくて、人間になりたかった」


「僕たちは人間じゃなくてロボットだよ」


 アークは答えない。


「僕と同じヒューマノイドなんでしょ」


 もうアークは動こうとしなかった。


「僕の兄さんなんでしょ」

 何度声をかけても、もう瞳も眉も口も動ごく気配はしなかった。


「やっと同じ‥‥存在に会えたのに」

 ルークはアークだったものに額を押し付け、肩を震わせて泣いた。涙が出るプログラムはされていないのに、ルークの瞳からは涙がこぼれていた。

 


 博士から指示を受けた黒い服の男は暗闇の中、街を歩いていた。

 遅い時間なのだから通り過ぎる相手もなく、歩行者はただ一人。

 黒い服の男は人形館へ足を進めた。

 どこかの国のスパイになるだろう人材は早めに処理しておくべきだろう、という考えなのだろう。博士はわざとロジーナの体が人間のものではないということを伝えなかった。ルークに口止めされていたわけではなかったが、人間ではないものに意志を持たすことができる、動かせるという天才を見つけさせたくはなかったからだ。

 無機物に意思を持たせられる人間は、自分一人だけでいい。

 入り口には鍵がかかっていた。

「こもる気だな」

 そう考えた男は裏口にまわる、こちらの扉は開いていて中に簡単に入れた。

しかし、中はもうすでに誰もいなく、出ていったあとだった。大量にあった商品の人形はきれいになくなっていて、残っていたのはロジーナがいつもつけていたリボンと彼女が買いに出ていた造花が数本残っているだけだった。



 広い空港の待合室。壁の変わりに張り詰められたガラスの外側には、これから離陸する飛行機が待機していた。

 電光掲示板にたくさんの町の名前が時刻とともに表記される。

 規則正しく並ぶ待合室のソファーには自分が搭乗する飛行機が来るのを待つ人々がまばらに座っていた。その中に、少女とやつれた青年の姿があった。

「いくよロジーナ」

 大きなソファーに膝を抱えて座る少女の前には大きなテレビがあった。テレビ画面には、ルークとメリッサ・ルイスがうつっていた。

 壊される心配がなくなったため、上が早急に公表したらしい。

「マスター。ルークは幸せになれるかしら」

 少女の隣に腰を下ろし、悩む彼女の肩を抱いて人形師はいった。

「彼は‥‥幸せじゃないかな?」

 画面越しに笑いかけるルークはとても幸せそうに見えた。

「あれで幸せなの。変なの」

 あの博士の自己満足で造られたにすぎないルークは、これから見せ物になるだけらしい、人間とどれだけ違いがあるのか、何が人間として足りないのか、そんなことを追求されるわけもなく、ただ珍しいものとしてみんなの見せ物になるだけだろう。

 そんな生活に自由はきっと無い。

 そんなことはただの子供として生きているロジーナにもだいたい想像がついた。

 いつかアークのように捨てられるのじゃないだろうか、そんな心配もあった。

「飛行機がくるから、さあいこう。また、いつでも彼は見られるよ」

 主人の言葉にロジーナは動こうとはしなかった。

「今は本当に幸せなんだよ。それは邪魔しちゃいけない。でもロジーナが思っているみたいに本当に困ったときになったら、僕らが助けてあげればいいんだ」

 優しく語る主人の言葉に少女はモニターではなく人形師に視線を変える。

「さぁ行こう」

 主人の言葉に少女は席を立った。

「遅いなぁ。ロジーナは」

 搭乗口に二人を待っているカリスの姿が目立つ。

 いつもの笑顔で少女と主人を迎える。


「そんなにここは、長くはなかったね」

 彼女の手を引く人形師の言葉が今までの彼らを語っていた。  


読んでくださった方ありがとうございます。お疲れ様でした。

とりあえず、完結です。


サイエンス → ヒューマノイド

ファンタジー→ アーク(天使様なところあたり)


ジャンル的に言うと実は主役はアークです。(なわけない)

羽根つきロボット、リアルに欲しいです。


ルークの話は終わりますが、

ロジーナの話は又書きたいなぁ、とたくらんでいる私です。

ゴスロリ・ヒラヒラな女の子が出したいんですよ。



他の作品にも目を通していただけると幸いです。

完結済長編 <A HREF="http://ncode.syosetu.com/n3431u/"> 「北のまちに降る雪」</A>


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