第2話 王の死
その日の夜。
シウォンは父親であり、この天蘭王国の現国王であるルク王の弟に用事があり、父親がいる部屋へと訪れた。
「父上、おりますかー? あれ、いませんね」
ソレザは自室におらず、シウォンはその部屋を後にした。
城の通路に出たシウォンは、警備兵の男を見つけ、足早に歩み寄って声を掛けた。
「あの〜、父上に用があって部屋に行ったんですけど、いなくて。何処に行ったかわかりますか?」
「シウォン様! あ、先程、此処を通りかかった時に声を掛けたら、ルク陛下の元に行くと仰っておりましたので。多分、ルク陛下の元にいるかと……」
警備兵の男は丁寧にソレザの居所をシウォンに伝える。シウォンは警備兵の男に「ありがとうございます」と例を述べてから、父親がいるであろうルク王の自室へと向かう為、その場を後にした。
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天蘭王国の現国王であるルク王の自室には王弟であるソレザがいた。
「ルク、久しぶりだな」
「そうだな。こうして話すのは数ヶ月振りか?」
「ああ、そうだな」
久々の兄弟の会話であるが、互いに何処かぎこちなさが漂っていた。
少しの沈黙の後、ルクは沈黙を破るかのように話し始める。
「今日、セナがお前の息子であるシウォンと一緒に春祭りに行ったらしいんだが」
「そうなのか」
「知らなかったのか?」
「ああ、」
再びソレザとルクの会話は途切れ、静けさが部屋を満たしていく。
数分の沈黙の後、ソレザは口を開いた。
「ルクよ、お前はこの国の領土をもっと広げたいとは思わんのか?」
「思わないな、そもそもこの国は先代の王のお陰もあって広大な領土をもう持っている。それに領土を広げるには戦が必要不可欠だろう? 」
「そうだな。では、お前はこの国の民達全員に必要とされている王だと思うか?」
弟であるソレザの真剣な眼差しを見てから、ルクは静かに答える。
「この国の民達全員に必要とされているとは思ってない。貧困層の民達は私を恨んでいる者も多いと聞くしな」
「わかっているのだな、全ての人間に必要とされている訳じゃないと」
「ああ、勿論、わかっている」
ルクがそう答えるのと同時にソレザは腰にかけていた剣をいきなり引き抜き、ルクの左胸を刺した。
「ぐっ……は、お、おまえ……!」
ソレザから急に突き刺された左胸の剣を見て、苦しげな声を出したルクはその場に倒れ込む。
「ルク、すまないがお前にこの国は任せられない。俺が王となりこの国を今よりももっと良い方向に変えていく」
ルクの血が床に染まっていく中、ソレザは冷たい眼差しで床に倒れ込むルクを見つめていた。
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「父上の声が聞こえる」
シウォンはルクの自室の前まで来て、そっと扉を開けたが、シウォンは瞳に入ってきた光景を見て目を疑った。
自分の父親がルク陛下の胸に剣を突き刺していたからだ。
「ルクには申し訳ないが、セナ姫様も始末しなくては」
父親の言葉にシウォンは恐怖を抱き、足音を立てずその場から離れる。
「はぁ、はぁ、父上、どうして……」
シウォンは恐怖心と悲しさが渦巻く気持ちを抑え込みながら、セナがいる部屋へと走り急ぐ。
そんなシウォンの姿を夜の月明かりが照らしていた。




